家やマンションは高額な不動産になりますので、そういったものを売却するのにはそれなりの理由があるはずです。
単純に家を売ってお金がほしいという方もいれば、家族が増えて手狭になったのでもっと広い場所に移りたいという方もいるでしょう。
不動産を売却するには必ず理由があるはずですが、その理由は買い手に伝えるべきなのでしょうか。
もちろん、言っても全く問題ないという理由であれば素直に伝えたほうが良いのですが、中にはそれを伝えることによって売却が失敗してしまうような理由もあるかもしれません。
例えば、
- 家が傾いているから安心して暮らせるところを探したい
- 隣人がちょっと気難しい人なので気楽に生活できる場所に行きたい
などの理由は、明らかに購買意欲を抑えてしまうでしょう。
それでは、不動産を売却する際には正直に理由を言うべきなのでしょうか。
今回は、不動産売却の理由と購買意欲について紹介していきます。
一般的なポジティブな不動産の売却理由
まずは、買い手の購買意欲に関係なく利用される売却理由について見ていきましょう。
もちろんご家庭の事情はそれぞれですので、その家族ごとに売却理由があるはずです。
しかし、理由を大きく分けると
- 家族構成の変化による売却
- 生活環境の変化による売却
- 住居のグレードアップのための売却
- 資産整理のための売却
これらが多いと言えます。
家族構成の変化による売却
最も説得力のある売却理由としては、家族構成が変わるといったものが挙げられます。
例えば、
- 結婚を機に一人用のマンションから複数人が住めるマンションに移りたい
- 子供が増えて子供部屋の増築が難しいから広い家を購入したい
- 親と一緒に住むことになったので二世帯住宅を購入したい
- 子供が独立して手広くなったので狭いマンションを購入したい
- 親の介護が必要になったためすぐに助けられる近場に移りたい
などが具体的な理由になります。
家族は減ることもあれば増えることもありますが、住まいは常にその家族構成に適切に対応している必要があります。
もちろん頻繁に家やマンションを買い替えるのは難しいですが、大きな節目で新しい不動産を購入するために、古い不動産を売りに出す方は少なくありません。
生活環境の変化による売却
転勤をはじめ、生活環境が変わると半ば強制的に住まいを変えざるを得ないケースもあります。
生活環境の変化による売却の理由として代表的なものは、
- 夫が転勤になったため通勤が便利な場所に引っ越ししたい
- 子供が進学するに当たってより良い学区に移りたい
- 定年退職したため、周りに生活施設が整っている場所に移りたい
- 田舎に良い物件を見つけたので長年の夢である田舎暮らしをしたい
- 年を取ったので便利な駅前のマンションで暮らしたい
この辺りになるでしょう。
上述した結婚なども生活の変化と言えるかもしれませんが、やはり日常的な進学や転勤、退職などが大きな生活変化ということになります。
生活が大きく変わるため、その生活が送りやすい環境に身を置くといった理由で新しい家やマンションの購入を希望する方はたくさんいらっしゃいます。
住居のグレードアップのための売却
最もポジティブな売却理由が、住宅をグレードアップするといったものです。
例えば、
- 更に広い土地を見つけたのでそこに一戸建てを新しく建てたい
- マンションよりも庭付きの一戸建ての方がいいのでそれを購入したい
- 駐車場を借りるよりも広い土地に家を建ててそこに駐車しておきたい
- 新築マンションを購入したいので中古で購入したマンションを売りたい
- 収入が増えたので最新のマンションを購入したい
これらはどれも、住宅の質を高めるためのポジティブな売却理由になります。
より良い住まいを追及し、それがかなうとなった場合には、やはり自然と現状よりも良い家やマンションを購入したいという願望が生まれます。
例えば、収入は上がったものの、現在のマンションを売却しなければまとまった資金が得られないというような場合は、先に売却活動を行い、その売却金を元に新しい不動産を購入する方も多いです。
資産整理のための売却
上述した理由の他に、最近増えてきている売却理由が、家族の資産を整理するといったものです。
具体的には、
- 相続をするため早めに売却しておきたい
- タイミング的に今が高く売れそうだから売却したい
- 相続で得たマンションや家に住む人間がいないので売却して現金がほしい
- 空きマンションの管理費や固定資産税を支払いたくないので売却しておきたい
などが該当します。
その中でも、高齢者の方が複数の相続人に均等に資産を相続できるように、不動産ではなく現金化して資産を保有しておきたいという理由は比較的多いです。
また反対に、家を相続したが自分も家族も住む可能性がなく、また賃貸にするのも管理が面倒なので、それならば売ってしまったほうが良いという理由で売却する方も少なくありません。
購買意欲が落ちる不動産の売却理由
上述した理由で売却を考える場合、購入希望者からなぜ不動産を売りたいかと聞かれても素直に答えることができるはずです。
しかし、中にはネガティブな理由で家やマンションを売却するという方も存在し、その理由によっては購入希望者の購入意欲が低下します。
ネガティブな理由は大きく
- 家庭内でのネガティブな理由
- 住宅環境でのネガティブな理由
の2つに分けることができますが、この中でも後者は売却活動に大きな影響を与える可能性があります。
家庭内でのネガティブな理由
どこのご家庭にも、そのご家庭の「家庭の都合」というものが存在しますが、ネガティブ売却理由としては
- 離婚による売却
- 住宅ローンが支払えないことによる売却
などが挙げられます。
離婚による売却
最近は、離婚を理由にマンションなどを売却したいという方も少なくありません。
結婚してから夫婦の共同名義で住宅ローンを組んでいるご家庭では、離婚後もその返済義務が発生するため、離婚と同時にローンを清算することを目的に売却します。
離婚は一般的にはネガティブなこととして捉えられますが、離婚が不動産の価値そのものに影響を与えることはなく、客観的に見れば上述した家族構成の変化による売却と大差ありません。
完全な家庭の事情による売却ということになりますが、やはり購入希望者に離婚の話を出すと、雰囲気もネガティブになり購買意欲をそぐ形になる可能性もあります。
そのため、担当してもらう不動産会社にはきちんと事情を話し、購入希望者の担当者からうまく伝えてもらうようにすれば問題はないはずです。
住宅ローンが支払えないことによる売却
住宅ローンを組んで家やマンションを購入する方が多いですが、当初は普通に返済できていたローンが、何らかの事情がきっかけで支払えなくなってしまうこともあります。
その事情には、事業の倒産や失業であったり転職の失敗による収入の低下であったりと様々なものがありますが、こちらも離婚と同様に家庭の事情に当てはまります。
しかし、例えばローンの支払いが長期的に滞ると、金融機関による抵当権が実行されるため、所有する不動産は競売にかけられ相場よりも安く手放さなければならなくなります。
そのため、ローンの支払いにめどが立たない場合は、早めに不動産会社に売却の相談をし、早い段階で売却することをおすすめいたします。
住宅環境でのネガティブな理由
不動産を売却する理由として、購入希望者の購買意欲を低下させ、売却活動に大きな影響を与えるのが、住宅環境に対するネガティブな理由になります。
例を挙げればきりがありませんが、
- 家が傾いてきている
- シロアリにやられている
- 老朽化した建物なので耐震性に問題がある
- 窓から景色が全く見えず精神的な被害が出ている
- 隣の家で自殺があった
- 駅に近いが繁華街のため毎晩夜中までうるさい
- 同じマンション内で殺人事件があった
- 線路のすぐ近くなので常に騒音に悩まされる
- 隣人がちょっと変な人なのでトラブルになっている
代表的な理由としてこのようなものが考えられます。
例えば、購入希望者から売却理由を聞かれたときに、隣で自殺があって気持ちが悪いから手放したいなどと正直に話すと、その購入希望者も購入したくなくなるはずです。
そのため、住宅に関するネガティブな理由は極力言わないようにしたいと感じる方が多いでしょう。
それでは、実際に売却理由を聞かれたら、どのように回答するのが良いのでしょうか。
売却の理由は必ずしもすべて正直に言う必要はない
こちらが確実に不利になる売却理由の場合は、購入してもらえる可能性が減少するためできるだけ隠したいと考える方も多いはずです。
しかし、隠したら隠したで後々トラブルになる可能性もあるため、どこまで本当のことを言えばいいのかわからないと悩んでしまう方もいるでしょう。
実は、理由によっては伝えなくても問題がない種類のものも存在します。
不動産会社はこちらの味方
不動産の売却には不動産業者を利用することになりますが、その不動産会社には全ての事情を正直に伝えることをおすすめいたします。
例えば同じマンションで殺人事件があったというものや、戸建てがシロアリにやられているというものは当然伝えるべきですが、中にはあえて買い手に伝える必要のない理由も存在します。
個人的には売却を考えるほどの理由であったとしても、それが必ずしも万人に当てはまるということはありませんし、客観的に見たら大したことではない可能性もあるのです。
もちろん全てがそれに当てはまるということはありませんが、相談することで解決する悩みもあるため、まずは不動産会社にすべてを打ち明けましょう。
隠してはいけない理由とは?
それでは、売却をする際に買い手に必ず伝えなければならない理由とは何なのでしょうか。
それは大きく、
- 物件自体の欠陥
- 周辺環境の問題
に分けられます。
物件自体の欠陥
例えば、上述した中では
- 家が傾いてきている
- シロアリにやられている
- 老朽化した建物なので耐震性に問題がある
が物件の抱える問題です。
こういった状況を知っているにもかかわらず、それを伝えずに売却行為を行うのは詐欺に当たりますし、売却後にそれらが発覚したら大きなトラブルとなります。
仮に知らずに売却が終わったとしても、無過失責任となるため、いずれにしても売り手は責任を負わなければなりません。
周辺環境の問題
周辺環境の問題としては、
- 隣の家で自殺があった
- 同じマンション内で殺人事件があった
などが挙げられます。
これらは心理的瑕疵に該当することも多く、売り手に対しての開示義務があるため、売却後に買い手がその事実を知った場合には瑕疵担保責任による損害賠償を請求されることがあります。
また場合によっては、例え売却後であったとしても契約解除になる可能性がありますし、その際には出費額が大きくなるため注意が必要です。
言う必要もない理由とは?
それでは、反対に正直に言う必要がない理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
例えば、物件の価値に関係のない、個人的な離婚やローンの支払いができないというようなものは、買い手にも関係のない話になるため必ずしもいう必要はありません。
正直に言ったところで、それが買い手の購買意欲を大幅に下げることにはならないため、場合によっては正直に伝えるのも方法の1つです。
判断が難しい理由
例えば、窓から景色が見えないのは物件を見れば一目瞭然ですので、あえてそれが原因で精神的な被害が出ているというようなことを伝える必要はありません。
また、近隣トラブルについても、近所の方と仲良くするつもりがないという方もいるでしょうし、騒音など気にならないという方もいらっしゃいます。
もちろん不動産会社には全て伝えておいたほうが良いですが、わざわざ購入希望者に言う必要がないと判断されれば伏せておいてもよいでしょう。
様々な理由がありますが、自分で判断するのが難しい場合は、その判断基準は担当してくれる不動産会社にゆだねてしまいましょう。
まとめ
売却理由は人によって様々ですし、中には他人に知られたくないというような家庭の事情があるご家庭もあるのではないでしょうか。
もちろん言わなくても問題ない売却理由も存在しますが、中には言わなかったことによって後々大きなトラブルに発展するような理由も存在します。
例え売却活動が不利になったとしても、事前の告知が義務付けられているものに関しては売買契約を結ぶ前に正直に全て伝えておかなければなりません。
一般的な瑕疵についてはある程度の知識があるという方もいらっしゃるかもしれませんが、自分で判断するのが難しい理由もあるのではないでしょうか。
そんなときには、売却活動をサポートしてもらう不動産会社に相談してみることをおすすめいたします。
特に、経験豊富な不動産会社であれば過去にも様々な売却理由を取り扱っているはずですので、あえて言う必要のない理由をしっかりと判断してくれるはずです。
中には不動産会社にもネガティブな売却理由を隠そうとする方もいますが、それをすると大きな問題になることもあるため、まずは不動産会社を味方につけて売却活動を成功させていきましょう。