一戸建てや土地を売却しようとしていたら、自分の土地に隣人のエクステリアの一部や隣人の家に生えている樹木の一部がこちらの土地に入り込んでいたことが発覚することもあります。
もちろん基本的にはこちらに非がありませんし、隣人の建物が無断で侵入しているということですので、通常はそれを伝えることで取り除いてもらえることが多いです。
しかし、例えば樹木から枝が出ているといった程度であれば簡単に対処できるかもしれませんが、造ったばかりの塀がこちらの土地にはみ出しているというような場合はどうでしょう?
隣人は隣人で自分の土地だと思ってその塀を建てた可能性が高いですし、こちらも土地や戸建てを売却するまでそれに納得していたということになります。
何より、せっかく高いお金を支払って造ったのに、それをすぐにどけろというのは大きなトラブルになるリスクも否めません。
そういった所有者の違う土地をまたぐ現象のことを隣地越境と言いますが、その場合はどのように土地や戸建てを売却することができるのでしょうか?
この記事では、隣地越境の様々なケース、その一戸建てや土地を売却する方法などについて紹介させいただきます。
よくある隣地越境の3つのパターン
それでは初めに、どのような隣地越境があるのかを見てみましょう。
様々なケースが考えられますが、
- 建物やエクステリアの一部が越境している
- 地下の配管が越境している
- 樹木が越境している
大きくこのような3つのケースに分けられます。
建物やエクステリアの一部が越境している
これは
- 母屋の一部が越境している
- エクステリアが越境している
の2つに分類できます。
母屋の一部が越境している
建物の越境と言っても様々なものがありますが、意外と多いものが住宅の屋根や雨どいが土地を越えて侵入しているケースです。
建物の床部分は土地を超えることなく問題なく建てられているのですが、その上部分の屋根は建物の床に比べて大きめに作ることが多いです。
それを考えずに敷地面積ギリギリで建物が建てられていると、どうしても上部が隣地に越境してしまうことになるため、それが問題となるケースも少なくありません。
もちろん普段の生活で困ることはないのかもしれませんが、実際に土地を貸し出したり売却したりする際には土地の範囲を明確にする必要があるためトラブルになりがちです。
例えば郊外の広い土地に家を建てるような場合はめったに発生しないケースですが、住宅地で住居が密集している場所では注意しなければなりません。
エクステリアが越境している
住居の一部ではなく、住居の外部に建てられるエクステリアが越境してしまうというケースも少なくありません。
塀やフェンスなどの建物の周りを囲う外構では、通常はその敷地の一番外側に建てられることになりますが、設計ミスなどでその一部が飛び出てしまうことがあります。
例えば、隣家のブロック塀の外側が全てこちら側に飛び出ているというようなこともあり、それにこちらが気が付かない場合は何年もそれが続きます。
しかし、いざ土地の測量をしてみると、実はそのエクステリアのはみ出ている部分の一部がこちらの土地だということがわかるケースもあるのです。
隣人との関係が良好であれば、後述する対処法によって穏便に済ませられる問題ですが、関係が悪いとそれが原因で大きなトラブルに発展することもあるため注意が必要です。
地下の配管が越境している
先ほどは建物の上部の空間に関する越境でしたが、逆に地面の下が越境しているというケースも珍しくはありません。
実際に、家が密集しているような地域では、他人の土地の下に上下水道の配管が設置されていたりするケースもあり、これは土を掘ってみるまで誰も気が付きません。
例えば、隣人が50年前に家を建てた際に、当時のこちらの土地の所有者に地下を使わせてくれるように承諾を取っているというケースもあります。
しかし、逆にそのような承諾を取らずに勝手に利用していることも考えられますが、例えばそれが口約束だった場合は何が真実かを判断できません。
仮にきちんとした書類が交わされているのであれば、所有者が大切に保管していたり役所に承諾書などが残っていることもあります。
しかし、そういった証拠となるものが全く残っていないのであれば、売却するにあたっては隣人ときちんと話し合う必要があるのです。
これは、隣地の配管がこちらに越境している場合だけではなく、こちら側の家の配管が隣地に越境しているケースも同じことが当てはまります。
樹木が越境している
庭に植えられている樹木が隣地に越境し、それがトラブルになるというのはよく聞く話です。
樹木の越境については、大きく
- 地上部分(枝など)が越境している
- 地下部分(根)が越境している
の2つに分類できます。
地上部分(枝など)が越境している
枝などが越境していたとしても特に気にしないという方も多いですが、実がなる木の場合はその実がこちら側の土地に落ちて腐敗し悪臭をまき散らすこともあります。
また、秋になると大量の落ち葉がこちらの土地の外構に散らばって掃除が大変になるというケースも少なくありません。
一般的には、枝などが境界線を越える場合は、その樹木の所有者に切断を要求することができますが、反対にこちらが勝手に切ってしまうのは違法となります。
例えこちらの土地に侵入していたとしても、その所有者は隣人ということになるため、必ずお隣さんに切り取ってもらうようにしましょう。
地下部分(根)が越境している
木の枝などは簡単に解決できる問題かもしれませんが、逆に木の根っこは所有者が自由に切り取ったりするのが難しいですし、どのように広がっていくのかもわかりません。
実際に、地下の見えないところでいつの間にか根っこが越境しているというケースもありますが、根っこの場合は枝とは異なり隣人のものであっても勝手に切り取ることが可能です。
つまり、法律上は隣家に植えた樹木の根っこが自分の所有する土地に入ってきたら、その根っこ部分だけは自分に所有権があるとなるのです。
そのため自由に切り取ってしまうことは可能なのですが、根を切断することで樹木全体が傷んだり枯れてしまう可能性がないわけではありません。
そういったことが考えられるため、一般的には根に関しても隣人に事情を話し、了承を得た上で切り取るというケースが大半です。
隣地越境の問題を解決するための3つの方法
隣の建物などが土地を越えて侵入してきているような土地は、売却活動に大きな影響を与えます。
実際に、隣地越境をしている土地は、その問題を解決しなければ売却しにくいというのが現状です。
それでは、その越境問題はどのように解決することができるのでしょうか。
スムーズな解決方法としては、
- 越境している物質の撤去
- 境界線を変える
- 将来撤去の覚書を作成
の3つが挙げられます。
越境している物質の撤去
最もスムーズにいく解決方法が、越境している建物や樹木などを隣人に取り除いてもらうという方法でしょう。
隣人に土地や戸建てを売却するという事情を話し取り除いてほしいという話に承諾してくれれば、すぐに実行できることですし、それであれば買い手の気を煩わせることもありません。
ただし、樹木の枝を切り取る程度であればすぐに解決しそうですが、建物の一部やエクステリアなどの撤去は簡単な話ではありません。
撤去するということは、要するにそれを壊すということになるため、話をまとめるのには時間がかかりそうですし、売却時期にも影響してしまいます。
もちろんこちらの土地を勝手に使っているわけですから場合によっては強く出ることも可能ですが、それによって隣人とトラブルになってはますます売却しづらくなります。
また、例えば他人の土地だと知らずに10年以上占有していれば、時効取得が成立しその土地が隣人のものになってしまうことも。
そのためご自身の土地を守るためには、隣人と穏便に話し合い、お互いが納得する解決策を見つけていく必要があります。
境界線を変える
もう1つの代表的な方法として、隣地との境界線を越境している部分まで引っ込めてしまうというものが考えられます。
建物やエクステリアが越境していて撤去が難しい場合は、売却する土地をその越境部分の内側にしてしまうことで、問題なく売却できるはずです。
ただし、そのひっこめる面積によっては売却価格に大きな影響を与える可能性も出てきますし、それが原因で得られるお金が減ってしまうというリスクも考慮しなければなりません。
しかし、隣人との話し合いによって、その越境部分の土地を買い取ってもらうことができれば、全く問題なく穏便に片づけられるはずです。
将来撤去の覚書を作成
越境した部分があり、それを直ちに取り除くことができないような場合は、将来撤去の覚書を締結することも多いです。
越境問題の根本を解決したことはなりませんが、その覚書が将来的に問題を解決するという証明となるため、それがあれば売却活動もうまくいくはずです。
将来撤去の覚書とは隣地の所有者が越境しているということを確認した上で締結する書類
将来撤去の覚書とは「売却しようとしている土地の所有者、それから越境している隣地の所有者が越境しているということを確認した上で締結する書類」です。
覚書を作成することによって、
- 時効取得の成立を未然に防ぐ
- 覚書が証明書となるため売却活動がスムーズにいく
- 隣地が建て替え、売却をする際などに越境の撤廃を約束する
などのメリットが得られます。
ただし、当然こちらの土地の所有者と越境している土地の所有者がお互いに覚書の内容に納得するということが前提となるため、隣人トラブルがあるような場合は難しいです。
しかし、実際に越境問題を抱える土地や一戸建てを売却するには、実務的にはこの将来、撤去の覚書を結ぶことで了承してもらえることが多いです。
それでは、将来撤去の覚書はどのような内容で作成すべきなのでしょうか。
将来撤去の覚書の内容
重要な部分が抜けていると覚書としての意味を果たさないため、基本的には覚書に以下の内容を組み込むことになります。
- 建物やエクステリアなどの、どの部分が具体的にどのようにどれくらい越境しているかを確認する
- 越境している部分を形成する建物を将来取り壊して再建築するまでは、このままの状態にしておくことを認める
- 再建築をする際には、越境している土地の所有者が責任を持って越境部分を撤去する
- こちらの土地を売却して買い手に所有権が渡ったとしても、この覚書をそのまま引き継ぐ
- 越境している土地の所有者が第三者にその土地をそのまま譲る場合も、その買い手に覚書をそのまま引き継いでもらう
これらを記載した上で、双方の土地の所有者が署名押印をすれば感性です。
いずれにしても隣人の協力なしには解決しえない問題ですので、日ごろからの関係性を保っておくのは重要だということがわかります。
まとめ
やはり物理的に越境部分を撤去してもらうのが、越境問題を解決する最もスムーズな方法と言えます。
しかし状況によってはそれが難しいという場面も多いため、スマートに将来撤去の覚書を締結して問題を解決するという方も少なくありません。
いずれにしても、隣地越境がある一戸建てや土地は普通に売却活動を行うことができないため、まずは隣人と話し合ってその問題を解決する必要があります。
もちろん売却活動を続けることも可能ですが、いざ買い手が見つかって隣地越境があるということが発覚した場合は、急いで解決しなければなりません。
余裕を持って売却活動を行うには、最初の段階で売却する商品のことをしっかりと把握しておくのをおすすめします。
一戸建ての査定をするだけでなく、事前に土地の範囲をはっきりとさせることができれば、余裕を持って売却活動に専念できるはずです。