高齢になってから、今まで住んでいたご自宅を売却したいと考える方はたくさんいらっしゃいます。
理由は様々ですが、子供がいなくなって夫婦2人だけでは家が広すぎるという夫婦もいれば、2階建てや3階建ての場合は、足腰が不自由になったときに使いづらいというケースもあります。
人生の大半を共にしてきた家を売ってしまうのは寂しいと感じる方も多いですが、使い勝手が悪いとわかっているのであれば、やはり売ってしまって新しい住居を探したほうが効率的です。
もちろん、売りたいと思ってすぐに売れるようなものではないかもしれませんが、どこかのタイミングで売却を考える方は少なくありません。
それでは、老後のどのタイミングで家を売るのが良いのでしょうか。
今回は、高齢者が家を売るタイミングや、売却後の新しい住居などについて紹介していきます。
家を売るタイミング
最初に、家を売るタイミングについて見ていきましょう。
もちろん思い立った時に売却を考えるのもよいですが、やはり何かがきっかけとなって家を売りに出す方が多いようです。
家の機能性に不満を感じた瞬間
ずっと住んでいる家に愛着を持つ方も多いですが、その反面、古くなった建物はところどころ悪くなっていますし、若いころに購入した家は高齢者に適していないことも少なくありません。
建物全体が古くなっている場合は、地震をはじめとする災害に耐えられない可能性もありますし、技術発展が目覚ましい昨今では、どんどんと新しい機能を持つ住居システムが造られています。
また、最大の理由として、足腰が悪くなったために2階部分を利用することができなくなったり、段差が多いと動き回るのも大変だというものが挙げられます。
実際に、階段を移動中に転倒してしまい大怪我を負う高齢者もいらっしゃいますし、バリアフリー化していない住まいは高齢者には住みづらいのかもしれません。
そう感じたら、やはりそれが自宅を売却して新しい住まいを探すタイミングといえるのではないでしょうか。
退職後の売却
現役で働いている時と引退した時とでは、生活のスタイルが大きく変わり、基本的には自宅にいる機会が多くなります。
会社勤めの時に購入した家の場合は、やはり通勤のことなどもある程度は考慮していたのではないかと思いますが、退職してからは通勤する必要がありませんので、基本的にはどこに住んでもかまいません。
また、それまでは車を運転して生活をしていたという方も多いと思いますが、加齢とともに運転の機会も減り行動範囲も狭くなるのが一般的です。
退職後は、これまでは仕事をメインで考えていた方も、住まいの快適性を考えるようになる良いタイミングです。
家族構成の変化
若いころは、新しい命が誕生して家が手狭になったため、現在住んでいる住居の購入を決断したという方も多いのではないでしょうか。
しかし高齢になると、反対に子供が巣立っていきますので、夫婦2人では住まいが広く感じられるようになります。
広い家に住みたかったと思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、2人には広すぎる家では、管理も大変ですし寂しさを感じることもあるはずです。
そんなときには、2人の生活に適した広さの住居を探してみることをおすすめいたします。
売却時の住宅ローンを確認する
既にローンを完済している場合は、問題なく住居を売却することが可能です。
しかし、中にはまだ住宅ローンが残っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ローンの有無で売却できるかできないかが変わってくるためまずは住宅ローンの状況を確認してみましょう。
アンダーローンのケース
アンダーローンを一言で言うと、住宅ローンの残債が住宅の価値より低い状態のことになります。
要するに、まだ住宅ローンが残っているものの、売却をすることによってそのローンを完済できる状態にあるということです。
もちろん完済している場合と比べると家を売った際の利益は少なくなりますが、それでも利益を出すことができるため、その利益を利用して新しい住宅に移ることが可能です。
オーバーローンのケース
アンダーローンに対して、住宅ローンの残債が不動産の売却価格を上回ることをオーバーローンといいます。
この場合は、自宅を売却したとしてもローンが残ってしまいますので、抵当権によって普通に売却を行うことができません。
抵当権とは、ローンが払えなくなってしまった際に担保としてその家や土地を差し押さえる権利になり、住宅ローンが残っている場合は一般的にその対象の住宅が担保となります。
⇒不動産売却にかかる諸費用・税金まとめ。チェックしておくべき6項目
そのため、アンダーローンとは違い自由に家を売ることができないのです。
しかし、ローンの残高から家の売却価格を引いた額が手元に用意できるのであれば、売却することは可能です。
新しい住居についても考える
家を売る際には、売却方法や売却価格が気になるという方が多いと思います。
しかし、本当に重要なのはその後どこに住むのかということですので、売却と同時に新しい住居についても考える必要があります。
新居の場所は利便性を重視
住んでいた家を売却して新しい家に移るということは、年齢的にそこが最後の住まいになることが多いです。
今よりもさらに年を取ると体が不自由になることも考えられますし、今まで通りに生活できなくなることも予想できます。
そのため、まずは医療や福祉などの利便性を考えて住むエリアを決める必要がありますし、日常生活が容易に送れる場所も候補に入れておきましょう。
それとともに、なるべく治安のいい場所を選んだほうが良いですし、地震などの災害の際には簡単に避難できる場所を選択することをおすすめいたします。
年齢的に車が乗れなくなってしまうことも考え、駅やバス停などの近くを選ぶ方も少なくありません。
新居の形態はマンションが多い
新しい家を、一戸建てにするのかマンションにするのかも悩みどころになります。
一戸建ての場合は両隣や上の階の音を気にする必要がない、または下の階に気を使う必要がないというメリットがありますし、プライバシーもしっかりと保てます。
ただし、マンションと比べると防犯面が若干不安ですし、階段がある住宅を選ぶと結局現在の建物と同じように上り下りに苦労する可能性があります。
一方で、マンションの場合は基本的にワンフロアになりますし、エレベーターを利用することになるため、基本的には段差で悩むということがなくなります。
また、セキュリティに優れたマンションも多く、戸締りも簡単なため、防犯面では優れていると言えるかもしれません。
しかし、マンションを購入する場合は管理費等が毎月発生することになりますし、プライバシー面で一戸建てに劣ります。
このように、双方にメリットとデメリットがありますが、やはり高齢になるほど足腰が弱くなるという理由などで、マンションを選択する方が多いようです。
購入と賃貸について
年齢によっても変わってくるかもしれませんが、新居を購入してしまうか、それとも今後はずっと賃貸で生活するかという点も迷いどころです。
購入してしまえば固定資産税を支払うくらいで毎月のように家賃を払う必要がなくなりますし、
⇒固定資産税とは?おトクに減税する方法と知っておきたい評価額の基準
必要に応じて間取りを変えるなどのリフォームも自由に行うことができます。
しかし、支払い能力が求められますので、年齢や資産状況によっては購入が難しいこともあります。
賃貸にする場合は、いつでも気軽に住居を変えられますし、購入する場合と比べると初期費用を抑えることができます。
ただし、毎月のように家賃を払わなければならないことや、リフォームを自由に行うことができないと言ったデメリットも出てきます。
お子様がいる場合は、購入することで相続税対策になったり、資産として残してあげることもできるため、そういった点も考えてどちらにするか決断するようにしましょう。
子供との距離について
高齢になると、万が一の時のためにお子様の近くに住んでおいたほうが良いと考える方もいらっしゃいます。
お子様が住む場所との位置関係も考えて新居を借りるのもよいでしょう。
子供が遠方にいる場合
例えば、関西圏に住んでいる方が、子供が奥さんや孫と生活をしている関東圏に移るというのも方法の1つです。
引っ越しをするとしても住み慣れた場所がいいと考える方も多いですが、思い切って生活に変化を付けてみるのも面白いのではないでしょうか。
子供や孫と食事をすることもできますし、何かがあればすぐに駆けつけてくれるという安心感もあるため、実際に子供の近くに引っ越しをするという方もいらっしゃいます。
しかし、子供やその奥さん、または旦那さんとの関係などもあるため、近すぎる場所には住みづらいと考える方も少なくありません。
さらに、今まで全く住んだことのない場所に移ってしまうと、知人が一人もいない環境になってしまうこともあり得るため、充実した日常生活が送れなくなってしまうリスクもあります。
子供が近場にいる場合
お子様が近くにいる場合は、特に現在の住居に大きな不満がないのであれば、そのまま住み続けるというのも選択肢として考えられます。
または、例えばお子様がマンションを購入して住んでいるような場合は、同じマンションの違う部屋を借りてそこに住むというのも良いのではないでしょうか。
近すぎるから気まずいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、お互いのプライバシーは適度に保ちつつ、お互いに助けが必要になったときには助け合うことができます。
マンションを購入する場合は、やがて孫世代に活用してもらうことができるかもしれませんが、まずは賃貸で様子を見てみるというのも方法の1つです。
子供がいない場合
お子様がいない場合は、最終的には他人の助けを借りて生活をしなければならない可能性が高いです。
そのため、普段から気軽に買い物ができる施設の近場を探すというのも重要ですが、介護施設等が充実しているエリアを選ぶことをおすすめいたします。
現在はまだ夫婦ともに元気で足腰もしっかりとしているかもしれませんが、将来的には高齢者用の施設を利用することも考える必要があります。
例えば体が元気だったとしても入居可能な施設もあるため、売却のタイミングで施設に入り、そこで新しい友人を見つけて生活を送るという方もいらっしゃいます。
体験入居などが可能な施設も多いため、売却前に複数の施設を見て候補をピックアップしてみるとよいでしょう。
最後に
現在住んでいる住居にずっと住み続けると決めているのであれば、売却を考えることはないかもしれません。
しかし、普段から何となく住みにくいと感じている場合は、どこかのタイミングで家を売って新居に移る日が来るかもしれません。
高齢になればなるほど引っ越しなどが大変になりますし、その間にも家はどんどんと古くなっていくため売却価格も下がっていきます。
どこかで売却する可能性があると考えている場合は、できるだけ早い段階で不動産売却に対する知識を付けておいても損はないでしょう。
家を売る方法などがわかっていれば、売却のタイミングで素早く行動に移すことができるはずです。