解体工事は屋外で行われる作業になるため、様々なことが原因となって遅延が発生する可能性があります。

「単純に古くなった空き家を解体したいが、特に解体後に何かをする予定がない」というようなケースであれば、多少工事が遅れても問題はないでしょう。

しかし、例えば解体工事のすぐ後に新築物件を建てる予定がある場合は、解体工事の遅延がその後の動きに大きな影響を与えることになります。

何が発生するかわからない解体工事ですので、やはりある程度は余裕を持って工事のスケジュールを組んでおくのが重要です。

しかし、余裕のあるスケジュールを組んだはずが、それを上回るような工事遅延に巻き込まれるといったケースも存在します。

場合によっては、工事の遅延に対して損害賠償を請求できるかもしれません。

この記事では、そんな解体工事の遅延や損害賠償の請求などについて紹介させていただきます。

解体工事の遅延の原因はさまざま

ほとんどの解体工事は計画通りスムーズに進みますが、中には何らかの原因によって工事全体が大きく遅れてしまうようなケースもあります。

代表的なところで言うと

  • 天候による遅延
  • クレームによる遅延
  • 埋設物の発見による遅延

が挙げられます。

天候による遅延

天候と聞くと、初めに雨を思い浮かべる方も多いと思いますが、ちょっとした雨で解体工事が中断されるということはありません

むしろ、軽く雨が降っている中の解体工事であれば、粉塵が周りに飛散するリスクをなくすことができるため、解体工事に適した天候であると言えます。

解体工事で発生する主な粉塵のトラブル3選とおすすめの対策について

しかし、その雨があまりにも激しく、

  • スタッフが足を滑らせて怪我をする可能性がある場合
  • 風が強くスタッフや廃材が飛ばされそうな場合

などには工事が中断されます。

同様に、豪雪地帯では雪が積もると単純に作業ができなくなってしまうため、その雪を取り除く作業をすることで工事が大幅に遅れる可能性もあります。

天候による遅延はある程度は仕方のないことですので、解体工事をお願いする季節や時期などを考える必要があります。

例えば、どうしても大雪が降りやすい季節に解体しなければならない場合は、雪が積もるのが当たり前と考えて十分に余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめいたします。

クレームによる遅延

解体工事では、必ず騒音や振動、粉塵などが発生します。

先ほど挙げたように、雨が降っている中での作業であれば粉塵を押さえることは可能ですが、それでも大きな建物の取り壊す際に騒音や振動を全く出さないというのは不可能です。

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施主としては仕方のないことだと片づけることもできますが、周辺に住む近隣住民は、解体工事中に毎日のようにその騒音や振動に耐える必要があります。

解体工事は、ある程度はお互い様というところもあるため、多少の騒音や振動に対しては我慢してくれる方も多いはずです。

しかし、それらがあまりにもひどいような場合は施主に対してクレームを入れてくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

クレームの声が増えれば増えるほど解体工事がしにくくなりますし、場合によってはしばらく工事を中断せざるを得ない状況になる可能性もあります

解体工事のクレームに関しては様々な対応の仕方がありますが、

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業者には養生シートなどをしっかりと組んでもらって騒音を少しでも減らす工夫をしてもらいつつ、

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事前に挨拶をして工事に対する理解を得てもらう必要があります。

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埋設物の発見による遅延

解体工事を進めていく過程で、地中埋設物が発見される可能性があります。

地中埋設物にも様々なものがありますが、代表的なものは、

  • 過去の建築廃材
  • 建物の杭など
  • 岩石
  • 浄化槽や井戸

この辺りになります。

解体工事をするにあたって、初めに現場をきちんと確認して見積もりを出してもらうことになりますが、

⇒解体工事で立ち合い見積もりをする前に知っておくべき5つのポイント

この際には工事にどれくらいの期間が必要かも大体わかるはずです。

しかし、見積もりの時点で建物の床下部分を見ることができませんので、実際に建物を解体して床下から地中埋設物が出てきたら解体工事の費用や工期が大きく変わる可能性もあります。

例えば、見積もりの段階では150万円くらいで10日間で済む解体工事だと言われたとしても、埋設物を取り除くことで費用が200万円に増え、工期が20日間に延びることも考えられます。

見積もりの時点で調べることができないため、こちらも天候同様ある程度は仕方のないことだといえるでしょう。

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解体工事の遅延の賠償金に対する考え方

工事が遅れたら、契約とは違うということで慰謝料を請求したいと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、全ての遅延に対して損害賠償を請求できるというわけではありません。

こちらも、

  • 天候の遅延による損害賠償
  • クレームの遅延による損害賠償
  • 埋設物の遅延による損害賠償

に分けてみていきましょう。

天候の遅延による賠償金は?

天候による遅延は、業者に賠償を請求することができないケースがほとんどです。

解体工事をする上で、最も大切なことは解体作業員の安全を確保した上で工事を進めていくということです。

そのため、悪天候によってその安全が確保できないとなった場合には、工事を中断するのが当たり前の判断ということになります。

同様に、大雪が積もった際には物理的に作業ができなくなってしまうため、雪かきのために時間を割いて工事の時間が短くなるというのも致し方のないところです。

よって、天候が原因の遅延で損害賠償を請求するのは難しいと考えることができます。

クレームの遅延による賠償金は?

こちらは、場合によっては遅延の賠償金を請求できる可能性もあります。

例えば、近隣から連日のように騒音などのクレームがあるにもかかわらず、業者はその対策を何も取らず工事を続けるとしましょう。

その場合は、最終的に工事を中断せざるを得なくなるケースもあり、それによって工期が大幅に遅れることも考えられます。

もちろんほとんどの業者は、クレームが出た時点で騒音や振動を減らすような工事に切り替えたりするのですが、中には苦情を無視して工事を続ける業者も存在するのです。

業者が何も対応しない場合はクレームも大きくなる一方ですので、行政から指導が入ってしばらく工事が止まってしまうケースもあります。

当然その間は工事ができないことになるため、その分工期が延びてしまいますし、迷惑をかけない工事の体勢が整うまでは工事を再開できません。

業者による悪質な工事が続けられた場合は、業者の責任で工事が延びたと判断できることもあるため、その場合は遅延の賠償金を得ることが可能です。

埋設物の遅延による賠償金は?

実際に床下を掘ってみるまでは、何が出てくるかわかりません。

そのため、地中埋設物の撤去によって工事が遅れたとしても遅延の賠償金を請求するのは難しいです。

むしろ、その埋設物の撤去費用は見積もりには含まれていないため、追加で撤去費用を請求される可能性が高いです。

しかし、解体業者の中には、コンクリートなどの塊を掘り起こした地面に隠し、まるで掘り起こしたら埋設物が出てきたように見せかけるようなところも存在します。

本来ならば何もない床下であったのに、悪徳業者がそのようなことをすることで追加料金を請求されたり、無駄に工期が延びてしまったりすることもあるのです。

安心して工事を任せるためには、最初に信頼できる業者を選ぶのが重要になってきます。

解体工事の損害賠償の計算方法

それでは、損害賠償を請求できる工期の遅延では、一体どれくらいの賠償金を請求することが可能なのでしょうか。

続いて、工期延長に対する損害賠償について見ていきましょう。

業者との契約書を確認してみよう

解体工事をお願いする前には、工事に取り掛かる前に業者ときちんとした契約書を交わしているはずです。

⇒解体工事の契約書にで見るべき6つのポイントと依頼の際の注意点

まずは、その契約書を確認して工事の遅延に対することがかかれているかをチェックしてみてください。

確認する部分は

  • 契約書に書かれた工期
  • 遅延時の対応

になります。

例えば実際には1週間くらいで終わる解体工事であっても、余裕を見て工期が2週間くらいに設定されている工事も珍しくはありません。

この場合、1週間で終わると言われていた工事に対して10日かかったとしても、契約書に工期が2週間となっているため遅延にはなりません。

同様に、天候悪化による遅延、埋設物の発見による遅延に対して記載がある場合も、その契約書に基づいて処理されることになります。

実際の損害額が賠償できる金額

何となく解体工事をして、工事終了後はその土地を何かに使う予定がないという場合は、遅延しようがしまいが施主にも関係のないことです。

もちろん遅延によって実費が発生する場合は別ですが、金額が変わらないのであれば遅延しても気にしないという方がほとんどのはずです。

しかし、解体工事後に何かをする予定が決まっていて、すでにそれにお金がかかっているというような場合は話が変わってきます。

実損害を請求するケース

例えば、解体後に家を建てようと思っていて、ハウスメーカーと工事の日程の話をしっかりと詰めてしまっているというようなケースもあるでしょう。

遅延によってその後のスケジュールを変更せざるを得ない場合は、それに伴ってハウスメーカーから変更の手数料などを請求されるかもしれません。

または、それによって新築物件の完成が遅れるため、仮住まいの家賃が余分に1ヶ月分かかってしまうというケースもあるはずです。

こういった場合は、解体業者に請求できる遅延の賠償金は、原則としてそのような遅延によって実際に発生する実損害になることが多いです。

契約書に遅延損害金の記載があるケース

遅延の種類によっては、その損害額の算定が困難なものも多いです。

契約書の中には、「遅延日数に応じて遅延損害金を支払う」というような記載があるものも少なくありません。

その場合は、その契約書に従って損害賠償を請求することになります。

解体業者への請求方法

それでは、どのように解体業者に損害賠償を請求するのが良いのでしょうか。

これは、

  • 既に解体費用を全額支払っている場合
  • まだ解体費用を支払っていない場合

で異なります。

既に解体費用を全額支払っている場合

解体費用を全て支払っている場合は

「実際に発生する損害額を返金してもらえないか」

という相談を解体業者とすることになります。

普通の業者であれば、自分たちのミスで作業が遅れたということを自覚しているため、素直に支払いに応じてくれる業者も少なくありません。

しかし、既にもらったお金を返金できないなどとゴネる業者も存在するため、その場合は弁護士に相談するしかありません。

全額受け取っている業者の中には、そのまま工事を放置して逃げ出してしまうようなところもあるため、上手に相談するようにしましょう。

まだ解体費用を支払っていない場合

ほとんどの解体工事では、解体作業が終わってから残金を支払うことになるため、全額払っていないというケースが多いのではないでしょうか。

この場合は

「残金から実損害を引いた額を工事後に支払う」

というような相談をすることになります。

このケースも、ほとんどの業者が納得してくれるはずですが、同様にそれに不満を覚える業者も存在します。

こちらも同様に、業者の態度によっては弁護士に相談して適切な方法を選択するようにしましょう。

工事が遅れても問題ないスケジュールをたてるのが重要

工事が遅れるのは愉快なことではないですし、その後の予定が狂ってしまう可能性もあります。

しかし、解体工事に遅延はつきものだと考え、多少遅れても問題ないようなスケジュールを立てておくのが重要です。

自分でコントロールできる遅延もある

例えば、豪雪地帯の真冬に解体工事をお願いすると、ほぼ確実に雪かきに時間を取られて工事が遅れます。

同様に、台風の多い時期に解体工事をお願いすると、強風や豪雨によって数日間工事がストップしてしまうことも容易に考えられます。

何か事情があってその時でなければ工事ができないというような理由でないのであれば、天候が悪くなりやすい時期に解体工事をしないことで、天候による遅れを最小限に減らせるはずです

また、上述しましたが、クレームによる遅延に対しては、事前にきちんと挨拶回りをすることでそのリスクを軽減することができます。

中にはどうしようもない遅延も存在しますが、遅延の原因の一部は施主の考え方次第では避けられるものなのです。

急かすのは良くない

工事が遅れるのは困るから、ということで業者に急いで解体作業をしてもらうように促す方もいらっしゃいます。

しかし、慌てて解体工事をすると、それが原因で工事中に事故が発生する可能性があり、その事故によってますます工事が遅れることになります。

また、中には元々予定していた解体工事の終了時刻が過ぎてからもずっと工事をし続けるような業者が出てくる可能性もあります。

解体工事は1日に10時間までと決められているため、それを違反して工事を続行しているのを通報されたら、工事が中断されてさらに工期が延長するリスクもあります。

解体工事に必要な期間の目安と工期が遅れてしまうよくあるトラブルとは

もちろん急いでほしいと伝えるのは問題ないのですが、あまりにも急かすとこのようなトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

そのため、急かしすぎもよくないということを覚えておきましょう。

⇒夜間はダメ!解体工事を行っていい時間帯と振動・騒音に関する法律

まとめ

最初に建てたスケジュール通りに解体作業が終わる工事も多いですが、何らかの原因で工事が遅れてしまうというのは珍しいことではありません。

様々な原因がありますが、基本的には業者が原因で発生する工事の遅延であれば賠償金を請求することができる可能性が高いです

しかし、一方で天候や地中埋設物などによる遅延は業者の責任にはならないため、それが原因で工事が遅れたとしても賠償金の請求は難しいといえるでしょう。

解体工事が遅れることで困ってしまうという方は多いようですが、大切なのは、解体工事は遅延するものと考え、余裕を持ったスケジュールを作ることです。

スケジュールに余裕があれば多少遅れても問題ないはずですので、ある程度の遅れを見越して予定を立てていきましょう。