日本で現在大きな問題となりつつあるのが、増え続ける空き家です。
空き家は単純に人が住んでいない建物ということになりますが、実はそれだけで様々な問題が発生するのです。
不動産を持っていればお金が入ってくるという時代もありましたが、現在はその不動産の所有がリスクをもたらすこともあります。
なので、空き家となっている物件を持っている方は、できるだけ早くその空き家の問題を解決するのが望ましいです。
しかし、そもそも空き家を放置することでどのようなトラブルが発生するのでしょうか?
この記事では、そんな空き家に関する空き家問題やその解決策などを紹介させていただきます。
所有者が放置している空き家のリスク
年々増える空き家ですが、実は様々な問題を抱えています。
空き家を放置することで発生する可能性のある様々なリスクを簡単に紹介させていただきます。
建物の劣化
人が住んでいる家と比べると、空き家は劣化が早く進みます。
放置し続けると建物の倒壊につながり、不動産価値も大きく低下してしまいます。
建物の価値が下がるということは、今後売却を考えているのであればデメリットでしかありません。
また、賃貸として他人に利用してもらう場合も、安価でしか貸し出すことができなくなります。
空き家に関する犯罪増加
空き家とわかると不審者に不法利用されたり、不法投棄されやすくなります。
また、無人の住宅は落書きや放火などの被害に遭う可能性が高まります。
落書きのみであれば個人で処理することができますが、放火は隣人をはじめとする近所の人々に多大な迷惑をかけることになります。
住宅を放置するだけで、周囲の人に迷惑をかけてしまうかもしれないのです。
害虫の発生
不法投棄されたごみや雑草から害虫が発生したり、水が使われないことによってネズミなどが侵入しやすくなります。
害虫が増えれば衛生面が悪くなり、こちらも近所の住民が不快な思いをすることになります。
また、ネズミやシロアリなどの害虫を放置すると、柱や壁などをぼろぼろにして住宅が大きく劣化します。
最終的には建物の基礎部分がやられて住宅として使い物にならなくなる恐れも出てくるのです。
景観の悪化
誰もいない住宅は、当然雑草や庭木の管理もされないことになりますし、建物も汚れやすくなります。
特に長年放置された空き家は草木が生い茂ることになり、見た目も悪くなりますし衛生状態も悪化していきます。
庭木をほったらかしにすることで損害賠償の請求が発生する例もあるため、たかが植物だと放置するのは考え物です。
空き家が引き起こす損害賠償請求について
空き家を放置しておくことで、その不動産の持ち主が何らかのリスクを負うだけであれば、まだ運が良いといえます。
空き家が原因で第三者に何らかの迷惑をかけたりけがを負わせたりした場合、それはもう持ち主やその家族のみの問題ではなくなってしまいます。
実際に空き家が原因で損害賠償を発生させてしまうというような例もあるため、長期間空き家を放置している方は気を付けなければなりません。
それでは、具体的にどのようなケースが考えられるのか、いくつか紹介します。
老朽化がもたらす第三者へのリスク
長期間放置している空き家は、知らず知らずのうちに老朽化していくことになります。
日常的な風雨、地震や台風などの天災を経て、ブロック塀が崩れたり屋根瓦が散乱してしまったりと、周囲に被害を加える可能性が出てきます。
例え空き家であったとしても、その不動産の所有者には建物の管理責任という物が発生します。
そのため、管理不足で他人に何らかの障害を与えてしまった場合は、民法第717条によって
- 第717条
- 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
- 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
- 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
賠償責任を負うことになるのです。
庭木トラブル
自身が居住している不動産に庭木がある場合は、定期的にメンテナンスをするという方が多いのではないかと思います。
しかし、空き家に繁茂する草や木は、建物同様放置されることになります。
それが敷地内からはみ出て隣人、または公道を移動する歩行者や車などに何らかの悪影響や損害を与えた場合、こちらも民法717条に基づき損害賠償が発生します。
その所有者の敷地内に根を張る庭木の管理は、当然持ち主が責任を負うことになります。
周辺の衛星や治安に関するリスク
「自身は遠くに住んでいるから関係ない」と思われるかもしれませんが、その空き家が周りの人々に迷惑をかけているかもしれません。
人のいない不動産には、飼い主のいない犬や猫をはじめとする動物が住み着いて夜中に騒音を出したり、
不法投棄されたごみから悪臭の発生、それに群がる蠅をはじめとする害虫の大量発生など、周囲に多大な被害をもたらします。
また、空き家だとわかったら不審者が住み着くリスクもありますし、空き家は放火の対象となりやすいです。
例えば火事の場合、重過失でなければ所有者が責任を負うということはありません。
しかし、常識的に考えると自身の空き家が周りに大きな被害をもたらした場合は何らかのお詫びをせざるを得ません。
不動産価値の低下
不動産の中には、所有しているだけでその価値がどんどんと上昇するケースも存在します。
しかし、そのようなケースは僅かであり、空き家になるような物件に関してはほぼこれが当てはまりません。
建物の劣化が引き起こす不動産価値の低下を、もう少し掘り下げてみていきましょう。
築年数による価値の低下
建ててから20年以上たった不動産に対する評価は、ほとんどゼロに近いと言われることもあります。
将来的に古くなった物件を販売しようと考えている方も多いのではないかと思いますが、当然古くなればなるほどその価値はなくなっていくのです。
実際に、古くなった住宅が土地のみの料金で売りに出されるのも珍しいことではありません。
もちろん上物がしっかりしていればそれなりの価値があるのですが、放置し続ければ価値は下がり続けていきます。
つまり、空き家を放置しておくことはその不動産の価値をどんどんと減少させていることになるのです。
その不動産を売るにしても早めのほうが良いですし、賃貸にする場合もできるだけ早く手を打った方が良いでしょう。
老朽化による価値の低下
建物をできるだけきれいに保とうとする方も多いかもしれませんが、老朽化は防ぎようがありません。
建てたばかりのころは全てがきれいに保たれていますが、不動産は年々老朽化していくことになります。
特に空き家の場合は常に人がいて住宅の異変に気付くということがないため、ちょっとした老朽化が不動産価値を大きく下げることにつながります。
例えば人がいれば雨漏りしてもすぐに対処できますが、空き家の場合は雨水が住宅を侵食していたとしてもしばらく放置されることになります。
雨が降るたびに水が住宅内に入り込みますので、カビの発生や住宅の腐食が起こり、ひどい場合は柱が腐って建物自体が倒壊してしまいます。
こまめに管理しているという方であればそのような事態は避けられるかもしれませんが、目に見えない部分も老朽化するため早めの対処が不可欠です。
強制的な解体の費用請求
不動産価値が低下すると悩んでいるうちは、まだ対処の方法がいくらでもあります。
しかし、その空き家をそのまま放置し続けると、特定空家等と判断され、強制的に解体されてしまう可能性も出てきます。
特定空家等とは
空き家の中でも、「特定空家等」に該当しなければ強制解体されるわけではありません。
それでは、その「特定空家等」とは何なのでしょうか?
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
これらの状態になっているとみなされた空き家のことになります。
もちろん細かい基準はありますが、具体的には次のような建物のことを指します。
- 建物が傾いている
- 屋根や外壁などに穴が開いている
- 建物自体が崩壊している
- 土台や柱などの構造となる部分が腐食、欠損している
- 瓦や外壁などをはじめとする家屋の一部が落下する恐れがある
- 建物全体を植物が覆っている
ご自身の空き家を思い浮かべてみてください。
どれかに該当するような部分がある場合は、対処しない限り特定空家等とみなされて強制的に解体される可能性があります。
特定空家に関する費用に関して
地方自治体などが疑いがある空き家に対して調査を行うことで、特定空家として認められることになります。
その調査は拒否することができず、市町村の命令に違反したとして50万円以下の過料に処されてしまうこともあるのです。
また、調査後に特定空家となったにもかかわらず所有者が必要な措置を取らなかった場合は、行政代執行法により強制解体工事が行われます。
その強制解体にかかった費用は当然所有者が負担することになります。
そして、支払いができなかった場合はその財産を差し押さえられてしまうのです。
空き家は放置でなく活用したほうがお得
このように、空き家は様々な問題を発生させることになります。
せっかく不動産を所有しているのですから、空き家を放置するのではなく活用するという方面に目を向けてみるべきです。
それでは、空き家の活用にはどのようなものがあるのでしょうか。
住居用の賃貸として利用
空き家をそのまま放置するのであれば、賃貸として利用してみるのもよいと思います。
特に田舎の空き家はなかなか借り手がつかないことも多いですが、安く提供できれば借り手の関心を引きやすいです。
家賃が安かったとしても、空き家として放置しておく事を考えると断然お得です。
テナントとして貸し出す
立地によって難しい場合もあるかと思いますが、例えば自由に改装してもよいといった条件を出せば借り手がつく可能性もあります。
好き勝手に改装してもよいとした場合は元々の住宅の面影がなくなってしまうリスクもありますが、放置して無駄にするよりはよいのではないでしょうか。
もちろん居住用の不動産を探している人にも訴えかけるため、テナント用の物件として提示するのではなく、自由度の高い不動産として提供してみてください。
民泊として利用
こちらは空き家を利用してビジネスを行う一例になります。
内部の改装は自費で行わなければならないため初期投資が必要になってきますが、当たれば大きな収入となるかもしれません。
金銭的、時間的な余裕があるのであれば、せっかくの不動産を遊ばせておくのではなく、それを利用してお金を生み出すのもよいかと思います。
民泊用の不動産としてリノベーションしてそれを貸し出すという方法もありでしょう。
まとめ
空き家は、放置し続けるだけで様々な問題を引き起こす可能性があるということがお分かりいただけたのではないかと思います。
中には、その不動産を放置せざるを得ないという状況にいる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、恐らく多くの方がどのように対処したらよいのかわからない、緊急の要件じゃない、といった理由で放置しているのではないでしょうか。
せっかくの財産ですので、できれば活用するのが最も良いのですが、それも難しい場合は売ってしまうのも方法の1つです。
多くの不動産を所有すればそれだけ収入が増えますが、空き家が多ければそれだけリスクも増えることになります。
先延ばしにするのではなく、できるだけ早い段階で空き家の問題を解決するべきです。