大きなビルは、造るのにもお金がかかりますが、当然取り壊す際にも多額の費用が必要になってきます。
大きくなればなるほど時間がかかり工期も長くなりますが、それだけではなく、大量の廃材の処理にもお金がかかるのです。
ビルを所有されている方の中には、ビルを解体して新しく建物を造ったり、土地を別の形で運用しようと考える方もいるはずです。
しかし、解体費用が高そうだからという理由で、その解体工事を先送りにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それでは、具体的にビルを解体する際にはいくらくらいが必要なのか。
この記事では、ビルを解体する際の費用の相場や、解体費用を安くするための業者の選び方などを紹介させていただきます。
ビルの解体にはお金と時間がかかる
一般的な家屋と比較すると、ほとんどのビルは面積も大きく高さも高いです。
そのため、普通に考えても解体費用が高額になるということは想像できるのではないでしょうか。
しかし、そこにアスベストなどが加わるとさらにコストが上がることになります。
ビルの解体費用を左右する条件はいくつかありますが、今回は
- アスベストの除去
- 産業廃棄物の処理
- 構造ごとによって異なる工期
について見ていきましょう。
ビルに使われているアスベストの除去
一般の住宅にもアスベストが使われていることがありますが、ビルにも同様にアスベストが含まれていることがあります。
当たり前のことですが、安全に解体工事を行うためにも、アスベストを正しい方法で除去しなければなりません。
アスベストが使われている部分として、
- 屋根
- 内装
- 柱
- 天井
- 配管
- 外壁材
などが挙げられます。
一般の住宅であれば、天井の数なども限られていますが、ビルとなるとそれぞれのフロアにアスベスト含有建材が使われている可能性が高いです。
そのため、単にアスベストを除去するだけだといってもかなりの時間や費用がかかることが考えられます。
実際に、ビルの規模が大きくなればアスベストの除去だけで数百万円かかるケースも珍しくはないため、それに解体費用が加わるとかなりの額になります。
解体工事のためだけにそんなにお金を払いたくないと思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、自治体によってはアスベストの撤去に対する補助金が出るところもあるため、解体費用が高額で困っている方は一度自治体に相談してみるのも方法の1つです。
アスベストについてはこちらの「アスベストの基礎知識。アスベスト含む住宅を解体する際の注意点」でも詳しく解説しております。
廃棄物処理費用も高額になる
一般の住宅を解体する際の解体費用の半分近くを占めるのが、この産業廃棄物の処理費用です。
普通の2階建ての住宅の解体と比べると、大きく頑丈なビルの解体ではかなりの量の産業廃棄物が排出されることになります。
当然、その量が増えれば増えるほど産業廃棄物の処理コストが膨れ上がることになるため、施主としてはなるべくこの部分を押さえたいものです。
しかし、現実的に考えて、RC造やSRC造りのビルから出るコンクリートをはじめとする大量の廃材を自分で処分するというのは不可能です。
⇒鉄筋コンクリート(RC造)を解体する際の費用の相場とコスト削減方法
⇒軽量鉄骨住宅の解体費用の相場とコストを下げるための様々な方法
ただし、残置物の処分をしっかりとすることによって、少額であったとしても確実に廃棄物の処理費用を抑えることはできます。
⇒解体工事の残置物を処分するおすすめの方法と処分に掛かるコストについて
また、解体業者によって利用している処理場が異なったり提携している産業廃棄物運搬業者が違ったりすることで価格に差が生まれることも珍しくはありません。
業者の選び方については後程紹介させていただきますが、選び方次第では産業廃棄物の処理コストを大幅に削減することも可能です。
ビルの解体には時間がかかる。平均の工期は?
一般の住宅を解体するのに必要な日数は、1週間~2週間くらいと言われることが多いです。
実際に、早いものであれば1週間で工事が終わってしまいますし、平均すると10日もあれば解体作業は完了します。
しかし、それはビルと比べると規模の小さい一般的な一戸建ての話です。
⇒解体工事の工期の基本|工期の平均値と遅れてしまう原因と対処法
それでは、ビルの場合はどれくらいの時間が必要になってくるのでしょうか。
当然造りや面積によって解体日数が大きく異なるため、それぞれの工期を表にまとめてみました。
ビルの構造 | 50坪程度 | 100坪程度 | 300坪程度 |
鉄骨造(S造) | 10日~15日 | 20日~30日 | 40日~50日 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 15日~20日 | 30日~40日 | 50日~60日 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 30日~50日 | 60日~80日 | 90日~110日 |
さすがに木造のビルはないため、
- 鉄筋造
- 鉄筋コンクリート造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造
を比べてみましたが、面積が広くなればそれだけ工期も長くなりますし、構造が複雑になるほど日数が必要と言うことがわかります。
しかし、これはあくまでも目安になるため、当然これよりも早く解体作業が終わるケースもあるでしょうし、逆に立地条件などで解体に時間がかかるケースも存在します。
また、300坪以上のビルを解体したいという方もいらっしゃるかもしれません。
この表を目安にしていただくのもよいですが、ビルは1棟1棟の条件がすべて違います。
そのため、やはり複数の解体業者に見積もりを取って、そのビルの解体相場を出すことをおすすめいたします。
⇒解体工事で一括見積りサイトを利用するメリット・デメリットまとめ。
ビル解体にかかる費用の相場
それでは、具体的にビルを解体するには総額でどれくらいの費用が必要になってくるのでしょうか。
工期がビルの構造によって大きく変わるように、費用も構造によって変わってきます。
そのため、まずは構造による坪単価を見てみましょう。
ビル解体の坪単価
ビルの構造 | 坪単価 |
S造(鉄骨造) | 35,000円 |
RC造(鉄筋コンクリート造) | 45,000円 |
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) | 60,000円 |
一応これがそれぞれの構造の坪単価の相場ということになっていますが、当然この相場通りに行くケースの方が少ないです。
例えば、100坪の鉄筋コンクリート造のビルを解体するためには、この表の通りで考えると450万円かかるということになります。
しかし、同じ100坪のビルであっても3階建てなのか5階建てなのかで手間が変わって来ますし、階数が増えるほど時間もかかるため必然的に高くなります。
同様に、立地条件などによってもコストが大きく変わってくるため、実際にはこの坪単価の倍くらいかかったというケースも珍しくはありません。
ビルの解体コストの実例
上述したのは、一般的なビルを解体する際の坪単価の相場です。
続いて、実際にビルを解体した際にかかったコストの実例を挙げて見ていきます。
構造や大きさ | 床面積 | 実際の解体費用 |
RC造2階建 | 約20坪 | 150万円 |
RC造3階建 | 約85坪 | 820万円 |
RC造5階建 | 約110坪 | 1300万円 |
SRC造3階建 | 約85坪 | 530万円 |
SRC造3階建 | 約140坪 | 1020万円 |
やはり、大きくなればなるほど、また階数が増えれば増えるほど解体費用も高くなる傾向にあります。
しかし、場合によっては同じ階数で同じくらいの面積のビルであっても、SRC造よりRC造の方が高くなることもあるようです。
例えば、隣接する道が狭く廃棄物を運搬するための車両が置けないとなっただけでも、プラスでかかる費用はかなりのものになります。
発生する産業廃棄物は一戸建て住宅の比にならないため、ちょっとした立地条件の違いで解体費用が大幅に変わってくることがあるのです。
このように、上述した坪単価の目安はあくまでも目安です。
そのため、やはりまずは専門の解体業者に見積もりを取ってもらうところから始めてみてはいかがでしょうか。
ビル解体の方法
それでは、ビルを解体する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
続いて、大きな建物を解体するための手法をいくつか紹介させていただきます。
ここでは、
- ブロック解体
- 上部閉鎖式解体
- カットダウン方式
を見ていきましょう。
ブロック解体
特に、背の高いビルなどの解体工事に用いられることの多い方法がブロック解体です。
その名の通り、ビルの上の方からブロック単位に切り外して順番に吊り下ろしていくという手法になります。
タワークレーンを設置して少しずつ下ろしていくためそれなりに時間がかかりますが、確実な方法です。
上部閉鎖型解体
数十階建てのビルは、高さが100メートルを超すものも多いですが、大きなビルの解体では上部閉鎖型解体という手法がとられることも多いです。
高い位置で解体をすると、強風にあおられて粉塵が飛散したり、解体部材が落ちてしまって大きな事故になってしまったりといったリスクも高くなります。
しかし、ビルの最上部の上部や側面を覆い、閉鎖された場所で解体工事をすることによってそういったリスクを軽減することが可能です。
1~2フロアの解体を工事に行い、それが終わったら徐々に下に下がっていくことで、安全に解体工事を進めることができるのです。
カットダウン方式
高さのあるビルを下から解体していくのが、このカットダウン方式という解体方法になります。
ビル内部の柱を切り取ってジャッキなどで補強し、そのフロアの天井や壁などをすべて解体し、フロア全体がきれいになったらジャッキを下げて次の階の解体に移ります。
下から徐々に壁や天井を壊していくため、建物全体を見ると下の方から少しずつビルが低くなって行くことから、この方法はだるま落とし解体と言われることもあります。
メリットとしては、上空ではなく下層階でしか解体しないため、粉塵を最小限に減らし、廃材を高所から落下させるなどの事故が発生する危険性がなくなるといったところです。
ビルの解体費用を安くする業者の選び方
それでは最後に、ビルの解体を少しでも下げるための業者の選び方を紹介していきます。
どの業者もできるわけではない
最初に気を付けなければならないのは、どんな解体業者であってもビルを解体できるというわけではないという点です。
技術的に難しいという話ではなく、資格の問題で大きな建物の解体ができない業者も多いということを覚えておきましょう。
解体工事が可能な業者としての許可は、
- 解体工事業登録
- 建設業許可
の2つが存在します。
解体工事業登録
建設業許可を持っていなくても、この解体工事業登録を持っていれば解体工事業者として仕事をすることが可能です。
しかし、工事金額に制限があり、税込みの工事金額が500万円未満のものしか取り扱うことができません。
そのため、解体専門の小規模な業者がこの解体工事業登録を持っていることが多いです。
建設業許可
上述した解体工事業登録とは異なり、基本的にはどのような種類の解体工事でも請け負うことが可能です。
500万円という決まりもないため、仮に解体工事費用が数千万円になるような大型のビルの解体工事をすることもできます。
一般の住居用の建物を解体するのであれば、上記の解体工事業登録しか持っていない業者に依頼するのもよいかもしれません。
しかし大型のビルを解体する場合は500万円以上かかるケースも珍しくはないため、初めから、この建設業許可を持つ業者に依頼することをおすすめいたします。
業者によって価格差が大きい
例えば総額が100万円程度の解体工事であれば、産業廃棄物の処理コストの差は数万円しか生まれないかもしれません。
もちろん100万円に対する数万円は大きいですが、解体する対象が大きなビルになった場合はその差が数十万円になることも多いです。
極端な話かもしれませんが、A社に1500万円と言われていた解体費用がB社では1200万円と言われることも当然あります。
もちろん複数の業者が1500万円前後の見積もりを出しているにもかかわらず、1社だけ500万円を提示してきている場合は、いくらなんでも安すぎるため若干疑うべきです。
しかし、一戸建ての解体工事と比べると、大型のビルの解体費用の差は業者によって開きが大きくなることが多いのです。
- 経験値
- 工期
- 廃棄物の処理方法
など、解体工事のコストを上下させるポイントはたくさんあります。
ビルの解体には大金が必要になることは間違いないため、初めに解体業者を選ぶ際には後悔のないようにじっくりと見極めるようにしましょう。
解体工事の業者の選びに関してはこちらの「解体工事業者を選ぶ方法|見極めるために大事な6つのポイント」でも詳しく解説しております。
まとめ
一口にビルと言っても、面積が広く背の低いものもあれば、逆に狭い場所に建てられている背の高いものも存在します。
また、周囲に解体の邪魔になるようなものがないビルもあれば、住宅街の間に建てられているようなビルもあります。
今回はビルの解体にかかるコストや日数なども紹介してきましたが、立地によって工事のしやすさが大きく異なるため、それが価格に反映されることが多いです。
もちろん、中には相場通りの解体費用でビルを取り壊すことができる方もいるかもしれませんが、大半のビルは相場の通りに行きません。
立地は1棟ずつ異なりますし、周りの条件なども異なるため、やはりまずは解体したいと思っているビルの見積もりをしてもらうことをおすすめいたします。
解体業者によって見積もり価格が大きく違うことも予想されるため、経験豊富な業者をいくつかピックアップして相見積もりしてもらうとよいでしょう。