見積書とは「費用がいくらかかるか」という見込みを伝える文書です。

しかし、見積書を発行してもらう目的は「費用がいくらかかるか」を知るだけではなく、その見積もり金額の妥当性を検討することにあります。

ここでは、見積書に書いてある項目にどのような意味があるのか、また、適正な見積書を見極めるポイントなどを解説します。

見積書の書き方は一様ではない

解体工事の見積書に決まった様式はないので、各社が独自の書式を使用しています。

そのため「見積書のどの部分に何を書くか」というルールは特にありません。

なので、見積書の見方を解説するのは難しい面もありますが、ひとまず「見積書には定まった書式がない」ということを覚えておいてください。

また、見積書の書式にバラつきがあるにしても、内容を理解するための基本知識は共通ですので、この解説をしっかり理解すれば見積書の内容は検討できるようになります。

見積書に記載されている項目

それでは、見積書の中に出てくる内訳の項目が、それぞれどのような作業を指すのか(どのような意味を持つのか)について、1つずつ解説します。

なお、見積書に決まった様式がないため、見積書によって文言や記載の順序が異なる場合もあるので注意してください。

仮設工事費

仮設工事費というのは、解体作業のために建物の周囲に組み立てる「足場」や「防音・防災シート」などを設置するための費用です。

また、足場は金属製でかなりの量になるため、足場を現地に運び込むための運搬費などもここに含まれます。

  • 足場の数量は「㎡」
  • シートの数量は「m」

で表示されますので、建物の大きさと比較してあまりに見当違いの数量になってないか照合することができます。

建物本体の解体費

  • 解体費
  • 取り壊し費用
  • 本体工事費

など表現はさまざまですが、要するに建物の本体部分を解体する作業費のことです。

単価×数量(㎡で表記することが多いですが、坪で表記する場合もあります)で算定します。

単価は建物の構造等によって変わり、かなりの幅があるため解体費については一概にいくらくらいが妥当とはいえません。

付帯工事費

付帯工事というのは、建物本体以外の解体作業の費用です。

建物の解体工事は、土地上の工作物をすべて撤去して更地に戻すのが目的であるので建物だけではなく、外構構造物(ブロック塀、フェンス、カーポート、浄化槽など)の解体作業も発生します。

こうした外構構造物の解体費用のことを付帯工事費といいます。

ただし、

  • 建物本体の取り壊し費用
  • 外構構造物の取り壊し費用

をひとまとめにしている見積書もあります。

また、付帯工事という名称を使わずに

  • ブロック塀解体
  • 土間コンクリート解体

など、ストレートに作業名で表記している見積書もあります。

要するに取り壊す作業ですから建物本体の解体費と同じく、単価×数量で算定します。

単価は取り壊す対象ごとに異なるため、付帯工事費についても一概にいくらくらいが妥当とはいえません。

廃棄物処分費

「建物を解体する作業」と「解体作業で出た廃棄物を処分する作業」は別物です。

廃棄物には2種類あり、建物が解体されて、木くず、瓦片、コンクリートガラになると「産業廃棄物」と呼ばれます。

これに対し、建物内部にある家具やエアコン、テレビなどは「一般廃棄物」と呼ばれます。

産業廃棄物 一般廃棄物
木くず、瓦片、コンクリートガラ エアコン、テレビなど

「産業廃棄物」と「一般廃棄物」とも、収集運搬には許可が必要ですので、無許可でこれらの廃棄物を収集運搬するのは違法です。

産業廃棄物収集運搬許可を取得している解体工事業者は多いので、依頼する業者がこうした許可を取得しているか確認しておきましょう。

ただし、解体工事業者自身が収集運搬許可を持っていなくても、収集運搬許可を持った下請業者に依頼することが可能ですので注意してください

諸経費

まさに諸々の費用です。

項目を個別に明記している明細書もありますが、内訳を記載せずに「諸経費」とだけ書いている明細書が大半です。

内訳がよく分からない費用は納得がいかないという心情も理解できなくはないですが、金額に置き換えるのが難しい作業や、細かに書ききれない費用もあるので、ここは割り切ってそういうものだと考えるしかありません。

ただし、諸経費があまりに高すぎる場合(たとえば、諸経費が総額の10%を超える場合など)は、具体的に内訳に含まれるものを問い合わせてみましょう。

駐車場代

工事現場の敷地内に、工事関係者の車両を駐車するスペースがない場合には、近隣で駐車場などを借りる場合があります。

逆に、敷地内に駐車できるスペースがあるのに駐車場代を請求するのは不当ですので、こうした項目がないかチェックしておきましょう。

ガードマン代

通学路沿いや往来の激しい道路沿いの建物を取り壊す場合、工事車両の出入りで付近の通行に支障が出るおそれがあります。

このような場合には、交通整理のためにガードマンを配置することがあります。

事務費

たとえば、延べ床面積が80㎡を超える建物を解体する場合には役所に届け出が必要になります。

また、解体工事のために一時的に道路を占有する場合には、管轄の警察署で道路占有許可を取られなければなりません。

このように、現場での実際の解体作業だけではなく、事務的な作業や工事には直接関係しない作業も何かと発生しているのです。

○○一式」とは?

解体工事の場合は、

  • 取り外す
  • 壊す
  • 運ぶ

という作業が中心となるため、モノの売り買いのように明細化が難しいという事情があります。

そのため、解体工事に限らず、建設業界の見積もりでは「○○一式」といった書き方をするのが一般的です。

この「一式」という表現は解体業者にとっては便利ですが、消費者にとっては工事代金の内訳がはっきり分からない困った書き方です。

もちろん、「土間コンクリート解体工事一式 ○○万円」という具合に、これ以上の細分化ができない工事でしかもどの部分の作業か明確な場合であれば「一式」という書き方でも問題ありません。

しかし、見積書に具体的な内訳もないまま「解体工事一式 ○○万円」と表示されている場合はどうでしょうか。

これでは、解体工事の中でどのような作業が行われるのか、その作業がいくらなのかがまったく分かりません。

また、このような書き方をされてしまうと作業の一部を取りやめた場合にいくら減額されるのか、逆に作業量が増加した場合にいくら増額されるのかが分からず、すべて解体工事業者の言い値になってしまいます。

解体工事は高額な契約ですから、工事の内訳も分からないような見積もりでは困りものです。

見積書の「一式」の単位が大きすぎて内訳が分かりづらい場合には、詳細な内訳を明らかにした見積書を提出するよう依頼しましょう

適正な値引きとは?

見積書に値引き金額を記載するケースがありますが、ただ単に値引き額が大きければよいというものではありません。

値引きにはいくつかのパターンがあるので、値引き金額に踊らされないよう値引きの裏側を解説します。

端数を切り捨てる

よく見るのは「端数を切り捨てる」という処理ですが、通常はそれほど大きな金額の値引きではありません。

これは見積書を作るときの慣習みたいなものだと考えてよいと思います。

十分に利益が出ているから値引きする

十分に利益を確保できているので、実際にそれだけ値引きしてもまったく問題ない場合もあります。

もっとも、このご時世にそんなにうまい話はないものです。

何としても契約するために値引きする

解体工事業者には零細企業が多く、資金繰りのためにとにかくお金が必要で、大幅に値引きしてでも何とかして契約を取りたいという場合があります。

極端な場合「赤字になってでも契約を取る」という経営状況に追い込まれていることもあります。

注文する側にはこのような事情までは分かりませんが、あまりガツガツと値切るのも考えものです。

見せかけの値引き

全体的に高めに見積もっておいて値引きする手法です。足して引くだけのことですので一番タチが悪い方法ですが、見抜くのは難しいです。

見積もりを依頼したときの対応や受け答えなど全体的な様子から信頼できるかどうか見極めていくしかありません。

見積書どおりの金額で収まるとは限らない

見積もりの時点では予測できない事情があとから判明した場合には、見積書どおりの金額で収まらない場合もあります。

たとえば、その典型として「地中障害物」があります。

昔は建築廃材の処理方法に対する意識が低く、建物を取り壊したときにそのまま廃材を地中に埋めてしまっているケースもあります。

こうした地中障害物は、解体工事をやってみて初めて判明することも多いため、あとから追加料金が必要になる場合もあります。

相見積もりは有効か

相見積もりも一般論としては有効でしょう。

しかし、見積書の書式は各社でバラバラですので、単純に高いか安いかを比較するだけでは相見積もりをとる意味がありません。

「とにかく1円でも安い方がいい」という姿勢で臨むと、無理やり低い金額の見積書を作って、自社に乗り換えさせようとする業者も出ています。

結局、その分だけ作業内容を減らしたり、サービスの質を落として帳尻を合わせているだけですから、実はまったくお得ではなかったということもあります。

こうした手に引っ掛からないようにするために、見積書の内容を検討できるだけの知識が必要になるのです。

まとめ

見積書を検討する場合には、金額の高い安いだけではなく、内容の妥当性も検証しなければなりません。

むやみに相見積もりをとっても、前提とする条件が違えば金額が異なるもの当然ですので、単に高いか安いかを比較するだけでは意味がないのです。

残念ながら、世の中には悪質な解体工事業者も存在しますので、単に安いという理由だけで業者を選定した結果、不満足な結果となる可能性もあります。

ここで解説した知識をもとに、見積もりの内容を検討してベストな解体工事業者を選定しましょう。