外構工事(エクステリア)は完成すれば終わりではありません。無事に完成したと思っても、期待していたイメージと違う、というトラブルがよく起こります。
また、期待どおりに仕上がっていたとしても、時間の経過とともに工事の不具合が見つかり、補修をめぐってトラブルになります。
「工事完了の直後」だけでなく、「工事完了から時間が経ってから」もトラブルの火種は尽きないのです。
そこで、この記事では外構工事(エクステリア)の仕上がりをめぐってよく起こるトラブル(事例)を解説します。
外構工事業者などの専門業者がどのような考え方をするのかについても解説するので、トラブルの拡大を避けるためにも参考にしてください。
外構工事(エクステリア)の仕上がりに関するトラブル
無事に外構工事(エクステリア)が完了して引渡しを受けたものの
- 色合いがイメージと違う
- 質感がイメージと違う
- 使い勝手がイメージと違う
といったトラブルがよく起こります。
実際に現物を見たときに「イメージしていたものと違う」と感じる現象を「イメージギャップ」といいます。
イメージギャップの原因
そもそも、なぜイメージギャップが起こるのでしょうか。
例えば、注文住宅は住宅メーカーや建築士に注文して一から建築するので、契約の時点ではまだ建物の現物がありません。
そのため、住宅メーカーの住宅展示場に行って、どこにどういう部屋を配置するか、どんな色の屋根にするか、どんなデザインの外壁にするかイメージしながら打合せを進めます。
外構工事(エクステリア)の場合もこれと同じで、契約を交わした時点では外構の現物がないので、図面やサンプルなどをもとにイメージして契約します。
もちろん、外構工事に使う材料は、サンプルやカタログを見ながら確認できますが、あくまでサンプルやカタログであって、「イメージ」と「現物」に大きな隔たりが発生することも珍しくありません。
これがイメージギャップなのです。
イメージギャップがあると工事をやり直してもらえるか
問題は、イメージギャップが生じた場合に、外構工事業者に工事をやり直してもらえるかです。
中にはサービスでやり直してくれる外構工事業者もあるかもしれませんが、原則として、「イメージと違う」という理由で工事をやり直してもらうことはできません。
なぜなら、外構工事業者にしてみれば「あなたが勝手にそう思い込んでいただけ」であって、外構工事業者の責任ではないからです。
例えば、フェンスを設置した後になって、フェンスの素材が安っぽく感じられたとします。
この場合に、外構工事業者に対して、「もっと高級感があるフェンスだと思っていたのに・・」と主張しても、外構工事業者も困ってしまうだけでしょう。
そもそも「高級感」と言われても、人によって感じ方がまったく違います。
何をもって「高級感がある」と判断するか、明確な基準はありません。
他にも、外構工事を依頼するときに
- 高級感
- 広々とした
- 明るい
という希望を伝えていたとしても、具体的な数値がなければ、何が正解なのかは分かりません。
そのため、外構工事業者に間違いがあった、とも言いきれないのです。
イメージギャップの予防策
外構工事は、現物がない状態から作り上げていくため、残念ながらイメージギャップを100%予防する確実な方策はありません。しかし、イメージと現実のギャップをできるだけ埋める方法はあります。
例えば、次のような方法の組合せで、イメージギャップは軽減することができます。
- 平面の図だけではなく、立体でイメージできる図面を作成してもらう。
- カタログだけではなく、サンプルがある場合にはサンプルを取り寄せてもらう。
- 関心やこだわりがある部分については入念に打合せする。
- 納得いくまで質問をして、分からないことを分からないままにしておかない
特に3番目と4番目は、後ほど説明する「説明義務違反の追及」にもつながる重要なポイントなので覚えておいてください。
どうしても納得できないときの交渉法
せっかくの外構工事がイメージと違うと、「どうしても工事をやり直して欲しい」、「金額に納得できないので、いくらか減額してもらえないか」という気持ちになるかもしれません。
もちろん、一から全部やり直してもらうことはできませんが、交渉の糸口になる有効な方法を解説しましょう。
説明義務違反がないか振り返ってみる
外構工事業者は外構工事(エクステリア)の専門業者です。
これに対して、あなたは外構工事(エクステリア)については素人のはずです。
専門業者と素人の取引ですから、情報量や知識量の差が大きく、専門業者の方が圧倒的に優位な立場にあります。
そのため、専門業者は、素人でも分かるように十分に情報を提供して、理解してもらうように努力する義務があります。これを「説明義務」といいます。
例えば、外構工事の打ち合わせ段階で次のような事情があれば、説明義務を果たしたとは言い難いはずです。
- サンプルを見たいとお願いしていたのに、結局、サンプルを取り寄せてくれなかったので、カタログだけで選んだ。
- 私の要望どおりに配置すると、使い勝手が悪くなるのは明らかなのに、事前にデメリットの説明がまったくなかった。
- 機能や性能について説明を求めたのに、詳しく説明してもらえずお茶を濁された。
つまり、もっとも有効な方法は
- 外構工事業者が専門業者として十分な説明を尽くしたといえるか?
- イメージギャップが生じたのは外構工事業者の落ち度が原因ではないか?
といった材料を探してみることです。
「イメージと違う!」というセリフは封印する
これまで説明したとおり、イメージはあくまであなたのイメージであって、「イメージしたものと違う!」とアピールしても、外構工事業者に譲歩してもらうことはできません。
なぜイメージと違うものが出来上がったのか、それは外構工事業者が説明義務を果たさなかったからではないのか?
このように、「イメージと違う」という結果だけではなく、もう一歩手前から分析する必要があるのです。
もちろん、あらゆる事柄に説明義務が生じるわけではありません。
例えば、塗装に使う塗料の成分について、一般人はほとんど関心を持たないはずです。
あまりに専門的でマニアックすぎて、一般人が関心を持たない内容であれば、外構工事業者が説明を省くのも当然といえるため、説明義務はありません。
しかし、健康上の問題から有害な化学物質について関心があり、外構工事で使う塗料に有害物質が含まれていないか、事前に関心を示している注文者に対しては、きちんと調べて説明する義務があるといえるでしょう。
このようにケースバイケースで判断が変わりますが、ただ感情的に「イメージと違う!」とアピールするだけではなく、外構工事業者に説明義務違反がなかったかを検討してみるのは有効な手段です。
外構工事の瑕疵と経年劣化に関するトラブル
外構工事(エクステリア)の完成時点では満足できたとしても、その後に不具合が見つかることもあります。
しかし、外構は風雨にさらされる場所であるため、時間の経過とともに劣化が進行します。
その結果、工事に問題があって不具合が生じたのか、風雨にさらされ、時間が経過したことが原因で不具合が生じたのか分からなくなってしまうこともあります。
これが外構工事業者とのトラブルにつながるのです。
中には保証書を発行してくれる会社もありますが、保証書があるからといって、保証期間内なら無条件に何でも補修してくれるわけではありません。
保証書には必ず免責条項が書かれていて、通常、時間の経過によって生じた不具合は保証の対象にはなりません。
そこで重要となるのが、瑕疵と経年劣化の違いを知ることです。
瑕疵(かし)とはキズのこと
瑕疵とは、分かりやすく表現するなら「キズ」という意味です。
住宅の新築工事や外構工事(エクステリア)では、工事を請け負った業者は、法律上、一定の期間内(工事の箇所にもよりますが1年から10年)は工事に瑕疵があった場合には無償で補修する義務を負っています。
外構工事業者にまったく落ち度がなかったとしても、工事の出来が悪ければ、問答無用で補修しなければなりません。
工事業者にとっては非常に厳しい責任ですが、法律でそう決まっているのです。
経年劣化(けいねんれっか)は時間が経つにつれて劣化したもの
瑕疵と似て非なるものが「経年劣化」です。
経年劣化とは、文字どおり、時間が経つことによって劣化したものです。
経年劣化は時間の経過のせいであって、外構工事業者の責任ではないので、外構工事業者は補修する義務を負いません。
トラブルになる原因
上記の瑕疵と経年劣化の違いを見ればトラブルになる原因はなんとなくわかると思います。
外構に劣化が見つかったときに、それが工事の瑕疵なのか、経年劣化なのかによって、外構工事業者の回答は変わるからです。
中には、保証期間内なら経年劣化でも無償で補修してくれる業者もあるかもしれませんが、原則として経年劣化については保証の対象外です。
しかし、外構工事業者から「経年劣化なので補修する場合は有料です」と言われても納得できず、補修をめぐってトラブルになるのです。
瑕疵と経年劣化の見分け方
そんな瑕疵と経年劣化の見分け方ですが、
例えば、コンクリートが乾燥し、時間が経つとコンクリートの表面にはヒビが入ります。
コンクリートの性質上、時間が経てば当然に起こる現象なので、建設業界では「経年劣化」だと評価されます。
しかし、外構工事の完成直後からコンクリートの表面がヒビだらけであったり、大きなヒビが何本も入っていた場合には、さすがに経年劣化ではなく「瑕疵」に当たる疑いがあります。
このように、その現象が瑕疵といえるかどうかは、工事の仕上がり状態が「本来のあるべき状態と比較してどうか」という基準で判断します。
本来あるべき状態はどうやって判定する?
本来あるべき状態といっても、一般人には分からないため、どうしても専門業者との間で意見の食い違いが生じます。
建築紛争が発生した場合に、現地を調査して、調査報告書を作成してくれる建築士もいます。
しかし、調査を依頼すると数万円から数十万円の費用がかかるので、よほど深刻な欠陥が疑われる場合でもない限り、そこまでの費用をかけられません。
もし、知り合いに建設関係の方がいる場合には意見を聞いてみたり、現地を見てもらったりして、通常よくある現象なのか、通常とはいえないのか、アドバイスをもらうのも1つの手段です。
また、専門のエクステリア工事の人に相談するのもおすすめですよ。
やはり、その分野のプロに聞くのが1番信用はできますので。
まとめ
せっかく何度も打ち合わせを重ね、ようやく完成した外構がイメージと違ってしまうとがっかりです。
しかし、外構工事業者にやり直しを求めてトラブルになるのは避けたいものです。
打ち合わせ段階から一つ一つ具体的にイメージし、納得しながら進めることで、できる限りイメージギャップを生まないようにしましょう。