既に何らかの建物が建っている土地に新しい建物を建設したいとなった場合、まずは古くなった建物の解体工事を始めることになります。
建物を壊すだけだから簡単だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、解体工事はしっかりと計画を立てなければ行うことができませんし、 1日や2日で終わってしまうようなものでもありません。
もちろん、その建物の規模によってかかる時間や費用などは変わってきますが、どちらにせよ長期的な工事になる可能性は高いです。
そして解体工事の期間中は、周辺の住民の方々に迷惑をかけることになります。
この記事ではそんな、解体工事が周りに与える影響と、周囲の方への挨拶に焦点を絞って紹介していきます。
解体工事の流れと挨拶の重要性
まずは、解体工事の大まかな流れを見ていきましょう。
解体作業の前にすること
解体工事をするにあたって最初にやることは、いくつかの業者に見積もり依頼を出し、
→解体工事の見積書でチェックしたい5つの項目と適正な値引きについて
実際の解体する建物を一緒に見てもらうという工程です。
見積もりの際には複数の業者と別々に現場を見ることになるため、比較的時間がかかる可能性もあります。
しかし、業者によって解体作業の費用が大きく異なることもあるため、後々後悔しないためにも業者選びには時間をかけましょう。
→解体工事業者を選ぶ方法|見極めるために大事な6つのポイント
業者が決まったら、解体工事のための準備をすることになります。
通常は、近所への挨拶回りも、実際の作業が開始される1週間前くらいまでに行われるため、準備をしつつ挨拶もすることになります。
また、工事の準備の一環として、電気やガスなどを止めて撤去してもらう手続きも行う必要があります。
解体作業の手順
解体作業自体は、大きく3つのステップに分けることができます。
①足場を作る
高い場所で作業をする必要もあるため、まずはそのための足場を作ることになります。
この足場となる設備をしっかりと作ることが、安全な解体作業のためには不可欠です。
また、解体中はチリやホコリが舞い散るため、周囲への被害を最小限に防ぐために養生シートを利用して建物を覆います。
養生シートがなかったり破れたシートを使ったりした場合は、工事中に発生する粉塵が周りに飛び散ってしまい多大な迷惑をかけることになります。
②建物内部、周辺物の撤去
どうせ壊してしまうのだから、上からペチャンコにしてしまえばよいのではないか、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし「安全のためにも建物の本体を解体する前に室内の余分なものを撤去しなければならない」という決まりがあるため、まずは建物内部の撤去を行います。
同時に、建物を解体する前に隣の家などとの境界線にある塀や庭に生えている大木などを撤去することもあります。
特に隣家とくっついているような壁の場合は、隣の住人に必ず迷惑をかけることになるため、事前のあいさつは不可欠です。
同様に、その壁が実は隣の家のものだったというトラブルもあるため、曖昧な場合は事前に確認が必要です。
③建物の取り壊し
建物の内部がきれいになったら、最後に重機で建物自体を解体することになります。
この建物の解体時にチリやホコリが舞いやすいため、それらをできるだけ抑えるために水をまきながら行います。
また、その建物の立地や家屋の状態によっては、重機を使わず人間の手を使って解体作業を行わざるを得ないケースも出てきます。
粉塵の量は重機を使うよりも少なくて済むことが多いですが、代わりに時間がかかり、その分費用も高くなる可能性があります。
挨拶の重要性
解体作業は大きな建物を壊すことになるため、周りに全く被害が及ばない、というケースはほとんどありません。
もちろん周囲に家がない場合は問題ないですが、近くに人の住む住居がある場合は、前もって、必ず迷惑がかかるという旨を伝えるための挨拶が重要になってきます。
例えば、解体をしてから新しい家を建てるとなった場合、工事前の挨拶の有無で近所づきあいが大きく変わってきます。
新築物件に入居後、トラブルに巻き込まれないようにするためにも、最初の段階から挨拶を徹底するようにしましょう。
それでは、具体的に解体作業によって周りにどのような影響を与えるのでしょうか。
解体工事と周りへの影響
工事中の建物の近くを通ったことがある、という方も多いのではないかと思います。
通常は、工事をしている最中は常に何らかの騒音が発生しますし、チリやホコリが舞い散ります。
一瞬通過するだけであれば気にならないかもしれませんが、自分の住む家の真横で同じことが行われたらかなり迷惑です。
それでは、解体工事が周辺の住民に与える代表的な3つの影響を細かく見ていきましょう。
粉塵飛散による被害について
建物を取り壊すことになるため、その過程でチリやホコリが舞うことは避けられません。
そして、その粉塵が風に乗って飛ばされると、周囲の家の外壁や駐車中の車を汚してしまったり、干してある洗濯物を台無しにしてしまうことがあります。
もちろん、解体工事前には養生シートで建物を覆ったり、粉塵が大量に発生する作業の場合には水を撒いて飛び散りを防ぐなどの予防もします。
それに雨の日などに行うことで粉塵を抑えることもできます。
→解体工事は雨の日や悪天候でも決行するの?天気と解体工事の関係とは
しかし、それらで100%防げるというわけではないため(特に天候などは)やはり粉塵が周囲に迷惑をかける可能性は高いです。
騒音振動による被害について
先ほどの粉塵の被害は養生シートで最小限に抑えられたとしても、解体工事による騒音や振動は防ぎようがありません。
例えば、重機を利用して壁を壊す際には確実に音が出ますし、住宅の基盤を掘り起こす際には地面が振動してしまいます。
業者によっては、防音パネルの設置でなるべく周囲に迷惑がかからないように対応するところもありますが、完全になくすのは難しいです。
そんなことをする業者はないと思いますが、特に早朝や夜間の解体作業は大きな迷惑となりますので、解体の時間帯などを考えて工事を進めていく必要があります。
害虫被害について
新築物件ならともかく、基本的にどのような建物にもゴキブリをはじめとする害虫は生息しています。
解体前に掃除をしてきれいにするという方もいらっしゃいますが、ゴキブリなどは家の奥に潜んでいるため完全に駆除しきれていない場合も多いです。
そして、その状態で解体工事が始まってしまうと、音などにびっくりした害虫は周りの家に逃げ込んでしまう可能性があるのです。
それを避けるために、事前に燻煙剤を利用してしっかりと退治するなどの対策が必要になってきます。
害虫に関する被害は、それで防ぐことができるでしょう。
挨拶のタイミング
解体後の生活でのトラブルを防ぐためにも、挨拶は必要だということがお分かりいただけたのではないかと思います。
それでは、一体どのタイミングで解体工事の挨拶をすべきなのでしょうか。
工事の前の挨拶について
一般的には、工事の1週間から10日前くらいに挨拶をすることが多いようです。
通常は同じ日にいくつかの家庭を訪ねることになるかと思いますが、当然不在で誰もいないような家もあるはずです。
その場合は、解体工事をするという旨を記載した挨拶状(後述します)を投函しておき、後日改めて挨拶するとよいでしょう。
書面だけでいいじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり直接顔を合わせることで信頼感を得ることができますし、単純な作業報告だけではなくその他の事情なども伝えやすいからです。
工事後の挨拶について
中には工事が終わった後の挨拶をしない方もいらっしゃいますが、特に解体後にさらに新築工事をするような場合は、とりあえず解体工事が終わったという旨を伝えて回るのもおすすめです。
数日で終わるような解体作業の場合は特に必要ないかもしれませんが、中には1ヶ月以上かかるような工事も存在します。
特に工期が長引いている場合は、周囲の住人も「一体いつ終わるんだ」という気持ちになっている可能性もあります。
長い間迷惑をかけて申し訳ない、という気持ちを持ちつつ、同じように挨拶をして回りましょう。
挨拶回りの方法
それでは、解体工事の前の挨拶はどのように行うべきなのでしょうか。
解体業者による挨拶について
普通の業者であれば、スタッフが必ず近隣の住民への挨拶を行うことになります。
中には、業者がしてくれるのであれば、わざわざ施主が挨拶する必要などないんじゃないのか、と考える方もいらっしゃいます。
しかし、業者に任せず施主が来るのが当たり前なんじゃないのか、と感じる住民の方もいるはずですし、常識的に考えてもやはり施主が直接挨拶したほうが良い気がします。
施主が挨拶をするとしても業者が挨拶をしないということはないため、時間の都合が合うようであれば一緒に回るとスムーズです。
周辺の住民の方々も二度手間となってしまいますが、時間が合わない場合はあとから業者も挨拶に来る、という旨を伝えておくとスマートです。
挨拶で伝えるべきこと
まずは、工事をするという旨を伝えるのと同時に、迷惑をかけますがご協力お願いいたします、というような気持ちを伝えましょう。
また、業者によっては用意してくれますが、解体工事の内容などを記載した挨拶状を渡すことが多いです。
挨拶状には、
- 協力の挨拶…ご迷惑をおかけするため、協力をお願いしますといった簡単な挨拶
- 工事の名称…どのような工事が行われるかを簡潔に記した名称
- 工事発注者…施主の氏名
- 工事場所…解体する場所
- 工事期間…悪天候などで工期が延びることも考慮に入れて着工予定日と完工予定日を記載
- 工事時間…毎日の工事の開始時間と終了時間
- 休日…期間中に工事を休む曜日
- 施工業者…会社名と住所だけでなく、担当者や緊急連絡先も記載
このような内容を記載することになります。
挨拶状を見てもらえばわかることですが、口頭で話したほうがこちらの気持ちも伝わりやすいですし聞かれることも多いため、同じ内容を頭に入れておくと挨拶回りがスムーズにいくでしょう。
挨拶の粗品について
挨拶の際に、粗品を渡すべきかどうか、という悩みを抱える施主も多いようです。
結論から言えば、粗品の有無はその施主の気持ち次第であり、必ず渡さなければならないという物ではありません。
ただし、挨拶と一緒に粗品を渡したほうが、周囲の方々も温かい目で工事を見守ってくれる可能性が高くなります。
粗品はタオルや洗剤、サラダ油などの日常生活ですぐに使えるような簡単なもの、またはお菓子などでかまいません。
業者も粗品を渡すことがあるため、その場合はその業者の粗品とかぶらないようなアイテムを選びましょう。
挨拶する範囲について
挨拶をするにあたって、その範囲がわからないという方も多いのではないでしょうか。
最後に、解体工事のあいさつ回りの範囲について解説していきます。
必ず挨拶が必要な範囲
真っ先に挨拶すべき場所として、解体工事場所の両隣や裏手の家、それから道を挟んだ向かいの家が挙げられます。
大通りに面していて解体工事の影響を受けないと考えられる場合は、向かいの家へのあいさつ回りは不要かもしれませんが、向かいが近い場合は挨拶すべきです。
家が近ければ近いほど、振動や騒音、粉塵などの被害に遭いやすくなるため、この辺りへの挨拶はマストと言えます。
その他の挨拶すべき範囲
挨拶の目的は、騒音や振動、粉塵といった被害が発生するかもしれませんが申し訳ない、という謝罪の気持ちを伝えるためです。
そのため、基本的にそういった可能性のある場所であれば挨拶するに越したことはありません。
また、作業ケ所の前の道が狭い場合は、工事車両などが交通を妨げてしまう可能性があります。
毎日そこを通って通勤する近所の方が特定できるのであれば、その方にも挨拶するとスッキリします。
挨拶しておいて損はないところ
例えば少し遠くにあったとしても、古くからある住宅が近所にある場合は、そこにも挨拶をしておいた方が良いケースがあります。
空き家の可能性もありますが、古くからその土地に住んでいる住人の場合は、必然的に近所づきあいの幅が広いということになりますし、仲良くしておいて損はないからです。
特に解体後に新居を構える場合は、その後のことも考えて初めから付き合いを持っておいたほうが良いかもしれません。
また、その解体場所の町内会長や自治会長に挨拶をすることで、周辺の事情がわかることもあるため、余裕があるのであれば挨拶をしておきましょう。
最後に
今回は、解体工事における挨拶の重要性と挨拶の具体的な方法について紹介してきました。
建物の解体目的は人によって異なるかと思いますが、解体工事をするということ自体、人生で何度も体験することではありません。
そのため、何かとよくわからないと不安になる方も多いようです。
挨拶回り一つとっても不安な点があったかと思いますが、このページを見てスッキリしていただけたら幸いです。
まだ近所の方々に挨拶をしていない方は、将来のトラブルを避けるためにも適切なタイミングを見計らって挨拶回りをするとよいでしょう。
解体作業は、周囲の方々の協力があってこそ成り立つものなのです。