不動産会社を仲介して家を売る前には、どのように売却活動を行い、また売却が完了した際に不動産会社にいくら払うのか、といった内容を決めることになります。

そのような家の売買に関する内容を取り決める契約のことを媒介契約といい、

不動産売却で知っておきたい基礎知識。仲介手数料と媒介契約の種類

媒介契約を結ぶことによって売り手と不動産会社の関係を明確にすることができるため、安心して建物の売却に専念することができるようになるのです。

しかし、この媒介契約は、大きく一般媒介契約と専任媒介契約に分けられ、さらに専任媒介契約には専属専任媒介契約というものも存在します。

今回は、この3つの媒介契約の違いや特徴、おすすめの方法などについて紹介していきます。

専任媒介契約・専属専任媒介契約とは

まずは専任媒介契約と専属専任媒介契約ですが、これらの媒介契約を選んだ場合、 売主は1社の不動産会社としかやり取りができなくなります

同じ期間中に2社以上の不動産会社と契約することができないため、売り手に対して大きな制限がかかると言えるでしょう。

しかし、こちらの媒介契約を選ぶことで様々なメリットを得ることができます。

専任媒介契約・専属専任媒介契約のメリット

売買活動に制限がかかるのが、デメリットでしかないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに場合によってはこれらの契約がデメリットになることもありますが、多くの方が利用する媒介契約ですのでそれなりにメリットが多いのです。

それでは、具体的にどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。

不動産会社とのやり取りが楽

専任媒介契約にしなければ複数の不動産会社とやり取りをすることが可能になりますが、やり取りする不動産会社が増えれば増えるほど、どの会社とどんなやり取りをしたのかわからなくなったり混乱してしまうことが多いです。

しかし専任媒介契約、専属専任媒介契約であれば初めから1社としか契約することができないため、その1社とのみやり取りをすればよいということになります。

つまり、 売却活動の窓口を1つに絞ることができるため、例えば不動産の売却価格を変えたいとなった場合なども素早く対処することが可能です

例えば複数の不動産会社と契約を結んでおり、なかなか家が売れないので売却価格を下げるとしましょう。

その際に、10社と契約を結んでいる場合は10社に一斉に連絡を入れて価格の値下げを依頼しなければなりません。

全く同じ家なのに、A社のホームページでは3000万円となっているのにB社のホームページ上では2800万円になっているということが発生してはならないため、そのような手続きは時間を使って一斉にやらなければなりません。

その点、 専任媒介契約や専属専任媒介契約は窓口が1つなので、やり取りが非常に楽なのです

不動産会社の気合が違う

複数の不動産会社と契約を結んでいる場合は、A社を通して売れた物件の仲介手数料をB社に支払う必要がありません。

逆に言えば、不動産会社がどれだけ頑張って売却活動をしたとしても、他社を通して売れてしまった物件の報酬は手元に入ってこないため、それまでの努力が無駄になってしまうというわけです。

そうなる可能性がある物件に時間を割いて一生懸命売るよりは、他社で売れる可能性のない専任媒介契約、専属専任媒介契約を結んでいる不動産の売却活動に時間を使った方が良いと考えます。

もちろん不動産会社としても、専任で契約をしてくれるお客さんと他社とも契約をしているお客さんの物件を区別して判断するというつもりはないかもしれません。

しかし、 やはり確実に利益につながるとわかっている案件があるのであれば、そちらを優先して取り扱う気持ちはわからないでもありません

売り手からすると、少しでも多くの不動産会社に売ってもらった方が早く売れるのではないかと考えがちですが、実はこのような理由から、専任媒介契約を結んだケースの方がよいとも考えられるのです。

様々な特典が付く可能性もある

専任媒介契約や専属専任媒介契約を結べば、不動産会社としても努力が報われる可能性が高いため、 基本的にはほとんどの不動産会社が売り手との専任媒介契約を望んでいます

しかし、売り手は複数の不動産会社と契約を結べなくなってしまいますので、そのデメリットを緩和させるための様々な特典を用意している業者も存在します。

様々なものがあるため一概にいうことはできないのですが、

  • 家を早く売ることができる
  • 家を安心して売ることができる

ような特典も少なくありません。

どういうことかと言うと、例えば媒介契約を結んだものの家がなかなか売れない場合には、買取保証を設けることで確実に売り手が不動産を売却できるようにセッティングします。

もちろん買い手を探して売るのが最も良いのですが、契約期間中に売ることができなければ不動産会社が責任を持って買い取ってくれるため、売り手からするとどっち道家が売れてしまいます。

または、不動産会社を仲介して売った家に何らかの欠陥が見つかった場合、瑕疵担保責任によって売り手がその欠陥に対する責任を負う必要があります。

しかし、その欠陥を補修するための費用を立て替えますというような特典を付けている不動産会社もあるため、安心して家を売ることができるのです。

このような特典は専任媒介契約を結ばないとついてこないため、大きなメリットの1つと言えるのではないでしょうか。

専任媒介契約と専属専任媒介契約の違い

専任媒介契約と専属専任媒介契約は、ともに1社の不動産会社としか契約を結べない媒介契約になりますが、それでは両者にはどのような違いがあるのでしょうか?

専任媒介契約のメリット

細かな違いは複数存在するのですが、売り手に最も関係してくる違いとして挙げられるのは、 売り手が自分で見つけてきた買い手に対する売却方法です。

売り手の知り合いがその不動産を購入したい、または友人の知り合いに興味を持っている人がいるとなった場合、普通に考えれば売り手とその人物との個人的なやり取りで売買契約がまとまってしまいます。

しかし、専属専任媒介契約を結んだ期間中は、たとえそういった人物が現れたとしても、その契約を結んでいる不動産会社を通さなければ家を売ることができないのです。

それが専任媒介契約であれば、売り手が自分で見つけてきた購入希望者と売買契約を締結することができるため、専属専任媒介契約と比べると若干制限が緩いと言うことができます。

専属専任媒介契約のメリット

ただし、専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社からの販売状況の報告を1週間に1回受けられるのに対し、専任媒介契約の場合は2週間に1回しか受けられないなどのデメリットもあります。

また、属専任媒介契約はレインズ(指定流通機構)への登録を契約から5日以内に行わなければならないのに対して、専任契約の場合は7日以内に登録すればいいと決められているため、専属専任媒介契約の方が売却予定物件の情報をより早く登録することができます。(※レインズについては後述させていただきます。)

自分で買い手を見つけた場合は専任媒介契約を結ぶことでメリットが得られますが、 逆に自分で見つける可能性がほぼないと断定できる場合は、専属専任媒介契約を利用することをおすすめいたします

レインズ(指定流通機構)とは

レインズとは、不動産の流通を活性化させるために、現在売りに出されている不動産などの情報の交換業務を行っている機関のこと。

専属専任媒介契約や専任媒介契約をした場合、その不動産会社を通さなければ家を売ることができないため、どうしても売却活動が小規模になりがちだと考える方も多いはずです。

しかし、このレインズに登録することでオンライン上の物件情報システムに売却したい建物の情報が公開されるため、幅広く購入希望者を探すことが可能となるのです。

先ほども述べましたが、専任媒介契約の場合はこのレインズへの登録を契約から7日以内に行う必要があるのに対し、専属専任媒介契約の場合は5日以内に行わなければならないため、若干ではありますが専属専任媒介契約の方がデータベースに登録される速度が速くなります。

一般媒介契約とは

先ほどまでの専属専任媒介契約や専任媒介契約とは違い、一般媒介契約を利用する場合は 売り手は同時に複数の不動産会社と契約を結ぶことができます

一般的に見ると最も制限の少ない媒介契約だと言えますが、当然デメリットも存在します。

一般媒介契約の種類

一般媒介契約は、明示型と非明示型の2つに分けることができます。

明示型とは

一般媒介契約を利用する売り手の多くは、当然複数の不動産会社に仲介を依頼することになります。

明示型は、仲介をお願いしている不動産会社の他に、どの不動産会社と媒介契約を締結しているのか、というようなことを知らせる必要があります。

非明示型とは

複数の会社に売却を依頼しいていたり媒介契約を結んでいたとしても、非明示型の場合はそれを知らせる必要がありません。

明示型・非明示型の選択

売り手は、契約を結ぶ際に明示型か非明示型かを選択することができます。

しかし、仲介をお願いしているいずれかの不動産会社によって売却が成約した場合は、他の不動産会社にどの不動産会社で売却が行われたのかを通知する必要があります。

一般媒介契約のメリット

専任媒介契約や専属専任媒介契約と比較すると、一般媒介契約では 複数の不動産会社と契約を結ぶことができるという点が最大のメリットです。

また、当然売り手が自身で見つけてきた買い手と直接やり取りをすることができるため、3つの媒介契約の中では最も自由度の高いスタイルになります。

魅力的な物件や購入希望者が多そうな物件に関しては、各社ともに他社に負けないように売却活動を行う可能性があるため、それぞれの不動産会社の競争によってすぐに売れてしまう可能性もあります。

一般媒介契約のデメリット

複数の不動産会社と同時にやり取りをするのは、意外に面倒です。

専任媒介契約のように1社だけを窓口とするわけではないため、利用しているすべての不動産会社に同じことを繰り返し伝えたりするのが大変ですよね。

また、突出して人気のあるような物件以外は、時間や経費を割いて積極的に売り出そうとしない業者が多いため、それがあだとなってなかなか売れない可能性も高いです。

さらに、レインズへの登録義務もありませんし、専任媒介契約や専属専任媒介契約であれば義務付けられていた販売状況の報告もする必要がないため、他の媒介契約と比較するとどうしても売れにくくなりがちです。

要するに、 需要が高い物件でなければ一般媒介契約に向いていないと言い換えることもできます

媒介契約を比較してみてた

3つの媒介契約を紹介してきましたが、結局どの方法がいいのかいまいちわからないという方もいらっしゃるかもしれません。

最後にそれぞれの媒介契約を比較してメリットのある媒介契約を選びましょう。

媒介契約の比較

  専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
複数会社との契約 不可 不可 可能  
自分で買い手を見つけた場合の契約 直接取引は不可 直接取引が可能 直接取引が可能
レインズへの登録義務 契約から5日以内 契約から7日以内 登録義務自体がない
活動報告の頻度 最低1週間に1回以上 最低2週間に1回以上 必要なし
契約期間 3ヵ月以内 3ヵ月以内 規定はないが3ヵ月以内が一般的

こうして見てみると、専任媒介契約と専属専任媒介契約には大きな違いがないということがわかります。

しかし、表の右から左に行くにつれて、徐々に制限が厳しくなっているということも確認することができます。

ただし、専任媒介契約や専属専任媒介契約の方が制限があるとはいえ、上述したように様々なメリットもあるため、一般媒介契約よりも専任媒介契約を選ぶ方も多いです。

一般媒介契約の方が良いケース

例えば、人気が高い物件、付加価値の高い物件などであれば、一般媒介契約であってもすぐに売れてしまう可能性が高いです。

良い物件はそれだけ購入希望者が殺到する可能性が高いため、例え不動産会社が積極的に売り出さなかったとしても、勝手に売れてしまうのです。

駅真ん前の物件であったり、相場と比べて価格がかなり低かったりというケースであれば、購入希望者の方から内覧しいたいと希望があるはずですので、どの媒介契約を利用したとしても早い段階で売れると言えるでしょう。

そのため、売れる物件だと感じるのであれば、 あえて制限のかかる専任媒介契約や専属専任媒介契約を選ぶより一般媒介契約の方がメリットが高いと言えるかもしれません

最後に

単純に不動産会社を利用して家を売るとなった際にも、いくつかの媒介契約の中から1つを選んでそのルールに従って売却活動を続けていくことになります。

誰もがほしがるような家を所有しており、それを売りに出そうと考えていらっしゃるのであれば、一般媒介契約であっても十分に売れるのではないでしょうか。

しかし、一 般的な建物、売れにくそうな家などを売りたいと考えている場合は、担当者がしっかりと売却活動をしてくれる専任媒介契約または専属専任媒介契約を選んだほうが良いかもしれません

自分では決めきれないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産会社に相談した場合は、業者にとってもメリットの高い専属専任媒介契約を勧められるはずです。

もちろん結果的にそれでよかったとなる可能性も高いですが、やはりご自身の建物の売り方はご自身の中で考えて答えを出すのが良いかもしれません。