売却したい不動産が空き家であれば、基本的には一度きれいに掃除をすれば、その後はいつでも内覧希望者を呼ぶことができます。

しかし、現在住んでいる家やマンションを売却したいと考えている場合は、住みながら内覧希望者を迎え入れなければなりません。

そのため、住みながら不動産を売却するのは不利だと感じる方もいらっしゃいますが、逆に無人の不動産を売りに出すよりもメリットになる部分が存在します

ただし、当然デメリットもあるため、そのデメリットを理解したうえで売却活動を進めていく必要があります。

また、自分が住んでいる不動産を見てもらって売却を判断してもらうことになるため、気を付けなければならない点もいくつか存在します。

この記事では、現在住んでいる不動産をスムーズに売却するためのコツなどを紹介させていただきます。

住んでいる家の売却と空き家の売却はどっちがいい?

最初に、住んでいる不動産の売却と誰も住んでいない不動産を売却する際のメリットとデメリットを比較してみましょう。

人がいる不動産を売却するケース

まずは、人が住んでいる家やマンションを売却する際のメリットやデメリットを見ていきます。

住みながら売却するメリット

住みながら売却活動を行うメリットとしては、

  • 買い手に家具などを配置した際のイメージを持ってもらえる
  • 住み心地や近隣状況の説明に説得力がある
  • 引き渡すまで住み慣れた不動産で生活が送れる

この辺りが挙げられます。

買い手に家具などを配置した際のイメージを持ってもらえる

現在そこで生活を送っているということになるため、生活をするのに必要な家具や家財なども全て配置してあるというケースが多いです。

例えば、空っぽのリビングを見せられるよりも、テーブルやソファーが並べられたリビングを見せられた方が、家具を置いたときの広さや圧迫感を体感することができます

もちろん買い手と売り手の所有する家具や家財は全く異なりますが、実際にそこで生活を送るイメージを持つことができるため、この部分は大きなメリットです。

住み心地や近隣状況の説明に説得力がある

ずっとそこに住み続けているのであれば、周辺にどのようなものがあるのか、どこに何があるのかをすらすらと説明できるのではないでしょうか。

また、町内の決まりごとであったり、マンションであればそのマンションが独自で設けているルールについても詳しいはずです。

実際にその不動産で生活をしていた売り手から直接周辺の情報や住み心地などを聞くことができるため、誰よりも説得力があります。

もちろん住みにくい部分などのデメリットも紹介する必要がありますが、住んでいるというだけで得られる情報も多いため大きな強みと言えます。

引き渡すまで住み慣れた不動産で生活が送れる

これをデメリットと捉える方もいるかもしれませんが、今まで住んでいた不動産にギリギリまで住めるというのはメリットの1つです。

例えば、あえてその不動産から別の不動産に引っ越して、無人の建物を紹介するとなった場合は、その新しい不動産に住むのに別途お金がかかってきます。

現在所有している不動産に住み続けるのであれば家賃は不要ですので、住みながら売却活動をする場合は経済的な負担を抑えられます。

住みながら売却するデメリット

住みながら売却活動を行うデメリットとしては、

  • 自分の生活が覗かれる
  • 内覧に合わせて予定を組まなければならない
  • 売却に時間がかかる可能性がある

この辺りが挙げられます。

自分の生活が覗かれる

不動産の売却を成功させるためには、内覧希望者を気持ちよく迎え入れる必要があります。

内覧希望者は、高いお金を払って不動産を購入するわけですから、建物の造りや間取りなどの大まかな部分から、収納の数や水回りの老朽化具合などの細かいところまでチェックします。

例えば友人を自宅に迎え入れたとしても収納の中まで覗かれることはありませんが、買い手が納得して購入するには収納の構造まで確認する必要があります。

そのため、内覧希望者の数が多ければ、それだけ多くの人に生活を覗かれてしまうというデメリットがあります。

ただし、どうしても見られたくない場所がある場合は、それを事前に伝えておくことである程度は対処することが可能です。

内覧に合わせて予定を組まなければならない

内覧希望者はいつ見つかるかわからないため、基本的にはその内覧希望者の都合を聞いて、それに合わせて家主が行動する必要があります。

売り手が内覧希望者と一緒に対象の建物の内覧に立ち会うというのは珍しいことではありませんが、住んでいる家を見せる場合はそれに合わせて自宅をきれいにしなければなりません。

常に家をきれいに保っているというご家庭であれば問題ありませんが、片づけるのが苦手な方などは内覧の度に大掃除をする羽目になります。

もちろんきれいにし続けることができるのであればこの部分はデメリットとは言えませんが、中には非常に煩わしいと感じる方もいるでしょう。

なお、部屋が汚いからという理由で内覧希望者を断ることは可能ですが、そんなことを繰り返していると不動産の売却が遅れるため、やはり常にきれいにしておくべきです。

売却に時間がかかる可能性がある

無人の建物を売却するのであれば、売買契約を結んでから引き渡し日までの期間を短く設定することが可能です。

もちろん修繕を前提に購入するという方などもいるため一概には言えませんが、一般的には売り手と買い手の間で引き渡し日を調整することができるはずです。

しかし、現在人が住んでいる建物は即入居することが不可能ですので、それが原因となって売買がうまくいかない可能性があります。

できるだけ早く入居したいという希望がある場合は、売買契約を結んでから早く行動しなければなりません。

人がいない不動産を売却するケース

それでは、人が住んでいない家やマンションを売却する場合はどうなのでしょうか。

空き家を売却するメリット

空き家を売却するメリットとしては、

  • 内覧を不動産会社に一任できる
  • 家族の都合を考えずに内覧してもらえる

などが挙げられます。

内覧を不動産会社に一任できる

住んでいる不動産の内覧では、現在の住人が内覧に立ち会うのが一般的ですので、建物の紹介なども売り手が自分でやらなければなりません。

しかし、空き家となっている建物や誰も住んでいないマンションを売却する場合は、不動産会社が内覧の手続きをしてくれるため、売り手が立ち会う必要がないのです。

つまり、売り手と買い手の双方のスケジュールを考えて内覧を組まなくてもよいため、内覧がスムーズにいきやすいです。

買い手のスケジュールがつかないことによって内覧を断るということもなくなるはずですので、内覧希望者が多くなり不動産が売れやすくなります。

家族の都合を考えずに内覧してもらえる

住んでいる家を内覧してもらう場合は、当然その家の現在の住人がいなければ内覧してもらうことができません。

そのため家族の予定を考える必要がありますが、そもそも誰も住んでいない不動産を内覧するのであれば、誰の都合を考える必要もなくいつでも自由に内覧してもらえます。

気軽に内覧できるというのは大きなメリットになり、それによって売却のスピードが上がる可能性があります。

空き家を売却するデメリット

空き家を売却するデメリットとしては、

  • 売却が完了するまで家賃がかかる
  • 掃除をしなくてもいいというわけではない

という点が挙げられます。

売却が完了するまで家賃がかかる

通常は、現在売却活動を行っている不動産が売れてから、その資金を元に新しい不動産を購入するという方が多いです。

そのため、普通は売却後に資金を手に入れ、そこから新しい家やマンションの購入資金をねん出するというのが一般的なのです。

しかし、売却が済んでいない状態で不動産を空き家にするということは、その間は賃貸物件を借りてそこで生活を送るということでもあります。

その場合は、売却活動が長引くほど無駄な出費が増えることになるため、資金に余裕を持たせておく必要があります。

なお、元々空き家となっている不動産を売却するのであれば、このようなデメリットは存在しません。

掃除をしなくてもいいというわけではない

現在住んでいる建物を売却する際には、生活を送りながらも常に不動産の内部をきれいにしておかなければならないため大変です。

しかし、誰も住んでいないからと言って掃除をしなくてもよいということではありません。

買い手の購買意欲を掻き立てるには、やはり少しでもその不動産が綺麗な方が良いですので、どちらにしても定期的に掃除をする必要は出てきます。

特に長年空き家となっていた建物は老朽化している部分も多いため、最初の清掃や修繕が大変になる可能性もあります。

ただし、住んでいる不動産の売却と比較すると、常にその住宅の施設を使うということがないため掃除の頻度は少なくて済むはずです。

住みながら不動産を売却する3つのポイント

それでは、現在住んでいる家やマンションをスムーズに売却するには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

  • 内覧はできるだけ断らない
  • 建物は常にきれいにしておく
  • 生活感を出しすぎない

早期の売却を成功させるには、最低でもこれらは押さえておくべきです。

内覧はできるだけ断らない

当たり前のことですが、内覧の数はその物件を購入してもらえるチャンスの数でもあります。

内覧を断るということは売却のチャンスを自ら潰しているということになりますし、当然チャンスが減れば不動産の売却も遅れてしまいます。

しかし、そこで生活を送っている以上は、都合のよい時間帯もあればそうでない時間帯も存在するはずです。

内覧をできるだけ断らないようにするには、

  • 不動産会社に予め確実に対応できる時間帯を伝えておく
  • 家にいる時間が短い場合は不動産会社に鍵を預けておく

これらを行うとよいでしょう。

例えば、土日であれば確実に開けられる、平日の18時以降ならいつでも家にいるというように、都合のよい曜日や時間帯を予め不動産会社に伝えておきましょう。

そうすれば、不動産会社もその時間を買い手に提示してもらえるため、買い手もその中から都合のよい時間帯を選ぶことができるはずです。

しかし、都合のよい時間帯が少ないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなときには、予め不動産会社に自宅の鍵を渡しておき、内覧希望者の都合のよい日時に勝手に内覧をしてもらうようにするというのも方法の1つです。

自分がいないときに他人を勝手に家に入れたくないと考える方もいるでしょうが、それで売却のチャンスが増えると考えるようにするべきです。

建物は常にきれいにしておく

せっかく内覧に対応したのに、家の中が散らかっているとその不動産の魅力を伝えることができません。

例えばキッチンやお風呂場などの水回りがカビだらけになっていると、いくらその他の設備が素晴らしくても購買意欲がそがれてしまいます。

もちろん内覧者も新築の物件を買うわけではないということはわかっていますが、どうせ購入するのであれば綺麗な物件の方がいいに決まっています。

綺麗にできる部分は綺麗にしておくことで、購入してもらえる可能性高めることができるでしょう。

なお、内覧前の掃除については「家やマンションの売却で内覧前にやるべき掃除のポイントと注意点」こちらも参照ください。

生活感を出しすぎない

住んでいる不動産を売りに出すメリットとして、家具や家財の配置から実際に住んだ時のイメージができるとお伝えしました。

しかし、家具や家財、その他の日用品などがそのままになっている状態は、生活感が溢れすぎていて返ってマイナスなイメージを与えることになります。

例えば、キッチンでキッチンペーパーやサランラップが放置されている、トイレでは棚にトイレットペーパーが山積みになっているといった状態は、買い手に悪い印象を与えます。

生活感を抑えるには、やはりモノを減らすということが大事ですので、掃除だけではなく整理整頓を徹底し、この機会に不要なものは全て処分してしまうようにしましょう。

住宅やマンションのモデルルームに行ったことがあるという方も多いと思いますが、あんな感じですっきりとスタイリッシュに見せることができればポイントが高くなります。

内覧時の対応で気を付ける3つの注意点

最後に、実際に内覧希望者が内覧に来た際の注意点を見ていきましょう。

においに気を付ける

長年住んでいる家には、そのご家庭独自のにおいがついていることも少なくありません。

特に、ペットを室内で飼っているご家庭では、知らず知らずのうちにそのペットのにおいが建物に付着していることも考えられます。

良いにおいは当然良い印象を与えますが、不快なにおいは不動産購入の見送りに直結するため、内覧時にはにおいに対して細心の注意を払いましょう。

内覧の前にルームスプレーを利用したり、消臭剤でにおい対策をしておくことをおすすめいたします。

質問の用意をしておく

当たり前のことですが、現在その不動産に住んでいる人が目の前にいるのであれば、住み心地をはじめとする様々な質問を投げかけられる可能性が高いです。

感覚では何となく説明ができると思っていても、いざ質問をされた場合に答えを用意しておかなければサッと回答することができません

余裕があるのであれば、周辺の地図を用意してそれを渡したり、町内のルールなどをまとめてプリントにしたりすると親切です。

そういった気遣いは印象をよくするため、買い手がその不動産を購入する決め手となることもあるのです。

また、なぜ売却を考えたのかという質問をされることも多いため、購入希望者を納得させられるような良い答えを考えておきましょう。

突然来た内覧希望者への対処

不動産会社の広告方法によっては、内覧希望者がいきなり自宅に訪ねてくることがあるかもしれません。

現在住んでいる家やマンション自体が商品となっている以上は考えられることですが、いきなり来たからと言ってそのまま内覧に移るのは極力避けるべきです。

不動産会社を通して不動産を売るという契約になっている以上、それをしてしまうと後々トラブルになってしまう可能性があるからです。

例えば、いきなりフラッと来た人物が実は内覧希望ではなく、強盗目的で建物に侵入してきたという考え方もできます。

また、媒介契約を結んでいるのに勝手なことをした場合、契約違反として不動産会社から賠償責任を請求されることもあります。

そのため、いきなり来た内覧者へは不動産会社と契約をしているという旨をきちんと伝え、個人的な対応をするのはやめましょう。

まとめ

現在住んでいる建物を売りに出すケースは多いですが、空き家の売却と比較するとデメリットになる部分も多く存在します。

しかし、反対に現在住んでいるからこそできることも多いため、その強みを最大限に活かすことによって早期の売却を成功させることができるはずです。

内覧の基本としては、やはり掃除を徹底して購入希望者に解体と思わせる物件づくりをすることが大切です。

人が住んでいる家ではそれが難しいと考える方も多いですが、可能な限り建物内をきれいにし、また内覧者からの質問にしっかりと答えられるようにすることで、売却がうまくいきやすくなります

もちろん、スケジュールの都合がつかない場合は内覧の申し出を断ることができます。

しかし内覧を断るとその分売却が遠ざかるため、できる限り内覧を受け入れて早く売却してしまうとよいでしょう。