解体工事を行う場合は、施主も当事者意識を持って建設リサイクル法についての知識を持っておいたほうが良いでしょう。
もちろん解体業者が法律を守って解体作業を行ってくれるのであれば特に問題はありませんが、悪徳業者を利用してしまった場合は、この建設リサイクル法を無視して作業をする可能性もあります。
仮に施主が責任を負わなければならないという事態にはならなかったとしても、面倒なトラブルに巻き込まれる可能性が高いです。
もちろん初めから悪徳業者を選ばなければそういった思いをすることはないのですが、建設リサイクル法を知っておくことによって安心して解体工事を依頼することができるはずです。
今回は、建設リサイクル法についての解説や手続き方法などについて紹介していきます。
建設リサイクル法とは?
それでは、初めに建設リサイクル法がどのような法律なのかということを簡単に説明させていただきます。
建設リサイクル法について
建設リサイクル法は2000年5月31日に定められた法律で、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」の略称のことになります。
これは建設資材をリサイクルしましょうということに関する法律で、建設工事の受注者による建物の分別解体やリサイクル化を義務付けています。
要するに、解体業者が建物を解体する際には建材をきちんと分別して解体し、リサイクルできるものはリサイクルしなければならないということが定められています。
仮に分別せずに解体したりした場合は、その解体業者が罰せられることになりますが、工事の届け出の義務は工事の発注者である施主にあるため、業者が違反したら同時に施主にも罰則規定が適用されてしまいます。
建設リサイクル法の目的
高度経済成長により日本には様々なモノが大量に生産され、また大量に消費されていましたが、それと同時にそれらのモノが大量に捨てられていきました。
モノが増えるのは豊かな国の証拠だという意見もありましたが、一方で廃棄物の処理方法などが環境に大きな影響を与えるとして問題になっていました。
簡単に言えば、消費によって捨てるものが増えたため、最終処分場での処理が間に合わなくなったり不法投棄が増えたりしたことで、環境破壊が進んでいきました。
しかし捨てられるモノの中にはまだまだ利用できるものやリサイクル可能なものも多数含まれていたということもあり、環境保全や経済の健全な発展に寄与することを目的としてこの法律が誕生したのです。
建設リサイクル法の概要
一定規模以上の解体工事を含む工事においては、工事現場での分別解体が義務付けられており、再資源化が求められます。
以下の表のとおり、床面積が80平米以上の建物の解体工事を行う場合は、建設リサイクル法に基づいて届け出が必要になってきます。
建設工事の種類 | 規模の基準 |
建物の解体工事 | 床面積の合計80平米以上 |
建物の新築・増築工事 | 床面積の合計500平米以上 |
建物の修繕・リフォーム等 | 請負金額1億円以上 |
建築物以外の工作物に関する工事 | 請負金額500万円以上 |
工事に着手する7日前までに、工事の発注者である施主が分離解体などの事前届け出をすることになります。
また、その工事を担当する解体業者は、施主と契約を結ぶ前に工事説明を行い、工事が終わったらリサイクル化の結果を報告する義務があります。
手続きの方法
建設リサイクル法には、解体業者だけではなく施主も深くかかわっているということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
それでは、実際に建設リサイクル法の届け出はどのように行えばよいのでしょうか。
提出先
市町村によって届け出を提出する場所は変わってきますが、基本的には解体予定の建物が建てられている地域の管轄の窓口に提出します。
できれば直接持って行った方が確実ですが、遠方の解体工事で窓口まで行けないというような場合は、事情を話して郵送で対応してもらうのも方法の1つです。
しかし、その場合は書類に不備があったりした際にすぐに対応することができないため、余裕を持って提出する必要があります。
提出書類
建設リサイクル法に必要な書類を以下に紹介します。
- 建設リサイクル法の届出書
- 分別解体の計画書など
- 案内図(周辺地図に対象の解体工事現場を明示したもの)
- 設計図
- 配置図(前面道路の位置や大体の敷地の形状など)
- 写真(解体予定の建物の全体図が把握できる外観写真)
- 工程表
市町村によっては、必要ないと言われる書類もあるでしょうし、追加で別の書類を提出しなければならないケースもあります。
管轄によって若干提出書類が異なりますので、まずは建設予定の建物を管轄する窓口に確認するようにしましょう。
しかし、通常は解体業者の方でこれらの書類を集めて代理で届け出を提出してくれるのが一般的です。
その際には、上記の他に委任状が必要となります。
手続きの流れ
80平米以上の建物を解体する際には、建設リサイクル法により届け出が必要になりますが、具体的にどのような流れで解体工事を終わらせることができるのでしょうか。
ここでは、解体工事の契約から完了までの流れを8つのステップで紹介していきます。
1.解体業者から施主への説明
解体工事を業者にお願いする際には、施主と業者の間で契約を結ぶことになりますが、その前に業者は施主に対して工事の説明をする必要があります。
具体的には、建設物の構造や工事に着手する時期、分離解体等の計画、工程の概要などを、書面を交付して説明します。
2.解体業者との契約
解体業者を選定したら、施主はその業者と正式に契約書を交わしての契約を結ぶことになります。
その契約書には、建設業法に定めるものの他に、分離解体等の方法について、解体工事や工事後の廃棄物の再資源化等に必要な費用、さらに再資源化をするための施設の名称、所在地などが記載されていなければなりません。
3.施主による工事事前届け出
原則として、工事の発注者である施主が工事着手の7日前までに分離解体等の計画等について届け出をする必要があります。
解体業者にお願いする場合は、工事予定日の7日前前にきちんと届け出を出しているのか確認しておいたほうが良いでしょう。
4.変更命令
中には、届け出に係る分離解体等の計画が基準に合わないとみなされることがあります。
その場合は、県知事より変更命令などが出されることになるため、それに従う必要があります。
5.標識の掲示
都道府県や地域によっては、解体業者が対象の建物を解体する際は、原則として公衆の見やすい場所に標識を掲示しなければなりません。
それと同時に工事を管理する技術管理者を置く必要があります。
6.解体工事の実地
解体業者が対象の建物を解体しますが、いきなり重機で建物を破壊するミンチ解体ではなく、分別解体等を実地しなければなりません。
また、解体工事で発生する産業廃棄物をきちんと分別する必要があります。
7.再資源化等の実地
解体業者は、リサイクル可能な特性建設資材廃棄物の再資源化等を行います。
解体工事中に分別した廃棄物の中で、リユースできる資源をリサイクルに回すことになります。
8.解体業者から施主への報告
解体工事が終わり廃材を再資源化してから、解体業者は施主に書面でその旨を報告する必要があります。
また、その再資源化等の実地状況の記録を作成し、保存しておかなければなりません。
届出提出の注意点
施主は単純に建物を解体したいだけなのに、建設リサイクル法はなかなか面倒なものだと感じる方も多いのではないでしょうか。
ただし、実際には解体業者が全てやってくれることが多いですので、施主としてはその確認作業を行うだけになる可能性が高いです。
それでは、最後に解体工事の前にするべき手続きの注意点を見ていきます。
届け出の期限を守る
届け出は、原則工事に入る7日前までに提出しなければなりません。
中には、ちょうど7日前に提出すればよいと考えている方もいらっしゃいますが、書類に不備があったら当然それは受理されませんし、足りない書類をすぐに用意できるとも限りません。
以外に提出しなければならない書類が多いため、実際に書類不備でスムーズにいかないケースも少なくないのです。
万が一のことも考えて、できるだけ早い段階に提出しておくことをおすすめいたします。
他の届け出も確認
解体工事をする際に提出しなければならないのは建設リサイクル法の届出だけではなく、場合によってはその他に複数の届出を出したり許可を取得しなければなりません。
有名なところで行くと、工事中に車両を公道に止める場合には道路使用許可の申請をしなければなりませんし、解体予定の建物にアスベストが含まれている場合は、2週間前までに特定粉塵排出等作業の実地の届出をする必要があります。
特にアスベストに関する届け出などは原則として施主がしなければならないため、こちらも忘れないようにすべきです。
他にも解体する建物の条件などによって提出しなければならない書類などがあるかもしれないため、実際の建物を把握している解体業者などに相談してみましょう。
委任状について
解体工事をするにあたって、実際に施主が直接届出をしなければならないようなものも存在します。
通常は解体業者がそれらの届出を代行して提出してくれるはずなのですが、解体業者にお願いする際には施主が委任状を書かなければなりません。
委任状にも様々なタイプがありますが、基本的には工事の名称や工事場所、代理人の連絡先や住所等を記載して、届出に必要な書類と一緒に提出してもらうことになります。
こちらに委任状の例を載せておきますが、基本的には管轄の自治体のホームページなどから取得できるはずです。
最後に
従来は、解体してほしい建物を解体業者に任せておけば、後は解体工事が完了するという簡単なシステムでしたが、建設リサイクル法ができてからは、施主にも解体業者が廃材をどのように処分しているかを知る責任ができました。
届出は原則として施主が行わなければならないため、面倒だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、建設リサイクル法は環境を守っていく上で不可欠な重要な法律になります。
また、通常であれば解体業者が代理で全ての届出や許可取得を行ってくれるはずですので、施主は委任状を作成して業者に任せておけば問題ありません。
しかし、お願いした解体業者が提出を怠っていたり忘れていた場合、または故意に届出をしなかった場合は施主にもリスクが発生してしまうので、確認作業だけはきちんとやっておくようにしましょう。