現代の日本では、3組に1組のカップルが離婚しているというデータがあり、昔と比べても離婚率はかなり高いと言えます。
その離婚するカップルの中で最も多いのが30代前半というデータもあるため、ちょうど夫婦でマンションを購入した後に離婚が決定するというケースも少なくありません。
例えば結婚する前から夫が所有している不動産であれば、離婚後もそのまま夫が所有することが可能です。
しかし、共同で購入した不動産については、どちらか一方の反対があれば売却をすることもできませんし、何かとややこしくなるケースが多いです。
離婚したカップルの経済的な状況などによっても大きく変わってくる離婚後の財産分与ですが、マンションはどのように取り扱えばよいのでしょうか。
この記事では、離婚後の財産分与や家・マンションの売却について紹介させていただきます。
目次
財産分与には3つのパターンがある
離婚をしたカップルは、何らかの形で財産分与を行うことが多いです。
代表的な財産分与の方法として挙げられるのが、
- 清算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料的財産分与
の3つです。
それでは、それぞれにどのような特徴があるのでしょうか。
清算的財産分与とは結婚期間中に一緒に築いた不動産を含む財産
一般的な財産分与と言うのは、この清算的財産分与を指して使われることが多いです。
簡単に説明すると、結婚していた夫婦が、その結婚期間中に一緒に築いた不動産を含む財産のことを清算的財産といい、その財産を分けることを清算的財産分与と言うのです。
清算的財産に含まれるものには、
- マンション
- 土地
- 家
- 生命保険
- 家財道具
- 有価証券
- 貴金属
- 預貯金
などが挙げられます。
最近は共働きのご家庭も多いですが、妻が専業主婦として家庭を支えてきたというご家庭も多いのではないでしょうか。
ここで誤解されやすいのが、実際にお金を稼いでいたのは夫だから預貯金などは夫のものになると考えられがちですが、専業主婦にも半分の財産を受け取る権利が存在します。
離婚をして清算的財産分与を行う場合は、財産をしっかりと分けて清算する必要があるのです。
扶養的財産分与とは生活水準を維持できるまでフォローをする
夫側、妻側問わず、離婚をした後でどちらかの生活が経済的に大変になる場合は、もう一方が生活水準を維持できるまでフォローをするというスタイルの財産分与です。
しかし、夫よりも出産や子育てをきっかけに仕事を辞めて経済的な収入を得られない妻の方が多いため、現実的には元夫が元妻を支えるケースがほとんどです。
一般的には、扶養的財産分与は月々決まった額を離婚から数年間支払い続けることになりますが、場合によっては一括で受け取ることも可能です。
ただし、最近は結婚や出産で仕事を辞めるという女性も減ってきているため、離婚するに際してこの扶養的財産分与が不要になるケースも少なくありません。
また、たとえ離婚をしたとしても、家族や親族、知人や再婚相手などに経済的な支援を得られるのであれば扶養的財産分与をする必要もないのです。
慰謝料的財産分与とは金銭以外のマンションや家などの不動産を慰謝料で払う
上述した扶養的財産分与は現金で支払われることが多いですが、慰謝料的財産分与では金銭以外のマンションや家などの不動産を慰謝料として支払うこともできます。
例えば、購入して間もないマンションであれば、資産としての価値も高いですし売却活動をすればすぐに売れてしまう可能性もあります。
一方で、購入して数十年も経過しているマンションの場合は、ほとんど価値もなく売れたとしても高額で買い取ってもらえるというようなことは少ないでしょう。
しかし、今までずっとそのマンションで住んできた人間がいきなりその場所を奪われると住む場所がなくなってしまうため、該当者には資産価値以上の価値があると考えられます。
そのため、例えば慰謝料が3000万円となった場合、現金で3000万円を支払うのは無理でも、その時の価値が2000万円のマンションを妻に譲ることで相手が納得する可能性があるのです。
このように、慰謝料的財産分与では、当人しか知り得ない付加価値を伴う財産を使うことで、離婚後の交渉内容が変わってくることもあります。
離婚後の不動産売却にあたって最初に確認すること
中には、離婚するに当たって、一緒に住んでいた家・マンションを売却してしまおうと考えるご夫婦も多いです。
家・マンションを売却すれば現金が手に入るため、財産分与できれいに分けることができますが、売却をする前に調べておくべきことがいくつか存在します。
- 家・マンションの名義人
- 家・マンションの価値
- 購入時の頭金の支払者
- 住宅ローンの内容
それぞれを簡単に紹介させていただきます。
家・マンションの名義人
家・マンションの名義は、
- 夫名義
- 妻名義
- 共同名義
の3つのパターンに分けることができます。
例えば、夫が自分の稼ぎで夫名義で結婚後に購入した家があったとしても、結婚後である限りは夫婦の共有財産と言う考え方をします。
夫名義の家・マンションだからということで、所有者である夫のみに所有権が発生するというものではなく、あくまでも夫婦2人の財産ということになるのです。
そのため、専業主婦で自分名義の家・マンションを持っていない妻であったとしても、離婚後には清算的財産分与によって、その夫名義の家・マンションの半分を請求する権利を持ちます。
ただし、売却をする際には誰の名義になっているのかを確認する必要があるため、法務局で不動産の登記簿謄本を取得するなどしてきちんとした名義人を調べましょう。
家・マンションの価値
不動産を売却するにあたっては、やはりその不動産にどれくらいの価値があるのかを知ることも重要です。
必ず複数の不動産会社に現地調査をしてもらって正確な価格を出してもらい、価格に納得できない場合は売却をしないという選択肢を取ることも可能です。
また後述しますが、売却したくても自由に売却できないケースもあるため気を付けなければなりません。
購入時の頭金の支払者
家・マンションを購入する際には、初めにまとまった額を頭金として納めるケースも多いです。
この時の頭金がいくらで、どちらがいくらずつ負担したのかということを明確にしておくことをおすすめいたします。
中には、夫婦のどちらかの親が支払ってくれたというようなケースもあると思いますが、その場合もどちらにいくらもらったのかをはっきりとさせておきましょう。
住宅ローンの内容
家・マンションを購入する際には住宅ローンを利用する方も多いですが、その住宅ローンの契約書を再確認しておきましょう。
具体的には、住宅ローンの残債はいくらなのか、その住宅ローンの債務はだれが負っているのか、または連帯保証人は誰になっているのかなどをチェックします。
中には住宅ローンの内容を途中で変更するようなケースもあるため、きちんと確認しておくようにしましょう。
家・マンションの名義によって売却方法が異なる
先ほどもお伝えしましたが、夫婦が所有する家・マンションの名義は、
- 夫名義
- 妻名義
- 共同名義
のいずれかになります。
共同名義の場合は家が2人のものだという認識も強いですが、どちらか一方の名義の場合は、その家は名義人のものだという感じもあります。
それでは、名義によってどのように売却制限がかかるのでしょうか。
どちらか一方が名義人になっている場合
夫の単独名義、もしくは妻の単独名義で家・マンションを所有している場合は、その名義人が単独で家・マンションを売却することが可能です。
しかしこれは、その家・マンションが名義人単体の財産であるということではなく、あくまでも家・マンションを売却するのにもう片方の同意が必要ないというだけです。
売却したら手元にお金が残ることになりますが、そのお金を、離婚協議で決まった財産分与の割合に応じて、夫と妻で分割することになります。
一般的には、やはり稼ぎの多い男性が単独の名義人になっている家・マンションの方が多いですが、夫婦である以上はその資産をもらう権利は妻にもあるのです。
そのため、家・マンションを高く売ることは双方にとってメリットが大きいため、協力して少しでも高く売却する方法を見つけるようにしましょう。
共同名義の場合
マンションや家などの不動産を単独名義で購入するという方も多いですが、複数の人間が名義人となる共同名義で所有することも可能です。
共同名義の不動産を売却する際には、その共同名義となっている方の全員の承認が必要になってくるということを覚えておきましょう。
要するに、夫が不動産を売却したいと思っているのに、共同名義人である妻が売却に反対した場合、その不動産は売却できないということになるのです。
実際に、売買契約書には共同名義人の全員の直筆のサインが必要ですので、夫婦のどちらかが売却に反対した場合は売却できません。
しかし、夫婦で共同名義の資産を残しておくと、離婚後も何かとトラブルになりやすいため、共同名義の不動産はできるだけ早い段階で処分してしまうことをおすすめいたします。
売却が完了したら、その売却金額を、それぞれの持分割合に応じて分配することになります。
スムーズに売れないケースも少なくない
共同名義の家・マンションは早めに売却するべきだとお伝えしましたが、実は簡単にその不動産が売却できないような状態にある夫婦も存在します。
不動産を手放す方法は大きく
- 通常の売却
- 任意売却
- 競売
の3つに分けられます。
普通の売却方法で不動産を売ることができれば問題ないのですが、ローンなどの関係でそれができないケースもあるのです。
アンダーローンとオーバーローン
家・マンションを購入する際には住宅ローンを利用する方も多いですが、売却時に問題となってくるのはこのローンの残債です。
具体的には、アンダーローンなのかオーバーローンなのかで状況が大きく変わってきます。
アンダーローンとは不動産の売却価格がローンの残債を上回る状態
アンダーローンとは、家・マンションの売却価格がローンの残債を上回る状態のことを指します。
例えば、住宅ローンの残りが1000万円で、そのマンションを1500万円で売却することができた場合、売却金額がローンの残債を上回るということになります。
売却によって利益が出る場合は、その分を財産分与として利用することが可能です。
オーバーローンとは不動産の売却価格がローンの残債を下回る状態の
オーバーローンは上記の逆で、家・マンションの売却価格がローンの残債を下回る状態のことを指します。
住宅ローンの残りが1500万円あるのに、不動産の売却価格が1000万円にしかならないというような場合は、売却しても500万円分がマイナスになってしまいます。
この場合は家・マンションを売ったとしてもローンが残るため、たとえ離婚したとしても、夫婦が一緒になって、もしくはどちらかが住宅ローン支払い続けなければならないのです。
そして、離婚の際にはどちらが支払うべきなのか、名義をどうするべきなのかということで揉める夫婦も少なくありません。
住宅ローンと家・マンションの売却
不動産を売却するには、
- 住宅ローンを完済していること
- 家・マンションを売ったお金で住宅ローンの残りを完済すること
- 売却金額でローンが返済できない場合は、手持ちのお金で補填すること
この3つのパターンのどれかをクリアする必要があります。
これが、先ほど挙げた3つの売却方法のうちの「通常の売却」に当てはまります。
逆に言えば、これらのいずれかをクリアできない場合は家・マンションを売却するのが難しいということになります。
①,②の場合は売却することによって利益を得ることができるため、夫婦でその利益を分けることが可能です。
しかし③の場合は残りを現金などで支払わなければならないため、場合によってはそれができないこともあります。
手持ちに余裕がある場合、もしくは親族などにお金を借りられる場合は問題ないですが、そういった対策が打てない場合は他の方法を考えなければなりません。
任意売却と競売
ローンを支払えない夫婦は、任意売却か競売を利用して家を手放すことが可能です。
それぞれの大きな違いは
- 任意売却:所有者が売却するかどうかを決められる
- 競売:所有者の意思にかかわらず強制的に売却される
になります。
任意売却
オーバーローンの際に行われ、家・マンションの所有者が、金融機関の合意を得たうえで物件を売却することが可能になります。
通常は、住宅ローンの返済が難しくなった場合、金融機関などの債権者がその物件を差し押さえて競売にかけることが可能です。
しかし競売は一般の市場価格よりも低い金額で取引されるため、金融機関にとっては売却後に回収できる金額が少なくなってしまいます。
ただし、任意売却であれば、一般の不動産と同様に不動産会社に仲介してもらって売却することができるため、競売と比べると売却価格が高くなるのです。
そうすれば債権者もより多くの金額を回収できますし、債務者としてもローンの残債をより多く減らすことができるため、双方にメリットがあります。
そのため、オーバーローンでどうしようもなくなった場合は、まずは任意売却を行うケースが多いのです。
競売
競売は、任意売却と同じくオーバーローンの際に行われる方法になるのですが、やはり双方にメリットのある任意売却の方が良いと考える方が多いです。
しかし、
- 債権者である金融機関が任意売却に合意しない場合
- 任意売却で買い手がつかない場合
- マンションの管理費などを長期的に滞納している場合
などは任意売却ではなく競売にかけられることになります。
任意売却すべきケース
できれば普通の方法で家・マンションを売却したいと考える方が多いですが、場合によっては任意売却で素早く不動産を手放したほうが良いケースも存在します。
例えば、
- 住宅ローンが確実に払えない場合
- 夫婦のそれぞれが名義人と連帯保証人になっている場合
がこれに当たります。
住宅ローンが確実に払えない場合
離婚前は2人の稼ぎからローンを支払っていたというご家庭も多いでしょうが、離婚してしまったらローンを支払う余裕がなくなってしまうケースもあります。
そして、現段階で家・マンションを売ってもローンを完済することができないとわかっている場合は、任意売却を考えてみるのも方法の1つです。
というのは、任意売却は金融機関と債務者との間で話し合いをすることで融通がきくこともあるため、場合によっては返済できない金額を減らしてくれる可能性などもあるからです。
例えば、住宅ローンの残債が1500万円で家・マンションを売却することで1000万円が入るとなった場合、差額の500万円は返さなければならない金額ということになります。
しかし、この500万円という返済額を見直してもらえたり、月々の支払額を減らしてもらえたりすることもあるため、まずは債権者と話し合ってみる価値があると言えます。
夫婦のそれぞれが名義人と連帯保証人になっている場合
夫名義のマンションの連帯保証人が妻、またはその逆になっているというご家庭は意外と多いはずです。
離婚に際して、その連帯保証人から外れたいと考える方は多いですが、外れるためには、
- 別の不動産を担保に入れる
- 金融機関を変えてローンを組み直す
- 自分と同等以上の収入がある方を連帯保証人にたてる
などの方法が必要なため、現実的には難しいと考える方も少なくありません。
しかし、その状態のまま離婚をしてしまうと、例えば夫がローンの支払いを滞納した際に妻がそれを支払わなければならなくなります。
それを避けるためには、やはりマンションを売却してしまうというのが最も良い方法と言えるのではないでしょうか。
ただし、オーバーローンの場合は連帯保証人にも変わらず支払いの義務が付きまとうため、結局同じことが言えます。
しかし、少なくとも売却前の残債と比べるとはるかに負担が軽くなっているため、連帯保証人に催促がくるリスクを減らすことは可能です。
残債の返済は離婚後も付きまとう問題ですので、離婚の際にきちんと2人で話し合っておく必要があります。
離婚後の家・マンション所持パターン
離婚をする際の家・マンションの売却について話をしてきましたが、もちろん売却せずにそのまま所持し続けるというケースも存在します。
様々なパターンが考えられますが、最も多いのは
- 夫がローンを支払い続ける
- ローンは夫が支払い、慰謝料として妻が住む
- 賃貸として他人に貸し出し、慰謝料として家賃を妻が受け取る
これらのパターンになります。
夫がローンを支払い続ける
離婚後の家・マンション所有で最も多いのは、夫が住宅ローンを支払い続けるというパターンです。
ローンをきちんと支払い続けて完済できれば、全く問題なく夫名義の家・マンションとしてその後も使い続けることが可能です。
しかし、妻がその家・マンションの連帯保証人となっている場合は、万が一そのローンを滞納してしまった際に、その返済義務が妻側に発生してしまいます。
離婚をすれば連帯保証人の義務も消えると思われている方もいらっしゃいますが、離婚と連帯保証人は関係ないため気を付けなければなりません。
また、離婚をしたからと言ってローンの保証人を抜けさせてくれる金融機関も少ないため、それが困るのであれば売却してしまうほかありません。
ローンは夫が支払い、慰謝料として妻が住む
離婚後は、家・マンションに妻や子供が住み、夫はその住宅ローンを慰謝料として支払うというようなケースも珍しくはありません。
ただし、夫名義の家・マンションの場合は、その夫がローンの支払いを滞納した際に、強制的に差し押さえられて出ていかなければならなくなる可能性があります。
また、例え妻側がそこで生活を送っていたとしても、将来的に夫が家・マンションを売却しようと思えばできてしまうため、こちらもしっかりと話をしておかなければなりません。
例えば、夫名義の家・マンションを妻名義に代えてしまえばいいのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、住宅ローンがまだ残っている家・マンションの名義人は、基本的に変更することができないため、夫名義の家・マンションの場合は完済するまでは夫名義のままということになるのです。
賃貸として他人に貸し出し、慰謝料として家賃を妻が受け取る
夫、妻ともに離婚後はその家・マンションに住まず、第三者に貸し出して賃料を得るというご家庭も多いです。
この場合は、残っているローンは夫が支払い続け、その家・マンションの賃料を慰謝料代わりに妻が受け取ることになります。
しかし、こちらも上述したのと同じ理由で、住宅ローンの滞納により差し押さえなどが発生する可能性があるため気を付けなければなりません。
また、その不動産を妻が自分で管理する場合は、入居者とのトラブルや入居者が見つからないなどの問題も自分で解決しなければならないので意外と大変です。
不動産会社を間に入れて管理をしてもらうか、もしくはやはり売ってしまうというのも方法の1つです。
まとめ
一緒に購入した家・マンションは、仲の良い夫婦にとっては良い財産となりますが、離婚をするとなった場合にはトラブルのもとになりかねません。
できるのであれば、離婚をする前に、もしくは離婚をしたすぐ後に売却できるようにしておく必要があります。
離婚をしてからも、家・マンションの売却や財産分与でズルズルと問題を抱えるというのはお互い気持ちがよいモノではないはずです。
売却をするなら素早く売却の手続きを、所有し続けるのであればどのように所有し続けるかという話し合いをし、その後の流れを明確に決めてしまいましょう。
不動産会社や、場合によっては弁護士などの第三者にも協力を求め、できるだけ早く問題をクリアにすることで、お互いが新しい人生を気持ちよく迎えられるのではないでしょうか。