マイナンバーは2016年に始まった比較的新しい制度になりますが、重要な個人情報になるため、できるだけ情報を提示したくないと考える方も多いのではないでしょうか。
一般的な不動産の売買においてマイナンバーを使うことはありませんが、中には情報を提供してほしいと言われるケースもあります。
不要なケースもあるのに、「なぜ自分の時だけマイナンバーがいるのか?」その理由が知りたいという方もいらっしゃるはずです。
また、まだまだ新しい制度であるため「うかつに情報を渡してしまってもいいのか?」と不安になる方も少なくないようです。
結論を言うと、不動産の売却で実際にマイナンバーが必要な場面は存在します。
この生地では、そんなマイナンバーが必要な不動産売却やマイナンバーを提供する際に気を付けるべき点などをまとめています。
目次
不動産の売却でマイナンバーの提示が必要なケース
不動産の売却によって、マイナンバーが必要な場合とそうでない場合があります。
不動産の売却取引 | マイナンバーの提示 |
---|---|
個人から個人へ | 不要 |
個人から法人へ | 必要 |
法人から個人へ | 不要 |
法人から法人へ | 不要 |
実際には少し異なりますが、簡単に言えばこういうことになります。
それではそれぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
不動産業者でない個人間の不動産売却にマイナンバーは使わない
不動産の売買取引のほとんどは、個人と個人の間で行われます。
そして、基本的には個人が個人に不動産を売却する場合には、マイナンバーが使われることはありません。
そのため、個人間で不動産を売却するにもかかわらずマイナンバーの提示を求められた場合は、詐欺である可能性があるため注意が必要です。
一般的には、個人間の契約であったとしても間に不動産会社を通すことが多いため、会社とのやり取りだと勘違いされる方もいます。
しかし、その場合の不動産会社はあくまでも中間に入って個人間の売買をサポートしているだけですので、売却相手は会社ではなく個人です。
売却活動を行うにあたって不動産会社と媒介契約を結ぶという方がほとんどだと思いますが、当然その際にもマイナンバーは不要です。
法人(会社)に売却する場合はマイナンバーが必要
不動産の取引でマイナンバーが必要な場面は、
- 不動産会社に不動産を売却するにあたって年間で100万円以上の金額を受け取る場合
- 同じ会社から家賃などの受取金額が年間合計で15万円を超える場合
になります。
このうちの2番は賃貸に関することなのでここでは関係なく、問題となるのは1番です。
簡単に言えば、不動産会社(法人)などに不動産を売却する際に、その価格が100万円以上となる場合はマイナンバーが必要になってきます。
不動産にも様々なものがありますし、価値も異なりますが、基本的にはどのような不動産であったとしても100万円以上で売却するケースがほとんどです。
そのため、実質不動産会社などの法人に不動産を売る場合は、マイナンバーを提出しなければならないと考えることができます。
相手が個人でもマイナンバーが必要になるケース
先ほどは、個人間でのやり取りであればマイナンバーが不要だと記載しましたが、場合によっては個人相手の売却にもマイナンバーが必要になることもあります。
それは、売却相手が個人事業主として不動産業を営んでいる場合です。
もちろんそのようなケースに当たるようなことはほとんどないでしょうが、個人であっても個人事業主の場合は法人扱いとなります。
よって、個人でも事業主として不動産業者として事業を行っているのであれば、マイナンバーの提出は必要です。
不動産の売買にマイナンバーが必要な理由と提出方法
マイナンバーを提出しなければならない条件がお分かりいただけたと思いますが、それではなぜ提出が必要なのでしょうか。
また、マイナンバーの情報はどのように相手に渡すのでしょうか。
続いて、提出理由と提出方法について見ていきましょう。
マイナンバーの情報が必要な理由
不動産会社は毎年決済をする際に、不動産等の譲受けの対価の支払調書と呼ばれる法定調書を税務署に提出する義務があります。
支払調書とは報酬を受け取ったもの(法人や不動産業者)が「どのような内容で誰にいくら払ったか」を税務署に報告するための書類。
不動産会社は毎年大量の不動産の売買を行いますが、それには様々な税金が発生するため、法律に基づいて書類を提出しなければならないのです。
そして、マイナンバーが導入された2,016年からは、その書類に売り手のマイナンバーを記載する項目が追加されました。
そのため、不動産会社に対して売却取引を行う場合は、売り手もマイナンバーを提出しなければなりません。
逆に言えば、個人間のやり取りでマイナンバーを税務署に提出するようなことはありません。
そのため、買い手が個人であるにもかかわらずマイナンバーが必要だと言われた場合には気を付けましょう。
あくまでも個人の間での不動産売却においてはマイナンバーは必要ありません。
マイナンバーの提出の拒否はできる?
ちなみに個人間でのやりとりにはマイナンバーは必要ありませんが、不動産会社に対して売却取引を行う場合はマイナンバーが必要です。
しかし、まだまだマイナンバーは広まっていないため「提出するのが怖い」という方も多く提出を拒否する方もいらっしゃいます。
その場合はどうなのるか。
基本的にマイナンバーを提出しないからといって取引がなくなることはありません。
国税庁のホームページでもそのように記載されています。
Q2-3-2 申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。(平成29年9月7日更新)
(答)
税務署等では、社会保障・税番号<マイナンバー>制度に対する国民の理解の浸透には一定の時間を要する点などを考慮し、申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも受理することとしていますが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。
なお、記載がない場合、後日、税務署から連絡をさせていただく場合があります。
ただし、その場合でも、税務職員が電話で直接マイナンバー(個人番号)を聞くことはありません。税務職員を装った不審な電話にはくれぐれもご注意願います。
ただし、あくまでもマイナンバーの提出は義務となっているので、いずれ税務署から連絡がいく場合もあります。
提出するのが怖い方もいると思いますが、上記の条件に当てはまる場合は必ずマイナンバーは提示するようにしましょう。
マイナンバーの提出方法
それでは、マイナンバーはどのようにして提出すべきなのでしょうか。
非常に重要な個人情報になるため、取り扱いは慎重に行う必要があります。
不動産会社にマイナンバーを提出する際には、
- 通知カードと身分証明書の写し
- マイナンバーカードの写し
のどちらかを選択することになります。
マイナンバーの通知カードはもっているが、きちんとしたマイナンバーカードを持っていないという方も多いのではないでしょうか。
マイナンバーカードがある場合はそのカードの写しを提出すればよいですが、カードがない場合は通知カードを顔写真付きの身分証明書と併せて提出します。
一般的には、その情報をコピーして郵送などで提出することが多いです。
この機会にマイナンバーカードを取得すべき?
マイナンバーカードをすでに持っているという方は問題ないですが、まだ持っていないという方も少なくないようです。
現状ではカードがなくても困るような場面はそんなにないかもしれませんが、今後は様々な場面でマイナンバーカードを利用する可能性も出てきます。
そのため、不動産会社に不動産を売却する際にマイナンバーの提出を求められるのであれば、この機会に作っておくことをおすすめいたします。
現在であればカードの交付手数料は無料となっているため、無料なのであれば作っておいて損はありません。
逆に、将来マイナンバーカードを使う場面が増え、その時には交付手数料がかかるようになっている可能性もあります。
また売却相手に提出する際にも、免許証などの他の身分証明書を添える必要がなくなります。
そういったことを考えると、無料のうちに早めに作っておいたほうがメリットは多いです。
マイナンバーの手続きは難しくありません。近くの市役所などにいけば丁寧に教えて貰えるはずです。
マイナンバーを提出する際の3つの注意点
それでは最後に、不動産の売買取引でマイナンバーが必要になった際に気を付けるべき点を紹介させていただきます。
大切な個人情報になるため注意点はたくさんありますが、例えば
- 買い手と別の会社に提示を求められる可能性がある
- 悪徳業者の存在に気を付ける
- 委託業者が本物かどうかを確認すべき
といった点が挙げられます。
どれも個人情報の漏えいに関わるものばかりですので、必ずチェックしておくようにしましょう。
買い手と別の会社に提示を求められる可能性がある
管理しなければならないマイナンバーの数が少ない会社なのであれば、自社でマイナンバーを収集することも多いです。
一方で、取り扱うマイナンバーの量が多い会社の場合は、マイナンバーの収集を専門に扱う業者を利用することも珍しくはありません。
買い手となる会社にマイナンバーを渡す必要があるのに、突然関係のない会社から提示を求められたらびっくりするのではないでしょうか。
いきなり知らない会社からマイナンバーを提供しろなどと言われると、当然こちらも構えてしまいますし怪しいと感じるのは当たり前です。
しかし、実際にマイナンバーを第三者に委託して収集するのは全く問題がなく、多くの会社が利用するサービスになります。
そのため、不動産の売却相手が大手の企業であったとしても、全く知らない別の業者が収集に来るということが当たり前にあり得るのです。
まずはその事実があるということを認識し、実際に提示すべきかどうかを考えるようにしましょう。
悪徳業者の存在に気を付ける
まだマイナンバー制度が導入されてから間もないですが、実際にマイナンバーの収集を専門に扱う業者は多数存在します。
そして、それと同時にマイナンバーの収集業者を装って不正に個人のマイナンバー情報を集める悪徳業者がいるのも事実です。
普通に生活を送っていてもマイナンバーを使う場面はまだまだ少ないため、何となく重要だと思っていても取り扱いに関するリスク管理が甘い方もいらっしゃいます。
しかし今後は、マイナンバーは様々な個人情報と紐づけられていくため、他人にその情報を渡すのは絶対に避けるべきです。
例えば不動産の売買のように必ず必要な場面では仕方がありませんが、詐欺会社も存在するということを覚えておきましょう。
委託業者が本物かどうかを確認すべき
マイナンバーを提供してほしいと申し出た業者が売却する会社と全く違う場合、素直に渡してしまうのではなく、本物かを確認することをおすすめいたします。
マイナンバー収集業者にも様々なところがありますが、中には何の件でマイナンバーを求めているのかを言わないようなところも存在します。
仮に提示の理由を言わなかったとしても、本当に委託された業者なのであれば全く問題はありません。
しかし、その業者が不動産の売買と全く関係のない場合、単純にマイナンバーの情報が他人に漏れてしまうということになります。
相手が名乗ろうが名乗らまいが、まずは売買契約を結んだ会社に、本当に委託したかどうかを確認するようにしてください。
そうすることによって無駄な情報の漏えいを防ぐことができますし、安心して情報を渡すことができるはずです。
まとめ:不動産売却にはマイナンバーは必要な場合があるので作成しておく
不動産を売却する際には、必ずマイナンバーが必要というわけではありませんが、場合によっては提出を求められることがあります。
法人を相手に不動産を売却する場合は基本的にマイナンバーが必要となるため、スムーズに提出できるように用意しておきましょう。
その際には、マイナンバーカードがあれば他の身分証明書が不要なため、今後のことも考えて早めに作成しておくことをおすすめいたします。
マイナンバーが必要な不動産取引も存在しますが、基本的には個人間でのやり取りではマイナンバーを求められることはありません。
重要な個人情報ですし、マイナンバーに関連した詐欺行為も増えてきているため、取り扱いには十分に注意しましょう。