一戸建てを売却する際には、必要に応じて土地境界確定測量を行わなければなりません。
何のことだかよくわからないという方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に言えば自分の土地がどこからどこまでかをはっきりとさせるための確認です。
一戸建ては当然その家が建てられている土地も一緒に売却することになりますが、当然どこがその家なのかということはわかっているはずです。
しかし、隣の土地と隣接しているあたりが、具体的にどこからどこまでが自分の土地なのかが明確でないケースも少なくありません。
土地の面積によって売買価格が変わってきますし、曖昧なまま売却してしまい後々トラブルになるのを避けるためにも、やはり売却前には土地境界確定測量を行うべきでしょう。
今回は、不動産売却前の土地境界確定測量について紹介させていただきます。
土地境界確定測量を行うべき3つのケース
それでは、どのようなケースで土地境界確定測量が必要になってくるのでしょうか。
土地や一戸建てを売買する場合、
- 境界杭がない土地
- 境界の目安となるものがない土地
- 地価の高い土地
に該当する際に土地境界確定測量が必要になってくることが多いです。
境界杭がない土地
土地境界確定測量が行われている土地であれば、通常は境界杭が目印として残っているはずです。
しかし、中にはその杭がなくなっている場所や、そもそも測量を行っていない場所が存在します。
そのような場合は土地の境目がはっきりとしていないため、一戸建てや土地をスムーズに売却するためにも測量をしておいたほうが良いでしょう。
もちろんはっきりとさせないまま売却活動を行うことも可能ですが、一戸建てや土地を購入する買い手からすると、どこまでが自分の土地かわからないような不動産は買いたくないはずです。
結果的に売却活動に悪影響を与えることになるため、やはり測量を行っておくことをおすすめいたします。
境界の目安となるものがない土地
仮に境界杭がなかったとしても、隣地との間にブロック塀やフェンスなどを設置しているというご家庭も多いのではないでしょうか。
そういった目安となるものがしっかりと設置してあるのであれば、基本的にはどこからどこまでが売却する部分なのかがはっきりとしているため問題はありません。
しかし、そういったものがない場合は、売却部分がはっきりとしていないため測量はするようにしてください。
また、例えブロック塀やフェンスなどがあったとしても、それ自体がどちらのものなのかが曖昧になっているケースもあります。
「かなり昔から建っているけどどちらの土地が所有者なのかわからない」というような場合も、売却前に測量を行いはっきりとさせておくことをおすすめいたします。
地価の高い土地
土地の価格が安い地方や郊外であれば、例えば土地の大きさが1平米や2平米変わったくらいで売買価格が大きく変わるということはないでしょう。
しかし東京をはじめとする土地の価格が高い場所では、1平米異なるだけで売買価格が数百万円変動するケースもあります。
もちろん一等地の土地を購入する場合は、合計で数千万円や数億円かかることが多いため、そのうちの数百万円であれば少額だと考えることもできるかもしれません。
しかし、一般的に見ると1平米で数百万円というのは大金ですし、税金にもかかわってくることです。
そのため、土地の価格が高い場所を売買する場合は、一般的に事前に土地境界確定測量を行うことが多いのです。
土地境界確定測量の費用
続いて、土地境界確定測量を行うにあたって必要な費用について見ていきましょう。
土地の境目をはっきりさせてもらうには、一体いくらくらい必要になってくるのでしょうか。
一般的な費用の相場
結論から言うと、売買を目的とした土地の測量にかかる一般的な費用は、30万円から45万円程度になります。
もちろん土地の大きさや測量する土地の場所によって変動することがありますが、たいていの場合はこの価格で収まることが多いようです。
通常は土地家屋調査士に依頼することになり、普通は売却活動をお願いする不動産会社が提携しているところを利用することになります。
しかし、もちろんそこでお願いしなければならないということはないため、例えば知り合いに土地家屋調査士がいるような場合はそちらにお願いするのもよいでしょう。
費用が高額になるケースもある
上述したのは一般的な土地境界確定測量の費用になりますが、場合によっては高額な費用が発生するようなケースもあるため注意が必要です。
高額になるケースには様々なパターンがありますが、例えば
- 売却する土地が広大
- 土地の形が複雑になっていて測量しづらい
- その土地に関する過去の資料がない
- 隣接する土地の所有者が多い
- 隣接する土地が国有地などで、官民による立ち合いが必要
- 隣接する土地の所有者と揉めている
これらのケースは一般的な費用よりも高くなることが多いです。
例えば同じ面積の土地であっても、隣接しているのが市有地や国有地だった場合は、費用が倍くらいになる可能性があります。
その他、上述するケースが重複すると、場合によっては測量だけで数百万円かかることもあるため、事前にいくらくらい必要になるのかを確かめておきましょう。
一般的には、本格的に測量をしてもらう前に、資料などを確認して見積もりを出してもらえるため、その料金に納得したら本測量をお願いすることになります。
土地境界確定測量の費用は売り手負担が一般的
上述したように、イレギュラーが発生するとかなりの高額となってしまう土地境界確定測量ですが、通常は売り手がその費用を負担することになります。
ただし、中には土地の境界がはっきりしているにもかかわらず、買い手側からもう一度きちんと測りなおしてほしいといった要望があるケースもあります。
そのようなケースは買い手負担で行われることもありますが、買い手と売り手の話し合いでどちらが負担するかを決めることも少なくありません。
いずれにしても、高額になるケースがあるということも踏まえたうえで、どのようにするかを決めていきましょう。
土地境界確定測量の流れと期間
それでは、土地境界確定測量はどのように行われるのでしょうか。
大まかな流れとしては、
- 資料調査
- 近隣への挨拶
- 測量
- 境界立ち合い確認
- 境界杭の埋設
- 図面作成
このようになります。
ちなみに期間は早くて2ヶ月。遅くて3、4ヶ月かかるケースもあります。
資料調査
まずは、いきなり土地を測量するのではなく、見積もりもかねて過去に行われた境界確定資料や登記簿謄本、地積測量図などを確認することになります。
通常は近隣の役場や登記所などに行くことになりますが、場合によっては航空写真なども確認することがあります。
また、過去にこの土地の境界を巡ったトラブルがあったかどうかなどもチェックしつつ、資料を総合したうえで見積書を出してもらえるため、事前にいくらくらいかかるかがわかるはずです。
近隣への挨拶
見積もりに納得できたら、正式に測量をする前にその土地に隣接する土地の所有者に測量をするという旨を挨拶する必要があります。
その際には、具体的にどのようなことを目的として測量をするのかということを説明しておくことで、その後もスムーズに測量ができるはずです。
隣の土地の所有者は、はっきりと土地の境目を決める際に非常に重要になってくるため、きちんと挨拶しておくことをおすすめいたします。
測量
その後は直接現地に行き、境界の調査と測量を行います。
そして、土地家屋調査士が測量した結果に基づいて、隣接する土地の所有者との立ち合い確認の準備がなされます。
境界立ち合い確認
立ち合いでは、隣接する土地の所有者、国有地などの場合は官民など、その土地の関係者が現場に立ち会います。
基本的には隣地の所有者だけでも問題ありませんが、場合によっては道路の向こう側の土地の所有者が立ち会わなければならないケースもあります。
関係者が納得すればそれで境界の確定ということになりますが、逆に全員の承諾を得られなければ境界が確定されず、再度協議をしなければなりません。
境界杭の埋設
その土地に関係する全員が納得したら、境界に境界杭を埋設します。
境界杭には様々な種類がありますが、通常は金属プレートやコンクリートの杭が利用され、その土地に最も適したものが埋められます。
図面作成
きちんと測量をしたという証明として、測量結果や今までの資料を基にして、その土地の図面を作成しなければなりません。
最後に、登記に必要な書類を作成して測量が完了します。
土地境界確定測量の2つの注意点
それでは最後に、土地境界確定測量を行う上での注意点を見ていきましょう。
注意すべき点はたくさんありますが、土地や一戸建てを売却する際には特に、
- 時間がかかる
- 隣地とのトラブル
という点に気を付けましょう。
時間がかかる
実際の土地を見てその境目をはっきりとさせるだけだから、簡単にできるんじゃないかと考える方もたくさんいます。
しかし、どれだけ小さな土地であったとしても、専門家がその測定をするまでには3,4ヶ月かかることが多いです。
早ければ2ヶ月かからないこともあるようですが、やはりそれなりに時間がかかると思っておいたほうが良いでしょう。
また、例えば隣地の所有者が多かったり隣が共同不動産だったりする場合には、その所有者や共有者全員の承諾が必要になるため、さらに時間がかかります。
土地境界確定測量を行うタイミングにもよりますが、この測量に時間がかかることによって売却活動に悪影響を及ぼす可能性もあるかもしれません。
自分の土地が具体的にどこからどこまでなのかがはっきりとしていないのであれば、できるだけ早い段階で専門家に土地境界確定測量を依頼するようにしましょう。
隣地とのトラブル
土地境界確定測量ををすることによって、隣人とトラブルになるというケースは少なくありません。
例えば、隣の土地の所有者が自分の土地だと思っていた部分が、こちら側の土地だと判断された場合、当然すぐには納得できない方も多いです。
先ほども述べたように、土地境界確定測量を終わらせるには、関係者全員の承諾が必要となります。
その結果に納得できない隣地の所有者がいつまでたっても承諾しないということは、いつまでたっても土地の境界が確定しないということを意味します。
一般的には3,4ヶ月で終わる土地の測量ですが、実際に確定するまでに1年以上かかるケースもあれば、中には結局はっきりと決まらないというようなケースも存在するのです。
仮にそうなってしまうと、こちらが早く物件を売却したいと思っていてもすぐに売却活動に移ることができませんので、まずはその土地の問題を解決しなければなりません。
時間がかかる場合は、土地家屋調査士や場合によっては弁護士などを交えて、じっくりと話し合う必要があります。
まとめ:土地境界確定測量はしっかりやろう
土地のみを売却する際にはもちろんですし、一戸建てを売却する場合にも、どこからどこまでを売るのかということをはっきりさせなければなりません。
そのためには、土地家屋調査士に土地境界確定測量を行ってもらい、隣地との境目をしっかりと決めてもらう必要があります。
場合によっては高額になるケースもある土地境界確定測量ですが、土地の境目がはっきりとしないまま売却すると後々トラブルになる可能性があるため、わからない場合はやらざるを得ません。
土地を明確にするにはお金もかかりますが、場合によってはかなりの時間が必要になることもありますし、隣地の所有者とトラブルになるケースも少なくありません。
中には、できるだけ早く一戸建てを処分したいからすぐにでも売却したいという方もいるのではないでしょうか。
土地の境目をはっきりとさせない限りは売却は難しいため、できるだけ早いタイミングで測量をお願いすることをおすすめいたします。