家やマンションなどの不動産を売却する際には、不動産会社を探して契約を結び、数か月をかけて購入希望者を見つけることになります。
長い売却活動を経てようやく売買契約を結ぶことができたら、そこで売却活動は終わりだと感じてしまう方も少なくありません。
しかし、購入希望者と売買契約を結んでからも、売り手側にはまだやることがたくさん残されています。
契約を結んだからその後は知らんぷりということはできませんし、引き渡しが完了するまではその不動産はまだ売り手の手元にあることになります。
それでは、売買契約を結んだら引き渡しまでの間に何をすればよいのでしょうか。
今回は、売買契約から引き渡しまでに不動産の売り手がすべきこと、引き渡し日当日の流れなどを紹介させていただきます。
不動産の引き渡しまでにすべき5つのこと
売買契約を結ぶまでにもしなければならないことは多いですが、売買契約後もすることはたくさんあります。
もちろん個人で解決できるものもありますが、他人を巻き込んで行わなければならないものも多いため、売買契約を結んだら早めに行動に移しましょう。
具体的には、引き渡しまでに、
- 抵当権抹消の準備
- 所有権移転登記の準備
- 土地の境界確認
- 引っ越し
- 現地の最終確認
などを行わなければなりません。
それぞれの項目でどのようなことをするのかを見ていきましょう。
抵当権抹消の準備
売却予定の家やマンションなどに抵当権が設定されているのであれば、まずは住宅ローンを借りている金融機関にローンの残債を確認しましょう。
そして、ローンを完済するためにいくら必要なのかをチェックしたうえで、抵当権抹消のための準備を進めていくことになります。
売買契約を結んだ段階で、対象の不動産の引き渡し日も設定することになりますが、それも踏まえて金融機関にスケジュールを調整してもらい手続きを行います。
金融機関だけではなく、不動産会社にも相談することによって当日の抵当権の抹消がスムーズに行えるはずです。
所有権移転登記の準備
所有権の移転登記とは、家やマンション、土地などの所有権が他者に移転する際に行う登記のことです。
不動産の売買に伴う所有権移転登記の申請をする場合は、売り手だけではなく買い手の連盟の登記申請書を作成しなければなりません。
申請書の提出には、
- 売買契約書の写し
- 権利書
- 印鑑証明書
などの重要な書類が必要になってきますし、申請書は漏れの内容にきちんと作成しなければなりません。
通常は司法書士などに委任することになるため、一般的には司法書士が率先して準備を行ってくれるはずです。
しかし、売買契約を結んだ後にこの準備をしなければスムーズに所有権移転登記をすることができないため、早めに行っておきましょう。
土地の境界確認
一戸建てを売却する場合は、引渡し前に土地の境界確認を行うケースも少なくありません。
境界の確認と言うのは、複数の土地の所有者が一緒に立ち会って行う必要がありますので、早めに準備しておかなければなりません。
特に
- 隣の家の住人と何らかのトラブルがあるという場合
- エクステリアなどが境界から超えている場合
- そもそも境界がどこなのかはっきりしていない場合
などは、時間がかかることも考えられます。
場合によってはすぐに境界確認ができないこともあるため、隣の土地の所有者に協力してもらいスムーズに進めていきましょう。
引っ越し
住んでいる家やマンションを売却する場合は、当たり前のことですが、売買契約を結んでから引き渡しまでの間に引っ越しをする必要があります。
ご自身が住んでいる一戸建てを売り渡す場合は、ご家族で引っ越しの日程などを決めて好きなように移動することができるはずです。
しかし、例えば貸借人がまだ部屋を借りているようなマンションで、購入条件がその住人の退去である場合は、その方のスケジュールも考慮しなければなりません。
マンションの購入者だけではなく、不動産会社やそのマンションの管理会社、それから貸借人と予定を調整し、引き渡し日までに不動産をきれいにしておきましょう。
住人の退去が遅れることで引き渡しが予定通りに行かないケースもあるため、きちんと話を詰めておく必要があります。
現地の最終確認
購入者は、当然売買契約を結ぶ前に内覧で何度かその不動産を訪れているはずです。
しかし、売買契約を結んでから引き渡しまでの間にも、不動産会社と売り手、買い手が一緒に立ち会って最後の現地確認をするのが一般的です。
その際に、例えば隣地との境界をはっきりさせることが条件になっている場合は、それまでに情報を用意しておく必要があります。
同様に、売買契約を結ぶにあたって、壊れている場所の修復をするなどの特殊な条件が付けくわえられている場合は、最後の現地確認までにすべて済ませておかなければなりません。
現地の最終確認を行わなければ、引き渡しを行った後にトラブルになることもあるため、不動産会社と買い手の予定を聞いてスケジュールを組みましょう。
なお、引渡し日当日にこの最終確認を行うケースも多いため、引き渡し日までに最終確認日を設けるのが煩わしい場合はそれでもよいでしょう。
不動産の引き渡し当日の流れ・手順
それでは、不動産を引き渡す当日はどのような流れになるのでしょうか。
簡単にフローを説明すると、
- 登記申請の手続き
- 残代金の決済
- 諸費用の清算
- 鍵・必要書類の引き渡し
- 報酬等の支払い
といった順番になるのが一般的です。
また上述した最終の現地確認を、この日に行うことも多いです。
当日集まる人は誰?
引渡し日当日には、現地に
- 売り手
- 買い手
- 仲介した不動産業者
- 司法書士
- 金融機関
がそろっている必要があります。
この際に、売り手と買い手の不動産業者が違うことも多いため、その場合はそれぞれの不動産会社の担当者が来なければなりません。
そのため、そんなに大人数にはならないはずですが、例えば買い手が家族も一緒に連れてくるような場合は人数が多くなります。
引渡しに参加する人が増えても問題ないように、通常は金融機関の会議室などを利用して行われることが多いです。
当日に最終の現地確認を行った場合は、売却する不動産に集まり、通常はその後金融機関に場所を移します。
1.登記申請の手続き
売り手と買い手が必要書類を持参し、その書類を元に司法書士が
- 所有権移転手続き
- 抵当権の抹消
- 抵当権の設定
を行います。
司法書士が書類を確認し、登記できるとなった場合には、金融機関に融資の実行をお願いします。
買い手側に出金伝票や振込伝票などを記入してもらい、金融機関に必要書類とともに提出すれば完了です。
ちなみに、この時に必要な売り手側の必要書類は、
- 身分証明書
- 住民票
- 実印
- 印鑑証明書
- 不動産の登記済権利証
- 固定資産の評価証明書
- 抹消登記に関わる書類
などになります。
必要書類を忘れてしまうと、司法書士が法務局で抹消手続きを行うことができないため気を付けましょう。
2.残代金の決済
司法書士が書類を確認して問題なければ、買い手側の金融機関が融資を行い、お金を受け取った買い手は売り手に不動産の購入代金を支払います。
不動産の売り手側にまだ住宅ローンが残っている場合は、この売り上げの一部を金融機関の返済に充てることで、抵当権を抹消できます。
そして、司法書士に先ほどの抵当権の抹消や設定、所有権の移転を委任します。
3.諸費用の清算
続いて、固定資産税や都市計画税などの公租公課、マンションの場合は管理費などの清算を行わなければなりません。
一般的には、引き渡し日の前日までを売り手が負担し、引渡し日からは買い手が負担することになり、日割りで計算されます。
しかし、売り手はそれらを前払いですべて支払っているため、不動産の買い手は引き渡し日以降のお金をその場で売り手に支払います。
4.鍵・必要書類の引き渡し
次はいよいよ、対象となる不動産の鍵や、不動産に関する必要書類を売り手から買い手に引き渡すことになります。
引き渡される書類には様々なものが考えられますが、
- 玄関の鍵
- 玄関以外の鍵(あれば)
- 付帯設備の取扱説明書
- 実測図
- 売り手が不動産を購入した際のパンフレットなど
- マンションの場合は管理規約書
などが一般的なものです。
また、これらの引き渡しが完了したら、通常は引渡し確認書などを取り交わすことが多いです。
5.報酬等の支払い
以上で引渡しが終わりということになりますが、最後に担当してもらった司法書士や不動産業者のスタッフに報酬を支払います。
売り手は売り手の不動産会社へ、買い手は買い手の不動産会社へ仲介料を支払って決済は無事完了です。
売り手と買い手との間の手続きはこれで終わりですが、司法書士はその後、②で委任された所有権移転、抵当権関連の処理を同日中に済ませます。
そのため、通常はこの引渡しを午前中に行い、司法書士がその日の午後に法務局に出向いて申請を行うのが一般的です。
引き渡しに関するトラブル
例えば、引き渡し日に必要な書類を忘れてしまってスムーズに手続きができないなどのトラブルは少なくありません。
忘れ物に関しては、書類がすぐに用意できるのであれば早急に取り寄せるなどして、基本的には何とかなるケースが多いです。
しかし、中にはどうしようもならないようなトラブルが発生するケースもあるため気を付ける必要があります。
引渡しに関するトラブルの中でも大きなものとして挙げられるのは、
- 引渡し日に間に合わない
- 住宅ローンが通らない
などになります。
引き渡しの遅延
事前に引渡し日を決めているわけですから、売買契約を結んだ以上、その日に遅れるはずがないと考える売り手の方もいるかもしれません。
しかし、
- 引っ越しが予定通りいかない
- 修繕工事が延びた
- 貸借人が予定通り出ていかない
などの理由で契約書通りに引き渡しができないケースもあります。
引っ越しのピークシーズンの場合は、早めに引っ越し業者に連絡を入れなければ、引っ越しが事前に取り決めた引渡し日以降になってしまう可能性があります。
また、修繕業者の怠慢や天候、その他の様々なことが原因となって修繕工事が引渡し日に間に合わないことも少なくありません。
時間がかかりそうなものなどに関しては、売買契約を結ぶ段階で早めに動かなければ間に合わないため、不動産会社にも相談して手配のタイミングなどを聞いておきましょう。
遅延の場合は補償が必要になるケースも
多少の遅れであれば、後日新たに引き渡し日を設けるなどで対処してもらえるケースも少なくはありません。
しかし、例えば買い手が引っ越しの手配をすでに済ませていたり、予定通り引っ越せないと新しい住居を探さなければならない、といった問題が出てくること考えられます。
遅延は売り手側の責任ということになるため、当然その分で余分にかかる費用を補償してあげる必要があります。
大幅な遅延には契約解除もあり得る
正式な売買契約を交わして引渡し日を設定している以上、遅延してしまった場合は契約違反ということになります。
もちろん買い手としても、せっかくここまで書類をそろえたり面倒な手続きを終わらせたのに、ここで購入できなくなるのは痛いです。
そのため、多少の遅延であれば待ってもらえることが多いですし、誠実な対応をすれば怒って解約されるというようなことは避けられるはずです。
しかし、長期的な遅延は実際に大きな迷惑をかけることになりますし、そんなに待てないという買い手がいてもおかしくはありません。
契約解除はないにしても、買い手やそのご家族に迷惑をかけるのは事実ですので、早めに引き渡しができる状態に持って行きましょう。
住宅ローンが通らない場合
一般的には、不動産を購入する際には買い手はどこかの金融機関で住宅ローンを申し込んでお金を借りることになります。
しかし、中にはその住宅ローンの承認が得られないケースがあり、購入の意思はあるものの、金銭的な理由で購入できないとなってしまうこともあるのです。
頻繁にあるようなことではありませんが、この場合は最悪、契約が解約されてしまう可能性も高いです。
当然買い手側の責任ということになりますし、手付金を返す必要はありませんが、この場合は売却活動を再開せざるを得なくなります。
しかし、もちろんケースバイケースですので、買い手側が融資の承認を得られない場合は担当の不動産会社に相談することをおすすめいたします。
まとめ
売買契約を結んだからと言って、安心してしまっている売り手の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、今回紹介したように引き渡し日までにやらなければならないことはたくさん存在します。
特に補修業者を利用する住宅の修理が必要だったり、貸借人がまだ生活をしているマンションを売却する場合は、引き渡し日までにすべての手続きが間に合わないリスクが大きくなります。
そうなると、最悪の場合は契約を解除されてしまう可能性もあるため、売買契約を結んでからも早めの行動が必要です。
何をしなければならないかは不動産会社が良く心得ているはずなので、こまめに相談してスムーズに引き渡しができるようにしておきましょう。