外構工事に定型的なプランはないため、基本的にすべてがオーダーメイドです。
そのため、外構工事を依頼する前には必ず見積もりをとって検討する必要があります。
見積もりが適正であるか判断するために相見積もりをとることも一般的になってきましたが、見積書の見方が分からなければ、そもそも比較のしようがありません。
この記事ではそんな見積書の見方やそのポイントを解説します。
見積書の記載方法
外構工事の見積書に決まった様式はありません。
各社が独自の書式を使用しているため「見積書のどの部分に何を書くか」というルールも特にはありません。
そのため、見積書のどこを見ればよいか、一般論として解説するのは難しい面もあるのですが、ひとまず「見積書には定まった書式がない」ということを覚えておいてください。
見積書の書式にバラつきがあるにしても、内容を理解するための基本知識は共通なので、まず見積書の記載方法に関する基本的なルールを解説します。
数量と単価
一つ一つの工事の見積金額は、一般的に「数量」と「単価」を掛け合わせて算出されます。
「数量」とは、工事をする範囲(長さ、広さ)を指します。
たとえば、フェンスの設置工事の場合だと、「数量」とはフェンスを設置する長さのことをいいます。
これに対し、「単価」とは、材料代や技術料だと考えてください。
つまり、相見積もりをとるときに、事前に外構工事業者に「数量」を伝えておけば見積もり条件が揃うため、見積もり金額が高いか安いかを比較することができるようになります。
「単価」は外構工事業者によって金額が違うのですが、「通常はだいたいこれくらい」という相場があります。
ただし、「単価」の中にどこまでの作業を含むか、業者ごとに異なることもあるので注意が必要です。
たとえば、一方の業者はフェンスを設置する工事すべて(基礎工事と設置工事)を含んで単価を設定しているのに対し、もう一方の業者はあくまでフェンスの設置のみで単価を設定し、フェンスの基礎部分は別工事としてカウントしているという場合もあります。
相見積もりを取る場合は必ず合わせるようにしましょう。
「一式」という表現
外構工事に限らず、建設業界の見積もりでは「○○一式」といった書き方をするのが一般的です。
この「一式」という表現は、外構工事業者にとっては便利ですが、注文者にとっては工事代金の内訳がはっきり分からない困った書き方です。
具体的な内訳も分からないまま「土工事一式 ○○万円」と表示されていたらどうでしょうか。
これでは、土工事でどのような作業が行われるのか、一つ一つの作業がいくらかかるのか、内訳がまったく分かりませんよね?
このような書き方をされてしまうと、作業の一部を取りやめた場合にいくら減額されるのか、逆に作業面積が増加した場合にいくら増額されるのかが分からず、すべて外構工事業者の言い値になってしまいます。
外構工事は高額な契約ですから、工事の内訳も分からないような見積もりでは困りものです。
あまりに大雑把なくくりで「○○工事一式」と書かれている場合には、どのような作業内容を含んでいるのか内訳をしっかりと確認するようにしてください。
見積書の項目
では次に見積書の中に出てくる内訳項目が、それぞれどのような作業を指すのか、どのような意味を持つのか、基本を紹介していきます。
主な項目は
- 基礎工事
- 設置費
- 設計料・監理料
- 諸経費
この4つです。
基礎工事は土木作業やコンクリートを打ち込む作業
基礎工事というのは、土木作業やコンクリートを打ち込む作業のことをいいます。「土工事」、「土間コンクリート工事」に分けて説明します。
土工事は「数量」×「単価」
外構工事では、重機を使って敷地を掘削したり、搬出したりする「土工事」が必要となります。
見積書には、土地の掘削、残土の処分、重機の使用料などの細目がありますが、基本的に土工事の費用は「数量」×「単価」で算出されます。
この場合の「数量」とは、工事対象となる土地の面積(㎡)を指すので、あまりに実態とかけ離れた数量になっていないか照合することができます。
また、「土工事一式」とひとまとめにして、いきなり工事金額が書かれているような見積書は不適当です。
土間コンクリート工事も「数量」×「単価」
土間コンクリートとは、駐車スペースや玄関アプローチなどを平坦に仕上げるためにコンクリートを打ち込んだものです。よく「土間コン」などと呼ばれています。
土間コンクリートの費用も「数量」×「単価」で算出されます。
この場合の「数量」とは、工事対象となる土地の面積(㎡)を指すので、あまりに実態とかけ離れた数量になっていないか照合することができます。
設置費とは設置する工事費の総称
設置費とは、ブロック塀や門扉、カーポートなどを設置する工事費の総称です。
コンクリートブロック塀・化粧ブロック塀も基本は「数量」×「単価」
ブロック塀の設置費用についても、基本的には「数量」×「単価」で算出されます。
ブロック塀の場合でも、「数量」は面積(㎡)を基準にするので、あまりに実態とかけ離れた数量になっていないか照合することができます。
ブロック塀を設置するには頑丈な基礎が必要なため、このほかにも「基礎工事」や「左官工事」の費用などもかかりますが、「数量」×「単価」という考え方は共通です。
フェンスも「数量」×「単価」
フェンスの設置費用も「数量」×「単価」で算出されます。
設置する数量(m)は図面上から明らかですので、フェンスの素材やグレードによって「単価」が大きく変わります。
門柱・門扉はケース・バイ・ケース
門柱は、コンクリートブロックなどを積み上げて吹き付け塗装で仕上げる方法、既成の門柱を設置する方法など、作り方自体がさまざまであるため、見積書の記載方法もケースバイケースになります。
ただし、ここまでの知識を応用すれば、見積書の内容を検討できます。
たとえば、コンクリートブロックを積み上げて作るタイプの門柱であれば
- 基礎工事
- コンクリートブロックの積上作業
- 仕上げ作業(塗装、左官)
などで門柱を作るので、コンクリートブロック塀と同じ考え方が使えるわけです。
なお、門まわりには、このほかにも
- 門扉
- 表札
- 郵便受け
- 照明
などを設置しますが、これらは単純な取り付け工事ですので分かりやすいはずです。
カーポートも事前に検討は可能
カーポートの地面の部分は、要するに土間コンクリートですから、すでに説明した土間コンクリート工事の知識を応用すれば、見積書の内容を検討することができます。
一方、カーポートの屋根の部分は、既製の製品を取り付ける工事ですので、「材料代」と「取り付け工事費」がかかります。
材料代と取り付け工事費まとめて「取付工事一式」と記載する場合もありますが、この程度のまとめ方であれば許容範囲だといえます。
植栽費も「数量」×「単価」
植栽も、基本的には「数量」×「単価」で表示されます。
ただし、芝生や生け垣などの数量は面積を基準にするため、単位は「㎡」ですが、シンボルツリーなどであれば単位は「本」です。
このように植栽の場合は、面積や本数がカウントしやすいので「植栽工事一式」という書き方は不適当といえます。
設計料・監理料は7~10%程度の金額
デザイン性の高い外構工事を提案する業者では、設計料や監理料を請求する場合もあります。
設計料・監理料については、工事代金の総額の7~10%程度の金額が相場と言われています。
諸経費は総額の10%くらい
中身も分からないまま請求されると、どうも納得が行かないという気持ちにもなりますが
- 広告宣伝費
- 通信費
- 役所に提出する書面
- 図面の作成費
など、外構工事には金額の明細を算定しにくい項目も多々あるのは事実です。
なので、明細書には具体的に内訳を記載せず、ざっくりと「諸経費」と書かれている場合がほとんどです。
内訳のよく分からない費用はすっきりしないでしょうが、総額の10%程度くらいまでであれば許容範囲といえます。
中には諸経費0円(つまり見積書に諸経費の記載がない)という見積書の会社もありますが、通常、どんな会社でもこうした諸経費は発生していますので、諸経費の記載がないということは、別の項目で帳尻を合わせていると考えた方がいいでしょう。
必ずしも諸経費0円の業者が良心的というわけではありません。
相見積もりを依頼するときのポイント
一般論として、相見積もりはとても有効です。
しかし、外構工事は基本的にオーダーメイドなので、高いか安いかを単純に比較しても意味がありません。
そこで、相見積もりをとるときのポイントを確認しておきましょう。
現地調査を経た見積もりか
見積もりの目的は、工事金額の目安を知ることです。しかも、可能な限り、見積もり金額は正確でなければなりません。
たとえば、周辺の道路が狭く、工事車両が容易に入れないような立地の場合には、あとから追加費用を請求されるかもしれません。
また、自分ではこれで決定だと思っていても、周辺の街並みを考えると選定できない工法やデザインなどもあるかもしれません。
こうした事情を反映することなく、単純に見積金額が高いか安いかという基準だけで選ぶと、あとから思わぬ追加が出てかえって高くつくこともあります。
このような行き違いを防ぐために、現地調査に来てもらい、周辺の環境を確認してから見積金額を提示してもらいましょう。
現地調査もないまま作成された見積書と、現地調査を経て作成された見積書を比較してはいけません。
悪質な手段を封じる方法
「とにかく1円でも安い方がいい」という姿勢で臨むと、無理やり低い金額の見積もりを作り、自社に乗り換えさせようとする業者も出ています。
結局は、その分だけ作業内容を減らしたり、サービスの質を落としたりして帳尻を合わせているだけなので「実はまったくお得ではなかった」ということもあります。
不正確な見積金額を提示して期待させ、後からあれこれと理由をつけて見積金額を釣り上げていく悪質業者に引っ掛からないようにするためには
- 「同じ条件で」
- 「一斉に」
相見積もりを依頼することが基本です。
まとめ
むやみに相見積もりをとっても、前提とする条件が違えば、当然に見積金額も異なるため、そもそも高いか安いか比較できないのです。
ただ単に「金額が安い」という判断基準ではなく、ここで取り上げた見積書を読み解くルールを押さえておけば安心です。
詳しい外構工事の費用の相場に関してはこちらの「外構工事(エクステリア)にかかる費用の相場。工事別の目安の金額。」記事も参考にしてみてください。