不動産を売却する際には、売った額がそのまま手元に入ると思われている方もいるのではないでしょうか。
例えば不動産会社を仲介して不動産を売った場合には、仲介手数料を支払わなければならないということをご存知な方は多いはずです。
しかし、実は不動産の売却には仲介手数料以外にも様々な経費が必要になってくるのです。
中には、不動産売却によって利益を得る方もいますが、利益をがある場合は税金も支払わなければなりません。
今回は、不動産を売却するにあたって必要な経費を紹介させていただきます。
諸費用のトータルが分かると資金計画も立てやすいので、正確に諸費用を把握できるよう、この記事では重要な7項目を解説します。
目次
不動産会社に支払う仲介手数料
不動産を売却した時にかかる費用のうち大半を占めるのが、不動産会社に支払う仲介手数料です。
通常、不動産を売却するときには、不動産会社に売却を依頼して買主を探してもらいます。
そして、無事に買主が見つかり、不動産の売買契約を交わすことができたときに不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。
もちろん、自力で不動産の買主を探し出せば、仲介手数料はかかりませんが、自力で買主を見つけるのはかなり難しいでしょう。
個人が第三者を相手に不動産の売却をするのは非常に難しいです。
そのため、売却相手に心当たりをがあるような方は除き、ほとんどの方が売却時に不動産会社を利用します。
そして、不動産会社に仲介をしてもらうことで売買契約が成立した場合は、その不動産会社に報酬を支払います。
それを仲介手数料と呼んでいます。
売却価格 | 報酬額の上限 |
200万円以下 | 取引額の5% |
200万円超400万円以下 | 取引額の4% |
400万円を超える金額 | 取引額の3% |
仲介手数料に関しては詳しくはこちらの記事でも解説しております。
仲介手数料は安くできる?
売り手からすると、仲介手数料は少しでも安く抑えたいコストの1つということになるはずです。
また、中には上限ぎりぎりではなくもっと安くしてほしいという方もいるのではないでしょうか。
利用する不動産会社に相談することによって、仲介手数料が安くなるケースもあります。
しかし、上限いっぱいでもらうというところも少なくありません。
実際に、不動産会社は売却による仲介手数料によってビジネスを成り立たせているため、その仲介手数料から家賃や人件費、広告費などを支払うことになります。
仲介手数料を削るということは、その分の経費をどこかで削らなければならないため、手数料の値引きは現実的に難しいと答える不動産会社も多いはずです。
仲介手数料が無料なケースもある
例えば、同じ不動産会社が買い手だけではなく売り手も見つけてきた場合、その不動産会社は売り手と買い手の双方から仲介手数料を取ることができます。
上記の通り、1500万円のマンションの売買契約を成立させた不動産会社への仲介手数料は約50万円です。
しかし、売り手も買い手も同じ不動産会社が見つけてきた場合は次のようなことが可能となります。
不動産会社の取り分 | 売り手の仲介手数料 | 買い手の仲介手数料 |
100万円 | 50万円 | 50万円 |
50万円 | 25万円 | 25万円 |
50万円 | 0円 | 50万円 |
1500万円のマンションの売買が完了したら、普通は不動産会社の取り分が50万円程度ということになります。
そのため、もし売り手と買い手の双方から手数料を受け取れるというケースになった場合、
- 双方の手数料を半額にする
- どちらかの手数料を無料にする
ということにしても同様に50万円の手数料を受け取れることになります。
中には、自社で買い手を見つけることができなかったとしても、売り手の仲介手数料を半額にしている業者も存在します。
その場合は、単純に買い手からもらう報酬が半減することにより、その会社の利益が半分になります。
反対に、買い手と売り手の両方から満額の手数料を受け取る不動産会社も存在します。
仲介手数料の支払い期限
一般的には、不動産の売買契約が成立した時点で売り手から不動産会社に支払うのが仲介手数料です。
成功報酬になるため、買い手との売買契約を締結し、その買い手から売却金額の支払いを受け取ったら手数料を支払うことになります。
ただし、この辺りは不動産会社によってルールが異なることもあり、中には契約時に半額、不動産の引き渡し時に残金を支払うとしているところも存在します。
ただし、基本的には契約が決まる前に仲介手数料を支払う必要はありませんので、万が一契約前にその支払いを促されたら理由を聞いてみましょう。
不動産の売買契約書にかかる印紙税
不動産を売却する際には、売り手は買い手との間で売買契約書を交わすことになりますが、この契約にはお金のやり取りが伴います。
お金のやり取りが発生する契約書などの文書は課税文書と呼ばれ、印紙を貼ることによってその文書が本当に大丈夫なものだという証明をすることになります。
その文書を信用させるための、国が定めた法律にのっとっているという証明が印紙になり、その信用を作ってくれた国に対して納める税金が印紙税です。
ビジネス取引の中で契約書や領収書などの文書を作成しますが、印紙税は、この作成された文書自体に課税されているのです。
印紙税の料金
先ほどの仲介手数料と比べると、印紙税は安く抑えることができます。
契約金額 | 印紙税額 |
1万円未満ののもの | 非課税 |
1万円超10万円未満のもの | 200円 |
10万円超50万円以下のもの | 200円 |
50万円超100万円以下のもの | 500円 |
100万円超500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円超1億円以下のもの | 3万円 |
1億円超5億円以下のもの | 6万円 |
5億円超10億円以下のもの | 16万円 |
10億円超50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
金額の記載がないもの | 200円 |
例えば1500万円のマンションを売った際には、印紙税は1万円となります。
しかし、売買契約書は売り手と買い手の双方が保管するために2通作成されることになるため、その2通分の印紙税がかかります。
このケースでは、通常は買い手と売り手が1万円ずつを負担することになります。
印紙の入手方法
一般的には、印紙は郵便局で購入する方が多いですが、売買契約までに買い忘れてしまうというケースも少なくありません。
平日の日中に、不動産の売買契約を締結するのであれば問題ありません。
しかし、夜間や祝日などの郵便局のやっていない時間帯に行う場合は、忘れずに前もって用意しておくことをおすすめいたします。
ただし、郵便局によっては営業時間外に購入できるところもありますし郵便局以外にも売っているところはあるため、不動産会社に確認してみるとよいでしょう。
印紙税の課税対象
印紙税法では、20種類の文書を「課税文書」として指定しています。
そして、不動産の売買契約書もその課税文書の一つに指定されているため、不動産の売買契約書には収入印紙を貼らなければならないのです。
売買契約書に貼る収入印紙の額は、売買金額によって変わります。
現在は軽減措置で印紙税の額が低くなっていますが、軽減措置が終わるとまたもとの金額に戻る可能性があるので注意してください。
参考:国税庁ホームページ
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
印紙税の納め方
印紙税は、作成した課税文書に収入印紙を貼り、「消印」を押すことで納税したことになります。
要するに、売買契約書に収入印紙を貼り、消印を押せば「納税」したことになるのです。
実務上は、売主と買主の双方が収入印紙に押印していますが、印紙税法上は、契約者のどちらか一方の消印があれば構いません。
ちなみに、印紙に押す印のことを「割印(わりいん)」と呼ぶ人が多いのですが、これは誤用で、正しくは「消印(けしいん)」です。
一般的に「消印」といえば、郵便物に押された日付印をイメージする人が多いと思いますが、まさにあの消印と同じです。
印紙税は売主と買主のどちらが負担する?
印紙税は、文書の「作成名義人が負担する」という決まりになっています。
不動産の売買契約書は、売主と買主が共同で作成する文書ですので、売主と買主の両方が作成名義人です。
したがって、売主用と買主用で1通ずつ売買契約書を作った場合、特に取り決めがなければ、契約書に貼る印紙代は売主と買主がそれぞれ負担します。
印紙税の節税
印紙を貼った売買契約書は、通常は原本を2通作成して売り手と買い手の双方が保有する必要があります。
しかし、契約後にその不動産の所有者となる買い手は原本を持っている必要がありますが、売り手が受け取るのはその契約書のコピーでもかまいません。
買い手は契約後も売買契約書が必要になる場面が何かと出てきますが、売り手は売ってしまった不動産の契約書など使うことがないため、コピーでも問題ないのです。
そのため、印紙を貼った契約書をコピーし、原本を売り手が、コピーを買い手がそれぞれ所有することで、必要な印紙税を半額に抑えることができるのです。
その際には契約書の条項を付け加える必要がありますが、ここは担当した不動産会社に確認を取りつつ間違いのないように進めていきましょう。
不動産登記にかかる登記費用(登録免許税)
登録免許税とは、不動産登記にかかる税金です。
不動産を売買すると、所有権の移転や抵当権の設定などを登記しなければなりません。
これらの登記をするために、法務局に登記申請書を提出しますが、登記申請書に貼る収入印紙代が登録免許税なのです。
売主が負担する登録免許税
不動産を売却するときに売主に登録免許税がかかるのは
- 抵当権抹消登記
- 住所変更登記
くらいしかありません。
しかも、住所変更登記も抵当権抹消登記も登録免許税は定額制で、土地・建物ごとに一律1000円なのでかなり安い金額です。
抵当権抹消登記
売却しようと思っている不動産の購入時に、住宅ローンを利用したという方も多いのではないでしょうか。
その際は、担保として抵当権を設定することになります。
もちろん抵当権の付いた不動産を売却することも可能ですが、通常はそんな不動産を購入したいという人はいません。
そのため、実際にその不動産を引き渡すまでに売り手が抵当権を抹消しておくのが一般的です。
住宅ローンが残っている物件は、買い手から支払われた代金で残金を一括返済することになりますが、だからと言ってその抵当権が自然になくなるというわけではないのです。
そのため、その抵当権の抹消登記をする必要があり、そこで経費がかかってきます。
これが抵当権抹消登記です。
- 自分で手続きを行う場合は2000円~3000円程度
- 司法書士にお願いする場合は追加で5000円~1万円程度
の報酬を支払う必要があります。
住所変更登記
売買契約をする際に、現在の住所と登記簿上の住所が異なる場合は、住所変更登記を行わなければなりません。
不動産の売買などによってその所有権が変わる場合は、その不動産に対しての所有権移転登記が必要になってきます。
しかし、売り手、買い手ともに、現住所と登記簿上の住所が異なる場合は所有権の移転登記ができないため、その前に住所変更登記をすることになります。
こちらも自分でやる場合は2000円~3000円程度になりますが、司法書士を利用する場合は追加で1万円程度の報酬を支払います。
買主が負担する登録免許税
不動産を売却すると、不動産の所有権は売主から買主に移ります。
所有権が売主から買主に移った場合、買主が「所有権移転登記」をしなければなりません。所有権移転登記の登録免許税は買主の負担です。
所有権移転登記の登記免許税は、不動産価額(売買金額ではなく固定資産評価額です)に対して2%の税率です。
例えば、固定資産評価額1000万円の土地を売買した場合、所有権移転登記にかかる登録免許税は20万円です。
ただし、平成31年3月末までは軽減税率が適用され、不動産価額に対して1.5%となります。
登録免許税の負担は、実は買主の方が重いのです。
譲渡所得税(所得税・住民税)
印紙税と登録免許税は、少額とはいえ不動産を売却すると必ずかかる税金です。
これに対し、所得税と住民税は、不動産を売却して「利益」が出た場合にだけ発生します。
所得税も住民税も、課税の考え方は基本的に同じなので、所得税をもとに解説します。
所得税の税率は高い
所得税の税率は、不動産を取得してから売却するまでの期間によって2通りあります。
※税率は年度によって変わるので注意してください。
短期譲渡所得の場合
不動産を取得してから5年以内に売却した場合の譲渡所得を「短期譲渡所得」といいます。
税率は30.63%です。
長期譲渡所得の場合
不動産を取得から5年超で売却した場合の譲渡所得を「長期譲渡所得」といいます。
税率は15.315%です。
不動産の売却による「利益」とは?
さて、所得税の税率は非常に高いことが分かりましたが、所得税が課税されるのは、あくまで不動産の売却によって「利益」が出た場合だけです。そこで、不動産売却の「利益」について解説します。
私たちが経済活動で得る利益のことを「所得」といいます。
所得税法では、
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
上記の10種類の「所得」に対して課税する、と定められています。
このうち、不動産を売却して得る利益が「譲渡所得」です。
例えば、不動産を3000万円で売却すると、売却代金3000万円が手に入りますが、この3000万円が「譲渡所得」となるとは限りません。
もし、過去に4000万円で購入した不動産だったらどうでしょう。
過去に4000万円で買った不動産を3000万円で売るのですから、売却による譲渡所得は「0円」です(正確にはマイナス1000万円)。
要するに、買ったときより高く売れると譲渡所得になり、そこ金額に15%や30%といった所得税が課税される、というわけです。
しかし、現実的にはよほどの人気物件や人気エリアでもない限り、不動産が買ったときより値上がりすることはほとんどありません。
もし、譲渡所得がある場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。
必要に応じて支払う様々な3つの経費
仲介手数料と印紙税は、不動産の売却に必ず必要になってくる費用になります。
ここからは、ご家庭によって必要になる可能性のあるコストを紹介していきます。
逆に言えば、条件がそろっていればここからのコストは支払う必要がないということです。
- 測量費用
- 引っ越し費用
- 繰り上げ返済手数料
代表的な部分でこの辺りのコストが必要になってくるため、詳しく見ていきましょう。
測量費用
マンションを売却する際には不要ですが、戸建てや土地を売却する際にはかかる可能性のあるコストです。
隣地との境界が不明な場合は、その境界線をはっきりとさせるために、土地家屋調査士に土地境界確定測量を依頼する必要があります。
特に土地価格の高いエリアでは、境界を確定して実測面積の売買をするのが一般的になっているため、その際には測量をしなければなりません。
その土地の広さによって費用は変わってきますが、測量をした土地家屋調査士に支払う報酬額は30万円程度が平均だと言われています。
引っ越し費用
住んでいる家を売却する際には、引き渡しまでに引っ越しをしておかなければなりません。
引っ越しに伴って業者を利用する場合には引っ越し費用がかかってきますし、ハウスクリーニングなどの費用も必要になってきます。
また、仮にそのマンションなどに住んでいなかったとしても、家財が残っている場合は不用品回収費用などが必要です。
繰り上げ返済手数料
繰り上げ返済手数料とは、売却する不動産に住宅ローンが残っていて、売却時に一気に繰り上げ返済をする際にかかってくる手数料のことです。
その住宅ローンを利用する金融機関によってその手数料は異なりますが、最近は手数料を無料にしている銀行もありますし、一概にいくらとは言えません。
事前に金融機関に問い合わせるか、ウェブサイトで確認しておく必要があります。
リフォーム費用は原則考えないで計算する
結論から先に述べておくと、原則としてリフォーム費用は考えなくてよいでしょう。その理由は2つあります。
リフォームの効果が分からない
マンションや戸建住宅を売り出すときに、リフォームしてから売り出すことを勧める人も多いのですが、実のところリフォームしたから売れたのか、その効果は分かりません。
また、リフォームの効果があったとしても、リフォームにかけた費用の分だけ高く売れるかどうかの判断は難しいです。
例えば、売却予定の建物を200万円かけてリフォームするとします。
たしかに、リフォームすることで建物はきれいになりますが、200万円かけてリフォームしたからといって、リフォームしなかった場合より200万円以上高く売れるとは限りません。
買ってからリフォームする人が増えている
最近では、中古物件を買って好みのリフォームをしたり、「リノベーション」といって全面的な改装をする人も増えています。
このような人々にとって、リフォームされて、その分だけ売値が高くなった物件はかえって困るのです。
ハウスクリーニング費用
上記でも紹介したハウスクリーニングですが、売却に合わせてリフォームする必要性は低いですが、ハウスクリーニングはおすすめです。
やはり室内の清掃が行き届き、清潔感がある方が、購入希望者の印象もよくなるからです。
もちろん、ハウスクリーニングは自力でやればタダですが、専門業者に依頼してもせいぜい数万円くらいです。
専門業者に頼んだ方が仕上がりもよくて、コストパフォーマンスが高いのではないでしょうか。
まとめ
不動産を売却した場合にかかる諸費用の大半は仲介手数料です。
しかし、そのほかにも細々とした出費があるので、思わぬ出費で泣きをみないように、事前にしっかりと計画を立てておきましょう。