解体工事では大きな建物を取り壊すことになるため、いつ事故が起こってもおかしくない状況で仕事をしてくれています。
例えば、重機の取り扱いを間違えてしまったり、重い廃材を上から落としてしまったりと、予想外のトラブルはつきものです。
もちろんできるだけ事故を避けて解体工事をしたいと考える方がほとんどですし、実際に何も起こらずに工事は終了します。
しかし、どれだけ安全に気を使って解体作業をしていたとしても、何かが原因となって事故が発生する可能性はあるのです。
そして、実際に解体作業中に事故を起こしてしまうケースも少なくありません。
この記事では、そんな解体工事で発生する可能性のある事故や、事故の際の遅延について紹介させていただきます。
解体工事に発生しがちな7つの事故
それでは、具体的に解体工事中にはどのような事故が発生するのでしょうか。
まずは、解体工事で発生しがちな事故を詳しく見ていきましょう。
- 近隣の住宅を壊してしまう
- 足場が崩れてしまう
- 足場から落ちてしまう
- 外壁が倒れてしまう
- 重機や車両の交通事故
- アスベストが飛散する
- ガスが爆発する
この7つは、どんな解体工事であっても発生する可能性のある事故になります。
近隣の住宅を壊してしまう
解体工事では、重機を利用することも多いですが、その重機を利用している最中に誤って隣の家の塀を壊してしまったりすることがあります。
ブロック塀やフェンスは解体対象の建物と密接していることも多いため、ちょっとしたミスでも大きな事故になりかねません。
また、重機の使用時だけではなく、幅の広い重機や車両を運転している最中に、周辺の家の塀などにこすってしまいクレームを入れられるということもあります。
近隣の住宅を傷つけた場合は、その家の持ち主にも立ち会ってもらい、補修の方法を相談することになります。
足場が崩れてしまう
解体工事をする際には、事前に建物の周りに足場を設置することになります。
しかし、その足場をしっかりと固定しておかなければ、強風などが原因で倒れてしまう可能性もあります。
特に大きな建物を解体する場合は、足場もそれだけ高いものになりますし、足場を設置する範囲も広くなります。
大きくなればなるほど風の影響を受けやすくなるため、よりしっかりと固定する必要があります。
万が一倒れてしまうと周囲の人や家、車などを下敷きにしてしまうことになるため、注意をしなければなりません。
足場から落ちてしまう
足場は高い場所での作業が必要な際に設置するものになりますが、その足場から解体業者のスタッフが転落するという事故もあり得ます。
単純な転落事故であれば、本人の注意不足ということにもなりますし、近隣の住民に迷惑をかけるということもないでしょう。
しかし、高所からの転落は命にもかかわるので、例え低い場所からの転落であったとしても大怪我をするリスクがあります。
例えば、過労による転落の場合などは、他のスタッフも同じように転落する可能性があると判断できるので、いったん工事が止まる可能性があります。
外壁が倒れてしまう
実際に、解体中の建物の外壁が倒れてしまい、高校生が亡くなるという事件も発生しています。
一般的には、解体中の建物外壁は不安定になっているはずですので、ワイヤーなどで固定して工事をする必要があります。
しかし、そのワイヤーでの固定を怠ることによって、強風であおられた外壁がそのまま倒れてしまう可能性があるのです。
こちらも足場の倒壊同様に、周りに人や車、建物などがあると大きな事故に発展する可能性が高いです。
重機や車両の交通事故
車両を運転中に一般的な交通事故を起こすということもあり得ますが、工事中に止まっている車両に関わる交通事故にも注意が必要です。
特に、狭い路地に大きな車両を駐車しておくと、視界が悪くなるため通行人や自転車などが交通事故に遭いやすくなります。
通常は、危険だと判断される際には交通整備のスタッフを利用したりする可能性が高いですが、コスト削減などの理由でそのスタッフが配備されないこともあります。
そうなると、当然視界の悪い通りはそのまま放置されることになるため、それが原因で事故が発生してしまう可能性があるのです。
アスベストが飛散する
アスベストの建物を解体する際に、アスベストがあるとは知らず、または知っているのにも関わらず、なんの対策も取らずに解体する業者も存在します。
→アスベストの基礎知識。アスベスト含む住宅を解体する際の注意点
アスベスト含有建材の解体にはきちんとした資格が必要になってきますし、ちゃんとした解体業者に解体をお願いする必要があります。
しかし、あってはならないことですが、アスベストに対するきちんとした対策を取らずに工事を行ってしまうケースもあるのです。
当然、アスベストは飛散して多くの人々がその被害を受けることになるため、大変深刻な事故になる可能性も多いです。
ガスが爆発する
解体作業をする前には、水道以外のライフラインを全て撤去する必要がありますが、中にはその撤去を忘れてしまう方もいます。
例えばガスが普通に通っているガス管を誤って重機などで切断してしまうと、ガスがその建物中に漏れることになります。
そして、何らかの引火源がそのガスに触れることによって、大きな爆発や火災へと繋がってしまうのです。
そこで解体作業をするスタッフはもちろん爆発に巻き込まれる可能性が高いですし、近隣の住宅にも被害が及ぶ可能性があります。
また、一般の家庭とは関係ないですが、ガソリンスタンドの解体にもガス爆発はつきものなので、細心の注意を払って解体作業を行う必要があります。
解体工事の事故による施主への対応や被害について
解体作業中に上記のような事故が発生してしまったら、施主にはどのような被害がもたらされるのでしょうか。
続いて、事故によって発生する施主への被害を見ていきましょう。
業者から施主への慰謝料請求はない
恐らく、多くの方が気になるのは、自分の家の解体工事で事故が起こったから「業者から何らかの慰謝料請求があるのではないか」という部分ではないでしょうか。
しかし、基本的には解体工事中の事故は解体業者の責任であることが多いため、業者から治療費などの請求があることはないはずです。
施主が原因で工事中に事故が発生した場合は別として、通常は解体業者が加入している保険から負担される可能性が高いです。
もちろん施主としても、事故に遭った方を心配する気持ちもあると思いますが、金銭的な援助などは不要ですので安心してください。
工事遅延の可能性
解体工事中の事故によって、その工事そのものが遅れてしまう可能性は大いに考えられます。
大きく、
- 人員の欠員による遅延
- 事故処理による遅延
に分けられます。
人員の欠員による遅延
作業員が十分にいるような大きな解体業者であれば、その事故に遭った代わりのスタッフをすぐに補填することができるかもしれません。
しかし、お願いした業者が小規模な場合は、事故に遭った方の代わりとなる人間がいないというケースもあります。
例えばそれまでは5人でやっていた解体作業が、事故によって4人になってしまった場合、5人で作業をするためのスケジュールが全て狂ってしまいます。
事故が発生してから解体工事が終わるまでは4人で作業せざるを得ないため、単純に作業効率が落ちて工事が少しずつずれていってしまいます。
事故処理による遅延
例えば、スタッフが足場から滑り落ちてしまったというタイプの事故であれば、事故の後に大掛かりな処理をしなくてもよいはずです。
もちろん落ちてしまったスタッフの応急処置をしたり病院に運んだりと言った作業は必要になってきますが、基本的にはすぐに済んでしまいます。
しかし、足場そのものが倒壊してしまうなどの事故になると、当然その足場をまた一から組み直さなければならないため、それに時間を取られます。
また、足場の倒壊に伴って通行人を傷つけてしまったようなケースは、当然解体工事をすぐに再開することはできません。
このように、事故の規模によっても工事の遅延具合が変わってくるのです。
解体工事が遅延した時の2つの対処法
事故が起きてしまって、少しくらい工事が遅れるのは仕方がないと考える方もいるでしょう。
また、スタッフなどが怪我をしてしまうと、心配する気持ちがあるというのもわかります。
しかし、中には解体工事が遅れるのは困ると思われる方も多いはずです。
工事が遅延しそうなときには、
- 業者に状況を聞いて何とかしてもらう
- 近隣の住民に納得してもらう
といった方法を取ることになります。
業者に状況を聞いて何とかしてもらう
もちろん業者の規模や事故の状況によっては、何とかならないケースもあります。
しかし、まずは事故の状況を業者にきちんと確認し、その上でこちらの状況も伝えて何とか間に合わせてもらうように頼んでみましょう。
例えば、新築物件の建築工事を分離発注で頼んでいる場合は、その工事の着工に間に合うように解体してもらう必要があります。
それを伝えた上で解体工事をお願いしているのであれば、業者の方も何とか予定通りに工事を行おうと努力するはずです。
怪我をされたスタッフを心配する気持ちがある一方で、業者の責任で起こった事故であれば、工事が予定通り進むようにお願いをするべきです。
近隣の住民に納得してもらう
例えば、駐車車両の交通整備を怠ったせいで交通事故が発生した場合は、近隣の住民などが危ないとクレームを入れて工事が中断する可能性もあります。
近隣住民の方々からしても、家の近くで安心して生活ができないと苦情を入れたくなる気持ちはわかりますし、実際に事故が起こっているわけです。
場合によっては、車両をどかして工事自体を取りやめてほしいと言われることもあるかもしれません。
そんなときには、臨時で近所の方々に集まってもらい、きちんと状況を話した上で、予定通りに工事を行わせてほしいとお願いする必要があります。
もちろん業者のスタッフと一緒になって話をすることになるため、今後の予定などをきちんと説明してもらいましょう。
納得してもらえれば、また工事を再開することができるはずです。
まとめ
どれだけ慎重に解体工事を行っていたとしても、何らかの偶然が重なって事故が発生する可能性はあります。
実際に、解体工事中の事故がゼロになるということはありませんし、その事故のせいで多くの方に迷惑をかける可能性もあります。
大きな事故が発生する可能性は少ないかもしれませんが、自身の建物を解体してもらっている最中に絶対に起こらないとは言えません。
まずは、業者選びの段階で事故をしなさそうな安心できるところを選ぶ必要があります。
→解体工事業者を選ぶ方法|見極めるために大事な6つのポイント
また、工期なども重要ですが、安全第一で無理の内容に工事を進めてもらうことをおすすめいたします。