昔ながらのタイル風呂は、現在主流のユニットバスと比べると断熱性に乏しく寒く感じる方が多いはずです。
やはり最もおすすめなのは、断熱効果の高いユニットバスへのリフォームですが、できればタイル風呂をそのまま使い続けたいという方もいらっしゃるでしょう。
また、タイル風呂に限らず、在来工法でオリジナルのバスルームを造りたいというご家庭も、同様に寒さ対策をする必要があります。
断熱加工を施すことで、冬場の寒さはもちろんですし、夏場であってもお風呂の熱気を閉じ込める効果を持つため、それだけで光熱費を安くすることが可能です。
それでは、お風呂場の断熱リフォームにはどのようなものがあるのでしょうか。
今回はタイル風呂をはじめとする在来工法を断熱にするためのリフォームについて紹介させていただきます。
お風呂の様々な断熱リフォーム
まずは、お風呂の断熱リフォームの種類について見ていきましょう。
断熱リフォームの基本
お風呂場が在来工法の場合はもちろんのこと、ユニットバスであったとしても、室内の寒さが気になるのであれば断熱材がきちんと利用されていない可能性があります。
断熱材を利用することによって熱を逃がさない構造を造り上げるのですが、床や壁に対して断熱材が使われていない場合はどうしても寒さを感じてしまいます。
在来工法はともかく、ユニットバスであっても寒さがある場合は、断熱材を施すためのリフォームをおすすめいたします。
ただし、ユニットバスを断熱仕様にする場合は、単純に壁や床を取り外して断熱材を敷き詰めるというようなことができず、基本的には全面取り換えになることが多いです。
例えばユニットバスに変えてから、かなりの年月が経過している場合は、断熱加工を施すためにバスルームのフルリフォームを検討してみるとよいでしょう。
一方で、タイル風呂をはじめとする在来工法であれば部分的にリフォームをすることも可能です。
お風呂場の断熱は、大きく
- 天井の断熱リフォーム
- 床下の断熱リフォーム
の2つに分けることができます。
天井の断熱リフォーム
お風呂場を温かく保つためには、天井に断熱材を敷き詰めて熱を上から逃さないようにしなければなりません。
もちろん直接肌が触れる床や側面である壁にも断熱加工が必要ですが、天井が断熱仕様になっていなければ熱が逃げてしまいます。
しかし、例えば2階建ての自宅で1階部分にバスルームがある場合は、通常は天井に2階の床があるため、断熱加工をしないことが多いです。
天井が家の外部に面していないため、それだけで熱が外に出ていかないような構造になっているからです。
ただし、バスルームの天井の上が外部に接しているような場合は、その建物の屋根の内側に断熱材を入れることによって、風呂場の気密性を高めて室内を温かく保つことができます。
床下の断熱リフォーム
お風呂場の断熱リフォームを行う上で、床下の断熱対策は非常に重要になってきます。
しかし、リフォーム業者によっては、またはユニットバスの仕様などによっては、床の下に断熱対策を取らないところもあるため注意が必要です。
バスルームの床下の断熱としては、基本的に基礎断熱と呼ばれる基礎の部分に断熱材を使用する方法が利用されます。
つまり、お風呂の部屋の中に断熱材を敷くのではなく、建物の基礎に当たる部分を断熱加工することで、床下から熱を逃がさないように設計するのです。
基本的にバスルームは建物の1階部分に設置されていることが多いですが、基礎断熱を行うことによって足元からの冷気をシャットアウトすることができるでしょう。
ユニットバスへのリフォーム
タイル風呂が寒い場合は、天井や床、壁などを取り壊して断熱材を設置し、それから新しい素材を利用して新しいバスルームを造ることになります。
もちろん断熱材を設置する以前と同じ素材を利用し、同じように仕上げることも可能ですが、「どうせ新しくするのであればより良いお風呂にしたい」という方が多いはずです。
そんなときには、タイル風呂をユニットバスに変更するリフォームを行ってしまうのも方法の1つです。
ユニットバスのメリット
タイル風呂などのお風呂を在来工法と呼ぶのに対して、予め形成されたお風呂の部品を自宅で組み立てて設置するタイプの浴室のことをユニットバスと呼びます。
ユニットバスには、
- 断熱性が高い
- 防水性が高い
- 掃除が簡単
- リフォーム費用が安い
- 子供から高齢者まで使いやすい
といった様々なメリットがあります。
もちろんユニットバスにするにはお風呂をフルリフォームする必要があるため、在来工法に断熱材を入れるのみのリフォームと比べると割高になることが多いです。
しかし、断熱加工をするついでに全ての機能を新しくすることもできるため、温かく使い勝手の良いバスルームを手に入れることができるはずです。
断熱構造のユニットバスを利用
ユニットバスにも様々な商品がありますし、グレードによって価格も違えば使い勝手も大きく異なります。
そんなユニットバスの中には、断熱性を第一に考えた商品もあり、壁に予め断熱パネルが設置されており、床も断熱構造になっているようなものも存在します。
同様に、バスタブの中には保温機能を持つ魔法瓶構造を利用しているものもあるため、浴槽に張ったお湯が冷めにくく、快適な温度を長期的に保つことができるものもあるのです。
さらに、基本的に肌が触れるとヒヤッとするタイルと比べると、ユニットバスは全体的に冷たさを感じない素材が使われています。
断熱効果の高いユニットバスを利用することで、日々のランニングコストを抑えることにもつながるため、リフォーム業者に価格などを出してもらって設置を検討してみましょう。
ユニットバスとタイル風呂の比較については「お風呂のリフォームで人気の在来工法とユニットバスの違いと費用相場」をご覧ください。
窓にも断熱リフォーム
お風呂場の断熱リフォームを考えるにあたって、忘れてはいけないのが窓の存在です。
一般的には、浴室の壁には断熱シートや断熱パネルなどが利用されますが、当然窓にはそういった素材を設置することができません。
その上、外部に直接つながっている部分でもあるため、窓の設置方法でバスルーム内の寒さが大きく変わってきます。
浴室を断熱仕様にするには、
- 窓ガラスを断熱仕様に変更
- 窓の枠組みの変更
- 内窓を設置
の3点を考えてみましょう。
窓ガラスを変えるだけで浴室が温かくなる
窓ガラスにも様々なものがありますが、一般的に断熱効果が高いとされているのは2枚のガラスを組み合わせ、その間に空気を挟んだ複層ガラスです。
ガラスとガラスの間に空気の層を造ることによって、断熱性が格段に高まるだけではなく、遮音性を高めることもできます。
複層ガラスにも様々なものがありますが、空気の代わりにアルゴンガスと呼ばれる特殊なガスが入っているものや、空気がなく真空状態になっているものも存在します。
真空のものはグレードが高く値も張りますが、より高い断熱効果を発揮するためおすすめです。
窓の種類などについては「窓のリフォームを行う前に知るべき人気の窓ガラスの種類と価格相場」もご覧ください。
枠組みの素材で断熱性が異なる
一般的な窓の枠組みとして利用されているのはアルミ素材のものになりますが、このアルミを樹脂製のものに変えることで断熱効果を高めることができます。
例えば、真冬に室内が温かい状態で、アルミでできている窓枠に触れるとひんやりしているのが当たり前です。
同様に、アルミ製の鍋を火にかけると、そのアルミ部分全体が熱くなります。
これは、アルミが高い熱伝導率を持っており、熱い時にはより熱く、冷たいときにはより冷たくする作用があるからです。
しかし、同じ鍋でも樹脂でできている取っ手部分は熱が伝わりにくいため、普通に手に取ることができるのではないでしょうか。
樹脂は熱伝導率が低いため、寒さの厳しい冬であっても外の冷たさを内部に伝えにくく、それによって浴室内が冷えにくいというメリットを持っています。
窓だけではなく、その窓の枠組みも一緒に取り換えることで、より高い断熱効果が期待できるでしょう。
内窓の断熱効果
窓関連の断熱リフォームでもう1つおすすめなのが、既存の窓の内側にもう1つ窓を設置するといったものです。
単純に外部との間にもう1つ仕切りを造ることができるため、浴室内の気密性が高まって断熱効果が高まります。
また、先ほど紹介した複層ガラスと同じように、ガラスとガラスの間に空気の層を造ることができるため、外の寒さを内側に伝えにくくなるのです。
複層ガラスを利用した内窓を付ければ、断熱効果もより高いものになるため、バスルームをより温かく保ちたいというご家庭にはおすすめです。
脱衣所も温かくしてヒートショックを防ぐ
浴室のリフォームをする際には、ヒートショックについても考えなければなりません。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、自宅内の暖かい場所から気温の寒い場所に移動した際に、温度の急激な低下によって発生する体調不良の総称です。
一般的には、動脈や血圧に変化が起こるため、めまいや立ちくらみ、失神などが発生することがありますし、ひどい場合は脳梗塞や心筋梗塞が起こるケースもあります。
自宅の中で寒暖差が最も激しいのは、やはりバスルームになり、その中でもバスタブやシャワーがある浴室から脱衣所に移動する際に発生することが多いです。
夏場はともかく、寒さの厳しい冬場は、お風呂でしっかりと温まった途端に寒い脱衣所に移動しなければならないため、浴室リフォームではこのヒートショックについても考えましょう。
ヒートショックになりやすい方
例えば、小さな子供であれば気候が変化したとしても基本的には元気で健康な状態でいられるはずです。
しかし、肥満気味の方や動脈硬化を患っている方、また高血圧の方などは、普通の方と比べるとヒートショックの影響を受ける可能性が高まります。
同様に、健康な方であったとしても飲酒後の入浴や熱いお湯が好きな方などはヒートショックになりやすいと考えられています。
しかし、最もヒートショックになりやすいのは高齢者になり、実際にヒートショックの影響を受ける4分の1が65歳以上の高齢者になります。
高齢社会になるため、いずれかが該当するというようなご家庭も多いのではないでしょうか。
もちろんヒートショックが必ずしも脳梗塞や心筋梗塞に直結するわけではありませんが、その可能性が高いため気を付けなければなりません。
脱衣所を温かくするためのリフォーム
ヒートショックを防ぐためには、浴室内及び脱衣所を温かくする必要があります。
同じ浴室内であっても、例えば一番風呂の場合は室内がまだ十分に温まっていないため、バスタブから出た途端にヒートショックの影響を受けることもあるのです。
そのため、考えられる対策としては、
- バスルームに浴室暖房乾燥機を設置する
- 脱衣所に簡易ヒーターを設置する
- バスタブで利用するお湯をぬるめに設定しておく
- 首までつかるのではなく半身浴をする
というものになります。
このうちの3と4は、リフォームをせずとも一般のご家庭で気を付けることができるでしょう。
しかし、1と2に関してはリフォームが必要なこともあります。
浴室暖房乾燥機の設置
バスルームをフルリフォームする際には、ヒートショックを防ぐために浴室暖房乾燥機を取り付けてもらうことをおすすめいたします。
入浴前に、予め浴室暖房乾燥機でバスルーム全体を温めておけば、一番風呂であったとしてもバスタブから出た瞬間に寒さを感じることはないでしょう。
浴室暖房乾燥機は、バスルームを温めるだけではなく、湿気を取り除く効果もあるため、カビの発生を防ぎ浴室の劣化を遅らせます。
また、湿気を取り除き温風を出すことができるため、雨の日などは浴室暖房乾燥機を利用しての洗濯物の部屋干しが可能です。
浴室暖房乾燥機については、
⇒お風呂のリフォームに取り入れたい!浴室の機能を高めるためのアイテム
こちらで詳しく紹介しているので、併せてごらんください。
簡易ヒーターの設置
例えば、脱衣所にリビングで使用するような石油ファンヒーターを設置するというのも方法の1つですが、一般的に狭い脱衣所に大きな暖房器具は邪魔です。
また、狭い空間で利用すると、空気が悪くなって別の体調不良が発生する可能性もありますし、脱衣所の温度が上がりすぎると、今度は脱衣所から外に出る際にヒートショックが発生してしまいます。
一般的に、脱衣所の気温は20度~25度程度に設定するのが良いとされているため、脱衣所用の簡易ヒーターを取り付けてもらうのが最も良い方法です。
例えば上述した浴室暖房乾燥機を利用すれば、入浴前に全体を温めることができますが、脱衣所は別で温めたいという場合はヒーターの設置を考えましょう。
まとめ
1日の疲れを取り除いてリラックスできるはずの浴室が、断熱対策をしていないことによって命の危険に関わる場所に早変わりすることもあります。
特に高齢者がいらっしゃるご家庭では、ヒートショック対策をしておかなければ毎日の入浴に気を使うことになってしまいます。
一方で、きちんと断熱対策をしている浴室であれば、誰もが快適に入浴することができますし、真冬でも寒い思いをすることがなくなるはずです。
最近のユニットバスには断熱対策が施されているものも多いですが、昔ながらのタイル風呂には断熱材が使われていないケースも少なくありません。
お風呂でより快適にくつろぐためにも、きちんと断熱加工してもらうか、ユニットバスへのリフォームをすることをおすすめいたします。