ニュースなどで不法投棄が取り沙汰されることもありますが、不法投棄は立派な犯罪です。

しかし、不法投棄は毎年のように繰り返し行われており、多少は減少しているとは言え、まだまだ多くの業者が廃棄物などを様々な場所に放置しています。

解体工事を行うことによって、それまで家を支えていた様々な建材が産業廃棄物として排出されることになります。

その産業廃棄物はきちんとした手続きを取ったうえで処分されるべきなのですが、悪徳業者の中には犯罪を犯すところがあるのも事実なのです。

今回は、解体作業で出た産業廃棄物の不法投棄の現状や、不法投棄しそうな業者の見分け方などについて紹介していきます。

不法投棄の現状

環境を守るためにも、不法投棄という違法行為はなくしていく必要があります。

しかし、実際に現在の不法投棄の状況はどのようになっているのでしょうか。

まだまだ多い不法投棄

廃棄物処理法の改正などによって、不法投棄を未然に防止するための対策を強化する動きが強まり、実際に産業廃棄物の不法投棄の件数は年々減ってきているのが現状です。

しかし、本来は全く不法投棄のない社会を作るのが理想であり、それを考えるとまだまだ現状は不法投棄が多発している状態だといえるでしょう。

具体的には、平成27年度の不法投棄の件数は、1年で143件になり、総量は16万トン以上に上ります。

例えば、平成10年度の1197件、42トンと比べるとかなり減少したと言えますが、撲滅には至っていない状況です。

今後も法改正などによって取り締まりが厳しくなれば、徐々に不法投棄が減っていくことが考えられます。

参照 ⇒ 環境省 産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成27年度)について

不法投棄への対策

不法投棄を撲滅するために、各都道府県や市町村が定期的なパトロールなどを行ったり、発見した廃棄物の持ち主の特定などを行っています。

特に、不法投棄の前例がある場所などを重点的に見回ることによって、徐々に廃棄物の違法放置が減ってきているのです。

なお、不法投棄と聞いて大きな産業廃棄物をイメージされる方が多いと思いますが、空き缶などのポイ捨ても不法投棄に含まれ同罪になるため、個人単位で不法投棄についての認識を深めていく必要があります。

同様に、万が一不法投棄の現場を見かけた場合は、ナンバープレートを確認して日時や場所をひかえておきましょう。

しかし、その場で注意するとトラブルに巻き込まれる可能性も高いため、不用意に近づいたりするのはやめておいたほうが良いです。

不法投棄の理由と業者の見分け方

少しずつ減少してきているとはいえ、まだまだ一部の解体業者による不法投棄は後を絶ちません。

それでは、なぜ業者は不法投棄を行うのでしょうか。

不法投棄でコスト削減

施主が解体業者に支払う解体工事費用のうちの半分近くは、解体作業で排出される産業廃棄物の処分費用として当てられます。

解体工事が高いと感じる方も多いかもしれませんが、実は業者がたくさんの利益を得ているわけではなく、業者が廃棄物の処分場に支払う料金も含まれているのです。

例えば、100万円の解体作業のうちの50万円が廃棄物処分の費用となる場合、不法投棄をすることによって50万円が丸々業者の取り分ということになります。

つまり、不法投棄をすることによって悪徳業者は多額の利益を得ることになるのです。

優良業者へのダメージ

不法投棄をする場合は産業廃棄物の処分にコストがかからないため、他の優良業者よりも安く解体工事を受注することができます。

消費者としては少しでも解体費用が安い方が良いと考える方が多いですので、解体費用が安い不法投棄をする悪徳業者を利用してしまう方もいらっしゃるのです。

もちろん不法投棄自体も許されない違法行為ですが、安い料金を提示する一部の悪徳業者のせいで、優良業者に仕事が入らず経営が苦しくなって倒産してしまうようなケースも存在します。

また、そういった悪徳業者がいるために、優良業者までが信用されなくなり、解体業界全体がいかがわしいと感じる方がいるのも事実です。

実際に、優良業者のほとんどは不法行為を繰り返す悪徳業者に迷惑しているのです。

不法投棄の業者を避けるために

悪徳業者にも様々なものがありますが、不法投棄を行う業者は他の業者と比べて解体工事費用を安く見積もる傾向にあります。

安い方が消費者にとってはありがたいのですが、他社と比べてあまりにも料金が安すぎる場合は、不法投棄を疑いましょう。

もちろん業者によっては、最初に安い見積もりを出しておいて、後から追加で高額な請求をしてくるようなところも存在します。

何にしても、相場と比べてあまりにも安い料金には裏があると判断し、そのような料金を提示してくる業者はなるべく避けるべきでしょう。

相場を知るためには、やはり複数の業者に見積もりを取ることをおすすめいたします。

たくさんの業者に解体工事の見積もりを取ることによって、ご自身の建物の解体費用の相場を知ることができるからです。

実際に業者に現場を見てもらう必要があるため、たくさんの業者から見積もりを取るのは意外と手間です。

しかし良い業者を利用するためにも必要な工程ですので、時間があるのであれば、できるだけたくさんの業者に問い合わせをしておきましょう。

利用した業者が不法投棄を行った場合

施主として最も気になる点の1つが、解体工事をお願いした業者が不法投棄を行っていた場合でしょう。

例えば相場よりもかなり安い値段で解体作業を行ってもらえたのにもかかわらず、後から追加請求がないような場合は、その業者が不法投棄を行っている可能性が高くなります。

仮に施主が、不法投棄をする業者だとわかっていて解体作業を依頼していた場合は、施主も解体業者同様、罰則の対象となることがあります。

しかし、業者が不法投棄をしているということを全く知らなかった場合は、基本的には施主にその害が及ぶことはないはずです。

ただし、発見された廃棄物の持ち主を特定する際に、施主の名前が挙がることがあるため、全く無関係というわけにはいきません。

解体作業を依頼した数年後に、不法投棄の疑いで連絡が入る可能性もあるため、やはり安すぎる料金を提示する業者と関わらないに越したことはないのです。

産業廃棄物処理に関する法律

それでは、最後に産業廃棄物の処分に関する法律について見ていきましょう。

産業廃棄物とは?

そもそも、どのようなものが産業廃棄物に含まれるのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。

法律上は 「ごみ、粗大ごみ、 、 燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染されたものを除く 」と定義。

現行の廃棄物の定義を巡る問題についてより引用

要するに、そのアイテムの持ち主が自分で利用できない物、さらに言えば他人に売却するなどすることもできず不要になったもののことになります。

廃棄物には大きく、一般廃棄物と産業廃棄物の2つがあり、解体工事などを含む事業活動から発生する廃棄物のうちの木くずや紙くず、繊維くず、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくずなどの20種類の廃棄物は産業廃棄物として分類されます。

一般の家庭で排出されるゴミなどは一般廃棄物に分類されますが、解体工事のゴミは産業廃棄物となり、一般廃棄物とは処分方法が異なります。

廃棄物処理の基本事項とは?

それでは、続いて廃棄物の処理に関する取り決めを見ていきます。

排出事業者の責務と役割
(1)建設工事における排出事業者には、元請業者が該当する。

(2)排出事業者は、建設廃棄物の発生抑制、再生利用等による減量化に努めなければならない。

(3)排出事業者は、自らの責任において建設廃棄物を廃棄物処理法に従い、適正に処理しなければならない。

(4)排出事業者は、建設廃棄物の処理を他人に委託する場合、収集運搬業者、中間処理業者又は最終処分業者とそれぞれ事前に委託契約を書面にて行う等の委託基
準及びマニフェストの交付義務を遵守し、また、適正な処理費用の支払いを行う等排出事業者として適正処理を確保するように努めなければならない。

建設工事から生ずる廃棄物の適正処理についてより引用

解体工事から廃棄物の処理まで1つの業者がすべて行うのであれば問題ありませんが、工事の中には元請業者だけでなく、その下請け業者など、様々な業者が混ざり合うケースもあります。

中には複数の業者がいることによって、どの業者が産業廃棄物の処理を行うのかという点が曖昧になってしまうこともあり得ます。

そのため、産業廃棄物処分の責任の所在は、施主が直接やり取りをする元請業者が負うことになります。

不法投棄をした際の罰則について

それでは、実際に不法投棄としての罪が課せられた場合、どのような罰則が発生するのでしょうか。

代表的な罰則

不法投棄を実際にした者 廃棄物処理法 第25条 5年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金
不法投棄をした法人 廃棄物処理法 第32条 法人に対して3億円以下の罰金
不法投棄を目的として廃棄物を回収運搬した者 廃棄物処理法 第26条 3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金

代表的なところで言うと、このような罰則が存在します。

罰則の金額などを見ても、非常に重い罪であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

このような罰則があるにもかかわらず、産業廃棄物の処理費用を大きくカットできるということで、不法投棄を続ける業者はまだまだ存在するのです。

施主は罰せられない

先ほども軽く述べましたが、例え悪徳業者が不法投棄をしたとしても、基本的には施主が罰せられるということはありません

施主が罰せられるという話を聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが、解体業者の不法投棄を手伝ったり、不法投棄をするように指示しない限りは問題ないのです。

ただし、持ち家の産業廃棄物が不法に捨てられる以上は、全く無関係とはいかないケースもあるため、不法投棄をするような業者を選ばないように気を付ける必要があります。

最後に

解体工事では必ず産業廃棄物が発生しますが、ご自分の家を解体した後の廃棄物がどこに行ったのか知らないという方はたくさんいらっしゃいます。

施主としては解体工事がうまくいけばそれで問題ないですので、解体業者もあえて廃棄物の処理方法を伝えたりしないかもしれません。

しかし、自分の家の建材が不法投棄されているのは気分の良いものではありません。

きちんとした業者を選ぶためにも、契約前に廃棄物の処分方法などを具体的に聞くなどして、悪徳業者を避けるようにしましょう。