ひと昔前は、キッチンと聞くとガスコンロを利用して実際に火を使うコンロが当たり前でしたが、現在はIHクッキングヒーターが主流になりつつあります。
オール電化に伴って、電気を利用した調理を可能にするIHクッキングヒーターを使うことで、キッチン全体がよりスマートになります。
また、キッチンから火事になるというようなことも避けられるため、できればご自宅のキッチンをIHクッキングヒーターにしたいと考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、そんなIHクッキングヒーターにもデメリットはありますし、またガスコンロにはガスコンロのメリットも存在します。
特に毎日料理をするというご家庭では、この両者のメリットやデメリットが調理に大きな影響を与えることになるため、慎重に選ぶ必要があります。
キッチンのリフォームに伴って、現在のガスコンロをIHクッキングヒーターに変えようとしている方もいらっしゃいますが、まずは双方の特徴をはっきりと理解するのがおすすめです。
この記事では、ガスコンロとIHクッキングヒーターのメリットやデメリットの比較、IHクッキングヒーターにリフォームする際の費用の相場などについて見ていきます。
目次
ガスコンロのメリット
まずは、ガスコンロのメリットについて見ていきましょう。
主なメリットは
- 導入コストが安い
- どんな鍋やフライパンでも利用可能
- コンロの上でフライパンを振ることができる
- 停電時でも使用可能
この4つです。
導入コストが安い
少し前まで主流となっていたガスコンロになるため、基本的には安価で導入することが可能です。
また、IHクッキングヒーターにリフォームしようと考えているご家庭のほとんどがガスコンロを使用しているということもあり、単純にコンロを取り換えるだけでリフォームが済んでしまいます。
キッチンのリフォーム費用を抑えたいのであれば、そのままガスコンロを使用し続ける方がメリットが大きいと言えます。
どんな鍋やフライパンでも利用可能
基本的な鍋やフライパンは、当然火に強い作りになっているため、一般的な調理器具であれば、どんなものであってもそのままガスコンロに利用することが可能です。
IHクッキングヒーターの場合はそれに対応した鍋やフライパンを使わないといけないため、リフォームでIHクッキングヒーターにした場合は調理器具まで買いそろえなければなりません。
これまで使い続けてきた大切な調理器具がIHクッキングヒーターに対応していない可能性が高いため、お気に入りの器具をそのまま使いたいのであればガスコンロの方が良いでしょう。
コンロの上でフライパンを振ることができる
今までガスコンロを利用していた方にとっては当たり前のことですが、フライパンを使う際にはそのフライパンを振って材料をかき混ぜるということも多いはずです。
一方のIHクッキングヒーターは、コンロの面とフライパンの面がきちんと接触していなければ加熱がストップしてしまう仕組みになっているため、調理器具を浮かしての調理は不可能です。
例えば、フライパンでチャーハンなどを作る際にはフライパンを振って材料を混ぜることができますが、IHヒーターではそれができないため使い勝手が悪いと感じる方もいらっしゃいます。
停電時でも使用可能
オール電化はメリットも大きいですが、停電に弱いというデメリットを持っています。
現代では電気が止まるということ自体あまりなくなってきましたが、それでも停電になる可能性は常にあるはずです。
ガスコンロは電気とは全く関係がないため、例え停電になったとしてもいつも通りに火を使うことができますし、調理にも支障がありません。
ガスコンロのデメリット
それでは、ガスコンロでデメリットとなる部分はどこでしょうか。
ガスコンロでデメリットと考えられるのは
- 火事になる可能性がある
- 掃除がしにくい
- 火力が弱い
- ガス漏れになる可能性もある
この4つ。
火事になる可能性がある
当たり前のことかもしれませんが、ガスコンロを使って料理をするということは、常に火事のリスクと向き合っているということでもあります。
例えば、調理中にしばらくガスコンロから目を離してしまうと、火が出てキッチン全体が燃えてしまうというようなトラブルに発展する可能性もあります。
使い慣れているから問題ないという方もいらっしゃるかもしれませんが、コンロから火が出る以上は100%火事にならないと言い切ることはできません。
掃除がしにくい
調理中に具材などがフライパンからコンロに落ちてしまったら、すぐにきれいにしたいと感じることもあるのではないでしょうか。
しかし、使用直後のガスコンロは非常に高温になっていますし、形も複雑なため簡単にきれいにしたりすぐに掃除に取り掛かったりすることが難しいです。
IHクッキングヒーターであればいつでも気軽にサッと掃除ができるため、この点はガスコンロの大きなデメリットと言えます。
火力が弱い
ガスコンロでも、強火にしたり弱火にしたりと火力を調節することが可能です。
しかし、この火は鍋やフライパンの一面ではなく全面に当たるため、熱効率が悪くその分火力が弱くなってしまいます。
実際の火を利用するガスコンロの方が火力が強いと思われがちですが、実はIHクッキングヒーターの方が熱効率が高く使い勝手が良いのです。
ガス漏れになる可能性もある
ガスコンロでは電気ではなくガスを利用するため、例えば鍋が噴きこぼれて火が消えてしまった場合はガスが漏れる可能性があります。
火を利用するためにはガスを利用するしかありませんが、その扱い方を間違えると大惨事になるリスクもあるため、常に気を付けて調理をしなければなりません。
IHクッキングヒーターであればガスも使いませんし、一酸化炭素などの物質も発生しないため、きれいな空気の中調理を続けることが可能です。
IHクッキングヒーターのメリット
続いて、IHクッキングヒーターのメリットを見ていきましょう。
IHクッキングヒーターのメリットは
- 火を使わないため火事にならない
- 掃除が楽
- ガスよりも火力が強い
- 調理によりキッチンが暑くならない
こちらです。
火を使わないため火事にならない
ガスコンロを利用すると、どんなに気を付けていたとしても火が紙や衣類に燃え移ったり具材をこぼしたりして、火事になるリスクがあります。
しかしIHクッキングヒーターであれば、そもそも火がないため火事になることがないですし、例えば具材がこぼれても熱くないためそのまま手で拾うことが可能です。
さらに、電源を入れっぱなしにしても温度センサーなどによって具材や油が発火するというようなことがないため、お子様であっても安心して利用できます。
掃除が楽
複雑な構造のガスコンロとは異なり、IHクッキングヒーターは天板がフラットになっているため、調理が終わった後でサッとひと拭きすれば全体がきれいになります。
また、例え直前まで調理をしていたヒーターであっても、掃除をしようと思えばすることが可能です。
やはり天板は熱を持っていますが、フラットですしガスで加熱されたコンロよりは熱くないため、厚手のフキンなどを利用すれば普通に掃除することができるはずです。
ガスよりも火力が強い
先ほども少し記述しましたが、実はIHクッキングヒーターの方がガスコンロよりも火力が強いのです。
ガスコンロと比べると具材を調理するための熱の立ち上がりが非常に早く熱しやすいため、強火にするとすぐに熱くなります。
一般的なガスコンロの熱効率が50%なのに対してIHクッキングヒーターの熱効率はなんと90%になるため、フライパンや鍋の底を集中して加熱することができます。
調理によりキッチンが暑くならない
ガスコンロの場合は、実際の火を利用して調理をすることになるため、当然熱を持つ火を長時間使用しているとキッチン全体が高温になっていきます。
しかしIHクッキングヒーターであれば、その熱源から部屋全体に影響を与える熱が発生するということがないため、涼しい環境を保ちながら料理を楽しむことができるのです。
特に夏場は、クーラーや扇風機を当てながらの調理も可能ですが、ガスコンロの場合は火に風を注ぐと危険なことになるため、これはIHクッキングヒーターの大きなメリットの1つと言えるでしょう。
IHクッキングヒーターのデメリット
最後に、IHクッキングヒーターのデメリットは
- 導入コストが高い
- フライパンを浮かせると火が止まる
- 火力が限定されることがある
- 電磁波が出ている
こちらです。
導入コストが高い
今までガスコンロを使っていたご家庭の場合は、専用の電源を設置しなければならないため設置費用が高くなる可能性が高いです。
また、IHクッキングヒーターを利用する場合は、調理器具も全てそのIHに対応したものに買い替えなければなりません。
1つ1つのコストはそんなに高くなかったとしても、調理器具をすべてそろえるとそれなりの額になってしまうため、全てを合わせるとリフォーム価格が高くなると言えます。
フライパンを浮かせると火が止まる
IHクッキングヒーターの大きなデメリットの1つと考えられるものが、フライパンを浮かせると火力が止まってしまうという点です。
例えば、調理方法によってはフライパンを傾けて油を一カ所に寄せたいようなものもあるはずですが、少し浮かせるだけでも熱が止まるため総ういった調理方法ができません。
もちろんIHクッキングヒーターに慣れてしまえば不便に感じなくなる部分ですが、導入当初は調理しにくいと感じる方もいらっしゃるはずです。
火力が限定されることがある
IHクッキングヒーターでは、その設備全体で使用できる電力が決められているため、設備によっては複数のコンロを使用する際に全てコンロで強火にできない可能性があります。
例えばコンロがたくさんあれば使用できる電力の容量を増やすことも可能かもしれませんが、一般的には全てのコンロの火力をマックスにできないことも多いです。
また、無理に使用するとブレーカーが落ちてしまうようなトラブルに発展するため、気を付けて使う必要があります。
電磁波が出ている
IHクッキングヒーターからは、電磁波が発生していますが、この電磁波には発がん性があり身体に悪いと言われることも多いです。
そのためデメリットに記載させていただきましたが、IHクッキングヒーターに限らず、携帯電話や電動歯ブラシをはじめ、現代の様々な家電からは色々な電磁波が発生しています。
しかし、基本的に一般家庭で利用されるものは、IHクッキングヒーターを含めて国際的な安全基準を大きく下回っているため、安心して使えるという考え方が一般的になっています。
それぞれの設備で調理をした際の光熱費を比較
上記でガスコンロとIHクッキングヒーターのメリットやデメリットがはっきりしたという方も多いのではないでしょうか。
しかし、そういったものよりも毎日の調理で必要な光熱費が気になるという方も少なくないはずです。
確かに、調理にも電気を使用すると毎月の光熱費が高額になるかもしれないと考える方もいますが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここではそれぞれの光熱費を比較していきます。
ガスコンロの光熱費
まずは、使い慣れている方も多いガスコンロの光熱費から見ていきましょう。
当然利用するのはガスということになりますが、ガスにも大きく
- 都市ガス
- プロパンガス
の2つが存在し、どちらを使うかによって価格が大きく変わってきます。
ガスの種類 | 1Kwhを使用するコスト |
都市ガス | 21.21円 |
プロパンガス | 12.10円 |
ちなみに、Kwhは「キロワットアワー」と読み、1時間使用した際の消費電力量のことを指します。
要するに、都市ガスを1時間使ったコストは21.21円、プロパンガスを1時間使った場合は12.10円ということになります。
IHクッキングヒーターの光熱費
続いて、IHクッキングヒーターを使った際の料金を見ていきましょう。
こちらは電気を使うことになりますが、電気代金は使用時間と消費電力によって決められます。
また、時間帯によって電気料金が異なるため、それぞれの価格を紹介します。
IHコンロを利用する時間帯 | 1Kwhを使用するコスト |
昼間 | 38.63円 |
朝晩 | 25.92円 |
夜間 | 12.16円 |
電力会社によって設定料金などが異なるため、1Kwhの価格を一概に出すことはできません。
しかし、基本的には昼間にIHクッキングヒーターを利用すると高く、夜間に利用すれば安いということになります。
結局お得なのは?
「IHクッキングヒーターの光熱費は絶対に高くなる」と感じていた方もいらっしゃると思いますが、このように、時間帯によってはガスコンロと変わらない光熱費で利用可能です。
もう少し具体的に言えば、オール電化を利用しているご家庭であれば夜間と早朝に電気代が安くなるようなプランを使っていることも多いため、その時間帯に調理すればそれだけで光熱費を抑えることができます。
例えばコンロを長時間使用しなければならないような煮込み料理や煮物などは、電気代が安い時間帯に調理することで毎日数円の節約になります。
そのため、時間帯に注意して料理をすればガスコンロよりも光熱費を安くすることも可能なのです。
もちろんご家庭によって調理環境が異なるため料理の時間帯を選べないというケースもありますが、このようにIHに変えたからと言って光熱費がいきなり上がるということはありません。
キッチンコンロのリフォームにかかる費用の相場
最後に続いて、キッチンのコンロをリフォームする際にかかる費用の相場について見ていきましょう。
コンロのリフォームは大きく、
- ガスコンロからガスコンロへのリフォーム
- IHクッキングヒーターからIHクッキングヒーターへのリフォーム
- ガスコンロからIHクッキングヒーターへのリフォーム
の3つが挙げられます。
例えばIHクッキングヒーターからガスコンロへしたいという方もいらっしゃるかもしれませんが、少数派になるためここでは省かせていただきます。
ガスコンロからガスコンロへのリフォーム
「IHクッキングヒーターへのリフォームも考えたが、やはり使い慣れたガスコンロの方が良い」という方も多いのではないでしょうか。
ガスコンロからガスコンロにリフォームする場合は、単純に現在使っているコンロを新しいコンロに取り換えるだけなので工費を非常に安く抑えることも可能です。
ただし、1万円台のガスコンロもあれば10万円以上のガスコンロもあるため、ガスコンロのグレードによってリフォーム費用は大きく変わってきます。
ちなみに、設置工事自体の費用は2万円程度になるため、ガスコンロの代金に2万円ほどプラスした料金がリフォーム費用ということになります。
項目 | 目安の料金 |
設置工事費用 | 約2万円程度 |
ガスコンロ代 | 約1万~15万円 |
IHクッキングヒーターからIHクッキングヒーターへのリフォーム
IHクッキングヒーターをすでに利用しているご家庭が、新しいIHクッキングヒーターにリフォームしたい場合は、簡単に取り換えることが可能です。
工事費用自体は2万円弱くらいなので、ガスコンロをガスコンロにリフォームすることを考えると若干安くなります。
しかし、設置するIHクッキングヒーターにも様々グレードがあり、安いものでも4万円、5万円ほどするため、トータルするとこちらの方が高くなります。
高いIHクッキングヒーターになると20万円や30万円というものもあるため、良いものを購入する場合はそれだけリフォーム代金が割高になるのです。
項目 | 目安の料金 |
設置工事費用 | 約2万円程度 |
IHクッキングヒーター代 | 約4万円~30万円円 |
ガスコンロからIHクッキングヒーターへのリフォーム
工事代金だけ見ると、最も高額になるのはこのケースになり、一般的には5万円ほどの設置費用が必要になってきます。
具体的には、IHクッキングヒーターを利用するには200Vの電源が必要になるのですが、それまでガスコンロを利用していたご家庭にはその電源がないことが多いです。
そのため、IHクッキングヒーターの導入に伴って新しく電源を取り付けることになり、その分の工事費用が高くつくのです。
工事費用に上述したIHクッキングヒーターそのものの料金を入れることで、リフォーム代金を出すことができるはずです。
項目 | 目安の料金 |
設置工事費用 | 約5万円程度 |
Hクッキングヒーター代 | 約4万円~30万円 |
キッチンコンロのリフォームの費用まとめ
わかりやすく、リフォームに必要な費用を表でまとめてみました。
リフォームの種類 | 本体価格 | 工事費用 | 総額 |
ガスコンロからガスコンロへ | 1万~15万円 | 2万円 | 3万円~17万円 |
IHクッキングヒーターからIHクッキングヒーターへ | 4万円~30万円 | 2万円 | 6万円~32万円 |
ガスコンロからIHクッキングヒーターへ | 4万円~30万円 | 5万円 | 9万円~35万円 |
やはりIHクッキングヒーターの本体代金が高いため、グレードの高いものを購入した場合はリフォームの総額が高くなってしまいます。
しかし、もちろん安価で購入できるIHクッキングヒーターもあるため、例えガスコンロからIHクッキングヒーターに変えたとしても10万円に収まるケースも存在します。
ちなみに、IHクッキングヒーターからガスコンロにリフォームしたい場合は、ガス管が残っているかどうかで工事費用が大きく変わってきます。
初めからIHクッキングヒーターのご家庭の場合は、ガスを通せるようにする配管工事をするだけでも10万円以上かかるケースが多いため、リフォーム代金が割高になりがちです。
元々使っていたガス管が残っている場合は安く済みますが、どちらにしてもどの工事をする際にもリフォーム業者に相見積もりを取るのは重要です。
価格や業者の反応を見て、納得のできるリフォーム工事を実現しましょう。
まとめ
IHクッキングヒーターに憧れているが、設置費用が高いし光熱費も高くなりそうだからと躊躇していた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、ご覧いただいた通り、意外に安くリフォームできる可能性もありますし、光熱費もガスと比べてそんなに高くなるというわけでもありません。
そのため、これを機にガスコンロからIHクッキングヒーターへのリフォームを考えてみるのもよいのではないでしょうか。
ただし、必ずIHクッキングヒーターが良いというわけでもなく、ガスコンロにも様々なメリットがあります。
ご家庭の環境によって適したコンロは変わってきますが、キッチンのコンロが古くなってきているのであればリフォームを考えてみましょう。