どんなに丈夫な建物であっても、長い年月の使用によってところどころ劣化しますし、絶対に悪くならない建物など存在しません。
例えば取り壊しをしたくなかったとしても、放置しておくと危ないとみなされた家屋は解体工事で綺麗にする必要があります。
同様に、建物が建てられている土地を有効活用したいという理由で、空き家を解体するという方も多いのではないでしょうか。
家屋を解体する事情は人によって異なりますが、基本的にはどのような解体工事であっても騒音が発生します。
そして、その騒音によって大きなトラブルになるケースも少なくありません。
解体工事には様々なトラブルがつきものですが、今回はその中でも騒音に関する問題を取り上げて紹介しています。
解体工事における騒音問題
解体工事で必ず発生するのが騒音ですが、その騒音が原因で様々な問題に発展する可能性があります。
それでは、具体的には騒音でどのようなトラブルが発生するのでしょうか。
騒音でトラブルになるケース
例えば、日中は解体工事現場の周りに誰もいないのであれば、周囲を気遣うことなく解体工事を進めることができます。
しかし、都心で解体工事を行う場合はそんなことはあり得ませんし、様々なタイプの方々が近くで生活を送ることになります。
早朝に家を出て学校や会社に向かい、夜に帰宅するという方ばかりであればよいのですが、夜間の仕事で日中寝る方もいれば、昼間は自宅で勉強をするという方もいらっしゃいます。
いざ眠ろうとしているのに大きな音をたてられたりすると、当然寝つきが悪くなりますし、目が覚めてしまうこともあるでしょう。
また、大きな音のする中で集中して勉強などの作業を行うのは難しいです。
解体工事をする際に、周りにそういった方がいた場合はトラブルにつながりやすくなるため、クレームを入れられる前にきちんと対策を取っておく必要があります。
騒音における損害賠償について
解体工事に騒音はつきものですので、基本的には周りに住む方々も多少の音には我慢をして生活を送ることになります。
しかし、騒音の度が過ぎたり騒音に対する対策を何も講じていないなどの場合は、近隣の住民に本格的に訴えられるようなケースもあります。
もちろんクレームが来た時点できちんと対処すれば問題はないのですが、最悪の場合は裁判になって敗訴する可能性もあります。
解体工事で裁判まで行くということが珍しいのですが、実際に裁判で施主と解体業者が負けたというケースもあるため、他人事ではいられません。
また、裁判にならなかったとしても、解体工事の騒音にたくさんの方がクレームを入れてきた場合は、一時的であっても工事をストップせざるを得ない状況に追いやられることもあります。
そうなると、その後の工事の予定にも影響してきますし、工事期間が延びることによる業者への支払いが増えてしまう可能性もあります。
施主としては絶対に避けたい問題ですので、騒音によるトラブルが発生しないように業者に働きかけ、自らもトラブル防止に協力していく必要があります。
業者にお願いする騒音対策
解体工事で騒音をゼロにするのは難しいですが、騒音を減少させるのは可能です。
解体業者に協力してもらうことによって、騒音を減らしたり騒音に対するトラブルを未然に防ぐことができます。
作業時間を守る
解体工事をする際には、事前に作業日と作業時間を決めることになります。
例えば、平日の朝9時から夕方5時までを作業時間とするというようなルールを作り、基本的にはその時間の間だけ解体工事を行います。
しかし、中には朝9時からと決まっているのに、現場に早く着いたからと言って重機を動かしたり、またはもう少しでキリがいいからと夕方5時を過ぎてもすぐに終わらなかったりといったケースがあります。
また、17時で終わったとしても、作業員が現場に残ってダラダラと話をしているためにうるさい声が周りに聞こえるといった騒音トラブルもあり得ます。
実際に、朝9時から夕方17時までが作業時間になっている場合、8時半くらいから17時半くらいまでは現場に人がいる状態になり騒がしくなりがちです。
お隣さんが神経質な場合は、そういったことに対してもクレームが入る可能性があるため、できるだけ厳密に時間を守って作業をしてもらうようにお願いするとよいと思います。
音を減らす工夫をする
解体工事で重機を利用する場合は、必ず騒音が周りに響くことになります。
しかし、その騒音をなるべく工事現場内だけに響くようにし、外部に漏らさないような対策をすることは可能です。
具体的には、解体工事現場の周囲を防音シートで囲うことによって、騒音を軽減することができますし、同時に工事で発生する粉塵も最小限に抑えることができます。
シートの張り方によっては、騒音や粉塵をしっかりと防ぐことができていないようなものもありますし、中にはところどころが破れてしまっているようなシートを使う業者も存在します。
しかし、きちんとした業者を利用することができれば、きれいなシートをしっかりと張ってくれるはずですので、周りに大きな迷惑をかけるような騒音は避けられるはずです。
重機を使わない工事
現代の解体工事では、基本的に重機を利用して家屋を取り壊すのが常識になっています。
しかし、隣家との距離が近すぎる場合や、壁が密着している長屋に近いような家屋を解体する際には、場合によっては手作業での解体工事をすることもあります。
もちろん重機を利用する工事と比較すると手間も時間もかかりますが、例えば上述した防音シートを張ることができないような状態であれば、重機を利用した取り壊しの音を周囲にまき散らすことになります。
ご近所さんに騒音や粉塵などの了承を得たうえで取り壊すのであれば、まだトラブルは起きにくいといえるかもしれませんが、やはり嫌がるお隣さんが多いはずです。
場合によっては、一部を重機で解体し、隣接している部分は手作業で解体するというような使い分けもできるため、経験豊富な解体業者と相談して最善の策を見つけましょう。
施主もトラブル防止に協力しよう
解体工事は解体業者が行うものだから、施主には関係ないと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その家屋の持ち主は施主ですし、解体後にその土地を活用するのであれば、なおさら他人事というわけにはいきません。
解体工事によってトラブルが起きればその後の近所関係がギクシャクしてしまうため、問題が起きないように施主も協力するようにしましょう。
挨拶回りで理解を
解体工事で発生する騒音トラブルというのは、基本的にはその解体現場の周辺に住むご近所の方々との間で発生します。
ご近所の方々が解体工事の騒音に対して何の不満も出なければトラブルにはなりませんし、逆に近所の方々がクレームを入れるとトラブルにつながることになります。
つまり、ご近所さんにクレームを入れられないようにすれば、解体工事の騒音に関するトラブルは避けられるということです。
そのために施主が行うのは、解体工事前の挨拶回りになります。
解体工事をする前に、迷惑がかかりそうな家を1軒1軒訪ねて、解体工事をするという旨を解体時間や工事の終了予定日などとともに伝えておきましょう。
騒音は、どのような対策をしたとしても解体工事で必ず発生するものになるため、結局は施主がご近所さんに理解を求めるというのが最も効果的な対策といえるのかもしれません。
具体的な挨拶回りの方法は下記を参照してください。
⇒解体工事前の近所への挨拶は重要!挨拶のタイミングと方法について
解体工事の見回りも
施主にできるもう1つの対策が、解体工事中に解体作業の現場を見に行くというものになります。
通常は、解体工事中に施主が工事現場の周りで生活を送ることが少なくなるため、実際にどれくらいの騒音が出ているのかを実感することはないはずです。
工事中に現場を訪ねることによって、近所の方々がどれくらいの騒音に耐えているかを感じることができますし、騒音がうるさかった場合は対策を提案することもできるからです。
また、現場に足を運ぶことによって工事の進捗状況もその目で確かめることができますし、差し入れを持って行くことでスタッフとの仲もよくなります。
工事現場から実際に生活しているエリアが遠い場合は、頻繁に解体作業を見に行くのが難しいかもしれません。
しかし、解体作業現場に足を運ぶのは様々なメリットもありますので、近所トラブルを防ぐためにも一度行ってみることをおすすめいたします。
解体作業で発生するその他の問題
今回は騒音を取り上げて紹介していますが、実際の解体工事現場には他にも様々なトラブルが発生することがあります。
騒音と並んで取り上げられるのが、振動や粉塵になりますが、作業員のマナー等も問題になりがちです。
振動トラブル
重機を利用して家屋を壊す際には、どうしても振動が発生します。
大きな重機が動くたびに地面が揺れることもありますし、強い力で建物を倒す際などにも大きな振動が出ることになります。
これは騒音同様に防ぎようのないものになりますが、少しでも振動がなくなるように少しずつ壊したりといった工夫をしてもらうことによって、振動を最小限に減らすことができます。
また、振動することによって隣接する家のブロック塀にひびが入ってしまうなどのトラブルに発展する可能性もあるため、そういった場合の対処もしてもらえる業者を見つける必要があります。
粉塵トラブル
騒音と並んでクレームになりやすいのが、粉塵に関するトラブルです。
粉塵とは、家屋を壊す際に発生するホコリなどのことになり、そのホコリが風に乗って隣や近所の家に飛んで行ってしまう害によって発生する問題が粉塵トラブルです。
粉塵は近所の方々の住居や車をホコリまみれにしてしまったり、洗濯物を汚してしまったりすることがあります。
そのため、発生を最小限に減らす努力をするのとともに、解体工事の時間中は洗濯物を干さないようにしてもらうなど、ご近所の方々にも協力してもらう必要があります。
作業員のマナー
基本的には解体工事の作業員の態度が悪いというようなことでクレームになるケースは少ないのですが、悪徳業者などを利用してしまうと近所の方々に苦情を入れられる可能性があります。
マナーが悪いとは、例えば作業時間内、時間外に限らず大声で話をしたりして騒ぐ、タバコの吸い殻を捨てる、缶コーヒーの空き缶を放置するなど様々です。
明らかに避けられるトラブルですし、業者の責任者が監視すべき行為ではあるのですが、そのような業者を見極めることができなかったという施主にも責任があります。
近所の方から作業員のマナーに対するクレームが入ったら、即座に業者に連絡して態度を改めるように言ってもらう必要があります。
または、相見積りの段階で相手の対応を見て良い業者か悪い業者かを見極めることができれば、不要なトラブルを避けることができます。
最後に
解体工事でご近所トラブルに発展するのは珍しいことではないため、いざ自分が解体工事を依頼するとなると憂鬱な気分になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
解体作業は近所の方々の協力なしには成立しませんので、まずは挨拶回りをしっかりと行って周りに住む方の協力を仰ぐ必要があります。
また、きちんとした業者を見つけるというのもトラブルを避けるための重要な要素の1つになります。
騒音や振動、粉塵などをすべてなくすことはできませんが、工事の方法によっては最小限に減らすことも可能です。
良い業者を見つけ、施主も一緒に解体工事を見守るつもりで進めることができれば、大したトラブルもなく解体工事を終わらせることができるのではないでしょうか。