解体工事をする際には、良い業者を見つけるために相見積もりを取ったり、価格の交渉をしたりすることもあると思います。

業者がきちんと資格を持っているのか、きちんと廃棄物を処理してくれるのかなど、チェックポイントは多いのではないでしょうか。

解体工事に取り掛かる前は色々とすることがありますが、解体工事が終わった後にもしなければならない重要なものがあるのです。

それが建物滅失登記です。

恐らくそんな言葉を聞いたことがないという方がほとんどなのではないかと思いますが、この滅失登記をしないと様々なデメリットが生じます。

専門家にやってもらうこともできますが、お金を少しでも節約したいという場合はご自身で行うことも可能です。

今回は、そんな建物滅失登記の方法や、しなかった際に発生するデメリットなどを紹介していきます。

建物滅失登記とは

そもそも、建物滅失登記とはどのようなものなのでしょうか。

家屋がなくなったことの証明

土地や、その上に建てられている上物などの不動産は、不動産登記をすることによって、その存在をはっきりとさせることができます。

どのような建物もどんな土地も、通常は法務局の登記簿にそれを記すことによって、誰の所有物かということが証明されるのです。

不動産登記を基にして、土地の持ち主、家屋やビルなどの持ち主がわかりますし、固定資産税もそれを基に決定されることになります。

建物滅失登記というのは、その土地に建てられていた家屋が滅失したという届け出のことです。

不動産登記の一種になるのですが、基本的には解体工事などによって家屋がなくなってから、1ヶ月以内にこの登記を行う必要があります。

建物滅失登記はしなくてもよい?

建物滅失登記は法律でも義務付けられているため、申請を怠った場合は10万円以下の過料が科せられます。

第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

Wikibooks 不動産登記法第164条

ただし、「科料に処する」とあるため、前科がつくような刑罰ではなく、申請を怠ったから10万円以下のペナルティが科せられるという意味になります。

要するに、そのお金を払うのであれば、絶対に建物滅失登記をしなければならないというわけでもないのです。

ただし法律で義務付けられていることになるため、通常は滅失登記をする方がほとんどですし、しないことによって様々なデメリットが生じることになります。

建物滅失登記をしないデメリット

建物滅失登記をしないということは、解体工事をして実際は建物がないのに、登記上はそこに建物があるという状態ということになります。

申請が面倒だからそれでもよいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、下記のデメリットを見ると、やはり滅失登記は重要だということがお分かりいただけるはずです。

固定資産税を払い続ける

土地や建物に対してかかってくる固定資産税は、不動産登記に基づいて決定されることになります。

不動産登記の上で建物がそこにあるということになった場合は、その建物に対する固定資産税を支払うことになるのです。

解体工事で建物がなくなったとしても建物滅失登記をしなければ、実在しない家屋に対してかかってくる固定資産税を支払い続けなければなりません

土地を活用できない

建物滅失登記をしていないということは、登記上はその土地にはまだ建物が存在しているとみなされることになります。

例えば、建物を壊して駐車場として活用しようと考える方もいらっしゃれば、きれいに整地した土地を売りに出そうと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

見た目はまっさらな土地であったとしても、登記上はそこに建物が建てられていることになっているため、解体工事後も土地を活用することができないのです。

建物を建てられない

解体工事をして土地をきれいにしてから、新しい建物を建てようと考える方も少なくありません。

しかし土地を活用できないのと同じように、建物滅失登記をしていない場合は登記上そこにまだ建物が建っている状態ですので、新しい建物を造ることができないのです。

実際の土地には何もないのだから、物理的には建てられると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、すでに建物が建っている土地に対しての建設許可が下りないため、新築物件は建てられないのです。

滅失登記をやってもらおう

一生のうちで、何度も建物の滅失登記を行うという方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

慣れない作業になりますので、中には滅失登記を専門家にお願いするという方もいらっしゃいます。

それでは、滅失登記は誰にどのように行ってもらうものなのでしょうか。

建物滅失登記の代行について

滅失登記は、通常は土地家屋調査士に代行して行ってもらいます。

ただし、基本的には滅失登記はその建物の所有者が自分で行うものになり、自分でできない場合は土地家屋調査士にお願いすることになります。

代行には費用が発生しますが、自分でもできないしお金もあまり払いたくないからと言って、不動産に関する知識がある友人にやってもらうというようなことはできません。

正式な資格を持っていない方に依頼すると、場合によっては罰せられる可能性もあるため、ご自身でやらないのであればきちんとした土地家屋調査士にお願いするようにしましょう。

依頼の際の注意点

依頼をすれば基本的には土地家屋調査士が全てやってくれますし、必要書類等も作成してくれます。

しかし、ご自身でやらない場合は委任状や建物の所有者の印鑑証明や実印などが必要になってくるため、あらかじめ用意しておくようにしましょう。

また、建物滅失登記の申請は、解体工事が終わってから1ヶ月以内に行わなければなりませんが、代行してやってもらう場合は長く見積もって2週間程度の準備期間が必要です。

予め代行して申請するということが決まっている場合は、解体工事が終わったらすぐに依頼するか、解体工事前から相談しておくことでスムーズに行うことができるはずです。

必要な費用について

建物滅失登記を土地家屋調査士に代行してもらう場合は、当然コストがかかってきます。

場所などによって若干価格が異なりますが、平均すると4万円~5万円程度の費用を支払う必要があります。

なお、ご自身で行った場合は建物滅失登記に対してほとんどお金を支払う必要はありません。

例えば登記簿謄本を取得したりといった少額の費用は必要になってきますが、数百円程度ですので気にする額ではないはずです。

逆に言えば、自分で行えばほとんど無料のものに対して数万円支払うということになるため、ご自身でできるのであればやってしまった方が良いでしょう。

自分で行う方法

解体工事で大金を払った上に、土地家屋調査士にさらにお金を支払うのが嫌だという方は、ご自身で建物滅失登記をやることをおすすめいたします。

解体工事を自分でできるという方は稀ですが、役所での申請であればできるのではないでしょうか。

もちろん専門家に依頼したほうが安心だという方も多いですが、簡単な登記ですので自分でやってしまう方も少なくありません。

申請に必要なもの

まずは、建物滅失登記をするにあたって必要なものから見ていきます。

登記申請書

登記申請書は、法務省にも置いてありますし、ホームページからデータをダウンロードすることも可能です。

法務省 不動産登記の申請書様式について

このページからデータを取得することができます。

なお、自治体によっては必要事項を記入した登記申請書のコピーも必要になってきます。

家屋取り壊し証明書

取壊し証明書は、解体業者が発行する書類になります。

通常は解体工事が終わったらすぐに発行してもらえるものになるため、解体業者に確認しておきましょう。

解体業者の印鑑証明など

解体業者には、上記の取壊し証明書だけでなく、印鑑証明や会社の謄本などをもらうことになります。

自治体によって若干ルールが異なるため、謄本ではなく資格証明が必要になったり、またはそれらが必要ないと言われることもあるため、事前に法務局に確認しておきましょう。

住宅地図

解体工事を終えた現場の住宅地図が必要になることが多いです。

基本的にはネットの地図をそのままプリントアウトしたもので問題ないことが多いですが、こちらも事前に確認しておいたほうが良いでしょう。

滅失登記の流れについて

続いて、建物滅失登記を行うフローを見ていきましょう。

1.登記簿謄本の取得

まずは、建物の登記簿謄本を取得します。

解体工事でなくなった家屋の登記事項証明書の内容を確認します。

2.申請書の作成

建物滅失登記の申請書をネットなどで入手してください。

そこに必要事項を記入し、コピーを1部、2部ほど取っておきましょう。

自治体によって必要な枚数が異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。

3.必要書類の提出

解体作業が終わったら、解体業者からなるべく早く必要書類を受け取ります。

申請に必要な書類がそろったら、地域の法務局で登記を申請しましょう。

直接足を運んで提出することもできますが、郵送での提出も可能です。

4.登記完了証の取得

登記が終わったら、登記完了証が発行されるので、それを受け取って手続き完了ということになります。

逆に、完了証がなければまだ手続きが完全に終わっていないということになります。

滅失登記が終わったら

通常は、完了証を受け取ったら、登記上も問題なく建物がなくなっているはずです。

そして、建物がなくなったということになるため、滅失登記を行った翌年の1月1日からの建物に対する固定資産税の請求がなくなるはずです。

しかし、稀に手違いなどによって請求がまだ来るというケースもあるため、そのような場合はすぐに法務省に確認するようにしてください。

最後に

役所での手続きは面倒でややこしそうだとイメージされる方も多いですが、建物滅失登記はその中でも簡単な部類に入る申請なのではないでしょうか。

ご自身で申請書に記入すれば、後は解体業者から受け取る必要書類をまとめて提出するだけですので、慣れない方も簡単にできてしまうはずです。

もちろん面倒なのは嫌だという方は土地家屋調査士に代行依頼をお願いするのもよいと思いますが、余分なコストを避けたいという方は何とかご自身でチャレンジしてみましょう。

書類が完璧にそろっていればすぐに済んでしまいますので、早く完了証を受け取るためにも事前に書類などを用意しておくとスムーズです。