解体工事では見積書を検討し、解体工事を依頼する場合には契約書を交わします。
しかし、解体工事の契約書で見るべきポイントがわからなという人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事ではなぜ契約書を交わす必要があるのか、契約書を交わす場合にどこに着目すればよいかについて、少し掘り下げて解説します。
これから解体工事を考えている人は参考にしてみてください。
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目次
解体工事を依頼する契約は何契約?
解体工事を依頼する場合には、解体工事業者との間で工事請負契約を必ず締結します。
少し専門的な話になりますが、そもそも解体工事を依頼するのは「何契約」と呼ぶのか確認しておきます。
例えば
- 不動産や自動車などを買うときは「売買契約」
- マンションなどを借りるときは「賃貸借契約」
を交わすのはおなじみでしょう。
モノを運んでもらう、講演してもらうなど、相手に何らかの作業を成し遂げてもらう場合には「請負(うけおい)契約」を交わします。
そして、建物を建築してもらう工事を依頼する契約のことを特に「工事請負契約」と呼んでいます。
では、建物を解体してもらうのは何契約なのか?
建物を解体するという工事を成し遂げもらう契約ですから、これも工事請負契約です。
したがって、解体工事業者との間では、「工事請負契約書」を交わすことになります。
もっとも、実務上は契約書の名前よりも、契約書に書かれている内容を重視しますので、契約書の名前は「解体工事契約書」でも「解体契約書」でも、単に「契約書」でも構いません。
ともかく「建物を解体する」という作業を成し遂げてもらうのが契約の目的です。
なぜ契約書が必要なのか?契約書の必要性
そもそもの話になりますが、なぜ契約書が必要なのでしょうか。
ここでは、解体工事の請負契約を前提にして契約書の必要性を解説します。
契約とは約束である
請負契約では、契約の当事者を「注文者」と「請負者」と表現します。
「注文者」とは、解体工事を注文するあなたで、そして「請負者」とは解体工事業者のことです。
請負契約は、注文者と請負者の約束ですから、それぞれが相手に対して約束したとおりの内容を実現する義務を負うことになります。
つまり、請負者は「建物を解体する」という作業を引き受けたわけですから、約束どおり建物を解体する義務を負います。
一方、注文者は「建物を解体してくれたら○○円を支払う」と約束していますから、解体工事が完了したときには代金を支払う義務を負います。
契約がないために生じる不都合
契約とは「約束」だと表現しましたが、約束の内容が明確でなければ、約束を破ったのかどうか判断できません。
相手に対して「約束を破った!」と主張しても、その証拠がどこにもないからです。
例えば、解体工事代金を事前に取り決めていたとしても、それはあくまでも「何事もなく解体が進めば」という前提の金額です。
そのため、解体作業中に予期せぬ出来事が起こった場合には、解体工事業者としては、当然、追加費用を請求したいと考えるはずです。
ところが、注文者はまさか追加費用が発生するなどとは考えていないので、追加費用の支払いを拒否するはずです。
こうした認識の違いがトラブルの原因となるので、約束の内容は具体的に明確に定めておかなければならないのです。
契約書を交わさずに依頼しての依頼は絶対に避けるべき
これまでの説明から答えは明らかですが、契約書を交わさずに解体工事を依頼するのは絶対に避けるべきです。
解体工事は、一般的な戸建て住宅でも数十万円から百万円を超えるような工事です。
解体工事の相場については「解体工事で掛かる費用の相場。抑えるべきポイントとからくりについて」で詳しく解説しております。
万一、トラブルになった場合には、工事代金だけにとどまらない額の損害が発生しますから、場合によって解体工事業者と訴訟で争うことがあるかもしれません。
しかし、契約書がなければそもそも
- どういう取り決めだったのか?
- どちらの主張が正しいのか?
を判断する証拠がありません。契約書がないためにトラブルが拡大することもあるのです。
また、解体工事業の許可業者の場合は、建設業法が適用されるので、契約書を作成していない時点で建設業法違反です。
大きなビルの建設工事などでは、びっしりと何十ページもある契約書を交わします。
さすがに解体工事でそこまでの契約書は必要ありませんが、ともかく契約書は交わしておくべきです。
解体工事契約の定型書式はない
さて、解体工事の契約書を交わしておくべきだと説明しましたが、実は解体工事の契約書には特に決まった書式はありません。
例えば、建設工事の場合には、建設業界や建築士の団体が一般的なひな形を公表しているのですが、解体工事の場合にはこうしたひな形が存在しないのです。
したがって、解体業者ごとに契約書の書式は異なり、中には「○○様邸解体工事」というタイトルのほかに工事代金額と工期などを簡単に記載されただけの契約書を使用している場合もあります。
しかし、このような簡単な契約書では不十分です。
契約書にはこの6つの項目が書いてあることを確認する
それでは、本題に入りましょう。
解体工事のトラブルを回避するため、またはトラブルが発生した場合に備えて、契約書にこの点は記載しておくべき、というポイントを挙げておきます。
ここでは、特にトラブルが起こりやすいポイントを踏まえて、6つに絞って解説します。
①工事内容の特定
当たり前のようですが、実は奥が深いのが工事内容です。
例えば、建物一棟を丸ごと解体する場合には大きな問題もないでしょう。
しかし
- 建物の一部を解体する場合
- 外構のうち一部をそのまま残しておく場合
- 作業の範囲が細かく決まっている場合
などには作業範囲を特定しておくことが後々のトラブルを避けるうえで重要なポイントになります。
なお、作業範囲について文章化するのが難しい場合には、作業範囲を図面に明記してその図面を契約書に添付しておく方法でも問題はありません。
解体工事において「何を壊すのか」を特定しなければなりませんので。
②工事代金に関すること
工事代金がいくらなのか明記するのは当然ですが、工事代金について定めておくべきことは他にもあります。
支払時期
解体工事の完了後に
- 一括払いとするのか
- 二段階に分けるのか
また、支払いの時期は解体工事の完了から何日以内なのか等を定めておく必要があります。
支払い方法
一般的には口座振込ですが、どこの口座に振り込むのか、振込手数料はどちらが負担するのかなども取り決めておいた方がよいです。
③工期の目安を決めておく
「工期」とは、解体工事にかかる期間のことをいいます。
契約書には「○月○日に解体工事を開始して△月△日に終わる」という工事期間の目安を記載しておきます。
解体工事におけるおおよその目安の工期は「解体工事に必要な期間の目安と工期が遅れてしまうよくあるトラブルとは」で詳しく解説しております。
解体工事の遅延損害金については「解体工事の大幅な遅延に対しての損害賠償請求が可能なケースについて」で詳しく解説しておりますので参考までに。
工期の約束をしておかなければ、万一、解体工事が大幅に遅れても、解体工事業者に遅れた責任を問うことができません。
工期に関する約束がなければ、約束を破ったとはいえないからです。
なお、解体工事の工期が予定より遅れた場合のペナルティとして「注文者は遅延損害金を請求できる」と定めている契約書が一般的です。
ちなみに、解体工事に限らず、建設業界では事前に「工程表」を準備して作業に着手するのが一般的です。
工程表とは、要するに工事のスケジュール表です。工程表の提出を依頼しておきましょう。
また、依頼する前にある程度、ご自分で解体工事の流れを知っておくと工程表をもらった時も安心してみることができるはずです。
解体工事の流れに関してはこちらの「誰でもわかる解体工事の基礎知識!主な解体工事の種類と流れ」も参考にしてみてください。
④損害賠償に関すること
解体工事上のミスによって第三者(近隣住民や通行人)に損害を与えてしまった場合の取り決めです。
例えば、解体工事中に通行人にケガをさせてしまった場合、隣家を損傷させてしまった場合などが考えられます。
その他にも様々なトラブルが解体工事では起きることがあります。
トラブル事例もいくつかこちらの「解体工事でよくあるトラブル実例3選!それぞれのトラブルへの対処法」で紹介しております。
このような場合、第三者に対して損害賠償責任を負うのは、原則として解体工事業者ですが、契約上も明確にしておいた方がよいでしょう。
ただし、注文者の指示によって事故が発生した場合は注文者が責任を負いますが、通常、解体工事業者に対して、一般人である注文者が作業の指示を出すことはないはずです。
⑤引渡し
何をもって解体工事の完了とするか、という取り決めです。
通常は、すべての作業が完了したときに注文者の立ち会いのもとで作業の完了を確認してもらいます。
「引渡し」というと、モノを受け渡すような表現ですが、解体工事が終わって解体現場を更地にして引き渡すので「引渡し」です。
いつまでに引渡すか契約で決めておくことで、工事が遅れたか否かの基準になるのです。
⑥瑕疵担保責任
瑕疵とは「キズ」という意味です。
住宅の建築工事などでは、建物として本来の性能を満たしてない場合には、一定期間にわたって建設業者が責任を負います。
たとえば、解体時の廃棄物の除去作業が不十分で、地中に廃材が多数交じっているような場合が瑕疵にあたると考えられます。
解体工事の場合も同じように考え、解体作業として本来あるべき内容が満たされてなければ、瑕疵だと考えることができます。
もっとも、解体工事の場合は、建物を壊す契約ですので、問題になる場面は少ないかもしれません。
ただ、瑕疵担保責任は知識として覚えておいて損はありませんので、気になる方はこちらの「瑕疵担保責任の基礎知識」も参考にしてみてください。
契約書の参考になるひな形について
解体工事業者も契約の専門家ではないので、実のところ、契約内容の詳細についてはそれほど詳しくないこともあります。
弁護士や司法書士など、法律の専門家に依頼して契約書を作成してもらってもいいのですが、現実的にはそこまで費用をかけられないでしょう。
そこで、一般的に流通している建設工事の契約書を転用すれば、上記の6つのポイントは基本的にすべてカバーされています。
例えばこちらの工事請負契約書には上記の6つの項目が入っています。
どのようなものなのか見るだけでも参考になると思うので、一度見てみることをおすすめします。
※あくまでやむを得ない場合の措置をご提案したものですので、ひな形の使用によるトラブルについて責任を負えませんのでご了承ください。
まとめ
解体工事業界では、契約書の整備が不十分で、契約書を交わさず依頼を受ける解体工事業者も多く存在します。
辛うじて契約書はあっても内容が不十分である場合もあります。
また、契約書を交わしても、一つ一つの条文の意義や内容を十分に理解しておかなければ、いざトラブルが起こったときに意味がありません。
ここに挙げた6つさえ記載しておけば万全とは言えませんが、なぜこのような取り決めが必要なのか、という点も含めて理解しておくと後々のトラブルの回避することができるはずです。
解体工事は大きな出費を伴う工事です。
解体工事が終わってから後悔しないように見積書の確認、契約書の確認、または解体工事業者を選ぶ段階で信頼できる優良業者を選ぶようにしましょう。
解体工事の優良業者を探すおすすめの方法はこちらでも解説しておりますので参考にしてみてください。
→解体工事で一括見積りサイトを利用するメリット・デメリットまとめ。
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