外構工事とはどのような工事なのか、どのような特徴があるのか、また、何のために外構工事をするのか、まずは外構工事の基本を確認しておきましょう。
外構工事とは
建物の周囲の門や塀、駐車場などを外構(がいこう)といいます。
外構工事とは、文字どおりこれらの外構を建築する工事です。
なお、建物の内装を「インテリア」と呼ぶのはおなじみですが、これに対し、建物の外部の装飾ですので「エクステリア」という呼び方もあります。
なぜ外構工事が必要なのか
建物の建築といえば、建物そのものやその内装(インテリア)に目が行くものですが、実は、外構工事の意義は大きいです。
通常、建物が完成してから外構工事に取り掛かりますが、建物が完成しても、庭や塀がないとどんなに立派な建物でも殺風景で寂しく見えるものです。
このほか、外構には次のような機能もあります。
敷地の境界の役割
通常、塀やフェンスは敷地の境界上に設置します。
境界上に塀やフェンスを設置することによって、隣家の敷地との境界の役割を果たします。
プライバシー保護
塀やフェンス、植え込みによって外部からの視界を遮ることができ、これによって建物内部のプライバシーの保護が図ることも可能です。
防犯
塀や門扉があると、心理的には内部に入りづらくなるものです。
人間のこのような心理から、外構は防犯の機能も果たします。
⇒住居の犯罪対策は大丈夫?防犯に強いおすすめのエクステリアについて
外構工事の種類(配置方法による分類)
外構には門、塀・フェンス、駐車スペースなどがあります。
これらの外構物をどのようなバランスで配置するか、という面に着目して
- クローズド外構
- オープン外構
- セミクローズド外構
と分類することがあります。
1つずつ順番に解説しましょう。
クローズド外構
クローズド外構とは、塀やフェンス、生け垣などによって、建物の周囲をグルっと囲ってしまう外構のことをいいます。
塀などを設置することで、敷地の「内と外」が明確に線引きされ、外部と閉ざされた格好になるため「クローズド」と呼ばれます。
クローズド外構のメリットとデメリット
周囲が囲まれていると、なんだか敷地内に入りづらい、という感覚になります。
クローズド外構は、こうした防犯性を高める作用があります。また、視線をさえぎる障害物を設置することでプライバシー保護が図れるというメリットもあります。
これに対し、塀や生け垣、門などで建物の全周を囲うため、その分だけ外構工事の費用が高くなるのがデメリットです。
また、障害物が増えてプライバシー保護に役立つ一方で、不審者が侵入しても目立たなくなってしまう、という欠点もあります。
⇒クローズ外構のメリット・デメリット。設置する際のポイントや注意点
オープン外構
塀やフェンスで囲ってしまうクローズド外構に対し、塀やフェンスで建物の周囲を囲わず開放的なのがオープン外構です。
「門構え」という言葉があるように、かつては門を設置する家が多くみられましたが、都市部では狭小地も多く、門や塀を立てないオープンな外構も多くなってきました。
オープン外構のメリットとデメリット
オープン外構では塀や生け垣等の外構物が少ないので外構工事の費用が安く済むのがメリットです。また、建物を囲い込まないため、全体的に開放的な印象になるという利点もあります。
さらに、周囲に障害物がなく、敷地内に立ち入ろうとするとかえって目立つため、クローズド外構よりも、むしろ防犯性に優れる、という評価もあります。
これに対し、塀などの周囲からの視線を遮る障害物がないため、外部から敷地内の様子が丸見えになり、プライバシー保護の点で難があるというのがデメリットです。
⇒開放的なオープン外構の特徴と気になるメリット・デメリットについて
セミクローズド外構
クローズド外構とオープン外構の中間にあるのが、セミクローズド外構です。
つまり、周囲の一部は塀やフェンスで囲い、一部は囲いを設けずにオープンにする外構です。
セミクローズド外構のメリットとデメリット
「中間」といっても幅があるので、どの部分をクローズドにして、どの部分をオープンにするかによって、工事費用、プライバシー保護や解放感等のメリットとデメリットも変動します。
外構工事の種類(設置する構造物別)
次に、外構工事の個々の構造物について解説します。
外構工事では、これらすべてを設置するわけではなく、好みや予算に応じて自由に組み合わせて設置することができます。
塀
一口に「塀」といっても、コンクリートブロック、タイル、レンガなど塀に用いる材料はさまざまです。また、材料によって金額も変わってきます。
防犯やプライバシー保護のためにブロック塀を高くすることも考えられますが、塀の高さは建築基準法によって制限があるので注意が必要です。
たとえば、レンガや石で組み上げた塀は1.2M以下、ブロック塀の場合は2.2M以下でなければなりません。
⇒エクステリアにブロック塀を設置するメリット・デメリットと価格相場
フェンス
フェンスも塀と同様、材料はさまざまです。
アルミ、ステンレスなどの金属素材に、ポリカーボネイトやFRPなどの樹脂板の組み合わせたものなど、デザインも多様化しています。また、木製や鋳物製もあります。
⇒エクステリアのフェンスを設置する際のメリットと設置費用について
生け垣
植える樹木によって趣も異なるほか、刈り込み方によって形状や高さを変えられるという特長があります。
ただし、ブロック塀やアルミフェンスであれば、比較的長い間メンテナンスの必要がないのに対し、生け垣の場合は樹木の成長に応じてこまめな手入れが必要になります。
また、通常は植木職人でなければ手入れできないため、継続的にメンテナンスのコストがかかります。
駐車スペース
何台分を確保するか、家に向かって縦列で駐車するか並列で駐車するかなど、駐車方法にもバリエーションはさまざまです。
また、駐車スペースに屋根を付けるか付けないかという選択肢もあります。
屋根付きカーポートは、愛車を風雨や紫外線から守り、子供の遊び場に使えるなど何かと便利ですが、屋根があることで建物の面積にカウントされる可能性があります。
そのため、建ぺい率の規制ギリギリで建物を建てる場合には、建ぺい率オーバーにならないよう注意が必要です。
⇒カーポートを選ぶ際の3つのコツと業者選びの重要なポイントについて
またこれ以外にもたくさんの種類の外構工事があるので、気になる方はこちらの記事も見てみてください。
⇒人気のエクステリア特集!おすすめのエクステリアの種類と選ぶコツ
法令や環境による制限
外構工事は自由に組み合わせができるため、建物の建築より自由度は高いといえますが、建築基準法などの制約を受ける場面もあります。
また、周辺環境との兼ね合いから一定の制約を受ける場合や、近隣との調和を考えて配慮が必要となる場合もあります
法令上の制約
法令によって、以下のような制約があるので覚えておくことをおすすめします。
用途地域
都市計画法という法律によって、市街地は12種類の区分があり、敷地のうちどの程度まで建物を建てられるか(建ぺい率)について制限があります。
つまり、敷地のうち建物が占める面積に上限があるため、必然的にその残り部分が外構にあてられる面積となります。
特に、先ほど説明した屋根付きのカーポートは、建物として建築面積にカウントされる場合もあるので注意が必要です。
条例や建築協定
景観の維持や防災の目的で、外構工事について規制がある地域などがあります。
条例や協定は建築する地域によって異なるため、このような規制がないか、外構工事業者に事前に確認してもらいましょう。
たとえば、塀やフェンスに使用する素材やデザインに制限がある場合や、ブロック塀ではなく生け垣にしなければならない地域などもあります。
環境上の制約
法律や条例による規制がないとしても、周辺環境との兼ね合いで、できれば避けた方が望ましいものもあります。
たとえば、「ここにはこの木を植えたい」と希望しても、樹種によっては日照が弱いと枯れるものもあるため、希望どおりにならないこともあります。
また、外構は自分の敷地内だけの問題ではなく、近隣との調和も考える必要があります。
以前、有名マンガ家が奇抜な色とデザインの自宅を建築して、近隣住民と裁判になったことがありましたが、いくら自分の好みとはいえ、周辺環境との調和を無視した色やデザインを採用するのは避けるべきでしょう。
このほか、隣から家の中が見通せる配置になっている場合などは、敢えて、視界を遮るように塀やフェンスを構築することもあります。
外構工事の流れ
それでは、最後に外構工事の流れを紹介します。
ちなみにここでは、建物の新築にあわせて外構工事を行うケースを想定していますが、「外構のことは家が完成してから考えよう」というのでは遅すぎます。
建物の足場が撤去されれば外構工事をスタートできるので、そこから逆算して数か月前からプランを検討するようにしましょう。
外構工事の構想をまとめる
先に説明したとおり、法令や環境上の制約を受ける場合もありますが、外構工事は建物の顔です。
ただ、現在は外構に関する書籍も多くあり、インターネットによる情報収集も容易になっているので、どのような外構にしたいのか、まずは自分で構想してみましょう。
外構工事業者の選定
外構工事をどこに依頼するかについては、別章で詳しく解説しますが、ここでは、専門の外構工事業者に依頼するケースを想定してください。
まずはいくつかの外構工事業者に候補に絞り込みましょう。
⇒外構工事(エクステリア)業者を見極めるための失敗しない5つのポイント
見積りを依頼する
外構工事業者をいくつかに絞り込んだら、見積り書の作成を依頼します。
なお、見積りの方法や見積もりの見方については、別章で詳しく説明します。
⇒外構工事の見積書で見るべき4つポイントと相見積もりの依頼について
外構工事の契約を締結する
外構工事業者を依頼する最終の1社を決定したら、外構工事の契約締結です。
契約書についても別章で詳しく説明します。
工事開始
建物の工事中は、建物の周囲に足場が組まれているため、そもそも外構工事ができません。
つまり、建物の足場が撤去されたときが外構工事のスタートなのです。
ただし、住宅メーカーによっては、建物の工事が完了し、建物の引渡しまで外構工事の着手を制約する場合があるので、事前に確認が必要です。
完成引き渡し
建物の工事であれば、上棟して屋根ができれば雨でも内装工事を進めることができますが、外構工事は基本的に屋外作業ですので、天候不良が続くと工期がずれる可能性があります。
完成・引き渡しから一定期間は、不具合があれば外構工事業者に手直しを依頼することもできますが、基本的に自身でメンテナンスしていくことになります。
まとめ
外構工事は、建物の新築と同様に、どのような素材を使うか、どのように配置するかなど、無限のバリエーションがあります。
数百万円はかかる工事ですから、外構工事に関する基本的な知識を身につけて、十分な検討時間を確保して、後悔がないようにしてください!