解体工事を業者に依頼する際には、事前に複数の業者に相見積もりを取って、その中から最も安い業者、または最も信頼できる業者を選ぶことになります。

複数の業者に見積もりをお願いすることによって、対象となる建物の大体の解体費用の相場を知ることができるはずです。

しかし、見積もりをお願いする前に自分で解体費用を知ることができれば、業者が提示する見積もり額にも納得しやすいのではないでしょうか。

もちろん、建物の大きさや坪面積がほぼ同じだったとしても、立地条件や時期などによって解体費用が変わってくることが多いですので、必ずしも自分で計算した価格と業者の見積もり額が近くなるとは限りません。

今回は、坪単価で計算する大体の解体費用と、基本の費用とは別で発生する料金、追加料金が発生するケースなどを細かく紹介していきます。

解体工事の費用と坪単価

解体業者に工事をお願いする前には、相見積もりを取って実際の解体費用を確認するという方も多いはずです。

しかし、実は大体の工事の相場は自分でも割り出すことができます。

まずは自分で解体工事の相場を出してみることによって、業者の見積もり額と比較することができます。

坪単価でわかる解体費用

解体工事の価格の元となるのが、その建物の坪単価です。

1坪当たりの単価を元にして、建物を解体した際の総額を割り出すことになりますが、坪単価は建物の構造によって変わってきます

その家屋が何でできているかで解体工事の大変さが変わってくるだけでなく、解体後に出る廃材の処分費用も種類によって異なるため、それが坪単価に反映されているのです。

それでは、建材ごとの坪単価の平均値を見ていきましょう。

  • 木造住宅:1坪25000円~35000円
  • 鉄骨造:1坪35000円~45000円
  • 鉄筋コンクリート:1坪45000円~50000円

この坪単価には、解体費用だけでなく廃材の運搬費用、処分費用、必要な書類作成費用なども含まれています。

例えば、30坪の木造の住宅を解体する場合は、1坪25000円~35000円の30倍ということになるため、75万円~105万円くらいかかるということになります。

ほとんどの解体業者が、この坪単価を利用して基本的な解体工事の料金を積算していると思いますので、まずはこれでご自宅の解体工事の相場を計算してみましょう。

簡単な解体工事の相場にかんしてはこちらの「解体工事で掛かる費用の相場。抑えるべきポイントとからくりについて」でも解説しています。

例外は多い

大体の相場は上記の坪単価を使って算出することができますが、この計算が全ての建物に当てはまるというわけではありません。

実際に、30坪だから高くても105万円だと思っていた解体費用なのに、それをはるかに上回る見積もり額が出されるケースも少なくありません。

その理由は、解体予定の建物の立地や工事をする時期などよって価格が大きく左右されることがあるからです。

後程詳しく紹介いたしますが、例えば工事に使う車両が通れないような場所に建てられている建物を解体する場合は、手作業での工事が必要になるケースが多いため、その分の費用が上乗せされるのです。

坪単価が低すぎる業者には注意

先ほど構造ごとの大体の坪単価を紹介いたしましたが、平均を大きく下回る坪単価で工事をするという業者もたくさん存在します。

解体工事の悪徳業者を見抜く方法とトラブルが起きたときの対処法

当然安い方がいいという方がほとんどかと思いますが、その料金は解体費用のみで構成されており、廃棄物の処理費用をはじめとするその他の費用が含まれていない可能性も高いです。

そうなると、結果的に普通の料金を提示している業者よりも総額が高くなってしまうことも多いです。

もちろん契約前の見積もりになるため、試しに坪単価が安い業者に相談してみるのもよいかと思いますが、その際には全ての料金が含まれているか、追加で支払う必要がないか、などの確認が必要です。

条件によって費用が変わるケース 

上記の坪単価は、あくまでも基本的な料金の出し方になり、すべての住宅に当てはまるわけではありません。

条件によって費用が変わってきますが、その具体的な条件の例を紹介していきます。

立地によって変わる

解体する建物の前の道路が狭かったり、道路と敷地内の間に段差があるなどの理由で、解体工事に重機を利用できない場合があります。

そうなった場合は手作業で解体工事を進めなければなりませんし、解体後の廃材も人の手を使って運び出さなければなりません。

重機を使うことができればすぐに終わる作業も、手作業となると時間がかかりますので、その分解体工事費用が高くなります。

解体工事の時期によって変わる

引っ越しを経験したことがあるという方は多いと思いますが、やはり閑散期と比べるとピークの時期は引っ越しの料金が高くなります。

解体工事にも閑散期があるため、そういった時期を狙って工事ができるのであれば多少は費用を抑えることができます。

反対に、繁忙期は閑散期と比べると割高になるため、総額が高くなる傾向にあります。

地域やタイミングによって異なることもありますが、一般的には2月と9月は閑散期だと言われています。

解体工事の期間によって変わる

当たり前のことかもしれませんが、工事の期間が長くなればなるほど、工事費用も高くなっていきます。

例えば大雪が降るなどした場合は、雪かきの時間が必要になったり工事自体ができなかったりすることもあるため、その分工事が延びる可能性があります。

その他にも、何らかのトラブルで工事ができずに結果的に工期が延びてしまった場合なども、施主がその分を負担しなければならないケースがあります。

解体工事の費用を分類してみよう

解体業者の中には、セット料金と称して個別の内訳を見積書に表記しないところも存在します。

セット料金は安く記載されている傾向が強いですが、後からその料金に含まれていない項目を入れて追加料金を請求してくるような業者もあります。

そのため、どの部分にどれくらいの費用が必要なのかがはっきりとわかる詳細の見積もりをもらっておいたほうが良いでしょう。

解体工事の見積書でチェックしたい5つの項目と適正な値引きについて

ここでは、解体工事に必要な項目の費用を細かく分類して紹介しますが、下記に紹介する以外の項目がある業者のあるため、あくまで参考程度で確認していただければと思います。

人件費

解体する家屋の大きさや立地条件などにもよりますが、基本的には解体工事には数人のスタッフが必要になってきます。

重機を動かすオペレーターの他に、細々した作業をするスタッフが複数人必要ですし、場合によっては交通整備をするための人員も使わなければなりません。

人件費は地域によって大きく変わってきますが、大体15000円前後に収まることが多いです。

例えば5人で7日間の解体工事を行った場合は、52万5000円ということになりますが、重機を使わない日もあれば人数が必要な日もあったりするため、一概には言えません。

仮設工事の費用

仮設工事は、周囲に迷惑を与える工事の騒音や粉塵などを防ぐために必要になってきますが、養生シートや足場などを総合すると1平米あたり500円~1000円くらいになることが多いです。

例えば、近くに人の住む家がなく、養生シートなどを使う必要がない場合はこの部分が安くなるはずです。

屋根の解体費用

屋根瓦はそのまま重機で潰すことはできず、1つずつ手作業で撤去されることになります。

使用している瓦の種類によって廃棄物の処分費用が変わってきますが、単純な屋根瓦の解体に掛かる費用は1平米当たり1000円~2000円程度になることが多いです。

内装の解体費用

屋根だけでなく、トイレやお風呂、台所、ガラスをはじめとする建物内の設備も、基本的には手作業で取り除かれます。

内装の撤去にかかる費用は、1坪あたり5000円~10000円が平均値です。

重機による解体費用

屋根の解体と内装の解体が終わったら、重機を利用して解体工事をすることになりますが、平均で1坪につき3000円~5000円くらいになります。

重機を動かすオペレーターの他に、粉塵などを防止するために水を撒くスタッフも必要になってきます。

建物の大きさなどによっても異なりますが、重機を使った解体は3日程度で終わることが多いです。

重機の運搬費用

解体工事に重機を利用する場合は、その重機を運搬する費用も必要になってきます。

基本的には現場に持ってきた重機をそのままその現場に置いておくため1往復で済みますが、何らかの事情で毎日のように運搬が必要な場合は高額になるケースも多いです。

一般的に、重機を1往復運搬する費用は40000円前後になります。

基礎の撤去費用

家屋を重機で解体したら、最後に基礎部分を撤去することになりますが、1平米あたり3000円~5000円くらいで計算されることが多いです。

しかし、基礎を取り壊した際に発生する廃棄物の処理費用をまとめてこの項目に加えることもあるため、業者によって計算方法が異なると言えます。

廃棄物の処理費用

解体工事をしたら必ず様々な廃棄物が発生しますが、それらはきちんと分別して処分する必要があります。

木材やコンクリートガラ、ガラスなどの量や割合になりますが、この項目は業者によって見積もり費用が大きく異なるところでもあります。

材質ごとの処理費用を細かく分類する業者もあれば、処理費用と運搬費用を分けて計算する業者もあります。

しかし、平均すると廃材1立方メートル当たりで5000円~20000円くらいに収まるはずです。

諸経費について

解体業者によっては、解体工事費用以外を全て諸経費としてひとくくりにするところもあるため、この項目の金額を平均値で出すのは難しいです。

しかし、見積書に上記に掛かれたような細かな内訳がなされている場合は、諸経費に行政に提出する許可証などの取得費用が含まれるはずです。

解体費用以外の請求

上記で紹介してきた費用は、基本的にはメインとなる家屋を解体した際の料金になります。

それ以外の作業を解体工事業者に依頼する場合は、当然別で料金がかかってきます。

エクステリアの解体費用

例えば敷地いっぱいに家屋が建てられているという場合は、エクステリアの解体を考える必要はないかもしれません。

しかし、敷地内にブロック塀や門扉、車庫や物置などのエクステリアがあり、それも一緒に解体する場合は、それぞれにお金が発生します。

住宅と別で解体を依頼されることが多いエクステリアとしては、倉庫やカーポート等が挙げられます。

大体1坪当たり20000円前後になることが多いですので、これらのエクステリアに大きな敷地を利用している場合は、その分の解体費用も高くなります。

こちらもメインの建物同様、立地などの条件によって解体費用が変わってきますので、具体的な費用を知るために実際に業者に見積もりをお願いするのが良いでしょう。

家財の処分費用

解体工事をする家屋に、家具や電化製品、その他の細々した本や食器、衣類などの家財道具が残っているというケースも多いでしょう。

解体業者に一緒に処分をお願いすることも可能ですが、そうなると産業廃棄物として処理することになるため、自分で処分するよりも高くなってしまいます。

実際に、家財道具の処分費用として数十万円かかってしまうことが多いため、それであれば多少面倒であっても自分で処分したほうが良いのではないでしょうか。

もちろん自分で処分するとしても、粗大ごみを利用したり不用品回収業者を利用する際に別でお金がかかりますが、それでも解体業者に一緒に処分してもらうよりは安く済むことが多いです。

家財を売ったりすることができれば逆にお金が増える可能性もあるため、時間がある方には自己処分をおすすめいたします。

解体工事前に不用品を処分する様々な方法とそれぞれのメリット・デメリット

追加料金にも注意

最初に見積もりで工事費用に納得していたとしても、工事が始まってから追加料金が請求されることがあります。

追加料金を請求してくる業者が全て悪徳業者というわけではなく、当然請求されるべき追加料金も存在します。

地中埋設物の発見による追加料金

場合によっては、基礎を取り除く際に地中に障害物が発見されることがあります。

その障害物の多くは、コンクリートや鉄筋、瓦などの廃材になりますが、これは、以前にその場所で解体工事をした業者が、廃棄物の処理費用を少しでも安くするために基礎の下に埋め込んだものであることが多いです。

以前は不法投棄をはじめとする規制がきちんと整備されていなかったため、地中埋設物が発見されるのは珍しいことではありません。

しかし、解体業者としてはこれらの埋設物の撤去や処分費用を見積もりに含んで計算しているわけではないため、追加で請求せざるを得ないのです。

埋設物が出た場合の対処法に関しては、下記を参照くださいませ。

解体工事で地中埋設物が見つかった場合の追加費用や対処法について

天候による追加料金

基本的には、解体工事の工期は余裕を持って作られていることが多いのですが、例えば連日雪が降って雪かきに時間を割かれ、予定していた工期を使いきってしまうような場合があります。

また大雨や台風などが続く場合も、同様に工事が一時停止されて工期がなくなってしまうことがあるのです。

多少の雨風であれば普通に工事が行われることが多いですが、やはりスタッフの安全確保が第一ですので、悪天候が続くと工期が延びてしまいます。

そうなった場合は、工期延長による追加料金を請求される可能性がありますが、こればかりは運が悪かったと考えるしかありません。

しかし、積雪地方であれば冬場の解体工事を避けることによって、工期延長のリスクを減らすことができるはずです。

最後に

解体工事の基本的な料金は、坪単価の平均価格を利用すれば簡単に割り出すことができます。

ただし実際にかかる費用はそんなに単純なものではなく、時期や立地条件などの様々な要素が絡まって計算されることになるため、予め計算した自己見積もりとの金額差が大きくなることもあります。

また、何らかのトラブルによって、業者が最初に出した見積書と実際の請求金額が変わってくる可能性もあります。

しかし、とりあえず自分で対象となる建物の大体の解体費用を出しておけば、業者が高額な費用を出してきたとしても騙されることはないですし、きちんと話し合うことができるはずです。

見積もり時の金額に対するトラブルも少なくないため、まずはご自身で対象となる建物の坪単価を確認し、大体の費用を把握してから業者に依頼するとよいでしょう。