固定資産税は、大きな資産にかかる税金なので毎年の負担も大きいはずなのに、だいたいの方は言われるがまま通知に合わせ支払うのみだと言います。
筆者も含め、不動産関係の仕事に携わる人はみんな、エンドユーザーと呼ばれる不動産所有者がそういった大きなお金の動きに無頓着なことを非常にもったいないと感じています。
そこでこの記事では固定資産税にスポットをあてて、そのあらましから実は存在する固定資産税をおトクに減税する方法まで、徹底的に解剖して説明したいと思います。
固定資産税とは
まず固定資産税とは何ぞやを説明します。もちろん税金であることは当たり前として
不動産登記のある地域を管轄する自治体(市区町村)が個別の固定資産に対し当年1月1日時点の所有者から毎年1月1日~12月31日分の課税額を徴収する普通税のことです。
ちょっとむずかしいと思うので、わかりやすく内容を詳しく掘り下げましょう。
課税要件とは
税関係には特殊な用語がたくさんあります。
中でも税金を語る上で必要な代名詞を全てひっくるめて「課税要件」と言い、税の説明をするパンフなどにも頻繁に出てきます。
だいたいのパンフ類には用語の解説があるのであえて覚える必要はないのですが、簡単に表にまとめましたので興味があれば覚えてみてください。
税の用語 | 用語 |
---|---|
納税主体 | 納める義務を持つ者 |
課税団体 | 徴収権を持つ者 |
課税物件の帰属 | 徴収の根拠になる物 |
課税標準 | 税を計算するための価値 |
税率 | 何%負担するか |
これから課税要件について固定資産税に沿った説明をします。
納税主体
納税主体とは課税の義務を負う人のことです。一般的には納税者とか納税義務者と呼ばれています。
これもややこしいのですが、実質的に税を支払う「担税者」とは必ずしも一致しません。
どの税金も課税の対象になる物の持ち主が支払うのが普通ですが、所有している人と実際に使用している人が異なる場合があるからです。
固定資産税の課税団体は市区町村
固定資産税の徴収権を持つのは市区町村になります。大阪市の場合、各区役所の税務課で固定資産税についての業務を執り行っています。
区のないところでは市税事務所の中に資産税課があったり、地域によっては分室があったり、住んでいるところの近くに本庁とは分離してあることが多いようです。
課税物件の帰属
特にこの言葉は頭にスッと入りにくい小難しさがありますが、要は課税対象が誰の持ち物なのかということです。
この帰属を考えることで納税義務者が誰なのかを特定します。
課税標準
同じ時期に買っただいたい同じものでも、自由経済のこの世の中で買った値段が違うということはよくあることです。
すべての税金を買った金額に対し掛けるとすればどうでしょうか?
安く買った人と高く買った人の間で差が生まれ、不公平に課税されることになりますね。
そこでそのような不公平さをなるべくなくすため、物の価値にある程度のラインを設けて税を掛けるための標準的な価値を課税団体は見積もりします。
この見積もり価額のことを「課税標準」と言い、固定資産税の場合は固定資産税評価額がこれにあたります。
税率
これは改めて意味を説明する必要はないと思いますが、驚くことに結構な額の税を納められているにも関わらず固定資産税の税率を正確に覚えていない方が多くいらっしゃいます。
同時期に同じ払込用紙で納める都市計画税の税率と合わせてここにまとめておくので、ぜひ覚えてください。
固定資産税・都市計画税の税率
税 | 税率 |
---|---|
固定資産税 | 1.4% (標準税率) |
都市計画税 | 0.3% (制限税率) |
固定資産税は税率は標準税率と言い、課税団体である地方公共団体の判断でこれ以上の税率を定められるとされていますので地域によって違うこともあります。
対して都市計画税の税率は制限税率であるため、日本中どこへ行っても税率は変わりません。また、これらの税率は先で説明した課税標準(固定資産税の場合は固定資産税評価額)に対するパーセンテージです。
賦課期日
税金の期間を起算する日のことを「賦課期日」と言います。固定資産税の場合は
- 毎年1月1日が賦課期日
- 課税の期間は1月1日から12月31日まで
- この時点での固定資産税評価額をもとに税率計算
こうして決定された固定資産税が、毎年4月位に請求書として納税者の元に届きます。
普通税とは
そしてここで気になる「普通税」という言葉。いったいどういう意味なのでしょうか。
普通税とは、地方税法で定義されている、使い道が特定されていない税金のことです。簡単に言えば何に使ってもいいお金ということです。
対して都市計画税は「目的税」と呼ばれ、都市計画のためにのみつかうことが出来るお金になります。
なので課税の対象になる不動産も、固定資産税は土地・家屋があれば所在がどこでも掛かりますが、都市計画税は市街化区域にある土地家屋にしかかかりません。
次に課税標準の説明で少し触れた、固定資産税を決めるプロセスを詳しく説明します。
固定資産税はこうして決まる
町の中には新旧大小さまざまな不動産があります。よく似たものももちろんありますが、お地蔵さんの顔のように一つ一つ違う価値を持っています。
固定資産税の根拠になる固定資産税評価額は、街にある一つ一つの不動産全て個別についているのです。
税金を取るためと言えば語弊がありますが、役所の職員さんの血のにじむような努力がうかがえます。
土地の評価
まず土地の評価については後に詳しくする「固定資産税路線価」を元に評価します。
基本的には路線価×面積でざっくりした評価額が出るのですが、土地の形状や広さ、高低差や障害物等の利便性の優劣によってその金額は補正され、平等に出るようになっています。
家屋の評価
次に、その土地の上に立つ家屋の評価です。土地は朽ちたり壊れたりするものではないので評価は経済状況に左右される程度ですが、建物はそういうわけにはいきません。
後に詳しく説明しますが、ただ評価額を出すだけとはいえその作業は驚くほど膨大です。
評価額の決定
これらの評価を年末までに済ませ、翌年の固定資産税の根拠になる固定資産税評価額を決定します。これに税率をかけ、皆さんの手元に届く納付書は作られます。
評価替え
固定資産税評価額は3年に1回変更します。
景況の移り変わりによって地価が騰落したり、市民生活が困窮したりする中で、たとえ1%ちょっとと言えど大きな負担になることもあるからです。
また、建物に関しては老朽化することで徐々にその価値を下げていくのが当たり前です。
新築と築30年、仕様が同じでもその価値には大きな違いがありますから。
この定期的に行われる評価額の変更のことを「評価替え」と言います。
固定資産税評価額とそのベースになる固定資産税路線価について次に説明します。
路線価と評価額
毎年3月ごろに新聞で公開される公示地価は皆さんご存知かと思います。
全ての基礎になるのは公示地価の標準値価額
この公示地価で示される「標準値価額」を基準に、同程度の価値を持つ不動産の評価額を接道している道路に沿って㎡単価で表示しているものを「路線価」と言います。
単純に接道している道路に書かれている単価を登記事項証明書にかかれている面積でかけると、だいたいその土地の評価額に近い数字が出ます。
しかし土地の持つ価値は接道だけで一編通りに計ることはできません。
路線価の足らずを補正する補正値
同じ路線に面していても利便性やそこに建てることができる建物の大きさ、建築基準法や都市計画法に基づく諸制限など土地をどこまで活用できるかも価値に大きくかかわる問題です。
それらの要因に関しても補正値がきちんと用意されていて、そのデータベースに照らし合わせ補正をかけることで初めて、その土地の正確な評価額を導き出すことができます。
建物についてはさらに緻密な計算が必要です。土地は朽ちたり傷んだりすることはありませんが、建物は年数を経ることで劣化します。
建物の評価はすべて手計算
課税団体である地方自治体では、建材や構造に関するあらゆる積算用の資料があり、課税対象である家屋はすべてその資料を基にして時価を導き出す作業が行われています。
この資料は雨どい1本、タイル1枚に至るまですべて新品時の価額から経年による減価率に至るまで精密に作りこまれています。
このような膨大な積算を経て1軒1軒の課税対象に対する評価額の計算がなされていることはあまり知られているところではありません。
こんなに膨大な作業を経て決められる評価額は、おかしいと思ってもツッコミどころのないものなのでしょうか。
評価額は変えることができる
役所側で必要があって評価替えや評価減を行うのですから、おかしければ変えることができるのが評価額です。
手計算だからズレも生じる
評価替えや評価減計算は課税団体である自治体で変えるものです。実際の価値が評価と比べて
- 何かの原因でもともとずれている
- 周辺環境の急激な変化等で評価に見合わない価値になっている
このようなことがまれにあります。
役所としてもそのミスに気付かなかったり、変化を把握できずにきちんと補正されていなかったりする可能性を踏まえておかしいと気づいた人が申告出来るよう制度を設けています。
納税者から評価額の変更をお願いできる
納税者は役所の窓口に審査請求や異議申し立てをすることができ、認められれば今の評価額を変えることができます。
審査請求については
評価額について3年に1度(評価変更、時点修正率については毎年)固定資産評価審査委員会事務局に対し行うことができます。
異議申し立ては
評価額以外について(評価要領や非課税の適否)毎年、役所の固定資産税課に対し行うことができます。
※いずれも納税通知書が届いてから60日以内に申し立てをする必要があります。
でも、自分の資産の評価額が正しいかどうかなど、自分一人で把握することはとても難しいことです。
自分でも調べられる固定資産税
多少複雑ではありますが、固定資産税を自分で計算するための材料はあらゆるところで公表されています。やるやらないは別として、評価額を出したり固定資産税の概算を調べることは実は自分でもできます。
材料になるものをここに簡単にまとめてみたので、興味のある方は一度自分の資産で計算してみてください。
評価額の概算
補正の計算(土地・家屋)
最後に
不動産サイトということで対象を不動産に絞って記述しましたが、固定資産というものは実は不動産だけではありません。大きく分けて
- 土地
- 家屋
- 償却資産
の3つがあり、償却資産は不動産とは違うものになります。
もっとも固定資産に数えられる償却資産とは、ふつうに生活をしていて所有する可能性が極端に低い大型の船舶や航空機、大工場に据えられているプラントなどの大型機械等です。
どれも高額で、持っている限りかかる税金ということで本当はもっとクローズアップされ節約術についても積極的に紹介されるべきですが、機会がないのが現状です。
記述した以外にも、新築時や改築にあたり、固定資産税を減税する方法は複数あります。
そちらはまた違う記事で紹介したいと思います。