誰もが少しでも高く家を売りたいと考えていますが、買い手からすると逆に少しでも安く家を手に入れたいと思っています。
そのため、最終的にはその家の相場あたりで売買契約が成立ケースが多いのですが、最初の値段はいくらに設定してもかまわないため、少しでも高く売るために高めに設定するという方も少なくありません。
その価格で売り手がなかなかつかないような場合は、価格を据え置きにして買い手が現れるのを待つか、値下げをして購入希望者を増やすかのどちらかを選択することになります。
一般的に家を売りに出すということは、その物件が不要になったため早く売ってしまいたいと考えているということになります。
そのため、やはり後者の値下げをしてより多くの方に興味を持ってもらうようにする、という選択肢を取る方の方が多いです。
この記事では、そんな不動産売却の価格設定や値下げについて解説しています。
不動産評価額の種類
例えば、全く同じ面積で同じタイプの家であっても
- 都心に建てられているか
- 田舎に建てられているか
によって価格が大きく変わってきます。
その土地に建てられている家の造りやデザイン、築年数などによっても評価は変わってきますが、やはり不動産の評価額の基本は、その家がどこに建てられているかという土地によって左右される部分が大きいです。
そのため、まずは土地の評価額の種類について紹介させていただきます。
- 実勢価格
- 公示地価
- 基準地価
- 路線価
- 固定資産税評価額
- 希望売却価格
土地の評価額は、大きくこのうちの1~5に分けられます。
6は売り手が自由に設定できる希望の売却価格になるため、1~5を詳しく見ていきましょう。
実勢価格
市場価格と言われることもありますが、例えば不動産の購入希望者が不動産会社に行って提示される不動産の価格がこの実勢価格になります。
原則として、土地はその所有者から購入希望者へ1対1で売買行為が行われることになるため、多くの方が購入に参加できる為替や株、仮想通貨のように厳密な価格が設定されているわけではありません。
一般的には、その他の似たような条件の不動産を見た上で価格が見積もられることになりますが、その価格以上で売れることもありますし、値下げを強いられるようなケースもあります。
公示地価
一言で言ってしまえば、国土交通省が調査をして決める、一般的に地価と呼ばれているものがこの公示価格です。
国土交通省が毎年3月に公表する全国の土地の価格が公示価格ということになり、不動産を売買する上での参考価格になりやすいです。
例えば単純に土地のみを売却する場合は、この公示地価を元に売却価格を決めることで、早期売却につながりやすいです。
参考サイト⇒国土交通省地価公示・都道府県地価調査
基準地価
上記の公示地価と似たようなものですが、地価を評価するために毎年9月に都道府県が行う調査で、公示地価と同様に地価の基準として用いられることが多いです。
ただし、公示地価が毎年1月1日時点での地価を3月に公表する一方で、基準地価は毎年7月1日時点での地価を9月に公表することになります。
半年ごとに地価が見直されることになるため、不動産の売買する上での参考価格の移り変わりを確認することが可能となります。
参考サイト⇒東京都基準地価格 | 東京都財務局
路線価
上述した公示地価や基準地価が敷地そのものの価格であることに対して、路線価とは道路ごとで割り出す価格になります。
1本の道路に面する土地の場合と2本以上の道路に面する道の場合は計算方法が若干変わってきたり、奥行や間口なども加味されることがあります。
なお、この路線図は相続税や贈与税において課税標準として利用されることもあり、国税庁によって毎年7月に発表されることになります。
一般的には、公示地価の80%程度の価格になることが多いです。
参考サイト⇒路線価
固定資産税評価額
それぞれの市町村によって算出される、固定資産税の評価のための評価額になります。
一般的には公示地価の70%あたりの価格になることが多く、この土地の上に建物がある場合は、その価値などを付け加えて固定資産税評価額となります。
固定資産税だけではなく、都市計画税や登録免許税、不動産取得税などの課税を計算する際にも利用されます。
鑑定方法の種類
それでは続いて、不動産鑑定士が実際に不動産の価格を鑑定する方法を見ていきましょう。
- 原価法
- 収益還元法
- 取引事例比較法
主にこの3つの方法が利用されることが多いため、それぞれの方法を紹介させていただきます。
原価法
土地だけではなく、売却希望の土地に建物が建てられている場合によく使われる方法になります。
具体的には、その不動産の再調達原価を原価修正することによって、現在の価格を割り出すことができます。
再調達原価とは、現在建てられている建物と同じ建物を建てた際に必要な金額のことになり、原価修正とは、経年劣化による価値の低下を差し引くことです。
要するに、新築物件の価格から劣化した部分の価値を引き算して現在の価値を割り出すといった方法です。
収益還元法
最近は投資目的で不動産を購入するという方もいらっしゃいますが、この収益還元法とはそんな投資のための不動産の価値を調べるために利用される方法です。
簡単に言えば、その不動産を購入することによって将来的にどれくらいの利益を生み出すことができるのか、ということを考慮して価値を確認します。
取引事例比較法
こちらは全ての不動産を鑑定する上での基本的な鑑定方法になり、具体的には対象となる不動産と類似する過去の取引事例を確認し、それを比較したうえでその不動産の価値を決めるという方法です。
もちろん全く同じ立地の建物など存在しないため、評価が全く同じになるということはありませんし、その時の市場の動向なども考慮して価値を調整することになります。
売り出し価格と値下げ
上記のように、不動産には様々な鑑定方法がありますし、その価値も評価額の種類によって異なります。
それでは、実際に所有する不動産を売りに出す際にはどのように価格設定をし、またどのように値下げをすべきなのでしょうか。
売却希望価格と売り出し価格
例えば相場が3000万円の不動産を施主が5000万円で売りたいとなった場合、その5000万円というのが売却希望価格ということになります。
しかし、当然相場が3000万円の家が5000万円で売れることなどほぼないと言っても過言ではありませんし、購入希望者が集まる可能性は低くなります。
一方で、売り出し価格というのは実際にその不動産をはじめて市場に公開するときの価格のことを言い、例えば4000万円として公開した場合、その4000万円がその不動産の売り出し価格ということになります。
値下げを考えた売り出し価格の設定
3000万円の物件を5000万円で売り出す例は少々極端でしたが、購入希望者は十中八九値下げの交渉を持ちかけてくることになるため、売り出し価格はその値下げを考慮した価格設定であることが望ましいです。
例えば相場の3000万円以上である3200万円で売りたい場合は、売り出し価格を4000万円に設定することによって、交渉の際に「2割も値引きをしますよ」というアピールをすることができます。
しかし、売り出し価格が相場とかけ離れているような場合は、そもそも購入希望者が一人も現れないという可能性も出てくるため、高すぎる価格設定はおすすめできません。
値下げを考慮した売り出し価格の割り出し方
それでは、実際に売り出し価格を設定する際には、どのように考えればよいのでしょうか。
相場が3000万円の家を売りに出す場合を以下の3つのパターンで売り出し価格を決めていきましょう。
- 相場よりも高く売りたい価格設定
- 相場で売りたい価格設定
- 安くてもいいから早く売りたい価格設定
相場よりも高く売りたい価格設定
やはり初めは相場よりも高値で売りたいと考える方がほとんどですので、その相場よりも高い価格+値下げ分の価格を上乗せした料金が設定されます。
具体的には、
- 3000万円(相場)+200万円(利益)+300万円(10%の折り込み値下げ)=3500万円
この辺りが妥当だと考える方も多いです。
売り出し価格が3500万円の場合、仮に10%値下げをしたとしても売値が3150万円となるため、相場よりも高く売却することができます。
値下げをせずにそのまま売れれば大きな利益へとつながりますし、値下げをしてもプラスになります。
相場で売りたい価格設定
相場通りで売れれば満足だという方は、初めから利益を除いた売り出し価格を設定することになります。
- 3000万円(相場)+300万円(10%の折り込み値下げ)=3300万円
この価格であれば、10%の値下げ交渉に応じたとしても売値は2970万円ということになり、ほぼ相場通りの価格で取引が成立することになります。
また、うまくいけば値下げを5%にとどめることができるかもしれないため、その差額分が利益となります。
安くてもいいから早く売りたい価格設定
売り出し価格は基本的にはいくらに設定してもかまいませんので、いくらでもいいから安く売りたいと考えているのであればその価格で売り出してしまうことも可能です。
例えば、「相場が3000万円なのに対して2500万円で売り出すが値下げには応じない」というようなスタンスで売却活動をすることもできます。
ただし、売り出し価格が安ければ安いほど購入希望者が殺到することになるため、初めは相場程度に設定しておき、なかなか決まらない場合は少しずつ価格を落としていくという方法もよいでしょう。
買い手との駆け引きも重要
職業柄交渉事が得意だという方もいらっしゃるかもしれませんが、最後に現場でよく利用される買い手との駆け引きのテクニックをいくつか紹介します。
- 相手の買う気を判断する
- 物件のデメリットも伝える
- すぐに値下げを口にしない
基本的なところだと、この辺りがよく使われるテクニックです。
相手の買う気を判断する
例えば、内見をした後に何の連絡もない購入希望者は
- 既に他の物件に興味を持っている
- 初めから買う気のない
という場合が多いです。
本気で購入を考えている方であれば、実際にそこに住んだ場合にデメリットとなりそうな点に対する質問がたくさん出てくるはずです。
近隣の住民や、保育園、小学校などの子供の教育に関することから、毎日の買い物場所やその他の様々な生活施設のことまで、家庭環境によって様々ですが、旦那様と奥様が2人で様々な質問をしてくるということは、それだけ買う気が高いということでもあります。
既に興味のない方に値下げの交渉をしてもあまり響かないことが多いですが、本気で購入を考える方に最終的に値下げの話を持ちかけると、そこでコロリと行く可能性もあります。
物件のデメリットも伝える
その住宅の良さを伝えるために、メリットばかりを伝えたいという気持ちはわかりますが、どんな物件にも必ずデメリットは存在しますし、買い手としてはメリットだけではなくデメリットも知りたいはずです。
反対にデメリットのない物件を紹介されても、疑われて購入に至らないケースもが多いです。
例えば大きなモールが徒歩圏内にあるから買い物に困らないし、静かだから過ごしやすいが、小学校が遠いためお子様は大変かもしれないなど、良い面もあるが、悪い面もあるという点を伝えましょう。
購入希望者も様々な物件を見ているはずなので、良い点と欠点を総合して最終的に購入物件を決めることになります。
デメリットも素直に伝えることで、逆に信頼関係が生まれて興味を持ってくれる可能性が高くなります。
すぐに値下げを口にしない
早く売りたいと考える方ほど、内見の時にすぐに価格を下げますというようなことを言ってしまいがちですが、値下げの話はそれ以外の条件をきちんと話し合ったうえで出したほうが良いでしょう。
基本的には後日連絡が入り、不動産は気に入ったけど価格がちょっと難しいというような話になる可能性が高いため、その時点で、購入してくれるのであれば値下げは可能だという話を持ち掛け、そこから値下げ交渉がスタートすることになります。
逆に、すぐに値下げをすると言ってしまうと、この人は一刻も早く売りたいんだと勘違いされ、さらなる値下げ交渉を持ちかけられることにもなりかねないため注意しましょう。
なお、値下げを考慮した売り出し価格を設定しておくことによって、値下げ交渉は売り手が主導となって進めていくことが可能です。
まとめ:買い手の立場を考えて価格を設定しよう
家を売りたいと考えている方は、相手となる買い手の立場を考えて価格を設定する必要があります。
誰もが少しでも安く家を買いたいと思っているため、最終的に値下げ交渉に応じるのはある程度は仕方のないことです。
しかし、売り出し価格はこちらで決めることができるため、初めからその値下げを考慮した価格設定にしておくことで、損なく物件を売却することが可能となります。
ただし、売り出し価格があまりにも高いと見向きもされないため、購入希望者が興味を持ってくれる価格を見つけ、うまく設定する必要があります。
そうすることによって、結果的に中古物件を早く売ることができるはずです。
上手に価格設定をしてみてください。