シロアリと聞くとほとんどの方が嫌なイメージを持つことになりますが、特に住宅の売買におけるシロアリの存在は、その住宅の印象を悪くする大きな原因の1つです。
中には、家を売却したいけどシロアリが発見されたから売ることができない、と嘆いている方も多いのではないでしょうか。
実際に買い手の立場に立ってみると、シロアリが住み着いている家には様々な問題が発生するため、当然買いたいという気が起きないはずです。
しかし売り手としては、シロアリの有無にかかわらず家を早く売却したいと考えている方が多いはずです。
それでは、シロアリの住み着いている家、またはシロアリの被害に遭ってボロボロになってしまった家を売却するにはどのような方法を取ればよいのでしょうか。
今回は、シロアリと雨漏りの関係や、シロアリのいる家を素早く売却する方法などについて紹介させていただきます。
シロアリと雨漏りの関係性
それでは初めに、シロアリが住み着くことによって住宅にどのような被害が発生するのかを見ていきましょう。
シロアリが発生しやすい場所
シロアリの発生により家がボロボロになるという話はよく聞きますが、例えば
- 床下
- 水回り
- 玄関
- ベランダ
などは特にシロアリの発生する可能性の高い場所になります。
床下
シロアリと言えば床下だと考える方も多いですが、実際に建物の床下がシロアリによってボロボロにされてしまったというトラブルは少なくありません。
木材が好きなため木造の建物に巣食うというイメージも強いですが、例えばコンクリートがシロアリによって粉々にされるというケースもあるため、どんな建物であっても安心はできません。
通常はシロアリに気付いた時点で何らかの対策を取る方が多いですが、シロアリに気が付かない場合、または放置してしまうような場合は、床が抜けて大怪我をしたり建物が使い物にならなくなります。
例えば長期間放置していた空き家でシロアリが発見された場合は、既に床下がボロボロになっている可能性もあるため、慎重に調査することをおすすめいたします。
水回り
バスルームやトイレ、洗面所などの水回りは、湿気が溜まりやすくシロアリが最も好む場所の1つ。
一般的にシロアリは、
- 湿気が多い場所
- 薄暗い場所
- 風通しの悪い場所
- 温かい場所
を好みます。
バスルームや洗面所では毎日のように水を使うため、どれだけ気を付けていたとしても湿気が溜まりやすいですし、家の中では比較的暖かく薄暗い場所になります。
例えば新築のコンクリート造の建物であれば、シロアリがすぐに発生するということはないでしょう。
しかし建物が古くなってくるとコンクリートに亀裂が入り、その隙間からシロアリが侵入し、水回りの床下は格好の住みかとなってしまうのです。
実際に、浴室やトイレなどがシロアリによって、めちゃくちゃにされるというケースも少なくありません。
玄関
例えば玄関の扉やドア枠が木造の場合は、シロアリの侵入を簡単に許してしまいますし、例え金属製であったとしても土壌と接している場合はシロアリがそこから発生します。
また、昔ながらの日本建築によく見られる、玄関と土間との間の段差に設置する横木などは、玄関の中でも特にシロアリの被害に遭いやすい場所の1つです。
毎日のように玄関を通過して外出する方がほとんどでしょうし、ちゃんと見ているつもりだったとしても、知らず知らずのうちにシロアリにやられているというケースは少なくないのです。
ベランダ
ご家庭の中でも、ベランダはシロアリが発生しやすい条件が重なる場所になるため、それだけ注意しておかなければなりません。
シロアリは木材をエサとすると考えられがちですが、場合によっては
- コンクリート
- プラスチック
- 段ボール
- 発泡スチロール
- 衣類
- ゴム製品
- 屋根瓦
なども食い荒らす可能性があるため、ベランダに様々なものを放置してあるというご家庭は危険です。
同様に、ベランダに植木鉢などを設置して毎日水を与えているというようなケースも、水回りと同じようなシロアリが好む環境を作り出すため注意が必要です。
雨漏りがシロアリの原因になる?
空き家になっていた家は、長いこと人が住んでいないことが原因で雨漏りなどが放置されがちです。
その空き家を売却する際には、当然雨漏りを修理してから売却活動をすることになりますが、それと同時にシロアリのチェックもしておくことをおすすめいたします。
というのは、雨漏りとシロアリは密接に関係しているからです。
上述したように、シロアリはジメジメとした場所を好みますが、雨漏りが発生すると家の中が雨で濡れ、その雨が室内の木材を湿らせることになります。
水分を含んだ木材やその水分によって腐り始めた木材はシロアリの大好物なため、雨漏りが生じている空き家を長期的に放置している場合は、高い確率でシロアリが発生している可能性があるのです。
例えば、住んでいる家に雨漏りが発生した場合は、すぐに対処する方が多いですが、空き家の場合は発見されるのが数か月後、数年後になるケースもあります。
その間にシロアリが住み着けば家中がボロボロになっていることも十分に考えられるため、空き家で雨漏りが発生していたという場合は、一緒にシロアリについても調べておきましょう。
シロアリ被害の家を売却するための3つの方法
それでは、シロアリの被害に遭ってしまった家を売却するにはどのようなことをすればよいのでしょうか。
住宅の売却については、
- 現状のまま売却する
- 修繕をしてから売却する
- 解体してから土地を売却する
のうちのどれかを選択することになります。
現状のまま売却する
例えば、築年数が50年を超えるような古い物件なのであれば、瑕疵担保責任を負わないという条件を付けて売却することも可能です。
中古物件付きの土地ということにし、あくまでも売却するのは土地のみということになりますが、その土地に古い物件がついているということにするのです。
そういった物件を買い取った方は、当然フルリフォームを施したり建て替えることを前提としているため、シロアリがいようがいまいが関係ないと考えることもできます。
実質土地の価格のみで取引されますし、場合によっては相場よりも安く購入できるため、それであれば買い手にもメリットはあります。
詳しくは、以下を参照ください。
「解体工事が必要な中古物件付きの土地を購入するメリット・デメリット」
なお、瑕疵担保責任については後程詳しく紹介させていただきます。
修繕をしてから売却する
シロアリだけではなく、住宅の悪くなっている様々な個所を直してから売却するというのも方法の1つです。
シロアリの被害がまだ少ない場合は、まずはシロアリ駆除業者にシロアリを駆除してもらってから、悪くなっている部分を全て修繕することによって、売却できる状態になります。
ただし、床下があまりにもボロボロになっていたり、構造部分までがやられているような物件は、トータルでかなりのコストが必要になることが予想されます。
それであれば、上述したそのまま売却するか、後述する解体して売却するといった方法を選んだほうが良い気もします。
解体してから土地を売却する
家屋がボロボロになっていて手の施しようがないような場合、いったん壊してしまった方が効率が良いと判断できる場合は、解体して土地のみを売却するのもよいでしょう。
一戸建ての売却とは全く違い、解体後の土地を売却するということになりますが、シロアリでボロボロになっている建物を購入してもらうよりは可能性が高いかもしれません。
ただし、シロアリ被害に遭った家だとしても居住用の建物とみなされるため、土地のみを所有するよりも固定資産税が安いです。
万が一更地にしてそれがずっと売れない状態が続くと、解体前の固定資産税の6倍の税金を納めなければならないため、解体する時期に注意するようにしましょう。
同様に、仮に再建築不可物件である場合、解体をしてしまうとそこにはその後、建物を建てられなくなってしまうため、その家の状態についても把握しておく必要があります。
リフォームや修繕にもお金はかかりますが、解体工事をするとなった場合は解体費用のことも考えなければなりません。
解体工事の費用の相場については「解体工事で掛かる費用の相場。抑えるべきポイントとからくりについて」こちらも参照していただければと思います。
シロアリ被害を隠すことはできない
中には、シロアリの被害を隠して一戸建てを売買しようとする方もいるようですが、絶対にやめましょう。
瑕疵担保責任と告知義務
シロアリだけではなく、物件に重大な欠陥があるような場合、またはその物件を取り巻く環境に問題がある場合などは、買い手に事前にそれを告知する義務があります。
そういった義務があるからこそ、買い手も安心して中古の物件を購入することができますし、逆にそのようなルールがない場合は中古物件の売買はこのように盛んに行われないはずです。
そのため、上述したように
- シロアリの被害に遭っている物件だが購入してくれる方を探す
- シロアリの被害をしっかりと解消してから売却する
- シロアリ被害に遭っている物件を解体してから土地を売却する
のいずれかしか方法はありません。
シロアリがばれた場合
それでは、シロアリの被害があるにもかかわらず、その事実を隠した上で物件の売却がうまくいった場合はどのようになるのでしょうか。
当たり前のことですが、売却したとたんにシロアリがいなくなるということはあり得ないため、買い手がその物件に住んだり手を加えようとした段階で確実にバレることになります。
その場合は売買契約が白紙に戻され、売却金を返金してその家が戻ってくるだけで済むと思っている方もいるのではないかと思います。
買い手が優しい方であれば、それで済むケースもあるかもしれません。
しかし、不動産の売買に大きな労力を費やすのは、売り手だけではなく買い手も同じことですので、全てを元通りにしてそれで終わりというだけでは済まされないケースも多いです。
具体的には、瑕疵担保責任を追及されて損害賠償を請求される可能性が高いです。
瑕疵担保責任とは?
瑕疵とは欠陥を意味し、瑕疵担保責任というのは欠陥住宅を売った売り手に対して課せられる責任のことです。
例えば単純な雨漏りのみであれば、売却後であったとしても修繕することも可能ですので、その修繕費を売り手が買い手に支払うことで解決するケースも少なくありません。
しかし、シロアリによって家がボロボロになっていて修繕ができないような場合は、買い手は売り手に対して損害賠償を請求することができるのです。
当たり前のことですが、住宅を売却する際には売り手はその不動産のことを調べ、住宅として最低限の基準を満たしていることを確認してから売却活動を行うのが一般的です。
しかし、中には調べたにもかかわらずその瑕疵に気が付かなかったというようなケースも存在します。
気が付かずに売却した建物が修繕の施しようがないとなった場合は、契約の解除のみで済むこともありますが、知っていて隠しているような悪質な場合は損害賠償を請求される可能性が高いです。
瑕疵担保責任については「瑕疵担保責任の基礎知識。不動産売却後のトラブルを避ける方法」こちらも参照ください。
シロアリのいる家を素早く売るための秘訣
シロアリでボロボロになっている一戸建ては、誰も欲しがりませんし、かといってそのまま持ち続けるのも嫌だという方がほとんどです。
解体すれば売却できるかもしれませんが、その解体工事をするのも面倒だという方も多いでしょう。
できるだけ早く手放したいと考える方が多いと思いますが、それではどのようにすればシロアリがいる家を素早く売ることができるのでしょうか。
シロアリがいる家を売る方法
結論から言うと、売却後に売り手が解体する工事費用を負担するというフローを作ることができれば、シロアリがいたとしても早く売却できる可能性が高まります。
もちろん結果的に相場よりも安く手放すことになりますが、それは仕方のないことだと割り切るしかありません。
逆に、いらないと思っている家を安くても購入してくれるというのは、ありがたい話なのではないでしょうか。
ただし、スムーズに売却できるかどうかは話の持って行き方次第で変わって来ます。
売却の流れ
一般的には、以下のような流れで売却活動を行うと売却が成功しやすいです。
- 解体費用を出すという前提で売却活動を始める
- 購入希望者が現れる
- シロアリがいることを条件にして値段の交渉を試みようとしてくる可能性が高い
- 解体費用にかかる費用を売り出し価格から差し引くと交渉する
もちろん建物の大きさや構造などによって解体費用は大きく変わってきますが、それでも売却が成功するのには変わりありません。
ただし、ここで相手があまりにも大きな金額の値引きを持ちだして来たら、こちらもかなりの損をすることになるため、その辺りはよく考えて決断する必要があります。
仮に手元に対したお金が残らないにしても、いらない建物が処分できるということにメリットを感じるのであれば、売却してしまうのもよいでしょう。
まとめ
シロアリのいる家や、シロアリを駆除できたとしても既にボロボロになっているような建物は、基本的には需要がありませんし売却しにくいのが現状です。
しかし、売り方を変えてみたり話の持って行き方を変えてみることによって、案外あっさりと売れてしまうケースもありますし、売却活動が早く成功する可能性もあります。
もちろん、シロアリ被害に遭っている家ですので、相場より高く売却できるようなことはほぼないでしょうし、逆に通常よりも安くなるケースの方が多いです。
しかし、瑕疵のある物件をいつまでも抱えていることを考えると、多少安くても他人に購入してもらい、その土地を活用してもらったほうが良いのではないでしょうか?
シロアリを完全に駆除して家を補修してから売却するか、または解体工事をしてから売却するのが一般的ですが、安く売却して買い手に解体してもらうというのも方法の1つです。
どこかで妥協をしないと瑕疵のある物件はなかなか売れないため、不動産会社ともよく話し合って最善の策を見つけていきましょう。