ご家族の高齢化に伴い、家の中をバリアフリーにしようと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、当然建物内の全ての設備をバリアフリーにしようと思うとお金がかかりますので、時期を見て少しずつ高齢化に対応しようと考える方も少なくありません。
その中でもできるだけ早めに対応しておきたいのが、トイレのバリアフリー化です。
トイレは1日に何度も行く場所になりますし、急いでトイレに行きたいというようなこともあるはずですので、リフォームにおいて比較的優先順位の高い場所と言えます。
それでは、トイレをバリアフリーにするにあたって、具体的にどのようなリフォームをするべきなのでしょうか。
今回は、トイレでバリアフリーにすべき場所やそのコストなどについて紹介させていただきます。
人気のトイレをバリアフリーする場所
トイレで高齢化に対応すべき場所は、意外に多数存在します。
具体的には、以下が挙げられます。
- 手すりの設置
- 段差の解消
- 床材の変更
- 便座の高さ調節
- ドアの取り換え
- 洗浄レバー・ウォッシュレットボタンの変更
- ペーパーホルダーの取り換え
それぞれを細かく見ていきましょう。
手すりの設置
手すりは体を支えるために不可欠な存在であり、手すりがあるのとないのとでは身体にかかる負担が大きく変わってきます。
トイレにおいて手すりが必要になる場所はいくつかあり、
- トイレのドアを開ける際、閉める際に体を支えるためのもの
- 便座に座ったり立ち上がったりするためのもの
- 座った状態を安定させるためのもの
大きくこの3つが挙げられます。
トイレのドアを開ける際、閉める際に体を支えるためのもの
トイレの手すりと聞くと、やはり狭い個室内に設置するものをイメージされる方が多いため、意外に忘れがちなのが開閉時に利用する手すりです。
扉を開けたり閉めたりする時には、多少なりとも力が必要になりますし、足腰が弱い状態では上半身の力のみで開閉が難しいケースもあります。
そんなときには、ドアの外に体を支えられる手すりを付けることをおすすめいたします。
基本的には立った状態で手すりにつかまりドアを開けることになりますが、車椅子のことも考えて、上下に長めの手すりを付けてあげるとよいでしょう。
便座に座ったり立ち上がったりするためのもの
便座に座る際、または用を足し終わって便座から立ち上がる際には、太ももをはじめとする下半身に大きな負担をかけることになります。
その負担を和らげるために、便器に対して側面の壁に体を腕で支えられるような手すりを設置することになります。
こちらも、実際に利用する方のことを考え、身体を持ち上げやすい場所に設置するようにしましょう。
座った状態を安定させるためのもの
中には、安定して座ることのできない方もいらっしゃるため、用を足している最中に安心して体を預けられる手すりを設置する必要があるケースもあります。
一般的には、上述した立ったり座ったりするときに利用する手すりが地面に対して垂直に取り付けられるのに対し、こちらの手すりは地面と平行に設置されることが多いです。
シンプルな手すりにするのであれば、I字型のモノを1つ取り付けるだけでも構いませんが、きちんと身体を支えるのであればL字型のものを設置することをおすすめいたします。
I字型と比べると、やはり手すりの存在感が大きくなるため、個室においては多少圧迫感があるかもしれませんが、様々な動作に対応する手すりなので使い勝手は良いはずです。
段差の解消
自宅のバリアフリー化で欠かせないのは、建物内の段差を極力なくすことになり、当然トイレも例外ではありません。
特に急いでトイレに行くような場合には、慌ててしまい段差でつまづいてしまう可能性も考える必要があります。
特にトイレに入る際に、その段差につまづいてよろめいてしまうと、手すりや便座などに頭をぶつけて大変なことになるリスクもあります。
足腰の弱い方は、たとえ段差がなかったとしても転びやすいため、トイレの外とトイレの中の段差をなくしましょう。
トイレの外に対して、トイレの床が低い場合はかさ上げを、床が高い場合は床を下げるためのリフォームを行います。
床材の変更
こちらはバリアフリーのためだけではなく、一般的なトイレリフォームにも利用できる項目ですが、バリアフリー化に伴い床材を新しいものに変えるのもよいでしょう。
バリアフリーのことも考えたうえでトイレに適した素材としては、クッションフロアが挙げられます。
- 水に強い
- アンモニアに強い
- 滑りにくい
- 清潔感がある
という特徴を持っているため、水やアンモニアが付着しやすく汚れやすいトイレの床材としては最高の素材と言えます。
クッションフロアはビニール系の素材になるため濡れても滑りにくいですし、クッション性に富んでいるため安心して利用することができるでしょう。
また、色やデザインも豊富ですので、基本的にはどのようなトイレであってもぴったりのデザインを見つけることができるはずです。
便座の高さ調節
一般的な便座は、健康な方が普通に腰掛ける際に快適な高さを保っていますが、足腰が弱くなるとその高さが低すぎると感じる方も少なくありません。
通常は、便座に腰かけた状態で膝の角度が90度以上あれば、立ち上がったり腰かけたりする際の足腰への負担がかなり軽減されると言われています。
膝の角度が90度以上にするには身長なども関係してくるため、実際に利用する方の体格や身体の状態に合わせて便座を選ぶ必要があります。
便座の高さを調節する代表的な方法としては、
- 便器と便座の間に補高部材を差し込んで高くする
- 電動で便座の高さを調節し立ち上がりの動作をサポートする
といったものが挙げられるため、他の家族のことも考えて全員が使いやすい便座を選ぶことをおすすめいたします。
ドアの取り換え
トイレのドアとして利用されているのは、
- 開き戸
- 引き戸
のどちらかになりますが、足腰が不自由になった方に適したドアは間違いなく引き戸です。
開き戸にする場合は、通常はトイレの外側にドアを開くことになりますが、その際にはドアノブを回した状態で少し後退し、開いてからトイレ室内に入るという動作が必要です。
しかし引き戸であればその場で手すりを掴みながら上半身を動かすだけでいいため、下半身に大きな負担をかけることがなくなります。
また、将来的に車椅子を利用することを考えると、やはり同様に開き戸は不便なため、リフォーム化に当たって引き戸にすることをおすすめいたします。
それから、ドアを取り換える際には、トイレの個室内で万が一何かあったときのために、外からも開けられるようなタイプの鍵を設置するとよいでしょう。
洗浄レバー・ウォッシュレットボタンの変更
最も一般的な洗浄レバーは、トイレタンクの横や前に付けられていることが多いですが、身体の状態によってはそのレバーを利用するのが困難なケースも考えられます。
同様に、スタンダードなウォッシュレットは便座の横にボタンが設置されていることが多いですが、こちらも場合によっては使い勝手が悪いです。
公共のトイレでは、洗浄レバーがなく大きなボタンを押すと水が流れたり、センサーに手をかざすと勝手に洗浄されるタイプがありますが、そういったものに取り換えるのも方法の1つです。
また、用を足し終わったら勝手に水が流れるタイプのものもよいでしょう。
ウォッシュレットも、単純にスイッチを入れるだけではなく、位置調節、強さ調節、温度調節、マッサージ機能など、様々なボタンがあるとどれがどれだかわからなくなってしまうことがあります。
できるだけシンプルなデザインで、さらに1つ1つの表示文字が大きめのものを選び、壁などの押しやすい場所に設置することで、体が不自由な方も楽に使えるようになるはずです。
洗浄ボタンやウォッシュレットのボタンをまとめて設置できれば、無駄な動作を減らして快適にトイレを使えるようになるのではないでしょうか。
ペーパーホルダーの取り換え
意外と忘れがちなのが、ペーパーホルダーのバリアフリー化です。
座った状態で、両手を利用してペーパーホルダーから紙を取り出すのは意外と身体の様々な器官を使うため、場合によってはその動作が困難になることも十分に考えられます。
例えば、片手でも楽に紙を切り取ることのできるペーパーホルダーを利用することで、用を足した後の動作を最小限に減らすことができます。
また、ペーパーホルダーにストックできるトイレットペーパーが1つしかない場合、万が一紙がなくなってしまった際に非常に大変です。
現在メインで利用しているトイレットペーパーを設置するホルダーの横に、予備のトイレットペーパーをストックしておくことのできるペーパーホルダーも存在します。
2つのトイレットペーパーがあれば、仮に1つのペーパーが切れてもすぐに2つ目のペーパーを利用することができるため、安心して用を足すことができるのではないでしょうか。。
大掛かりな工事を伴うバリアフリーリフォーム
上述したリフォームは、ちょっとしたものを取り付けたりといった簡易的なものですので、基本的には工期が短く1日でできてしまうものがほとんどです。
しかし、バリアフリーのためのリフォームの中には、1日ではできないような大掛かりな工事も存在します。
もちろんリフォーム後は今まで以上にトイレを快適に利用することができるようになりますが、工事中はトイレの機能が停止してしまいます。
具体的には、
- 和式トイレを洋式トイレへ
- トイレの間取り変更
- 寝室の横にトイレを設置
このようなリフォームは数日かかることが多いですし、ご家庭の状況によって工期が大きく変わる可能性があります。
例えば他の場所にトイレを造るようなリフォームであれば、現在のトイレを使える状態にすることは可能ですが、現在のトイレをそのままリフォームする場合はトイレが使えません。
そのため、事前にリフォーム業者とよく話し合ってリフォームのタイミングを考えるようにしましょう。
和式トイレを洋式トイレへ
昔ながらの和式トイレを利用しているというご家庭もまだまだ多いですが、和式トイレは用を足す際に完全にしゃがむ必要があるため、下半身に大きな負担をかけることになります。
その和式トイレを洋式トイレに変更することで、気軽に座ってトイレを利用することができるため、リフォーム後はトイレが非常に楽になるはずです。
しかし、一般的には建物内でのトイレの位置を変えないため、実質リフォーム中は対象となるトイレが使用不可になってしまいます。
間取り変更などではないため、通常は3日以内にリフォームが終わることが多いですが、リフォームに伴って他の工事が必要になる場合はさらに時間がかかります。
トイレの間取り変更
車椅子が必要になる場合は、トイレの間取りを変更するリフォームをすることも可能です。
一般的なトイレは、人間が1人利用する最小限のスペースが確保されているだけのものが多いため、当然車椅子のままで室内に入るのが難しいです。
車椅子をそのまま個室に入れるためには、そのスペースを確保するためにトイレ内の空間を広くしなければなりません。
しかし、トイレを拡張するということは、その横の部屋を狭くするということでもありますので、場合によっては大掛かりなリフォームが必要になってきます。
間取り変更のリフォームは、建物の構造部分まで確認しなければなりませんし、必要に応じて建物の補強工事なども行うことになるため、かなりの期間を要するケースもあります。
リフォーム業者としっかりと話し合って、具体的にどれくらいの期間が必要なのか、またどれくらいのコストがかかるのかを事前に把握してから工事を依頼することをおすすめいたします。
寝室の横にトイレを設置
高齢になると、頻繁にトイレに行きたくなる方も少なくありませんし、寝ている最中に目が覚めてトイレに行くという方も多いです。
しかし、寝室とトイレの場所が遠いとトイレに行くこと自体が億劫になり、我慢をして健康を害してしまいます。
同様に、一人でトイレに行けない方は補助をしてもらうために家族の誰かを呼ぶ必要があります。
元気なうちは、寝室からトイレが遠いといってもたかが知れていますが、足腰が不自由になり、車椅子に乗らないと行動できないようになると、ちょっとした距離が非常に遠く感じます。
そのため、中にはトイレを寝室の真横に設置するというリフォームを施す方もいらっしゃいますし、場合によっては寝室内に便器を取り付けてしまうご家庭も存在します。
寝室とトイレが近くなることによって、
- 家族にサポートされずにトイレに行ける
- 介護側の負担が減る
- 転倒のリスクが減少する
- トイレを減らすための水分の摂取量を考える必要がなくなる
といったメリットを得ることができます。
構造によっては寝室の横にトイレを設置するのが難しいケースもありますが、寝室内に新しく便器を取り付けることができれば足腰が不自由でも気兼ねなく用を足すことができるでしょう。
やはり手すりを取り付けるといった簡易リフォームを考えるとそれなりにコストはかかりますが、快適に用を足せるというのは大きなメリットといえるのではないでしょうか。
トイレをバリアフリーにする場合の費用の相場
それでは最後に、上述したトイレのバリアフリー化に必要なコストについて見ていきましょう。
リフォームの種類 | リフォーム費用の相場 |
手すりの設置 | 5万円~10万円 |
段差の解消 | 2万円~10万円 |
床材の変更 | 2万円~10万円 |
便座の高さ調節 | 2万円~20万円 |
ドアの取り換え | 10万円~30万円 |
洗浄レバーの変更 | 10万円~30万円 |
和式から洋式へ | 20万円~60万円 |
間取り変更 | 30万円~100万円以上 |
寝室内に設置 | 40万円~80万円 |
このように、現在のトイレの状況によってリフォーム費用が大きく変わってきますし、大掛かりなリフォームほど値段の差が激しいです。
例えば、手すりの設置など安くできそうなイメージもありますが、実際には単純に手すりを取り付けるだけではなく、壁の補強が必要になるケースも少なくありません。
その補強具合によってはさらに費用がかさむ可能性もあるため、事前にきちんと業者と話し合っておく必要があります。
リフォーム費用を安くするには介護保険の助成金を利用
リフォームにも様々なものがありますが、バリアフリーのためのリフォームだと認められれば20万円までのリフォーム代金のうちの9割が支給されます。
要するに、20万円のリフォームを行う場合の負担額が2万円で済むため、これを利用しない手はありません。
助成金を利用する条件
誰もが利用できるというわけではなく、条件によって利用できない方もいるため注意が必要です。
利用できる条件は、
- 病院や老人ホームなどの福祉施設に入院、入所していないこと
- 被保険者の住所とバリアフリーリフォームを行う住所が同じであること
- 要介護認定において、要介護、もしくは要支援の認定を受けている人物であること
の3つです。
さらに、支給額は一生涯で20万円までということになっているため、高額なリフォームになる場合は負担率が変わってきます。
ただし、例えば引っ越しをして新居で新たにバリアフリーのためのリフォームを行う場合は再度利用できたりするため、確認してみることをおすすめいたします。
支給の対象となる工事とは?
同様に、全てのトイレリフォームに助成金が発生するわけではありません。
一般的には、
- 手すりの設置
- 扉の変更
- 段差の解消
- 床材の変更
- 便器の取り換え
などが支給の対象となります。
もちろん、場合によっては上記以外も支給の対象と判断されることがありますし、
さらに言えばトイレだけではなく自宅の他の場所のバリアフリーのためのリフォームであれば対象となることがあります。
詳しい情報については、必ずリフォームをする前に業者などに確認するようにしましょう。
まとめ:バリアフリーのためのリフォームは早めの対策を!
トイレは常に快適に利用できる場所でなくてはなりませんが、高齢になり足腰が弱くなるとどうしても使いづらいと感じる方もいらっしゃいます。
自宅のトイレが使いづらくなってしまうと、用を足しに行くのが面倒になるため、トイレを我慢するようになったり、トイレの回数を減らすために水分の摂取量を考えたりするようになります。
しかし、健康的に生活を送るには、水分補給をしっかりとして用を足したくなったら自由にトイレに行くということが大切になってきます。
いつでも気軽にトイレに行けるようにするために、バリアフリーのためのリフォームの中でもトイレは早めに手を打っておくことをおすすめいたします。
紹介したように、リフォームには助成金が出ることもあるため、業者と相談しながら費用を抑えていけば、お得にリフォームすることができるはずです。