新しく家を建てようと思っている方の中には、上物の付いた土地を購入するという方もいらっしゃいます。
建物としての価値はないですが、土地を購入するよりも割安になることも多いため、人によっては建物の付いた土地の方がメリットがあるのです。
しかし一方で、解体工事をすることを前提にその土地を購入する場合は、工事をするにあたって何らかのデメリットが発生する可能性も否めません。
また、そもそも場所によっては、古い家を取り壊して新しい家を建てることを禁じているところもあるため、事前の調査も必要になってきます。
この記事では、そんな中古物件付きの土地を購入して新しい家を建てるメリットやデメリット、注意点などを紹介していきます。
中古物件付きの土地の3つのメリット
それでは初めに、解体工事をするということを決めたうえで中古物件の付いた土地を買うメリットを見ていきましょう。
- 中古物件付きの土地は安い
- 解体費用の話ができる
- 新しい建物のイメージができる
主なメリットは上記の3つです。
中古物件付きの土地は安い
売り手によって中古物件の付いた土地の売り方は大きく異なりますが、中には予め解体費用の料金を抜いた売り出し価格を設定している方もいます。
例えば、土地だけで売却する場合は1500万円だったとしても、上物の解体費用に200万ほどかかると考え、その工事費用を差し引いた1300万円で売り出しているということです。
もちろん買い手が解体費用を負担することになるため、結局解体費用を支払ったら額は同じくらいになります。
しかし、例えばその中古物件がまだまだ十分に住めるものなのであれば、土地ごと安く購入してそこに住むということが可能です。
また、購入してすぐに解体するという場合であっても、解体工事費用をできるだけ節約することによって結果的に相場よりも安く購入することができます。
自分でできることは全て自分でやることで解体費用も安くなるため、土地を安く手に入れられるということになるのです。
解体費用の話ができる
解体することを前提で中古物件の付いた土地を購入する場合は、解体費用がかかるということを売り手と話すことで料金の交渉がしやすくなります。
もちろん、上述したようにすでに解体工事費用を抜いて売り出している売り手も多いです。
しかし、例えば解体工事費用が高くかかるかもしれないということを理由にすることで、そこからさらに値引きをしてもらうことも可能です。
売り手の多くは、
- 解体工事をしてから売却するのが面倒
- 土地だけだと高くて売れないかもしれないから物件も残しておく
というような理由で中古物件が建てられたままの土地を売りに出しています。
「解体しなければならない物件がついた土地」ということを前面に押し出すことによって、交渉事がこちらの有利に進む可能性もあるのです。
新しい建物のイメージができる
古い家がある場合は、実際にその家の中に入って室内の感覚的な広さを実感することができます。
また、2階建ての古い建物を取り壊して、そこに2階建ての新しい建物を建てようと思っているのであれば、実際に2階に登って見晴らしを確認できます。
障害物の有無や日のあたり方を考えてどこに窓やベランダを取り付ければよいかをイメージできるため、新しい家を建てる参考になるのです。
もちろん、新しく建てる家のタイプによっても参考になる部分は変わってくるでしょう。
しかし少なくとも、
- 建物内の広さ
- 2階部分からの見晴らし
- 建物の風通し
- 日当たり
- 隣の家との距離感
などを把握できるというのは大きなメリットです。
古い家を参考にすることで、理想的な家を建てることができるはずです。
中古物件付きの土地のデメリット
続いてはデメリットです。
- 思わぬ出費があることも
- 解体するまで土地の情報を得られない
- 滅失登記にお金がかかる
デメリットは主に上記の3つです。
思わぬ出費があることも
中古物件がついた土地を購入した後には、新しい家を建てるために建物を解体するという方も少なくありません。
しかし、その建物を解体する際に様々なトラブルが発生する可能性もあります。
例えば、解体工事をするまではわからない地中埋設物が見つかると、解体工事が遅れたり余分に費用がかかったりすることになります。
→解体工事で地中埋設物が見つかった場合の追加費用や対処法について
また、場合によって地盤を改良するための工事をする必要が出てきて、その工事費用が高額になる可能性もあるのです。
後程詳しく紹介させていただきますが、基本的に瑕疵担保責任の有効期限内であれば、埋設物の処理費用は売り手に負担してもらえるはずです。
しかしその期限が切れている場合は、買い手が自費で追加料金を出さなければならないため、無駄な出費だと言えます。
解体するまで土地の情報を得られない
土地を購入する際には、売り手の方が土地の汚染調査や地盤調査などを行っているのであれば、安心してそこを買うことができるのではないでしょうか。
しかし、土地に建物が建っている場合は、売り手としてもそのような調査を行うことができないため、細かな情報を得られないまま土地が引き渡されることになります。
その土地に何の問題もないのであれば気にする必要はありませんが、例えば昔は工場が建っていて、その影響で土地が汚染されているということが発覚することもあります。
もちろんそんなケースは稀ですが、安全な土地を手に入れるということを考えると、やはり建物がなく、売却前にきちんと調査が完了している土地に勝るものはありません。
確かに建物付きの土地は安く購入することもできますが、100%安心できる土地というわけではないということも頭に入れておきましょう。
滅失登記にお金がかかる
こちらはある程度は仕方のないことかもしれませんが、解体工事が終わったら、建物がなくなったことを示すために滅失登記を行う必要があります。
買い手は土地を購入したということになりますが、その土地に建物がついている以上は、書類上は建物が建てられていると認識されています。
解体して新しい建物を建てる際にも、書類上はそこにまだ建物があることになっているため、滅失登記を済ませなければ新居の工事に着工することができません。
もちろん解体業者やハウスメーカーの中にも、滅失登記を代行でやってくれるところは多いですが、当然高額な手数料を支払う必要があります。
ご自身でも簡単に登記することができるため、少々面倒かもしれませんが、できるだけコストをかけないためにもご自身でやってみるという方法もおすすめです。
⇒解体工事後に行う建物滅失登記とは?しなかった場合のデメリット
それぞれのメリットとデメリットをまとめておくので参考にしてください。
メリット | デメリット |
・相場より安く購入できる ・可能性が高い購入費用を交渉しやすい ・建物を建てた時のイメージができる |
・出費が大きくなる可能性もある ・事前に土地の情報がわからない ・滅失登記が必要になる |
中古物件付きの土地を購入する上での注意点
購入費用の面で大きなメリットのある中古物件付きの土地ですが、上述したようにたくさんのデメリットも存在します。
続いて、上物の付いた土地を購入する際の注意点を見ていきましょう。
- 再建築不可物件の存在
- 地中埋設物による工事の追加料金
- 高額な地盤改良工事
具体的には、この3つに気を付ける必要があります。
再建築不可物件の存在
建て替えを考えて中古物件付きの土地を購入される場合は、事前に再建築が可能かどうかを確認しておく必要があります。
実は、土地の中には、現在は普通に建物が建てられていたとしても、いったん解体をしてしまうと再度その土地に建物が建てられない可能性のある場所もあるのです。
買い手からすると、土地を購入する際には家が建っていたから、当然解体して新しく建てても問題ないと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、再建築不可物件は法律上それが認められていない物件になるのです。
建て替えを前提で再建築不可物件を購入してしまうと取り返しがつかないため、購入前に必ずチェックしておくようにしましょう。
再建築不可物件で最も多いケース
それでは、どのような物件が再建築不可物件となるのでしょうか。
再建築不可物件になる理由は様々ですが、最も多いのが接道義務を果たしていない土地というものになります。
建築基準法には、
というルールがあり、それが満たされていない土地には新しく家を建てることができません。
例えば、敷地の周りが全て他人の土地で囲まれている場合、その敷地から外に出るためには誰かの土地を通っていかなければなりません。
それは道路ではありませんし、例え道路のような形をしていたとしても法律上道路と認められていない通路の場合は同様に再建築不可物件となってしまいます。
周りが他人の建物で囲まれている土地を購入した場合、現段階で家が建っていたとしても、一度解体したら再度建てることができないため気を付ける必要があります。
再建築不可物件のメリット
再建築ができないということは、資産価値が周辺の相場と比べるとかなり安くなります。
そのため、
- 安く購入できる
- 固定資産税が安い
といったメリットを得ることが可能です。
場合によっては相場の半額ほどの価格で中古物件付きの土地を購入できることもありますし、資産価値自体が低いため当然固定資産税評価額も安くなります。
やはり、建て直しができないというのは、その土地の持つ大きなデメリットだといえるでしょう。
しかし、そういった土地だからこそ、現在建てられている家もセットで安く取引されることになるのです。
建て直しをすることはできませんが、安くマイホームを手に入れたいという方にはおすすめの物件と言えるのかもしれません。
再建築不可物件はリフォーム可能
再建築不可物件というのは、一度解体をしてしまったらそこに新しい建物を建てるのが認められないというものです。
つまり、解体ではなくリフォームや大掛かりなリノベーションであれば、法律上全く問題ないということになります。
そのため、解体をする気がなくリフォームで済ませるというつもりなのであれば、安く購入できる再建築不可物件もありと言えるのかもしれません。
しかし、再建築不可物件の場合は、予想以上にリフォーム費用が高くついてしまうことも珍しくはありません。
周辺が他人の土地で囲まれているということは、リフォームをする際にも大型の車両や重機などを利用できない可能性が高いということになります。
手作業での工事が増えるとその分工期も長くなりますし、スタッフの数も多くなる傾向にあるため、結果的にリフォーム台が高くなってしまうのです。
再建築不可物件を購入してリフォームやリノベーションを考える方は、購入前に業者に現地見積もりをしてもらい、いくらくらいかかるのかわかってからどうするか決めることをおすすめいたします。
リフォームとリノベーションについてはこちらの「リフォームとリノベーションの違い。それぞれのメリット・デメリット」記事でも解説しております。
地中埋設物による工事の追加料金
先ほども少し触れましたが、購入した土地の上物を解体して新しく建物を建てる際には、その解体工事の段階で地中埋設物が見つかる可能性もあります。
建物を壊してみないと発見できないものになるため、当然売り手もその存在を知らずに売却したということになります。
通常は地中埋設物は瑕疵担保責任となり、その埋設物の処理費用などは売り手が負担するのが一般的です。
しかし、その瑕疵担保責任の期限が切れてしまっている場合は、買い手が追加料金を支払わなければなりません。
本来であれば、土地の引き渡しから10年以内かつ地中埋設物の発見から1年以内であれば、売り手に損害賠償を請求することが可能です。
しかし、一般的には契約時にその期限を短縮することが多く、個人から個人への売買の場合はその期間を3か月程度にするケースも珍しくはありません。
つまり、土地を購入してから半年後に解体工事を行い、そこで地中埋設物が見つかったとしても、既にそれは売り主に関係のない話になっているということです。
これが心配な場合は、土地を購入してからできるだけ早い段階で建物を解体しておく必要があります。
高額な地盤改良工事
新しく建物を建てる際には、事前にその地盤が安全かどうかを調べる地盤調査を行う必要があります。
土地のみを売却する場合は、売り手によってはすでに地盤調査を終わらせて安心できる土地だということで売り出す方も少なくありません。
しかし建物の付いた土地を売却する場合は、建物が邪魔になるためきちんとした土地の調査を行うことができないのです。
そのため買い手が解体工事を行ってから新築を建てる間にその地盤調査をすることになるのですが、調査によって地盤の補強が必要だとなった場合は、そこで新たな工事が必要になります。
その地盤改良工事は、安ければそんなに高額にならないケースもありますが、高いものだと数百万円という高額な費用が必要になるケースも存在します。
地盤調査は、その土地の買い手が新しく建てる家の大きさや構造に対して耐えられる地盤かを調べるのが一般的です。
そのため、地盤が緩かったからと言ってそれが瑕疵担保責任に直結するわけではありません。
もちろん更地を購入する際にも同じことが言えますが、心配なのであれば、初めから地盤調査を終えて地盤保証の付いた土地を購入することをおすすめいたします。
まとめ
中古物件がついた土地は、様々な用途に利用することが可能です。
その物件にそのまま住むという方もいらっしゃいますし、リフォームしてビジネスに活かすという方もいます。
しかし、やはりその土地に新しく家を建てるために購入するという方も少なくありません。
新しく建物を建てる際には、当然事前に解体工事が必要になってきますが、その解体工事の費用のこともあり、一般的に上物付きの土地は安く取引されることになります。
そのためメリットも大きいのですが、一方でその土地に対する情報の詳細を得られないなどのデメリットも発生するのです。
安く購入できるのだから仕方がない、と割り切れるのであれば問題はないかもしれません。
しかし、中古物件がついた土地を買うのであれば、購入後にトラブルにならないためにも事前に購入後の目的をはっきりとさせ、きちんと調査をしてから購入することをおすすめいたします。