外構工事の請負契約書でチェックすべき5つのポイントと契約書の重要性

外構は、建物を印象付ける重要な部分ですのでこだわりも強く、一般的に工事代金も高いため、何かともめごとが起こりやすいです。

トラブルを防止するためにも、また、万一トラブルが発生したときに備えて、契約書は交わしておく必要があります。

また、契約書を交わせば安心ではなく、トラブル回避のためには契約書の内容を理解しておく必要があります

なぜ契約書を交わす必要があるのか、外構工事の契約書ではどこに着目すればよいかについて、この記事では掘り下げて解説します。

合わせて、外構工事の請負契約で注意するポイント5つも紹介するので参考にしてみてください。

契約書の必要性について考える

契約書の必要性について考える

外構工事の見積書を検討し、外構工事を依頼することが決定したら契約書を交わします。

ではそもそもの話ですが、なぜ契約書が必要なのでしょうか。

まずは契約書の必要性や意義を少し解説していきます。

契約とは「約束」である

請負契約では、契約の当事者を

  • 注文者
  • 請負者

と表現します。

「注文者」とは外構工事を注文するあなた、「請負者」とは外構工事業者のことを指します。

請負契約は、注文者と請負者の約束です。

したがって、それぞれ相手に約束したとおりの内容を実現する義務を負っています

つまり、請負者は「外構を完成させる」という作業を引き受けたので、約束どおり外構を完成させる義務を負います。

一方、注文者は「外構を完成してくれたら○○円を支払う」と約束しているので、外構工事が完了したときに代金を支払う義務を負います。

これが契約です。

契約書がなかったらトラブルに発展する可能性が高い

契約書がなかったらトラブルに発展する可能性が高い

契約とは「約束」だと表現しました。

約束の内容を全部正確に覚えておければ問題ありませんが、現実的には無理でしょう。

契約書がなければ、相手に対して「約束を破った!」と主張しても、その証拠を示すことができません。

また、契約した時点では想定しなかった問題が発生することもあります。

例えば、外構工事代金を事前に取り決めていたとしても、その後に工事内容の追加や変更があれば話は別です

そのため、外構工事業者としては工事内容の追加や変更があれば、当然、その分の追加費用を請求したいと考えるはずです。

ところが、注文者は契約した金額の範囲内で外構工事を完成させてくれると思っているので、追加費用を請求されると「それでは約束が違う」ということになります。

こうした認識の違いがトラブルの原因となるので、約束の内容は

  • 具体的に
  • 明確に

定めておかなければならないのです。

契約書を交わさずに依頼してもよいか?

これまでの説明から答えは明らかですが、契約書を交わさずに外構工事を依頼するのは絶対に避けるべきです。

外構工事の内容にもよりますが、一般的には高級車1台かそれ以上の金額になる契約です。

万一、トラブルが起こったときには、多額のお金が絡む問題ですから、場合によって外構工事業者と訴訟で争うことがあるかもしれません。

しかし、契約書がなければ

  • そもそもどういう取り決めだったのか
  • どちらの主張が正しいのか

などを判断する証拠がありません。

契約書がないためにトラブルが拡大することもあるのです。

また、外構工事業者が造園業の許可業者の場合は、建設業法が適用されますから、契約書を作成していない時点で建設業法違反となります。

大きなビルの建設工事などでは、びっしり何十ページもある契約書を交わします。

一般的な住宅の外構工事でそこまで大がかりな契約書は不要ですが、ともかく契約書は交わしておくべきです。

外構工事の契約書で注意するべき5つのポイント

外構工事の契約書で注意するべき5つのポイント

それでは、本題に入りましょう。

外構工事を依頼するときは必ず契約書を交わすべきだと説明しましたが、実は外構工事の契約書には特に決まった書式はありません

なので、外構工事業者ごとに契約書の書式は異なり、中には工事代金額と工期などを簡単に記載されただけの契約書を使用している>場合もあります。

そこで、外構工事のトラブルを回避するため、または外構工事でトラブルが発生した場合に備えて、契約書のポイントを挙げておきます。

ここでは、特にトラブルが起こりやすいポイントを踏まえて、5つに絞って解説します。

ポイント1:工事内容が特定できるか

外構工事は、建物の外構を完成させる契約ですから「どのような外構を完成させるのか」完成形を特定しなければなりません。

外構工事の完成形について、お互いの認識を共通させておくことは基本中の基本ですが、この認識のすり合わせが不十分であったため、後々トラブルになるケースが多いのです。

とはいっても

  • どこに何を設置するのか
  • どのような形状にするのか
  • 何色にするのか

等、工事内容を文章で表現することはできないので、通常は、契約書に図面仕様書などを添付して特定します。

打合せの結果が図面や見積書などにきちんと反映されているか確認しておきましょう。

外構工事の見積書で見るべき4つポイントと相見積もりの依頼について

外構が完成した後で、自分の要望と違う施工になっていても、外構工事業者からは「図面どおり完成させました」という回答が返ってくるだけです。

ポイント2:工事代金の内訳が分かるか

工事代金の総額を明記するのは当然ですが、一口に外構工事といっても、その中には、門扉の取り付け、塀の設置などさまざまな工事が含まれます。

なので「どの工事にいくらかかるのか」工事代金の内訳が分かる記載になっているか確認しておきましょう。

契約書自体に内訳の記載がなくても、明細書が添付されていればそれでも構いません。

もし、工事代金の総額だけで内訳の記載がない場合、途中で工事の一部を取止めたときに、当初の工事時代金からいくら減額すればいいのか分からず、外構工事業者の言い値になってしまいます。

そのほか、工事代金については次のような点の取り決めも必要です。

支払時期          

外構工事の完了後に

  • 一括払いとするのか
  • 何段階かに分けるのか

また、支払いの時期はいつなのか等を定めておく必要があります。

支払方法          

一般的には口座振込ですが

  • どこの口座に振り込むのか
  • 振込手数料はどちらが負担するのか

なども取り決めておいた方がよいです。

ポイント3:工期の定めがあるか

「工期」とは、工事にかかる期間のことをいいます。

契約書には「○月○日に工事を開始して△月△日に終わる」という工事期間の目安をあらかじめ記載しておきます。

契約で工期を決めておかなければ、万一、外構工事が大幅に遅れても、工事が遅れた責任を問うことができません。

事前に工期の約束をしておかなければ、そもそも「約束を破った」とはいえないからです。

しかし、実際には、契約を交わした後でプランの詳細を決めるために時間がかかり、契約書に記載したとおりに着工(工事が始まること)できないこともよくあります。

このような場合、予定どおり着工できないのは、外構工事業者だけの責任ではないので、工期変更を書面で確認しておくのがベストです。

いったん着工遅れを放置すると、そのままずるずると着工が遅れていきます。

やむを得ない事情があれば期限を延ばす代わりに、早期に着工できるよう外構工事業者に緊張感を与えておきましょう。

外構工事に限らず、建設業界では事前に「工程表」を作成して着工するのが一般的です。もし、工程表を受取ってなければ、工程表の作成・提出を依頼しましょう。

外構工事の工期に関してはこちら「外構工事(エクステリア)でかかる工期の目安。工期が遅れてしまう原因」でも詳しく解説しています。

外構工事(エクステリア)でかかる工期の目安は?工期が遅れてしまう原因って何?

ポイント4:引渡し

引き渡しは「何をもって工事完了とするか」という取り決めです。

契約書の工期は、天候不良などを見込んであらかじめ余裕を見ていますが、場合によって予定より早く終わることもあれば、遅れることもあります。工期の多少のずれは仕方ありません。

問題は「工程どおりに工事は終わったが、外構工事の仕上がりが思っていたものと違う」という場合です。

これは1で説明した工事内容の特定が不十分だった場合によく起こるトラブルです。

外構工事業者が予定した工程をすべて終えれば工事完了です。

したがって、

  • 「仕上がりに納得いかないから引渡しを受けない」
  • 「満足する仕上がりになるまで工事代金を支払わない」

という主張は、法的には正しくないのです。

外構工事業者も融通をきかせて、手直しが全部終わってから工事代金を請求するケースも多いのですが、工事が完成したら工事代金を支払い、それから細かな手直しをするのが本来の流れなのです。

引渡しの段階でもめるとお互いに気持ちがよくないので、外構工事の完成形については認識のずれがないように、契約前や工事中もしっかりと確認しておきましょう。

ポイント5:瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)

瑕疵とは「キズ」という意味です。

住宅の建築工事などでは、建物として本来の性能を満たしてない場合には、一定期間にわたって建設業者が補修する責任を負います。

外構工事も建設工事ですから、同じように外構工事業者は、引渡しから一定期間は不具合を無償で補修する義務があります。

実は、この点について何も書かれていない契約書が多く見られますが、契約書に書いてなくても、法律上、外構工事業者は瑕疵担保責任を負っています。

瑕疵担保責任の基礎知識。不動産売却後のトラブルを避ける方法

しかし、契約書のどこにも書いていないと、どの程度の瑕疵なら補修を請求できるのか、何年後まで補修を請求できるのか分かりません。

そこで、現在では、外構工事の保証書を発行してくれる外構工事業者もあります。

保証書の発行は、まだまだ一般的とはいえませんが、保証書があればどのような瑕疵を何年保証してくれるのか保証内容がはっきりするので安心です。

まとめ

外構は、建物を印象付ける重要な要素ですので、こだわりも強く現れ契約金額も高くなります。

その分だけトラブルになったときの衝突も大きいのですが、意外と契約書の重要性については見落とされています。

トラブルになってから、外構工事業者に不満をぶつけてもあとの祭りです。

住まいと同様、外構は完成してからもメンテナンスや補修などが必要ですので、トラブルによって外構工事業者とのつながりが断たれてしまうと、あとあと自分自身も困ることになります。

契約書のポイントを押さえて、トラブルに見舞われないようにしましょう。