既存住宅売買瑕疵保険を詳しくご存知でしょうか?
既存住宅、つまり中古住宅を売買する際に利用する保険であり、中古住宅の売買件数の増加とともにこの保険の注目度も高くなってきています。
中古住宅は新築住宅と違って売主が個人であるケースが多く、ゆえに引渡し後の瑕疵によるトラブルなどが不安視されてきました。
この保険は、そのような不安を解消して中古住宅の流通を促進することを目的に2016年に誕生した保険です。
この記事では、この既存住宅の購入時に検討すべき「既存住宅売買瑕疵保険」を詳しく解説いたします。
目次
そもそも瑕疵とは何?品質・性能を欠くこと
裁判の判例において、瑕疵(かし)とは「その物が通常有すべき品質・性能を欠くこと」と定義されており、住宅における瑕疵は、
- 物理的瑕疵
- 法律的瑕疵
- 心理的瑕疵
の3つに大きく分けられます。
物理的瑕疵は土地や建物に属する瑕疵
物理的瑕疵とは、雨漏りや建物の傾きなど土地や建物に属する瑕疵です。
今回解説する保険では、この物理的瑕疵をカバーするための保険です。詳細は後ほどご説明いたします。
法律的瑕疵は法律への対応から生じる瑕疵
法律的瑕疵とは、重要事項説明書に記載すべき内容が漏れているなど、法律への対応から生じる瑕疵です。
不動産売買の仲介に入る業者がしっかりしていれば起こりにくい問題ですので、今回の保険対象には含まれていません。
心理的瑕疵は十分な内容を伝えていない瑕疵
心理的瑕疵とは、自殺物件であることを伝えていないなど購入者が購入する意思決定をする上で伝えるべき内容を伝えていなかったという瑕疵です。
これも売主側が気をつければ防げるケースが多く、今回の保険対象には含まれていません。
既存住宅の物理的瑕疵に保険が必要な2つの理由。
なぜ既存住宅(中古住宅)には、物理的瑕疵をカバーする保険が必要なのでしょうか。
その理由は大きくこちらの2つです。
- 売主も建物の状態が把握しにくい
- 売主が個人のケースが多い
売主も建物の状態が把握しにくい
まず1つ目は「売主も建物の状態が把握しにくいこと」。
中古住宅の売買では、売買対象が築40年の中古戸建のケースもあれば、築2年で新築に近い状態の中古戸建のケースもあります。
立地やそれまでの保守状況などにより、建物の状態は物件ごとに異なります。
また、既に建てられている住宅を売買しますので、売主は建物を隅々までチェックしにくいのが中古の特徴です。
柱を調べるには壁を剥がさなければ見えませんし、建物の傾きなどは専門家でなければ調査は難しいでしょう。
新築住宅では建てている段階で検査をして建物の状態を把握(場合により修正)できます。
しかし、中古住宅では売主もその状態を把握しにくいため、取引後のトラブルを防止して安心して売買できるように今回の保険が誕生したわけです。
売主が個人のケースが多い
もう1つの理由は、中古住宅の売買では、売主が個人のケースが多いことです。
不動産業者が会社を登録するためには、一定の保証金を供託するか、保証協会への加入が義務付けられてます。
また、会社には資本金がありますので、トラブルによって追加で金銭を負担しなければならなくなっても、ある程度までは対応することができます。
一方、個人の場合には資金的な裏付けを取ることができません。
売却した資金を住宅ローンの完済のために使う方もいらっしゃれば、新しい住宅を購入する資金として使う方もいらっしゃいます。
物理的瑕疵によって取引終了後に対応費用を急に請求されても対応できない個人の売主様は多く、それゆえトラブルに発展する恐れがあるのです。
今回、紹介する瑕疵保険はこのようなトラブルのときに保険金によってスムーズに解決に向かうことがでできますので、
中古住宅を購入する方はもちろん、中古住宅を売却する方にも大きなメリットになる保険です。
既存住宅売買瑕疵保険の加入者はだれ?売買の取引ケース別に紹介
隠れたる瑕疵を保証してくれるメリットの大きい保険ですが、加入者は誰になるでしょうか?
既存住宅売買瑕疵保険の加入者は、売買の取引ケースに応じて、以下の3パターンに分かれています。
- 売主の不動産業者が加入するパターン
- 個人間売買における不動産仲介会社が加入するパターン
- 既存住宅を検査する業者が加入するパターン
売主の不動産業者が加入するパターン
中古住宅を不動産業者が買取した後、リフォームなどを実施して再度販売するときに加入するケースです。
保険を付帯することで購入を検討する方の不安を払拭し販売を促進するために、売主の不動産業者が加入します。
個人間売買における不動産仲介会社が加入するパターン
売主と買主が個人の場合に、売買の間に入る不動産仲介会社が加入するパターンです。
引き渡し後に隠れたる瑕疵が見つかったとき、基本的には、その売買取引の仲介を担った不動産業者が対応を行うこととなります。
そのため、個人間の売買取引にて、この保険を付保する場合には、不動産仲介会社が加入者となります。
尚、不動産仲介会社が倒産などで対応を行えない場合は、買主からの保険請求にも応じてもらえます。
買主の要望から加入するパターンです。
既存住宅を検査する業者が加入するパターン
こちらは、個人の売主が既存住宅の検査を依頼し、「検査済み住宅」として販売力を高めるときに加入するパターンです。
もちろん、買主からの依頼による場合も対応できます。
加入者はその既存住宅を検査した業者ですが、②と同じように検査した業者が倒産などで対応できない場合には、買主からの保険請求にも応じてもらえます。
既存住宅売買瑕疵保険を取り扱う5つの保険会社
国土交通大臣から住宅瑕疵担保責任法人指定を受けている保険会社は以下の5つです。
- 株式会社住宅あんしん保証
- 住宅保証機構株式会社
- 株式会社日本住宅保証検査機構
- 株式会社ハウスジーメン
- ハウスプラス住宅保証株式会社
新築住宅の保険を主に取り扱ってきた保険会社や住宅ローンのフラット35における建物検査などを主に実施してきた保険会社など、各保険会社の背景はさまざまです。
後ほど記載いたしますが、既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには事業者登録が必要となり、その登録費用は各保険会社で区々です。
どこの保険会社も国土交通大臣の指定を受けており、一定の安心は確保されておりますので、加入者となる業者が日頃利用している保険会社を確認してみても良いでしょう。
実際の加入加入状況と普及が進んでない2つの理由
既存住宅売買瑕疵保険は2010年から始まりました。
始まってからまだ10年も経過していませんので、これから徐々に認知・普及が進んでいく段階です。
国土交通省が公表しているデータでは、2012年における中古住宅取引戸数に対しての本保険の付保率は約2.6%でしたが、2018年には約8.2%に増加しています。
国土交通省では、既存住宅の流通量増加を推進しており、2025年には付保率が20%を超えることを目標としています。
普及が進んでいない要因としては2つ挙げられます。
- 加入手続きが不動産業者の負担になっている
- 自社で瑕疵担保責任を負うサービスを始めている
加入手続きが不動産業者の負担になっている
1つは、加入手続きが不動産業者の負担になっていることです。
前述の通り、加入者は不動産業者や検査する業者であり、事業者登録なども必要なことからその手続きが実質的には追加の負担になっています。
そのため、買主や売主から確認や依頼を受けた場合には対応を行いますが、不動産業者から積極的にアピールしていないというのが実情です。
自社で瑕疵担保責任を負うサービスを始めている
もう1つは、大手不動産仲介会社は、自社で瑕疵担保責任を負うサービスを始めていることです。
大手不動産仲介会社では、売却の依頼を受けた物件のうち検査等で問題の無いものについては、瑕疵担保責任を不動産仲介会社が負うサービスを展開しています。
これにより、今回ご紹介している保険と同様に、買主としては「大手の会社が責任を負うのなら安心して購入できる」という気持ちになるわけです。
現在、不動産流通の業界では、他社との差別化のために仲介手数料を減額する会社が増えており、大手不動産仲介会社としては、高い仲介手数料の安心材料としてこのサービスを展開しています。
既存住宅売買瑕疵保険に加入するまでの流れ
次に保険に加入するまでの手続き紹介します。
ステップ①:事業者登録
保険加入者となる事業者は登録が必要です。
先程のケースでは、1番上の場合は売主となる不動産業者、真ん中の場合は不動産仲介会社、そして1番下の場合は検査する業者が該当します。
ステップ②:保険対象住宅の調査
保険対象となる住宅、つまり売買物件が保険の対象となる住宅であるか調査を行います。
調査の内容は築年数など住宅の概要はもちろんの事、現地に調査員が赴き、実際の物件を確認いたします。
ステップ③:保険契約の申込
調査の結果、この保険に適合することが判明しましたら、保険契約の申し込みを行うことができます。
ステップ④:保険証発行
引渡しの時期に合わせて、保険証が発行されます。
ステップ⑤:対象住宅の引渡し
そして最後が対象住宅の引っ越しとなります。
既存住宅売買瑕疵保険の加入に必要は費用について
どれだけメリットの多い保険でも気になるのはそれにかかる費用です。
良い保険でも手軽に加入できる保険でなければ、加入を考えてしまいます。
売買金額2,000万円の既存住宅の取引に、安心感を加えるための保険として200万円を支払う方がいるかと問われると答えはNOでしょう。
前述の5社の1つである株式会社日本住宅保証検査機構のホームページでは、以下の保険料が掲載されています。
戸建住宅
保険期間 | 保険金 | 建物床面積 | 保険料 |
1年 | 500万円 | 100~125㎡ | 24,300円 |
2年 | 500万円 | 100~125㎡ | 28,800円 |
2年 | 1000万円 | 125~150㎡ | 35,700円 |
共同住宅(マンション)
保険期間 | 保険金 | 建物床面積 | 保険料 |
1年 | 500万円 | 70~85㎡ | 20,500円 |
2年 | 500万円 | 70~85㎡ | 24,700円 |
2年 | 1000万円 | 70~85㎡ | 25,700円 |
株式会社日本住宅保証検査機構ホームページ抜粋 2019年10月現在
住宅の売買では、売買代金が数千万円にもなりますので、この保険料で数年間の隠れたる瑕疵に対しての保証が得られると考えればメリットが大きい保険ではないでしょうか。
まとめ
既存住宅売買瑕疵保険は、これまでの「既存住宅(中古住宅)は何か問題がありそうで怖い」という先入観を払拭する目的から始まった保険です。
少しずつ普及は進んでおり、既存住宅の流通促進という国土交通省の指針によって今後も普及が進むと考えられます。
一方、この保険と同じ「既存住宅の取引に安心感を与える」という目的から、大手不動産仲介会社では自社でこの保険と同様のサービスを展開しています。
既存住宅(中古住宅)の売買では、隠れたる瑕疵に対してどのような対策があるのかをしっかりと確認しておくことが、引き渡し後に安心して新生活を送れるポイントのひとつですよ!