ご家族が全員健康体であれば、エクステリアにスロープを取り入れようと考えることがないかもしれません。

しかし、足腰が不自由な方がご家族にいらっしゃる場合は、車いすを利用する際などにスロープがあればいいのに、と思われるはずです。

同様に、一時的に足を骨折してしまったりした場合、もしくはベビーカーの必要なお子様がいらっしゃるご家庭でも、スロープがあれば便利だと感じるはずです。

特に玄関前の段差が激しいご家庭では、ご家族が健康なうちにスロープの取り付けについて考えておいたほうが良いかもしれません。

今回は、エクステリアにスロープを導入するメリットや注意点、コストなどについて紹介していきます。

スロープを設置するメリット

それでは最初に、スロープを取り入れるメリットを見ていきましょう。

もちろんメリットだけではないですので、スロープを導入時のデメリット、対処法などについても紹介させていただきます。

段差をなくすエクステリア

玄関まわりのデザインはご家庭によって千差万別ですが、アプローチに対して玄関部分が高くなっているというところがほとんどなのではないでしょうか。

そして、基本的には高くなっている部分には階段を2,3段設置していることが多いと思いますが、場合によってはその段差が急で危ないと感じる方もいらっしゃるはずです。

スロープを設置することによって、アプローチから玄関までの段差をなくすことができるため、どんな方でも安心して建物に出入りすることができるようになります。

もちろん高低差が激しい場合はスロープも長めに設置しなければなりませんが、庭の面積が大きければ緩やかなスロープの設置も可能です。

車椅子の搬出が可能になる

足腰が弱ってしまったご家族がいらっしゃる場合は、通常は車椅子を利用して移動することになるのではないかと思います。

しかし、玄関部分に階段があることによって、いったん車椅子を降りて歩かなければなりませんし、足腰が不自由な方にとって、段差のあるところで車椅子を一人で運ぶというのは非常に危険です。

常にご家族がそばにいるのであれば問題ないかもしれませんが、一人の時間が多い場合は段差のせいで外出することができなくなってしまいます。

スロープを設置すれば、車椅子やベビーカーなどの車輪の付いた乗り物を楽に搬出することができるため、足が不自由な方であっても自分の力だけで気軽に外出することができるようになります。

実際に、スロープを設置する目的が車椅子の搬出のためだという方や、将来車椅子が必要になったときのためだという方が大半です。

自宅に高級感が生まれる

ご家庭によっては、玄関まわりがコンクリートで固められただけという地味な作りのところもあれば、これといったエクステリアもない味気ないケースもあるのではないでしょうか。

バリアフリー目的でスロープを取り付けたとしても、スロープがあるだけで玄関まわりがゴージャスに見えます

もちろんスロープ自体の使い勝手が最も重要ですが、そのスロープまわりにレンガをあしらってみたりオシャレな砂利を取り入れてみることで、さらにオシャレな庭が出来上がります。

実際に、スロープとセットで様々なエクステリアを導入されるご家庭も多いですので、バリアフリーを考えていらっしゃる方は、この機会に庭全体のリフォームをしてみるのも良いかもしれません。

デメリットは広さが必要なこと

メリットの多いスロープですが、設置するにはそれなりに広い敷地が必要になってきます。

例えば、玄関とアプローチ部分の段差がほとんどない場合であれば、スロープに広い敷地を利用する必要はありません。

しかし、高低差が大きい場合はスロープの面積が小さいと急勾配になってしまうため、せっかくスロープを設置したとしても使い勝手がよくありません。

高低差の大きい場所で安全なスロープを設置するには、斜面がなだらかになるようにできるだけスロープ部分を長くする必要が

あるのです。

敷地面積の広いご家庭であれば何の問題もありませんが、例えば門扉から玄関までの距離が短いご家庭では、まっすぐのスロープを設置できない可能性があります。

しかし、玄関の前などに折り返しタイプのスロープを設置することで、敷地面積が小さくてもうまく取り付けることができるはずです。

スロープ設置の基本

続いて、実際にスロープを設置する際に知っておいたほうが良いスロープに関する知識を紹介させていただきます。

スロープはゆとりを持って設置するべき

あまりスロープに面積を取られたくないからと言って、できるだけ小さいものを取り付けようとする方もいらっしゃいますが、スロープはなるべく余裕を持って設置すべきです。

例えば、スロープの幅があまりにも狭いと車椅子をうまく乗せることができなくなってしまいますし、スロープの上がり下がりの途中で車輪が落ちてしまっては大事故につながりかねません

また、上述しましたが、スロープの長さによって傾斜の角度も変わってきます。

スロープが短ければそれだけ角度がきつくなってしまいますので、登るのが大変ですし、降りる際にも気を付けなければなりません。

目安としては、高低差の12倍以上の長さのスロープを取り付けるのが望ましいとされているため、例えばアプローチと玄関の高低差が50センチの場合は、その12倍の6メートル以上の長さのスロープを設置するべきなのです。

もちろんこれよりも短いスロープを設置することも可能ですが、そうなると実際に車椅子を使って自力で登るのが大変ですので、スロープのメリットが半減してしまいます。

このようなことから、スロープは幅や長さに注意して設置することをおすすめいたします。

滑りやすい素材はNG

スロープを設置する理由はご家庭によって異なりますが、通常は車椅子やベビーカー等の車輪の付いた車を楽に移動させるためというところが多いのではないでしょうか。

スロープをオシャレにしたいということで、例えばきれいなタイルなどを床部分に利用しようと考える方もいらっしゃいます。

しかしタイルは雨や砂などによって滑りやすくなるため、車椅子を使ってその上を登ろうとしても、滑ってしまい転倒などのリスクが生まれます

スロープの目的を考えて、床部分には滑りにくい素材を利用すべきなのです。

具体的には、アスファルトや表面がざらざらしたつくりのコンクリートなどが適していますし、もう少しオシャレなスロープを設置したいという方はインターロッキングなどを利用してみるのもよいでしょう。

⇒エクステリアのインターロッキングを導入するメリット・デメリット

スロープ設置の注意点

スロープはどこにでも取り付けられるというわけではありません。

ご自身で考える位置に設置できない可能性もあるため、初めに業者に確認することをおすすめいたします。

取り付けられない場所に注意

エクステリア業者に相談する前に、スロープを取り付けるなら絶対にここがいいと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、プロの目から判断して取り付けられる場所と取り付けられない場所があるということを覚えておきましょう。

先ほども述べた十分な長さと広さが確保できるのかという点もですが、その他の様々な原因によってスロープが取り付けられない可能性もあります。

まずは専門の業者に現場確認に来てもらい、その際にスロープを取り付けられる場所をチェックしてもらうようにしましょう。

エクステリアとの位置関係を考える

スロープを設置する際には、場合によってはアプローチなどを取り壊さなければならないケースもあります。

また、庭に様々なエクステリアを設置している場合は、それらの位置を変更しなければならなくなる可能性も出てきます。

例えば、完全にバリアフリーにするのであれば、門扉を前後に開閉するタイプからスライドタイプに変更したほうが良いですし、その際には車椅子が十分に通過できる広さのものを設置する必要があります。

さらに、インターホンやポストの位置などもそれに合わせて使いやすい位置に動かしたほうが良いと感じるかもしれません。

中には水道管のように移動が難しいものもあるため、そういった障害物を考慮してスロープの位置を決定するようにしましょう。

スロープと相性の良いエクステリア

スロープ以外にもエクステリアを取り入れたいという方は、まずはスロープと相性の良いアイテムから取り付けてみてはいかがでしょうか。

手すりについて

スロープを設置するのであれば、ついでに手すりを取り付けることをおすすめいたします。

絶対になければいけないというわけではありませんが、スロープに沿って手すりを設置することによって、車椅子の方の上り下りをサポートすることができます。

車椅子の方はタイヤを回してスロープを登ることになりますが、疲労を感じた時にはスロープをつかむことで一時休止することが可能になりますし、下りでスピードが出てしまったときも、手すりを持てば止めることができます。

車椅子を安全に利用するためにはあったほうが良いエクステリアになりますので、スロープと一緒に導入を考えてみてはいかがでしょうか。

照明について

スロープを設置する際には、そのスロープにフットライトを取り付けてみるのもおすすめです。

フットライトを等間隔で設置することによって、暗い時間帯でもスロープの端が認識しやすいですので、ライトを付けるだけで安全性が高まります。

また、エクステリアの他の照明と組み合わせることによって、スロープを中心とした美しい庭を表現することも可能です。

埋め込み型のライトにすれば邪魔になることもありませんので、スロープをより快適にするために設置してみるのもよいでしょう。

スロープの費用について

スロープの設置にあたって、いくらくらいかかるのかが気になるという方も多いのではないでしょうか。

最後に、スロープ導入のコストについて簡単に見ていきましょう。

スロープの相場とは?

格安でスロープを導入したいのであれば、20万円程度に抑えることも可能です。

しかし、それはコンクリートの簡易的なスロープの価格であり、手すりなどは含まれていません。

手すりを取り付けてきちんとしたスロープを作る場合は、長さなどにもよりますが、大体50万円前後になることが多いです。

ただし、ご家庭の庭の状態などによって相場は大きく変わる可能性があるため、できれば実際に見積もりをしてもらうことをおすすめいたします。

スロープの素材と料金

当たり前のことですが、一般的な外構工事と同様に、スロープに利用する素材によってもコストが大きく変わってきます。

例えばアスファルトやコンクリートのスロープにするのであれば安上がりですが、オシャレなインターロッキングや滑りにくいるなどを利用する場合は高額になります。

同様に、手すりの素材によっても必要なコストが変わってくるため、まずはスロープの位置や大きさなどを計ってもらい、それぞれの素材を利用した際にかかる費用を計算してもらうのが良いでしょう。

最後に

健康体のうちは、スロープなど必要ないと感じる方がほとんどでしょうし、スロープを導入するというアイディアさえ思い浮かばない方が多いです。

高齢になって車椅子が必要になってからでは、ご自宅に新しいエクステリアを導入するのも大変ですので、スロープを設置するのであれば元気なうちにやってしまうことをおすすめいたします。

スロープを設置する際には十分な面積を確保し、その上で利用する素材などを決めていくようにしましょう。

当然スロープの長さや素材などによって導入コストが大きく変わってきますが、庭の状況によって相場が異なるため、まずはエクステリア業者に現場見積もりをしてもらうことをおすすめいたします。