解体工事の中には、重機を利用せずに人間の手を使って丁寧に建物を取り壊していく手壊し解体というものもあります。
もちろん重機を利用して解体したほうが早いですし楽なのですが、様々な理由によって重機が使えない場面もあるのです。
通常の解体工事とは異なり特殊な方法になるため、まさか自分の建物が手壊し解体になるとは思わなかった、という方もいらっしゃいます。
手壊し解体は、通常の解体工事と比べると時間がかかりますし、コストも高くなる傾向にあります。
そんなことを聞くと、できれば重機を使ってほしいと思われる方がほとんどでしょうが、まずは実際に業者に現場を見てもらわなければ何とも言えません。
今回は、重機を使えない解体作業の原因や、手壊し解体の良さ、必要な時間やコストなどについてまとめています。
重機を使わない手壊し解体について
解体工事と聞くと、大きな重機を利用して豪快に建物を倒すイメージをされる方もいらっしゃいますが、中には人間の手を使わなければ解体できないようなケースも存在します。
手壊し解体の手法
現代の解体工事では、重機を利用して一気に壊すようなミンチ解体をすることが禁じられています。
そのため、例え重機を利用する解体作業であったとしても、ある程度は人の手を利用して解体工事が進められます。
しかし、その重機を使うことができないような場所での解体工事の場合は、最初から最後まで、人の手で解体工事を行うことになります。
例えば、解体バチとも呼ばれる鍛造解体鍬を利用して壁などを壊したり、チェーンソーを利用して柱を切断したりすることになります。
また、解体工事で発生した産業廃棄物を運ぶための車両も入れない場合には、乗り入れ可能なところまで一輪車等を利用して搬出し、そこからトラックに積むことになります。
重機で行えば1日で終わるような作業であっても、重機を使えない状況ではかなりの時間が必要なケースがあります。
また、場合によっては解体のためのスタッフを増やすことで、できるだけ早く工事を終わらせると行ったことも可能です。
小型重機の利用について
解体作業では、大きな重機を利用して建物を壊していくことになりますが、道路の幅が狭いなどの理由によって、その重機を解体現場まで運べないようなケースも存在します。
そんなときには、ミニユンボなどと呼ばれる小型重機を所有している解体業者に解体作業をお願いしてみるというのも方法の1つです。
小型重機は、大きくても車幅が1.5メートル程度になりますので、細い道路であっても対応できることが多いからです。
体は小さかったとしても、木造の二階建てくらいまでの解体作業には十分に使うことができるため、ミニユンボを使うことで解体作業をはかどらせることができます。
もちろん、階段のため重機が運べない場合はミニユンボも使えませんが、道幅の問題で搬入できない場合は小型重機が活躍する可能性があります。
手壊し解体が必要な理由
通常は重機を利用して建物を壊す解体作業ですが、手壊しが必要なケースの多くは、重機を現場まで搬入できないことが多いです。
それでは、具体的にどのような場合に重機が運べないのでしょうか。
階段状の上に解体現場がある
建物が高い場所に位置する場合は、そこまで行くための道路に階段が含まれているケースもあります。
通常であれば、なだらかな斜面に道路を作ることが多いのですが、元々車両の乗り入れを想定していないような場合は、道が階段になっているため重機をそこまで持って行くことができません。
段差の距離が短い場合は、その階段になっている部分に鉄板を敷くことによって重機を乗り越えさせることも可能です。
しかし階段が長い場合は、不安定な場所で重機を運ぶことができないため手作業という選択肢を取らざるを得ません。
道が狭い
重機の搬入が難しくて手壊しになる理由で最も多いものが、現場までの道が狭くて重機がそこを通り抜けることができないというものになります。
一般的な建物の解体に利用される重機は、大体幅が2メートル程度になることが多いです。
しかし、公道の中には幅が2メートルに満たない道路もたくさんありますし、仮にギリギリ通過できる距離であったとしても、曲がり角で長さが足りずに入りきらないというようなケースもあります。
また、家の前の道路は十分な幅があるのにもかかわらず、その道に出るまでに細い道しかないというような場合も、同様に重機が入らないため手作業での解体工事をすることになります。
ただし、道の幅によっては先ほども述べたミニユンボを利用することができるかもしれません。
道路と敷地内の間に段差がある
無事に重機を家の前まで運んでくることができたとしても、道路と敷地内の間に大きな段差がある場合は、乗り入れができないことがあります。
もちろんちょっとした段差であれば全く問題ないのですが、道路よりも私有地が極端に高い場所にあったり、逆に低かったりすると、重機や車両はそこに駐車しておくしかなくなります。
場合によってはクレーン車で重機をつって、そのまま敷地内に入れるという方法がとられることもあります。
しかしクレーン車を利用するにはそれなりのスペースが必要になってきますので、周辺が狭いようでは重機の搬入は難しいといえるでしょう。
手壊し解体の良さ
当然重機を使っての解体作業の方が早く済むため、手壊しの解体作業にはデメリットしかないと思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし実は、解体作業の中には手壊しの方が良いケースもあるのです。
騒音や振動を抑えられる
解体工事につきものなのが、重機を利用して建物を壊す際の騒音や振動、粉塵などになります。
施主はその場で生活をしないことが多いのであまり関係ないかもしれませんが、近隣に住む方々はいつもと同じ生活を送ることになります。
重機を利用すると、大きな音が出たり振動を発生させたりすることになりますし、建物が崩れ落ちる際には粉塵が宙を舞います。
しかし、手壊しで作業をするのであれば、これらの影響を最小限に減らすことが可能です。
もちろん、手壊しの解体作業であっても、チェーンソーをはじめとするたくさんの機械を利用することになるでしょう。
しかし、大型の重機が発生させる騒音や振動と比べると気にならない程度であることが多いため、近所トラブルを最小限に減らすことができます。
長屋の解体に重機は使えない
長屋とは、複数の住戸が壁を共有して連なっている作りの住宅スタイルのことになります。
その長屋の一部を解体する場合は、基本的に手壊しでの解体工事になることが多いです。
壁を共有している以上、重機を利用して解体してしまうと隣の住宅の壁に穴をあけてしまう危険性があります。
また、隣で人が生活を送っている中で作業をする場合は、工事の振動や騒音がしっかりと伝わってしまいます。
さらに、取り壊す住宅を含めた周りの住宅全てに養生シートを設置するわけにもいきませんので、必然的に手壊しでの解体作業が採用されることになります。
手を使って解体工事を行えば、細かなところまで慎重に丁寧に解体することができますし、近所迷惑を防ぐこともできます。
安全で丁寧な作業が可能
長屋は完全に壁がくっついていますが、隣家との距離がかなり近い場合なども、手を使って解体することがあります。
もちろん重機の操縦に自信があるのであれば、細い隙間であっても重機を利用して解体を進めることができるのかもしれません。
しかし、万が一のことを考えて、あまりに隣接している場合はその場所だけ手で壊していくことが多いのです。
手を使えば間違って隣の家を傷つけてしまうということはありませんので、安心して慎重に解体していくことが可能です。
同様に、重機を利用するとすぐに潰れてしまいそうな倒壊寸前の状態の建物を解体する際などにも、慎重さが求められるため手作業で行われることが多いです。
まずは作業員の安全を確保するのが重要ですので、場合によっては手壊しが必要な場合もあるのです。
手壊し解体にかかる時間と費用
解体工事をお願いする方が最も気になるのは、やはり解体費用についてなのではないでしょうか。
また、早くその土地を有効活用したいという方の中には、工期が気になるという方もいらっしゃいます。
手壊し解体の時間について
通常の解体作業であれば、1週間~2週間程度で完了させられることが多いです。
しかし、当然その前に相見積もりを取ったり業者と相談したりといった期間が含まれますので、1ヶ月以上は見ておいたほうが良いでしょう。
解体工事に必要な1週間~2週間というのは、重機を利用してスムーズに工事が進められた場合の期間になります。
小さな家であればもう少し作業が早くなる可能性もありますが、反対に建物の構造や大きさによってはさらに時間がかかります。
全て手作業で行うとなった場合は、倍前後の期間を見ておいたほうが良いでしょう。
もちろん人員を増やすことによって、ある程度の期間の短縮は可能かもしれませんが、やはり重機を利用する作業と比べると格段に遅くなる傾向にあります。
手作業での解体工事しかできないができるだけ早く終わらせたいという方は、余裕をもって早めに見積もりを取るようにするとよいでしょう。
手壊し解体の費用について
最後に、手壊し解体でいくらくらい必要なのかを見ていきましょう。
結論から言うと、全て手作業で解体工事を行う場合は、通常の解体費用の2倍~3倍ほどのコストがかかることが多いです。
上述したように、手壊しによる解体は通常よりも時間がかかりますが、工期が2倍になれば単純に人件費も2倍になります。
また、現場のスタッフを増やすことによってさらに人件費がかかることになります。
事前に一般的な解体工事の費用の相場を調べていた場合は、その高さにびっくりされる方もいらっしゃいます。
念のため複数の業者に相見積もりをしておけば、大体の相場を知ることができるのではないかと思います。
最後に
重機を利用して解体工事ができれば一番良いのかもしれませんが、やはり建物の状況によっては手壊しを採用するしかない場面もあるようです。
通常の解体作業とは異なるため、時間や費用が余分にかかることに納得して、解体工事を始めるほかありません。
もしくは、重機を利用して解体工事ができそうな方法を考えて業者に提案してみるなどすることで、ひょっとしたら通常の解体工事ができる可能性もあります。
まずは信用できそうな業者を探して、その業者と相談して話を進めていく必要があるため、相見積もりをしてよい業者を見つけましょう。