周りに人の住む家が全くない場所で解体工事を行うのであれば、どれだけ音や振動を出そうが苦情が来ないかもしれません。

しかし、特に都心ではそのような場所を見つけるのは難しいですし、解体工事の多くは人がたくさんいる住宅街で行われることが多いです。

そのような地域で人が全くいない時間帯を狙って解体工事をするということは不可能ですので、誰かに音や振動、粉塵などの不快な思いをさせることになります。

場合によっては、その不快な思いが原因で大きなトラブルに発展することがありますし、お互いに嫌な思いをすることもあります。

今回は、解体工事で発生しがちなご近所トラブルや、その解決方法などを紹介していきます。

解体による騒音と振動

解体作業で最も多いトラブルの元として挙げられるのが、騒音と振動になります。

特に、作業をする場所の両隣や裏、向かいの家などの作業現場に近い場所にお住まいの方々は、解体工事中これらの被害に悩まされることになります。

騒音と振動によるトラブル

当たり前のことかもしれませんが、解体工事では建築資材を壊したり重たいコンクリートや鉄骨が落下したりすることになるため、振動が発生したり音が出てしまったりすることになります。

早朝や深夜に解体工事をするわけではないため、周りに住む人々が日中そこで生活をしていなかったりするのであれば、大した問題にはならないのかもしれません。

しかし、例えば真隣の方が夜間のガードマンやタクシー運転手などの深夜の仕事をしている場合、自宅でゆっくりくつろいだり睡眠をとるのは昼間の時間帯ということになります。

解体作業で騒音や振動が出ている時に休息をとることになるのですが、地面が揺れるような振動やびっくりするような騒音を立てられては、落ち着いて眠ることなどできませんし睡眠不足に陥ることも考えられます。

それが原因となって、大きなトラブルに発展したり、工事を一時中止しなければならないような事態になることがあります。

騒音と振動の発生は避けられない

もちろん解体業者としても、音を立てずに工事ができるのであればそれに越したことはありませんし、そんな方法があるのであればとっくにそれを採用しているはずです。

しかし、基本的にはどれだけ工事を丁寧に進めたとしても、解体作業で発生する音や揺れはなくすことができないのです。

例えば解体工事の際には、音を最小限に抑えるための防音シートを使うことが多いですが、それでも音を外部に全くもらさなくするのは不可能です。

周りの方々には迷惑をかけることになりますが、解体工事に騒音と振動はつきものだということを理解してもらう必要があります。

解体で発生する粉塵

解体作業中に発生しがちなもう1つのトラブルが、粉塵問題によるものです。

雨の中の解体工事であれば、空気中にホコリが舞うのと同時に雨が周囲に飛び散るのを防いでくれますが、晴天の日や風の強い日の作業となると、その粉塵は遠くに飛ばされることになります。

粉塵による被害とは?

どのような場所であっても空気中にチリやホコリが舞うのは珍しいことではありませんし、見える・見えないは別にして、それはどこにでも漂っています。

しかし、解体工事をはじめとする工事現場では目に見えるほどの激しい粉塵が飛び交うため、それらが隣人に大きな被害を与えることがあります。

例えば、解体工事をしている真横で洗濯物を干すと、せっかく洗った衣類がホコリまみれになってしまいますし、車を駐車しているとフロントガラスが見えないほどのホコリが積もってしまうこともあります。

ご近所さんが解体工事を行うということを知らずに洗濯物を干してしまうと、かなりの確率で苦情が来てトラブルに発展してしまいます。

解体工事をする前にご近所に挨拶回りをするのは、このようなトラブルを避けるためでもあるのです。

粉塵に含まれるアスベスト

比較的新しい建物を解体する分には、アスベストの心配をする必要はないかもしれません。

アスベストは発がん性がある物質になり、1990年ころまでに建てられた建築物には大量に使用されていました。

吸引することによって肺がんをはじめとする様々な病気を引き起こすリスクがあり、解体する建物によっては、作業中に発生する粉塵にこのアスベストが含まれる可能性があります。

石綿特別教育を実施したスタッフでなければアスベストが含まれる建物の解体に携わることができませんし、解体作業をするにあたって特別管理産業廃棄物管理責任者を設置するなどの対策を取る必要があります。

逆に、アスベストが使われている住宅だと知らずに普通に解体作業をしてしまうと、後々大きなトラブルに発展する可能性が高いです。

解体する住宅が建てられた年代にもよりますが、必要だと感じる場合はアスベストが含まれているかどうかを解体前にチェックすることをおすすめいたします。

作業員の出入りや重機搬入

解体作業によって発生する騒音や粉塵とはまた別の問題になりますが、作業に当たるスタッフや重機搬入に対してクレームが来ることもあります。

スタッフの不注意などによって発生するトラブルは、施主には関係ない感じがするかもしれません。

しかし解体業者を選ぶのは施主ですし、その施主が何か対策を取らないと解体後の土地にいづらくなってしまう可能性もあります。

重機によるトラブル

普段は大きなトラックなどが走ることのない場所であっても、解体工事のために何台もの重機が運ばれてくることがあります。

例えば近所の小さな子供がいつものように外で遊んでいると、トラックが取り返しのつかない事故を引き起こしてしまう可能性があります。

同様に、大きな車両が細い道を通過する際などに、近所の住宅の壁にぶつかってしまったり屋根にあたってしまったりすることもあり、それがトラブルに発展するケースも少なくありません。

もちろん業者も警察に道路の使用許可を取っているはずですが、重機が近所の方の通勤路をふさいだりすることも考えられます。

例え正式に道路の使用許可を取っていたとしても、解体工事によって普段の生活を邪魔されるのであればそれは近隣住民には関係のないことです。

解体対象となる建物の立地条件によるところも大きいですが、事前に確認しておく必要があります。

作業スタッフのマナーにも注意

中には、解体工事をするスタッフのマナーが悪いということでトラブルになるケースがあります。

例えば、その解体作業に携わるスタッフ同士が毎日のように大声で私語することによって、工事の騒音とはまた違ったストレスを感じる隣人がいるかもしれません。

または、作業現場近くで缶コーヒーを飲んだ後の空き缶をそのまま放置したり、路上でタバコを吸ったりといった行為も、周りの人々の迷惑になる可能性があります。

施主がどうにかできる問題ではないケースもありますが、事前に顔合わせをしてしっかりとした対応をできていたか、言葉遣いや態度が問題ないかをチェックしていれば、ある程度は防げるトラブルかもしれません。

解体工事がトラブルになる原因

解体作業に騒音や粉塵などはつきものですが、それらが原因でトラブルに発展するケースもあれば、スムーズに工事が進むケースもあります。

それでは、トラブルになる場合とそうでない場合の違いはどこにあるのでしょうか。

工事の挨拶回りをしない

解体工事を含む工事をする前には、事前の挨拶回りをすることが多いです。

法律でしなければならないというように義務付けられているわけではありませんが、解体作業中は前述したような近隣の住民が不快に感じる問題が多発するため、その旨を事前に伝えておくのが一般的なのです。

それを伝えておくだけで、近所の方々も解体工事に備えて洗濯をしたりするなどの対処ができるようになります。

反対に、全く伝えずにいきなり解体作業を始めてしまうと、近所の方々への被害は大きくなりトラブルにつながります。

元々隣人トラブルが多かった

中には、工事をする前からご近所トラブルが多発していて、解体工事を始めることによってそれが悪化したというケースも存在します。

ご近所トラブルの根本的な原因が、こちらの普段の生活に問題があったのか、それともそのご近所さんが神経質すぎだったのかは何とも言えません。

しかし、相性の悪い方が近所に住まわれていたからといって、解体工事をしないわけにはいきません

日ごろから仲の悪い方の家に行って解体工事をするという旨を伝えるのは少々つらいかもしれませんが、そういう方だからこそ事前にしっかりと挨拶をしておく必要があります

それをするだけでも、トラブルを最小限に抑えることができるのではないでしょうか。

挨拶回りについては、後程詳しく紹介させていただきます。

トラブルを未然に防ぐためには?

特に、解体工事後にそこに新しい家を建てて住むという方は、最初の段階からご近所と揉めたくないはずです。

例えそこに住まなかったとしても、その場所に土地がある以上は、工事をなるべく平和に終わらせたいものです。

最後に、ご近所トラブルをできるだけ発生させないための方法を紹介していきます。

挨拶回りは不可欠

何度も記載してきましたが、ご近所さんとのトラブルを防ぐために事前の挨拶回りは必ずしておいたほうが良いでしょう。

具体的には、何時から何時まで解体工事を行うのか、何日から何日まで行い、いつが休日なのか、というようなことを伝えることになります。

一般的には、解体工事を始める1週間前くらいまでに挨拶回りを済ませることになります。

建物が密集している場合は、それだけたくさんの家を回って歩かなければならないため大変ですが、後々発生するかもしれないトラブルの手間を考えると、まだましといえるのではないかと思います。

もちろん、ちゃんとした解体業者であれば、その業者のスタッフも挨拶回りをすることになりますが、施主が来るか来ないかで近所の方々の反応も違うため、同行するか、自分たちで早めに済ませてしまった方が良いでしょう。

解体工事前の近所への挨拶は重要!挨拶のタイミングと方法について

きちんとした業者を選ぶのも重要

解体作業に来るスタッフのマナーや態度などが原因でご近所トラブルに発展するケースもあると記述しましたが、それは最初に業者を選ぶ段階で、ある程度は予防することが可能です。

例えば最初に電話をして話を聞く際に、乱暴な言葉遣いだったり対応が適当だったりする業者は、良い業者と言えません。

しかし、電話の対応が丁寧だからと言って作業期間中の行動に全く問題がないかと言われると、そうといいきれない場合もあるので難しいところです。

解体作業をする際には、一般的には複数の業者に見積もりを取ってその中の1つに絞ることになりますが、後々のトラブルを防ぐために、値段だけでなく実際に業者と話してみて、その対応で決めるのも重要です。

最後に

どのように気を付けていたとしても、どれだけ良い業者を利用したとしても、解体工事は必ず周りの人々に迷惑をかける作業になります。

しかし、お互い様だからと言って何の対処もせずにそのまま工事を始めてしまうと、今回紹介したような問題が原因で大きなトラブルに発展することもあります。

お互いが嫌な思いをするだけでなく、金銭の話になったり工事の予定が大幅に遅れてしまったりするなど、面倒なゴタゴタに巻き込まれることも少なくありません。

普段のご近所づきあいも大切になってきますが、解体作業をする際には前もって挨拶回りをするのがどれだけ大切かがお分かりいただけたのではないでしょうか。

挨拶をすればそれで100%問題が起きないと断言できませんが、工事をできるだけスムーズにするためにも、周りの住人に理解してもらうようにしましょう。