解体作業の際には、杭抜き工事を行うかどうかの選択を迫られることもあります。

杭抜きをするケースもしないケースも、それぞれメリットがありデメリットがあります。

そして、基本的にはその土地を持っている人が杭抜き工事をするかどうかを決めることになります。

解体工事をするとなってから、初めて杭抜き工事という言葉を聞いたという方も多いのではないでしょうか。

よくわからないという方も少なくないと思いますが、杭の状態は土地によって違いがあるため、業者と相談して判断することになります。

しかし、やはり土地の持ち主としてある程度に知識を付けておいたほうが良いのではないでしょうか。

そんな杭抜き工事の紹介をしていく中で、抜くべきか抜かないべきかの判断のサポートになればと思います。

杭抜き工事とは?

まずは、杭抜き工事がどのようなものなのかを見ていきましょう。

杭について

建築物の下には、その建物を支えるために、棒状のものを打ち込みます。

地中深くに杭を打ち込むことによって、建物を下からしっかりと固定することができるのです。

支持層と呼ばれる硬い地盤までコンクリートや鉄でできた支持杭を打ち込んだり、何らかの理由で支持層まで届かない場合に用いられれ、摩擦によって建物の重さを支える摩擦杭などが代表的な杭になります。

新しい建物を建設する際には、その建物をしっかりと支える目的で杭が打ち込まれ、この作業工程は杭基礎工事と呼ばれます。

杭抜きについて

建築の際に杭基礎工事によって埋め込まれた杭を、解体工事に抜くことを杭抜き工事といいます。

杭抜き工事は、その土地を解体した後にどのように活用するかによって行うかどうかを決めることができるケースもあります。

例えば、解体した後の更地を売却するつもりで解体工事を依頼するのであれば、杭を抜く必要があるため杭抜き工事を行います。

しかし、古い建物を解体した後に新しい建物を建てるつもりなのであれば、一部の杭はそのまま残しておくことが可能です。

そのため、杭抜き工事によって杭を抜くのか抜かないかは、解体工事そのものよりも、解体工事後の土地の活用を考えつつ依頼することになるでしょう。

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杭抜き工事はするべきなのか?

杭抜き工事がどのようなものなのかわかったところで、解体の際にその杭を抜いたほうがいいのかどうかを考えていきます。

場合によっては抜いたほうが良いケースもありますし、反対に抜かなくても問題ない場合も存在します。

売却する場合は抜いたほうがよいかも

例えば、古い空き家を解体して更地にしてから売りに出す、という方もいらっしゃるのではないかと思います。

基本的には、更地を売却する場合は地中の杭は抜くことになります。

必ず抜かなければならないという決まりがあるわけではないのですが、その土地を購入した方がいざ建物を建てるとなった場合に、杭が邪魔になる可能性があるからです。

また更地で使ったとしても、杭を抜かなかったために地盤沈下が発生するというリスクも出てきます。

売ってしまえば関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、売却時には買い手にその旨を伝えておく必要があります。

そして、杭が埋まっているせいで売却価格が下がってしまう可能性もでてきます。

抜くのにも費用がかかる

上記を見て、土地の価格が下がるのは困るから、抜いておこうと思った方も多いのではないでしょうか。

しかし、杭抜き工事には解体工事とはまた別に費用がかかってくることになります。(詳細は後述します)

更地を売却する際には解体工事から杭抜き工事まで行うのが一般的ですが、杭を抜かないと判断することで工事全体のコスト削減になります。

しかし、抜かないなら抜かないで上記の問題が発生するため、結局杭抜き工事をするかしないかは所有者の判断にゆだねられるのです。

カットするという選択肢もある

杭は、抜くか残すかという選択肢以外に、カットしてしまうという方法も存在します。

大まかに分類すると、杭のカットも杭を残すのと同じことかもしれません。

しかし杭が大量にある場合は、カットするという選択肢を選ぶことによって費用を大きく抑えることができるのです。

ただし、杭が完全になくなったわけではないため、杭抜き工事をしないときと同じように地価が下がるといった可能性が出てきます。

解体後の使用用途で決めるのがベスト

結局のところ、杭抜き工事で杭を完全に抜いてしまうか、途中でカットしてしまうか、それとも抜かずに残すか、といった三択になります。

例えばその更地を駐車場として利用するのであれば、杭を抜かずに済む可能性も高くなるため、その分の費用が安くなります。

反対に、新しい物件を建てるのであれば抜いたほうが良いケースのほうが多いのですが、地盤調査をして抜かなくても問題のない土地だと判断されれば安心して残すことができます。

杭抜き工事の費用の相場とは?

杭を抜くと判断した場合は、やはりその価格が気になるのではないでしょうか。

一体杭抜き工事にはいくらくらい必要になってくるのでしょうか。

具体的な費用は土地によって全く違う

今から杭抜き工事をやろうと思っていらっしゃる方は、まずはご自身の土地での杭抜き工事でいくらくらいかかるのかの見積もりを取ってもらう必要があります。

同じ大きさの土地であったとしても、杭の状況や工事期間、それから業者のやり方などによって費用が変わってくるからです。

様々な業者に見積もりを取ることができれば、価格が高い業者もありますが、反対に安い業者を見つけることもできるのではないかと思います。

もちろん安いに越したことはないのですが、あまりにも安い場合はあとから追加料金が発生する可能性もあるため内訳などを確認しておく必要があります。

逆に、複数の業者で似たような価格帯を提示されたのであれば、それがその土地の杭抜き工事の相場ということになります。

杭抜き工事の内訳

杭抜き工事は業者によって工法が異なることが多く、それが工事の期間だけではなく価格にも影響してきます。

しかし、杭抜き工事の価格は基本的には人件費と諸経費、それから廃棄処分の費用の3つに分けることができます。

人件費について

人件費は、そのままその杭抜き工事に派遣されたスタッフの報酬のことになります。

規模が大きい場合は作業にあたる人数も増えるため、その分人件費が高くなりますし、工期が長い場合も同様に高くなります。

敷地が広いというだけではなく、杭の構造の種類によっては、または重機が使えず手作業をせざるを得ない現場などは、その分人件費が高くなってしまいます。

諸経費について

まずは、作業に直接利用する重機の燃料代やその重機を運ぶための車両の費用が必要になってきます。

更に、スタッフが安全に作業を行うための足場を組み立てたり、そのレンタル費用もこちらに含まれています。

例えば重機の燃料代はそんなに大したことがないと感じるかもしれませんが、そういったちょっとした費用がすべて諸経費に含まれるため合計すると高くなることが多いです。

廃棄処分費について

建物を支える杭は、建物があるうちは重要な役割を果たしますが、解体工事が終わったら産業廃棄物になってしまいます。

そして、その廃棄物は処理場などで処分されることになりますが、処理場にもその費用を収めなければなりません

施主は、その費用を解体業者に支払い、業者から処理場に処分代金を支払うという流れになります。

杭抜き工事にかかる時間は?

特に、解体工事の後にその土地を何かに活用しようと思っている方は、杭抜き工事にどれくらいの時間が必要なのか気になるのではないでしょうか。

費用と同じく、杭抜きに必要な期間も、やはり土地の大きさなどによって変わってきます。

工期は一概に決められない

杭抜き工事の見積もりを取る際に、同時に工事の期間についても確認しておきましょう。

費用同様、その土地の状態を見てみないと杭抜きにどれくらいの時間を要するのかがわからないからです。

業者によって期間が大きく変わってくる理由は、施工技術や重機の有無など、それから同様のケースの杭抜きを過去にやったことがあるかどうかの実績などによって変わってきます。

そのため、やはりまずはその土地を見てもらうことをおすすめいたします。

良い業者が早いというわけではない

どうせ同じ杭抜き工事をしてもらうのであれば、早いに越したことがないと思われる方がほとんどなのではないでしょうか。

確かに、早い方が費用も安く済みそうですし、後に売却などが控えている場合は早めに手続きを済ませることができるかもしれません。

しかし、杭抜き工事の経験がある良い業者を見つけられたとしても、その業者が短い工期で作業を完了できるかどうかはまた別問題です。

良い業者は経験も豊富で実績が多いかもしれませんが、丁寧に仕事をする場合は結果的に時間がかかってしまう可能性もあります。

早さ優先でお願いしたい場合は、早く終わりそうな業者に頼むのもよいかもしれませんが、やはり安全性や価格、それから工期などを総合して選ぶのが良いのではないかと思います。

杭抜き工事前にやるべきこと

杭抜き工事をやると決心した場合、事前にした方が良いことがいくつかあります。

最後に、杭抜き工事の前にやったほうが良いことを紹介させていただきます。

見積もりの値段だけで決めないこと

この手の工事を行う上では基本中の基本ですが、見積もりを取る際には複数の業者を利用した方が良いでしょう。

もちろん、予め決めてある業者があるというようなケースもあるかもしれませんが、通常はいくつかの業者の見積もりを取って、一番納得のいくところを選ぶことになります。

その際に、見積もり価格が一番安いところに飛びついてしまう方もいらっしゃいます。

安くて質の高い業者もたくさんありますが、中には安いだけでよくわからない工事をしたりする業者も存在します。

杭抜き工事はその土地の将来にも関係してくる重要な作業ですので、価格だけで決めるのではなく、総合的に良い業者を見極める必要があります。

自分の目でも確認して納得するべき

杭抜き工事の見積もりを取ったら、様々な業者の見積書を見比べることになります。

その書式は業者によって異なるでしょうし、中にはよくわからない記述があるかもしれません。

例えば価格の安い見積書によくわからない記載があったとしても、安いからここにしようと安易に決めてしまうのは問題です。

それぞれの業者の見積もり詳細を確認し、極端に安い場合にはその理由を確認して納得してから契約を結ぶのが良いのではないでしょうか。

また、自分の目で現場を見て、よくわからない場合はその都度業者に説明を求めるのも方法の1つです。

その業者の言っていることがわからない場合は、他の業者に相談してしまうのもルール違反ではありません。

価格が突出して安くなかったとしても、そういった細かな相談に乗ってくれたり、不安を解消してくれるような業者が良い業者の見分け方の1つといえるでしょう。

最後に

杭抜き工事の悩みが、少しでも解消されましたでしょうか。

最終的な結論を言うと、杭抜き工事は絶対に行わなければならないものではなく、解体工事後の土地の使い方によって行うかどうかを決めるのがおすすめです。

そして杭抜き工事を行うと判断した場合には、様々な業者に見積もりを取り、納得のできるところにお願いするのが基本です。

土地の活用方法によって杭を抜いたほうが良いケースもあれば、逆に抜く必要がなくコストを削減できるケースも存在します。

しかし、それを判断するのは施主自身になりますし、業者と相談をしながら作業を進めていくことになります。

将来後悔しないためにも、長期的な視点を持ちつつどのように対応していくのかを決めていきましょう。