遺産相続などによって、空き家を相続したという方も多いのではないかと思います。
空き家も不動産という財産の1つになりますので、空き家を持っているということは資産を所有しているということになります。
「空き家」ということはその資産を遊ばせているだけということになりますが、実はそれだけでも固定資産税がかかってきます。
特に今まで不動産を所有したことがない方は固定資産税についての知識がないのではないかと思います。
今回は、所有するだけでは損してしまう空き家の存在と、損しないための空き家の活用について紹介させていただきます。
目次
そもそも固定資産税とは?
例えば、都会に出てきてアパートやマンションなどの賃貸で生活をしている分には固定資産税はかかりません。
しかし、そういった方がご両親の死後に相続した実家の家屋にもこの税金が適用されます。
固定資産税の対象となるものは?
固定資産税は、所有する建物だけではなく所有する土地に対しても課される税金のことになります。
毎年1月1日に土地や家屋などの固定資産を所有する方は、その市町村に必ずこの税金を支払わなければなりません。
逆に言えば、例えば1月に入手した家屋や土地をその年の12月までに売却してしまえば、固定資産を所有していないということになるため、税金が課されることはありません。
固定資産税はいくらになるのか?
それでは、所有する土地や一般の住宅に対する固定資産税はどれくらいになるのでしょうか。
土地と、その上に建てられている上物に対する税金は別々に求められるのですが、基本的に土地の場合は、
「固定資産評価額×税率(1.4%)=固定資産税」
というシンプルな数式で計算することができます。
固定資産評価額は、総理大臣の定める固定資産評価基準に基づいて、その資産のある市町村長が決定した価格から決められる課税標準額のことです。
また、税率は基本的には1.4%となっていますが、市町村で決められるため地域によっては若干引き上げられているところもあります。
なお、上物は土地とは異なり年々評価額が下がっていく傾向にありますが、基本的には新築時の評価額や家屋面積、経過年数などを元に算出されます。
住宅用家屋がある土地に対する減額について
基本的には上記の計算式で土地の固定資産税が決められるわけですが、住宅用の家が建てられている場所については減額措置が取られます。
住宅用地については、その税負担を軽減する目的から、課税標準の特例措置が設けられています。住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分、固定資産税及び都市計画税に応じて下表のとおり算出されます。
区分 固定資産税 都市計画税 小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200m2までの部分 価格×1/6 価格×1/3 一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 価格×1/3 価格×2/3 東京都主税局のHPより引用
つまり住宅用の土地で200㎡までに収まるのであれば、
固定資産評価額×1/6×税率(1.4%)=固定資産税
となるのです。
なお、住宅用として土地を利用しているのであれば、空き家もこれに当てはまります。
空き家対策特別措置法と固定資産税について
同じ土地でも、更地として遊ばせていくよりは住宅用の上物を建てたほうが税金がお得と言われるのは、上記のような理由になります。
土地の区分 | 固定資産税 | |
① | 1戸につき200㎡までの住居用地部分(小規模住宅用地) | 評価額×1/6×1.4% |
② | 小規模住宅用地以外の住宅用地(一般住宅用地) | 評価額×1/3×1.4% |
③ | 上物のない更地、空き地 | 評価額×1.4% |
家さえあれば①か②に収まると考えるのが普通ですが、例え上物があっても③番だと判断されてしまうケースがあります。
それは、2015年に空き家対策特別措置法が施行されたからです。
空き家対策特別措置法では土地に6倍掛かってしまう
空き家の増加に伴い作られた法律になり、空き家の所有者である限り知っておくべき知識です。
この法律により、空き家の状態によっては、その土地が更地や空き地と同じだと判断されて土地に掛かる固定資産税が6倍になってしまうからです。
空き家対策特別措置法は、具体的には空き家の調査やその所有者に対する管理指導、空き家跡地の活用促進などについて定められている法律になります。
また、放置され管理されていない空き家を特定空家(後述します)に指定することができ、それに対して助言や指導、命令、さらに罰金や行政代執行を行うことが可能となります。
そして、特定空家に指定された場合は住宅用の土地と判断されず、土地の税金が6倍となってしまうのです。
空き家対策特別措置法の目的
「個人の持ち主に対する法律を作って固定資産税を多く徴収したいだけじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本来の空き家対策特別措置法は、最近増加傾向にある空き家に関する事故や事件を未然に防ぐための法律になります。
ボロボロになった空き家の外壁が公道側に倒れて歩行者が怪我を負ったり、老朽化した屋根瓦が飛ばされたりと、古くなった建物は周囲の人に悪影響を及ぼします。
実際に人が住んでいる住宅であれば、その住人が自身の安全のためにも定期的にメンテナンスや修繕を行うのではないかと思います。
しかし、長期間放置されている空き家はその対象とならないことが多いです。
つまり、固定資産税がどうこうというものではなく、持ち主として老朽化した建物に対する責任を取ってください、という意味を持つ法律になるのです。
特定空家に特定される流れと対策について
それでは、どのような流れで空き家が特定空家にされてしまうのでしょうか?
大まかな流れは、
- 助言・指導
- 勧告
- 命令
- 代執行
となります。
助言と指導に従えば特定空家にはならない
まずは、行政からその空き家の所有者に何らかの改善を求めて助言、または指導をされることになります。
外壁の修繕や立木の伐採、もしくはその建物自体の解体など様々ですが、持ち主は空き家対策特別措置法に基づき指導された行動をとる必要があります。
助言や指導の時点で改善されれば、特定空家になることはありません。
勧告で特定空家に指定される
助言や指導に従わずに何の対処もしなかった場合、今度は勧告されることになります。
勧告を無視した場合は、行政は続いて命令、代執行とという段階を踏むことになります。
次の段階があるからまだ大丈夫だ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの時点で特定空家に指定されるのです。
つまり、助言や指導を無視して勧告されてしまったら、固定資産税の特例からは外されてそれまでの6倍の税金を支払うことになります。
猶予期限を付けられた改善命令
勧告をされ固定資産税の特例対象外となってしまったからと言って、そのままその空き家を放置できるわけではありません。
勧告を無視したら、今度は猶予期限を付けられた改善命令が出されることになります。
意見聴取などが与えられるため、改善できないという正当な理由があるのであれば、ここで伝えておく必要があります。
しかし、これといった理由もなく猶予期限までに改善を完了させることができなかった場合、行政代執行が実行されてしまいます。
代執行は行政が持ち主に変わって行うこと
代執行とは、簡単に言うと行政に言われ続けてきた処置を行政が持ち主に変わって行うことです。
例えば、倒壊の危険がある家屋の場合は強制的に撤去されてしまいます。
そして、当然費用は所有者が負担することになります。
つまり空き家を放置した場合は、固定資産税の特例も受けられず最終的に自分の資産で解体しなければならなくなるのです。
特定空家にならないために
基本的には、空き家を放置せずに建物や庭の手入れをきっちり行っていれば、そもそも行政からの指導が入るということはありません。
しかし、念のため特定空家とみなされる状態を確認しておきましょう。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
空き家であればすべてが特定空家になるわけではなく、このように周りへ様々な影響を及ぼす空き家が特定空家と定義されるのです。
また、行政からいきなり住宅用地の特例から外すという勧告が来るわけではなく、助言や指導といったステップがあります。
最初の段階で助言や指導にしたがっておけば、原則特定空家になってしまうことはないのでおびえる必要はありませんが、その指導には素直に従うべきです。
空き家の固定資産税を増やさないために
特定空家になってしまうと、土地に対する固定資産税は通常の空き家の6倍を支払うことになります。
せっかくの資産で損をしないように、空き家への対策を取るべきです。
それでは、具体的にどのようなことをしておけばよいのでしょうか?
定期的なメンテナンス
誰も住んでいない住宅は、どうしても放置されがちです。
しかし、長年放置された建物は老朽化して周囲の人々に危険をもたらすため特定空家と認定されてしまいます。
人が住んでいないだけでさらに劣化が激しくなる家屋ですので、ずっと空けておくと思ったよりも早くダメになってしまう可能性が高いです。
それを避けるためには、やはり定期的にその住宅に立ち寄って各所の点検や清掃をするのが一番です。
通気性を良くして悪くなっている部分がないかチェックするだけでも、空き家の劣化を遅らせることが可能です。
また、壊れている部分や悪くなりそうな部分は早めにメンテナンスすることによって、後々の高額な修繕費を最小限に抑えることもできます。
場所が遠い等の理由でどうしても自分で面倒を見ることができない場合は、専門の業者に定期的に掃除してもらうのもよいでしょう。
空き家の活用
もう1つの方法は、空き家を活用することです。
自分で住むのもよいですが、賃貸として人に住んでもらったりその空き家を使ってビジネスを始めたりといったものが考えられます。
空き家の劣化が早くなるのは、通気性が悪く湿気がたまり構造部分が腐ったり悪くなってしまうからというのが大きな要因です。
人間が生活をしている限り、ドアや窓の開け閉めで最低限の通気は確保できますし、傷んでいる部分も早めに発見することができます。
自分で住まなくとも、貸主がそれをいち早く発見して知らせてくれれば、後々面倒なことにはなりません。
空き家を手放して固定資産税をなくそう
立地が悪かったりあまりにも田舎の物件の場合は、なかなか借り手がつかずどうしても空き家になってしまう、というケースもあるかと思います。
「全く使っていないのに固定資産税だけを支払っていると」いう方も多いはずです。
今後も使うことがないのであれば、思い切って空き家を手放してしまうのもよいのではないでしょうか。
空き家を売却する
手放すと聞いて真っ先に思い浮かぶのが、空き家の売却です。
利便性の低い場所や田舎の空き家となると、高値で売ることができなかったりすることもあります。
しかし、空き家であって、建物や土地を所有しているだけで固定資産税がかかります。
そのため、将来的に使うことがないということがわかっているのであれば、価格を下げてでも売ってしまった方が得ということになります。
土地の価値は変わらないとしても、建物は老朽化などで価値がどんどんと下がっていきます。
どうせ売るのであれば、できるだけ早い段階で売却してしまった方が良いでしょう。
空き家の寄付について
売り手がつかない場合は、空き家を寄付してしまうという方法も考えてみてください。
寄付と言っても
- 個人への寄付
- 法人への寄付
- 自治体への寄付
など様々な方法が存在します。
最も簡単なのは隣人などの個人への寄付ですが、贈与税や登記費用がかかるため、その負担を了承してもらえるかどうかの確認が必要です。
法人への寄付は、寺院や学校、NPO法人などの公益法人であれば、譲渡所得税が発生しないためスムーズに寄付できるのではないかと思います。
自治体は、基本的に使用目的が明確でない場合寄付を受け入れません。
何らかの使用目的がある場合は、利用価値が高い土地ということになり、そもそもそのような土地であれば売却できる可能性も出てきます。
固定資産税を避けるためとはいえ、何が良いかはケースバイケースになるため、まずはその土地や物件の価値を確かめてから判断するとよいでしょう。
まとめ
これで空き家に関する固定資産税の知識を付けることができたのではないかと思います。
特定空家に指定されると固定資産税の特例が受けられず高額の税金を納めることになります。
しかし、高いにせよ安いにせよ、全く使われていない空き家に対しても確実に固定資産税がかかってきます。
所有しているだけで無駄に税金を支払うのであれば、何らかの方法で活用したほうが良いのではないかと思います。
こうしているうちにも建物はどんどんと古くなっていきますので、空き家に対する決断は早めに行ってくださいね。