寒い時期になると暖房器具を利用しなければ生活できない、という方も多いのではないでしょうか。
暖房器具にも様々なものがありますが、利用する家族の人数が増えたり、長時間利用することによって光熱費が高くなってしまいます。
暖房器具の中でも、自宅に暖炉や薪ストーブを導入したいと考えていらっしゃる方は少なくありません。
エアコンやこたつ、石油ファンヒーターなどの便利な暖房器具を愛用している方も多いですが、昔から暖炉に憧れていたからリフォームしたいと考える方もいるのです。
しかし、そもそも自宅に暖炉や薪ストーブを設置することは可能なのでしょうか。
今回は、リフォームで暖炉や薪ストーブを利用するメリットや設置するにあたっての注意点などについて紹介させていただきます。
暖炉と薪ストーブの違い
暖炉と聞いて、薪ストーブを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
実はこの両者は違ったものになるため、まずはそれぞれの特徴を見ていきましょう。
暖炉の特徴とメリット
暖炉とは、一般的には建物と一体になっている暖房器具のことを指します。
暖炉を設置するにあたって、煙突を取り付けたりする必要がありますので、リフォームをするとなった場合には非常に大掛かりなものになります。
暖炉のメリットとしては、
- オシャレな部屋になる
- 調理に利用できる
というものが挙げられます。
オシャレな部屋になる
暖炉に煙突と聞いて、サンタクロースなどを思い浮かべた方もいるのではないでしょうか。
リビングに大きな暖炉を設置することによって、部屋全体が洋風のオシャレな雰囲気になりますし、暖炉を利用しない時期も部屋のインテリアとして利用することが可能です。
例えば家を1から建てる際には、初めから暖炉を設置することによって、オシャレな暖房器具を安く手に入れることができるかもしれません。
しかし、リフォームで後から取り付ける場合は大掛かりな工事が必要なため、リフォーム代金が高くなる傾向にあります。
調理に利用できる
暖炉の形状によって変わってきますが、基本的には暖炉を利用して料理を作ることも可能です。
現在はIHクッキングヒーターを利用しているご家庭が多いですが、暖炉の炭火で調理をすることによって全く違った料理を楽しむことができるはずです。
例えばパンやピザを作る際に、グリルの代わりに暖炉を使ったりすることもできますので、オシャレなだけではなく実用的なアイテムだと言えます。
実際に暖炉を設置しているご家庭の中には、暖炉を利用した料理をするために、冬が待ち遠しいというところも少なくありません。
暖炉のデメリット
暖炉を設置するだけで部屋の雰囲気がガラリと変わるのは大きなメリットと言えますが、その分デメリットも多いため気を付ける必要があります。
暖炉を設置するデメリットとしては、
- 部屋がすぐに温まらない
- メンテナンスが大変
- 火が危ない
- コストが高い
などが挙げられます。
部屋がすぐに温まらない
暖炉に火をともせばすぐに部屋が暖かくなるという印象をお持ちの方もいますが、実はある程度時間がたたないと温まりません。
実際に、火を付けると煙が上の煙突の方に上がっていきますが、その煙と一緒に温かい空気も上昇していってしまうため、部屋全体が温かくなるというのは難しいのです。
かといって、換気をしなければ部屋中が煙たくなってしまうため、煙を逃がす構造のことを考えるとある程度は仕方がないと諦めるしかありません。
メンテナンスが大変
薪ストーブと比べると、暖炉は掃除をするのが大変です。
煙突は暖炉にも薪ストーブにも存在しますが、建物と一体型になっている暖炉は煙突の規模が全く違うため、当然掃除をする範囲も広くなります。
煙突は下から掃除を行うと、炭のカスやホコリなどが落ちてくるため、基本的には上から掃除をしなければなりません。
しかし、上から掃除をするとなると高い場所での作業になるため、専門の業者にメンテナンス費を支払ってきれいにしてもらう必要があります。
火が危ない
暖炉を設置する場合は、同時に暖炉の周りにも耐火性の高い素材を利用したリフォームを施すことが多いですし、できるだけ安全に利用できるような造りで工事を行います。
しかし、とはいっても暖炉は室内で常に火が露出している状態ですし、手を伸ばせば触ることができてしまうため、使用するにあたっては常に危険が付きまといます。
特に小さなお子様がいるご家庭では、暖炉をつけてそのまま放置するのは気が引けますし、安全のために柵を取り付けると見た目が悪くなるという別のデメリットが発生します。
コストが高い
暖炉は薪ストーブと比べると、設置費用も光熱費も割高になります。
薪ストーブに比べると存在感があり大きなインテリアになるのですが、規模が大きい分、設置にも時間やコストがかかりますし、それに伴う耐火性を高めるリフォームも必要です。
また、使用するにしても熱効率が悪いため、薪ストーブと比べるとよりたくさんの薪を利用しなければなりません。
例えば山を持っていて薪はいつでも手に入るという環境であれば、維持コストを気にする必要はないかもしれません。
しかし、薪をいちいち購入するのであれば光熱費も高くなるということを覚えておきましょう。
薪ストーブの特徴とメリット
暖炉が昔から存在する暖房機具だとすると、薪ストーブはその暖炉の機能をより効率的に引き出した新しい暖炉と呼べる暖房器具です。
暖炉が建物にくっついているのに対して、薪ストーブは建物とは別で設置できるため、一般的にリフォームで導入するのであれば薪ストーブの方がメリットが大きいでしょう。
薪ストーブの代表的なメリットとして
- 部屋が温まりやすい
- 危険が少ない
- コストが安い
が挙げられます。
部屋が温まりやすい
もちろん薪ストーブにも、暖炉と同じように煙突が取り付けられますが、暖炉とは異なりストーブの前後左右から熱が伝わるため、熱効率がかなり高いです。
実際に熱を逃さないような構造になっていますし、点火をしたら早い段階で部屋全体が温かくなるため、広い部屋に設置をしても問題なく利用することができるでしょう。
危険が少ない
やはり火を利用することには変わりないため、薪ストーブを使うから絶対に火事などの危険がないということにはなりません。
しかし、火が露出している暖炉と比べると、薪ストーブは火がきちんと覆われているため、その分危険度が下がると言えます。
ただし、もちろん利用している最中の薪ストーブは熱くなりますので、暖炉同様に小さなお子様がいるご家庭では使用するにあたって十分に注意する必要があります。
コストが安い
暖炉と比べると、後付けが簡単にできる薪ストーブは導入コストがかなり安くなります。
もちろん安いといっても、商品によって価格が大きく異なりますし、煙突の設置などの様々な工事が必要になってきます。
しかし、熱効率も高いため、設置費用だけではなく毎年のランニングコストも暖炉より優れていると言えます。
ただし、市販されている薪を購入することを考えると、石油ファンヒーターなどの光熱費より薪代の方が高くなることが多いです。
一方で、薪を無料で、もしくは安く手に入れられる環境なのであれば、電気を利用した暖房器具よりも安くなるためおすすめです。
薪ストーブのデメリット
薪ストーブのデメリットとしては、
- 設置場所が必要
- 炭火を利用した調理ができない
などが挙げられます。
設置場所が必要
暖炉はそもそもが壁に埋め込まれるように設置されるため、暖炉を造ることによって部屋が極端に狭くなるというようなことがないはずです。
しかし、薪ストーブはファンヒーターやこたつを設置するような感覚で、部屋のどこかにそれ用のスペースを設けなければなりません。
また、気軽に動かすことのできる暖房器具とは異なり、煙突が必要なため夏場も出しっぱなしになりますし、簡単に移動させることができません。
薪ストーブを設置する際には、初めにどこに取り付けるかをよく考えるようにしましょう。
設置場所の考え方については、後から詳しく紹介させていただきます。
炭火を利用した調理ができない
薪ストーブにも様々なタイプがありますが、確実に調理をすることのできる暖炉と比べると料理に利用することができないものが多いです。
例えば、ストーブの上で焼いたり炒めたりといった簡単な調理ができるようなタイプも存在するので、料理がしたい場合はそのようなタイプを選ぶ必要があります。
しかし、薪ストーブは暖炉とは異なり火が密閉されているため、炭火を直接利用して調理をするというのは難しいです。
薪ストーブを設置する場所
それでは、リフォームで薪ストーブを設置する場所はどこが適しているのでしょうか。
薪ストーブの設置場所は、
- 部屋の中央
- 壁際
- コーナー
のいずれかになります。
それぞれの特徴を比較してみましょう。
部屋の中央
暖炉とは異なり、薪ストーブは設置した場所の360度の全方向に熱を放出する暖房器具です。
例えば石油ファンヒーターなどの表側は温かくなりますが、裏側には熱気が伝わらないため、どうしても部屋全体が温かくなるのに時間がかかります。
そんな薪ストーブのメリットを生かして、リビングなどの広い空間のど真ん中に薪ストーブを設置するというご家庭も少なくありません。
しかし、薪ストーブには煙突が必要になるため、天井の状態も考えて設置をしなければなりません。
壁際
やはり最もオーソドックスなのは、壁の付近に設置するというタイプです。
360度を温めることのできる薪ストーブのメリットを最大限に活かすことはできませんが、裏面以外の3方向は温めることができるため、一般的な暖房器具よりは熱効率が高いはずです。
ただし、薪ストーブの裏側に位置する壁全体に遮熱対策が必要になるケースも多いため、単純に薪ストーブを設置するだけではなく、別のリフォーム工事でお金がかかることも多いです。
コーナー
薪ストーブを設置するにあたって、部屋を最も広く利用できるのは、その部屋の四つ角のどこかのコーナーに取り付けるといったものです。
部屋の中央や壁際に設置するよりも部屋が広く見えますし、邪魔になることが少ないため、できるだけ部屋を広く使いたいというご家庭にはおすすめの設置方法です。
ただし、やはり設置する背面と左右の壁に遮熱リフォームが必要になったりすることもあるため、導入コストは壁際に設置するよりも高くなることが多いです。
薪ストーブを使用する際の3つの注意点
オシャレで優れた暖房器具として人気が高まってきている薪ストーブですが、使用するにあたって気を付けなければならないことも多いです。
今回はその中でも、
- 薪ストーブの消し方
- 薪ストーブの煙の扱い
- 薪ストーブで近所トラブルを防ぐために
について見ていきましょう。
薪ストーブの消し方
例えば、石油ファンヒーターやエアコンなどは、スイッチ1つでオンオフの切り替えができますが、薪ストーブはどうなのでしょうか。
結論から言うと、電気を利用した暖房器具のように、すぐに消すということはできません。
例えば、熱を出すための燃料となる薪がなくなる、もしくは火を灯し続けるために必要な酸素がなくなると薪ストーブの火が消えます。
そのため、
- 新たな薪を投入せずに現在の薪が全て燃え尽きるのを待つ
- 空気を絞って強制的に酸欠状態にして鎮火する
のどちらかの方法で火を消すことが可能です。
ただし、2の方法はストーブ内が不完全燃焼となるため、煙が発生してススが薪ストーブの内部や煙突内に付着します。
何度も不完全燃焼が続くと、煙道火災が発生するリスクがあるため、できれば1の方法で自然に火が消えるのを待ちましょう。
その他にも、水をかけて強制的に火を消すという方法が考えられますが、薪ストーブは鋳物であることが多く、鋳物は温度が急激に変化すると割れる可能性があります。
非常に危険ですので、やはり1の方法で自然に火を消すことをおすすめいたします。
薪ストーブの煙の扱い
薪ストーブを利用するにあたって気を付けたいのが、発生する煙の扱いです。
正常に機能している薪ストーブであれば、煙突を介して煙が屋外に排出されるため、気にする必要はないでしょう。
しかし場合によっては煙が逆流して室内が煙たくなってしまうこともあります。
煙の逆流が発生する理由としては、
- 煙突の内部が何かによってふさがれている
- 薪の投入量が少ない
- 湿った薪を使用している
といったものが考えられます。
1は異物が混入していたり、例えば鳥が煙突内に巣を作っているといった可能性が考えられます。
2の場合は薪の投入量を増やすことで症状が良くなるかもしれません。
3では、薪の内部の水分が気化することでストーブ内の温度の上昇が鈍くなるため、それによって煙がたまってしまいます。
もちろん他にも様々なことが原因となって煙がうまく出ていかないことがあるため、危険を感じたら専門家に見てもらうことをおすすめいたします。
薪ストーブで近所トラブルを防ぐために
薪ストーブを利用すると煙が発生し、通常は煙突を通してその煙を室外に排出することになります。
そのため室内には煙がたまることがなく快適に利用することができるのですが、外部に排出された煙が原因となってご近所トラブルに発展するケースも存在します。
例えば、薪を燃やし始めたばかりの段階では、多少の煙が発生しますが、温度がきちんと上がればそんなに煙が出ないため、特に近所トラブルになるということはないはずです。
そのため、第一にきちんと乾燥させた薪を利用するということが重要になってきます。
また、煙突を高めに設置することによって、発生する煙が近隣の住民の迷惑になることがなくなります。
もちろん真横にマンションなどが建っている場合はどうしようもありませんが、住宅街であれば煙突を高めに設置することである程度の被害を防ぐことができるでしょう。
薪ストーブの設置に掛かる費用と光熱費
それでは最後に、薪ストーブのコストについて見ていきましょう。
薪ストーブの費用を考える際には、大きく
- 設置の初期費用
- 光熱費(薪代)
の2つに分けることができます。
設置の初期費用
薪ストーブを導入する際には、薪ストーブ本体の価格を確認するという方がほとんどです。
ただし、商品の費用が最も高くなりますが、薪ストーブを自宅に設置するには、
- 商品の本体価格
- 煙突の代金
- 炉台や炉壁(薪ストーブの土台)の工事費用
- 煙突設置のための工事費用
などが必要になってきます。
例えば薪ストーブの本体は、安ければ20万円~30万円程度で購入可能ですが、高価なものになると100万円以上かかります。
煙突にも様々な種類がありますが、本体価格と設置費用を合わせると、30万円~60万円ほどかかることが多いです。
その他の諸々の工事を合わせると、最も安い薪ストーブを導入する際にも80万円程度は見ておいたほうが良いでしょう。
光熱費(薪代)
設置代金はリフォームの段階で支払う必要がありますが、実際に薪ストーブを利用するにもお金がかかってきます。
エアコンや石油ファンヒーターの場合は電気代や灯油代が必要になってきますが、薪ストーブでは薪を使うことになります。
原料となる木の種類などによって価格が異なりますし、同様に薪が手に入りやすい地域とそうでない地域とでも価格が違います。
しかし、一般的には1束10キロあたりで500円程度になることが多いようです。
例えば、薪ストーブを1日利用し続けた場合は、薪が2束から3束ほど必要になるため、簡単に計算してみると1日あたり1000円~1500円かかるということになります。
1ヶ月使い続けると薪代は3万円~4万円程度必要になってくるという計算になるため、一般の暖房器具と比較するとかなり割高です。
しかし、薪が無料で手に入る環境にあるのであれば、実質光熱費はほぼかからないことになるため、場所によってはお得に暖かく冬を過ごすことができるはずです。
まとめ:どちらもランニングコストは掛かる
暖炉や薪ストーブに憧れているという方も多いですが、そもそも暖炉を設置するにはリフォームに膨大な費用がかかるため、後から導入するのであれば薪ストーブをおすすめいたします。
しかし、設置費用だけではなく、日々の薪代も必要になってくるため、いずれにしてもランニングコストがかかります。
薪ストーブ自体にも様々なものがありますし、中には熱効率の高い商品などもあるため、初期費用だけではなく日々の維持コストも考えて選ぶようにしましょう。
また、エアコンとは異なり実際の火を利用する暖房器具になるため、やはり火災になる可能性は否定できません。
暖炉や薪ストーブを利用する場合は、十分に気を付けてきちんと管理するようにしましょう。