解体工事で追加費用が発生するケースは少なくないので、追加費用を請求される可能性はあなたにもあります。
しかし、あらかじめ予算として見込んでいた金額を超える支払いはできるだけ避けたいものです。
どういう場合に解体工事の追加費用が発生するのか、どうすれば追加費用の発生を避けられるか、さらに追加費用を請求された場合の対応を解説します。
目次
解体工事で起こる追加費用の種類
「追加費用」というのは、見積り段階では見込んでいなかった費用が新たに発生した場合をいいます。(注文者からの要望で追加費用が発生する場合もありますが、ここではそのようなケースは除きます。)
当初、想定していなかった問題が判明し、追加費用が発生するのは解体工事に限ったことではありません。
以下のとおり、ちなみ追加費用といっても大きく分けて
- 建物に関連して発生する追加費用
- 土地に関連して発生する追加費用
があります。
建物に関連して発生する追加費用
建物に関連して発生する主な追加費用はこちら3つです。
- 養生費用
- 残置物の処理費用
- アスベストの処理費用
建物に関連して発生する追加費用から順に一つずつ解説します。
養生費用
建物を解体するときには、周囲に騒音やホコリが広がらないよう、建物の周りに足場を組んでシートをかけて囲んでしまいます。
これらの作業にかかる費用を養生(ようじょう)費用といいます。
もちろん、養生費用は当初から見積もっていますが、近隣からの要望で、通常のメッシュシートではなく防音性能の高いシートに変更した場合などに追加費用が発生します。
実際に解体工事に着手し始めてから、近隣の要望でシートを変更することになるため、解体工事業者の見積りミスとはいえません。そのため、基本的に追加費用は注文者の負担となることが多いです。
解体工事のトラブルに関してはこちらの「解体工事でよくあるトラブル実例3選!それぞれのトラブルへの対処法」記事も参考にしてみてください。
アスベストの処理費用
アスベストとは、「石綿」とも呼ばれ、耐熱性や保温性に優れるという性質があるため、かつてはよく建材に使用されていました。
しかし、長期にわたってアスベストを吸い込み続けると、じん肺や中皮腫などを発症するおそれがあるため、現在ではアスベストを1%以上含む製品の製造が禁止されています。
将来に向かって使用することは禁じられましたが、問題は過去にアスベストを使用した建物を解体する場合です。
アスベストを使用した建物を解体する場合には、適切な除去作業が義務付けられていて、アスベストのレベルによっては、高額な除去費用が発生します。
解体予定の建物を事前に調査することでアスベスト使用の有無が分かる場合も多いのですが、もともと断熱目的であるため、建物の見えない部分に使われている場合もあります。
解体工事に着手し始めてから判明した場合には、解体工事業者の見積りミスとはいえません。そのため、こちらも基本的に追加費用は注文者の負担となります。
残置物の処理費用
建物の内部に残った動産類を残置物(ざんちぶつ)といいます。
本来、建物の内部は空っぽにしてから解体工事業者に解体を依頼するのですが、あとは廃棄するだけの家財道具などはそのまま建物の内部に残して、解体工事に合わせて処分してもらうことがあります。
残置物に関してはこちらの記事「解体工事の残置物を処分するおすすめの方法と処分に掛かるコストについて」でも詳しく解説しています。
解体工事業者に残置物の処分を依頼した場合に、解体工事費用とは別に廃棄費用を請求されるのは当然です。
しかし、「いざ搬出作業を始めてみたら、見込みより残置物が多かった」という理由で追加費用を請求された場合には、ケースバイケースで追加費用を交渉する余地があります。
後ほど具体例を挙げて詳しく説明します。
土地に関連して発生する追加費用
土地に関連して発生する追加費用の筆頭格は「地中埋設物」です。
地中埋設物とは、「解体工事現場の地中に埋まっているもの」のことです。
「地中障害物」と呼んだりすることもありますが、ここでは「地中埋設物」で統一します。
よく問題になる地中埋設物を5つ挙げておきます。
建築廃材
コンクリート片や木片、瓦などのゴミのことです。よく「ガラ」と呼ばれたりします。
なぜ地中からこんなものが出てくるかというと、昔は、建物の解体で出た建築廃材をそのまま地中に埋めて廃棄してしまうことがあったからです。
現在、建築廃材の処分方法は厳しく規制され、マニフェストという伝票を使って不法投棄できないよう管理されていますが、マニフェストが導入されたのは1998年からです。
かつては、廃材処分費を抑えるために、解体工事の建築廃材をそのまま現場に埋めてしまう業者もいたのです。
マニフェストの仕組みについてはこちら「マニフェストとは?産業廃棄物管理票の見方と管理方法について」を参考にしてください。
建物の地中杭
地盤が軟弱な場合、建物の重さで徐々に沈んでしまうことがあるため、金属製やコンクリート製の「杭」を地中深くに打ち込み、その上に建物を建築することがあります。
建物の設計図面などがあれば、地中に杭が有るかないかは分かるので、解体工事業者には事前に資料を提示しておきましょう。
厄介なのは、以前あった建物の杭がそのまま埋め戻されているケースです。
この場合は、実際に解体工事に着手して地面を掘り返して初めて判明します。
井戸
井戸の存在が分かれば、当然、井戸を埋め戻す前提で見積もっているので、あとから追加費用が発生することはありません。
しかし、以前に井戸が埋め戻され、しかも埋め戻し工事が不十分であった場合には、追加費用が発生する可能性があります。
浄化槽
下水道の整備される前は、敷地内に大きなタンク状の浄化槽を設置していました。
しかし、浄化槽が不要になって撤去する際に、手抜きでそのまま土や石を入れて埋め戻されている場合には、追加費用が発生する可能性があります。
大きな岩石など
解体工事で地面を掘り返すと、地中から大きな岩石が出てくることがあります。
特に巨大な場合や量が多い場合には、撤去・搬出のための追加費用がかかる可能性があります。
その他にも建築物が埋め込まれている可能性もあるのでこちらの記事「解体工事で地中埋設物が見つかった場合の追加費用や対処法について」も合わせて読んでみてください。
解体工事の追加費用の相場
あとから出てくるアスベストや残置物、地中埋設物の量によって変わるため、追加費用に相場というものはありません。
ただし、「あらかじめ処理費用を見込んでいたが、見込んでいた数量より多かった」という場合には、ケースバイケースで追加費用を交渉する余地があります。
例えば、解体予定の建物に残置物があり、あらかじめ残置物の処理を解体工事業者に依頼していた場合を想定しましょう。
見積書に「残置物処理 一式20万円」と記載されていた場合
この書き方の場合には、残置物の量が見込みより多いか少ないかにかかわらず、残置物処理に20万円かかると解釈するのが通常でしょう。
なので、「見込みより残置物が多かった」といっても、追加費用の請求を正当化する理由にはなりません。
見積書に「残置物処理 20㎥ 20万円」と記載されていた場合
これに対し、残置物処理の単価が決まっていた場合には、残置物の量が増えればその分だけ費用が追加される、という解釈が可能です。
残置物が見込みより5㎥多かった場合には、それに比例して5万円の追加費用の請求が認められる可能性があります。
追加費用の支払いを拒めるか
もし追加費用が高額であった場合には、予算計画が狂ってしまうため困ります。
しかし、解体工事業者にとって予測が困難な追加費用の場合に、支払いを拒否するのは難しいと考えてください。
また、納得いかないからといって、追加費用の請求を無視したり、交渉自体を拒否することはおすすめしません。
なぜなら、解体工事の完了によって、解体工事業者は代金を請求する権利が発生するため、請求を無視したり、交渉を拒否している間に支払い期限を刻々と過ぎていって、後から多額の遅延損害金まで請求されるおそれがあるからです。
どうしても納得いかない場合には、解体工事業者としっかり話し合うか、弁護士など法律の専門家に相談して対応を決めましょう。
解体工事の追加費用によるトラブル予防策
追加費用のことで解体工事業者と揉めるのは気持ちのよいことではありません。
金銭面だけでなく精神面でも重い負担になるので、次のようなトラブルの予防策を実行してみてください。
解体工事業者には、事前に建物の図面や資料を提供しておく
例えば、以前の建物の図面や仕様書などがあれば、地中に杭が埋まっている可能性やアスベストの使用などが予測できます。
事前に情報を提供しておくことで、
- もし杭が出てきた場合には追加費用がかかるかもしれない
- もしアスベストを使用していた場合には追加費用が必要になる
といった情報を共有できるので、不意打ちで追加費用を請求される心配がありません。
解体工事業者が追加費用を予測できなかった責任を後から追及するよりも、予測できるように事前に情報を提供しておくことがお互いのためです。
追加費用が発生しそうな場合は早い段階で告知してもらう
解体工事業者には、追加料金がかかりそうな場合は、必ず事前に相談するように依頼しておくとよいでしょう。
解体工事がすべて終わった後で「大量の地中埋設物が見つかったので追加費用を払ってください」と請求されても困るはずです。
例えば、地中埋設物が見つかった場合には、地中のどこから、何が、どのくらい出てきたのか写真撮影しておくなど、お互いが納得できるように資料を残しておくことが必要です。
解体工事業者が「追加費用を一切請求しない」と約束してくれる場合
「場合により追加費用が発生するかもしれません」と言われると、注文者としてはモヤモヤしてしまいます。
しかし、建物のアスベストや地中埋設物のように、実際に解体工事に着手しなければ分からないことも多くあるので仕方がありません。
解体工事業者としても、事前に「追加費用は一切請求しません」と言い切ることはリスクが高すぎるのです。
もし、「追加費用は一切請求しないと約束できる」というのであれば、後から「言った・言わない」の水掛け論にならないよう、契約書の特約などで形に残しておきましょう。
リスクを覚悟のうえで、「追加費用は一切請求しない」と約束するのは解体工事業者の自由です。
まとめ
解体工事では、建物の内部や地中など、目に見えない部分に追加費用の原因が潜んでいます。
事前に察知できる部分もありますが、どんなに経験を積んだ解体工事業者であっても、完全な予測はできません。
予測できない追加費用については、解体工事業者に落ち度はないため、支払いを拒むのは難しくなります。
少しでも追加費用の発生リスクを抑え、トラブルの拡大を防げるよう、ここで取り上げた方法を実践してみてください。