不動産を売却するときに、不動産会社に支払う仲介手数料は意外と高額になります。

しかも、仲介手数料は高額であるために何かとトラブルにつながりやすいのです。

そこで、知って得する不動産を売却する際の仲介手数料のポイントを6つ取り上げます。

不動産売却にかかる仲介手数料の相場

本題に入る前に、まずは仲介手数料がいくらかかるのか確認しておきましょう。

不動産の売買が成立したときに不動産会社に支払う仲介手数料は、「国土交通省の告示」で決まっています。

したがって、不動産の売却金額がいくらになるかが分かれば、仲介手数料の金額もあらかじめ予想することができます。

不動産業界では、仲介手数料を計算するときに一般に「速算式」と呼ばれる計算式を使います。

不動産の売買価格が400万円を超える場合は、「売買価格×3%+6万円=仲介手数料」という簡単な計算によって仲介手数料を計算できます。

例えば、不動産を3000万円で売却する場合、仲介手数料を速算式で計算すると

  • 売買価格3000万円×3%+6万円=96万円

となります。

(※仲介手数料には消費税がかかるため、消費税8%を加算すると103万6800円となるので注意してください。)

ちなみに、取引する不動産の価格が200万1円~400万円の場合には「売買価格×4%+2万円」という速算式があります。

ただし、都市部では400万円以下の不動産取引は少ないので、あまり使うことはありません。

知って得する仲介手数料の6つのポイント

それでは、仲介手数料について知って得する6つのポイントを解説します。

悪質な不動産業者に騙されないよう、また、仲介手数料をケチろうして余計なトラブルに巻き込まれないよう、仲介手数料の法的な仕組みとポイントをしっかり理解しておきましょう。

合わせてこちらの「不動産売却にかかる諸費用・税金まとめ。チェックしておくべき6項目」の記事も読んでいただくと大体の不動産売却の費用などがわかると思います。

その1 仲介手数料は成功報酬型である

仲介手数料は、いわゆる「成功報酬型」です。

つまり、売主と買主の間で不動産の売買契約が成立して、初めて仲介手数料が発生する仕組みになっているのです。

マンションのチラシをたくさん作り、あちこちでポスティングしてもらい、購入希望者の内覧に何度立ち会ってもらったとしても、最終的に不動産が売却できなければ、不動産業者に仲介手数料を支払う必要はありません。

また、「チラシの制作費」、「チラシをポスティングする人件費」、「交通費」など、不動産の販売活動や仲介業務にかかる費用は、原則としてすべて不動産業者の負担です。

つまり、不動産業者にとっては、販売活動にかかる費用をすべて負担し、万一、不動産が売れなければ1円ももらえない、という条件の契約なのです。

不動産業者に厳しいようにも感じますが、不動産業界は昔からそういう仕組みなので、依頼者が心配する必要はありません。

その2 例外的に費用が発生する場合もある

先ほど説明したとおり、通常の仲介業務にかかる費用はすべて不動産業者の負担であり、原則として依頼者には請求できません。

一般的に行われる広告費用(チラシ制作費や新聞折り込みの費用など)や購入希望者の現地案内にかかる費用(送迎車のガソリン代など)は、仲介手数料に含まれます。

ただし、この原則には例外があり、「依頼者の特別な依頼」に基づいて発生した「実費」については請求が認められています

例えば、依頼者が特別に依頼して「通常の販売活動では行わないような広告宣伝費」をかけた場合や、「遠隔地の購入希望者と交渉するための出張旅費」などは、仲介手数料とは別に実費を請求することができます。

もう少し具体的に説明すると、次の3つの要件を満たす必要があります。

 ①依頼者の依頼に基づいて発生した費用であること

頼んでもないのに不動産業者が勝手に広告を増やしたり、遠方の購入希望者と面談するために出張した場合には、あとから費用を請求されても負担する必要はありません。

②通常の仲介業務では発生しない業務であること

通常の仲介業務の経費は原則として仲介手数料に含まれます。

仲介業者が請求できるのは、通常の仲介業務では発生しない特別な出費があった場合だけです。

③実費であること

不動産業者が請求できるのは、あくまで「実費」のみです。

例えば、遠方に出張した場合に経費として請求できるのは「交通費」のみです。「出張日当」のような請求はできません。

もし、不動産業者から仲介手数料以外の費用を請求された場合には、この3つの要件を満たすかよく検討してみましょう。

実はこの3つの要件を満たすケースはそれほど多くないのですが、中には仲介手数料以外の費用を請求しようとする悪質な不動産業者もあるので注意してください。

その3 仲介手数料は二分割払いが一般的

仲介手数料は「不動産売買契約の成立」によって発生します。

つまり、売主と買主が不動産売買契約を締結したその瞬間に仲介手数料の請求権が発生するので、不動産売買契約を結んだその日のうちに仲介手数料を請求することも可能です。

しかし、一般的には、不動産売買契約を交わしたその日は手付金のやり取りが行われる程度で、実際に売買代金の支払いや不動産の引渡しが行われるのは1~2か月先になります。

まだ不動産取引は完了していないのに、仲介手数料だけ全額支払ってしまうのは不安です。

そこで、売買契約書を交わした時に仲介手数料の「半額」を支払い、不動産の引渡しが完了した時に「残りの半額」を支払う、という二分割払いのパターンが多くなっています。

残念ながら、仲介手数料を受け取った途端に仕事の手を抜く不動産業者もいます。そのため、不動産の業界団体も分割払いを推奨しているのです。

その4 不動産売買契約が解除されても仲介手数料の支払いは必要

その1の「仲介手数料は成功報酬型である」に関連して、もう一つ大きなポイントがあります。

それは、不動産売買契約が解除されても仲介手数料の支払いが必要だということです。

不動産業者の仕事は、「売主と買主との間に不動産売買契約を成立させること」です。

売主と買主との間で不動産売買契約が成立すれば、その瞬間に不動産業者は仲介手数料を請求する権利を得ます。

その後に不動産売買契約が解除されたからといって、不動産業者に仲介手数料を支払わなくてよい、という結果にはならないのです。

もちろん、不動産業者に非があれば、仲介手数料の請求を拒むことも考えられますが、通常、不動産売買契約が解除されるのは、当事者(売主と買主)の都合なので、不動産業者の責任ではありません。

高額なお金が絡むので、不動産売買契約が解除された場合の仲介手数料の取扱いについては、事前に確認しておきましょう。

不動産業者が融通を利かせて請求を放棄してくれるケースもありますが、必ずそうなるわけではありません。

その5 「飛ばし」は厳禁

例えば、あなたが売り出したマンションに購入希望者が現れ、ほぼ売買条件が決まったところで、購入希望者から「不動産業者に支払う仲介手数料がもったいないので、不動産業者抜きで売買契約しませんか」と提案されたらどうでしょう。

このように、売主と買主間で話がまとまってから、不動産業者抜きで取引することを「飛ばし」といいます。

仲介手数料は成功報酬型ですので、不動産業者がどんなに一生懸命にがんばっても、最終的に不動産売買契約がまとまらなければ仲介手数料は発生しません。

その原則を悪用して、こうした「飛ばし」行為をしようとする人もいるのです。

しかし、当然ながら、そんなうまい話があるはずがありません。

飛ばし行為を直接規制する法令はありませんが、過去にも何度となく裁判で争われ、不動産業者の仲介手数料の請求が認められています。

もし不動産会社から裁判を起こされれば、しっかり仲介手数料を支払わされる結果になるので、飛ばしで仲介手数料を節約しようと思ってもムダなのです

仲介手数料の支払いを合法的に免れる抜け道は存在しないので、おいしい話だと思っても安易に乗ってはいけません。

裁判に巻き込まれたり、違約金を支払わされたりして、かえって高くつきます。

その6 国土交通省の告示は上限の規制である

仲介手数料は、宅地建物取引業法に基づく「国土交通大臣の告示」によって定められています。つまり、国土交通大臣が定めた基準なのです。

ただ、国土交通大臣の告示は、「この基準以上の仲介手数料を請求してはならない」という上限の規制なので、裏返せば、この基準より安い仲介手数料を請求する分には一向に構いません。

つまり、不動産業者が自発的に安い仲介手数料を請求するのは自由なのです。

とはいっても、わざわざ仲介手数料を安くする必要もないので、これまでは上限ちょうどの金額を請求する不動産業者が一般的でした。

例えば、1000万円の土地を仲介した場合と、1億円の土地を仲介した場合を比較して考えてみましょう。

1000万円の土地の仲介手数料が36万円(3%+6万円)であるのに対し、1億円の土地を仲介すると306万円(3%+6万円)の仲介手数料になります。

しかし、10倍の金額の不動産を仲介したからといって、作業量が10倍になるわけではなく、むしろ仲介業務の手間はそれほど変わりません。

不動産業者にしてみれば、高い仲介手数料を請求できるに越したことはありませんが、仲介手数料を多少ディスカウントとしても商売としては成り立つのです。

そのため、最近では不動産業界でも仲介手数料のディスカウント競争が始まっています

国土交通省の基準より安い仲介手数料を積極的にアピールしている不動産業者もあるので確認しておきましょう。

まとめ

不動産の取引は、一般の人にとって一生に一度あるかないかです。

そのため、仲介手数料の仕組みについて詳しく知っている人は意外と少なく、中には依頼者の無知につけこんで、不当に高い仲介手数料を得ようとする不動産業者もあります。

こうした悪質業者に騙されないよう、ここで取り上げた6つのポイントを覚えておくとよいでしょう。