恐らく、ほとんどの解体作業は何のトラブルもなくスムーズに進むのではないかと思います。
天候によって若干日程が遅れるというようなケースは珍しくありませんが、法的に何らかの問題があって大きなトラブルに発展するというケースは稀でしょう。
しかし、中には解体業者のミスや故意の怠慢などによって、解体工事自体がストップしてしまったり、後々大きなトラブルに巻き込まれて面倒な思いをするという方もいらっしゃいます。
もちろん、安心できる業者を利用すればそのようなことはないでしょうが、悪徳業者をはじめとする頼りない業者を選択してしまった場合、施主も嫌な思いをすることになります。
今回は解体工事でのトラブルを防ぐために、事前に業者に聞いておいた方が良いことをまとめています。
相見積りで業者をチェック
解体工事でのトラブルを防ぐために必ず行った方が良いものが、相見積りになります。
今まで解体工事を行ったことがない方も、相見積りをすることでご自身の建物を解体する際の相場がわかるようになります。
相見積りで業者を決める
既に解体業者が決まっているという場合は問題ないかもしれませんが、初めての解体工事の依頼でどの業者にお願いすればいいのかわからないというケースが大半なのではないでしょうか。
そんなときには、とりあえず1社に見積もりを出してそのまま工事をお願いしてしまうのではなく、複数の業者に見積もりをお願いして大体の相場を確認しつつ、どこの業者にお願いするかを決めるようにしましょう。
例えば5社に見積もりを取ったとして3社が100万円前後の料金を提示しているのに、1社が150万円、残りの1社が50万円という見積もり額を提示してきたとします。
100万円前後という価格が3社に提示されているということは、その物件を取り壊す適正価格は100万円前後ということになるのではないでしょうか。
逆に150万円と50万円という相場と大きく異なる価格に違和感を覚えるはずです。
高すぎるのは問題外として、安すぎるのにも何か裏があると考えるのが普通ですので、相場に近い100万円前後を提示してきた業者の中から解体してもらう業者を選ぶことになります。
相見積りで業者の対応を確認
相見積りには料金の相場を確認するだけでなく、複数の業者を見て最も信用できそうな業者はどこかを確認するという役割も果たしています。
例えば見積もりの結果が適正で技術的にも経験的にも問題なさそうな業者であったとしても、担当のスタッフの対応が悪かったりこちらの話を聞いてくれないような業者には頼む気になりません。
複数の候補があればご自身に最も合った業者を選ぶことができるため、後々のトラブルに発展する可能性が低くなります。
解体作業においては、業者に関するトラブルもたくさん発生するため、できるだけたくさんの業者と話をして最善のところにお願いすることをおすすめいたします。
そのためには、やはり相見積りが重要になってきますので、時間に余裕を持って業者選びをするようにしましょう。
証明書の有無をチェック
業者を選ぶ際には、解体作業に必要な証明書や許可証等の有無を確認するようにしましょう。
解体作業を事業として行うためにはいくつかの証明書が必要になってきますが、解体業者と謳っている業者の中には、そのような証明書を持っていないところがあるのも事実です。
証明書がないと後々に大きなトラブルに巻き込まれる可能性もあるため、事前に有無を聞いておきましょう。
建設業許可・解体工事業登録について
まず初めに聞いておきたいのが、建設業許可を取得しているか、もしくは解体工事業登録をしているかどうかです。
特に500万円以上の解体工事を請け負う場合は、建設業許可が必要になるため、持っている業者を選ぶと安心です。
また、500万円を超えない規模の工事であったとしても、都道府県に解体工事業の登録をする義務があります。
解体業者の中で悪質と呼ばれる業者の多くは、建設業許可や解体工事登録がありません。
そして、悪徳業者の中には、工事で排出される廃棄物を不法投棄するなどの犯罪行為を行うところも存在します。
しっかりと解体工事を行ってもらうためにも、許可証の確認はしておいたほうが良いでしょう。
産業廃棄物収集運搬許可について
産業廃棄物収集運搬の許可がなかったとしても、上記の許可があれば解体工事を行うことができます。
しかし、産業廃棄物に関する許可がなければ、解体工事で出た産業廃棄物を集めて持って行くという行為ができません。
つまり、解体工事を行うのと産業廃棄物を処分するのとでは、全く別の許可が必要になってくるのです。
また、産業廃棄物の不法投棄を防ぐためにマニフェストという制度が設けられており、業者が廃棄物をきちんと処分するかどうかを判断する材料の1つとなるので、マニフェストの発行の有無を確認するのも方法の1つです。
加入保険の確認について
解体工事をしていると、故意でなかったとしても近隣の建物を損傷させてしまったりすることがあります。
そんなときに活躍するのが損害賠償保険になるのですが、業者がこの保険に加入していれば通常はそういったトラブルにもしっかりと対応してくれます。
しかし保険に加入していない場合は業者にも実費がかかってくるため、中には施主にその支払いを押し付けようとするところもあります。
事故などが全くなければ問題ないのですが、万が一何かあったらトラブルになる可能性があるため有無を確認しておくべきでしょう。
行政や廃材処理場との連携をチェック
解体工事をする際には、各都道府県などに工事をする旨を伝えるのと同時に、届け出をしなければならない書類等が存在します。
例えばご自身で解体作業をする場合は個人が届け出をする必要がありますが、業者にお願いする場合はその業者が届け出を出すのが一般的です。
しかし、中にはその届け出を提出せずに勝手に解体作業を行う業者もあり、当然、後からトラブルになる可能性が高いため注意が必要です。
建設リサイクル法
取り壊す予定の建物の床面積が80平米以上の場合は、建設資材のリサイクルのために許可をもらう必要があります。
届出書と一緒に建築物の写真や解体の工程表、周囲の見取り図や分別分解の計画表などを工事施工開始の7日前までに提出しなければなりません。
気を付けなければならないのが、提出を怠ったまま解体作業を始めた場合は、施主がその責任を負うことになる可能性があるという点です。
施主が工事の内容を把握して業者に発注するという流れになるため、解体業者がすべてやってくれると安心するのではなく、業者と相談しながら進めていく必要があります。
ちなみに、違反した場合は20万円の罰金刑となってしまうため注意しましょう。
道路使用許可の申請
解体工事をする際には、建物を壊すための重機や工事で出た廃棄物を運ぶための大型の車両を駐車するためのスペースを確保しなければなりません。
敷地内に駐車できるのであれば問題ありませんが、公共の道路を駐車スペースとして利用するケースが多いです。
共有の道路を使用する場合は、道路使用許可を申請しなければなりません。
所轄の警察署に、申請書と駐車方法などを記載した図面を提出することになります。
産業廃棄物の処分先の確認
産業廃棄物の処分コストがどんどんと高くなっていることもあり、廃棄物の不法投棄などが問題になっています。
ご自身の住宅から出る産業廃棄物を不法投棄させないためにも、廃棄物をどこの処分場に運んで処理するのかを確認することをおすすめいたします。
大抵の業者であれば、提携している処分場の許可証などを提示してくれるはずですが、なかなか要求に応じてくれない業者には注意が必要です。
なお、業者が不法投棄するということを施主が知っているにもかかわらず解体を任せた場合、施主も不法投棄に対する責任を追わなければならない可能性があるため気を付けましょう。
ご近所トラブルに関する処理をチェック
解体工事にご近所トラブルはつきものだと言われることもあり、実際に近所の方々は工事中、騒音や振動、粉塵などの被害に耐えることになります。
また、解体中に隣の家の塀にひびが入るなどの直接的な被害が出るケースもあります。
工事の事故は業者責任
解体工事の振動によって隣人の建物やエクステリアが何らかの被害を受けた場合、基本的にはその工事を請け負った業者が責任を負うことになります。
隣人の方の中には、工事の依頼主である施主に被害を訴える方もいらっしゃいますが、業者は通常は保険に加入しているため、その保険を使って解決することになります。
しかし、先ほども記載しましたが、稀にこの保険に加入していない業者が存在するため、その場合は余計なコストを避けるために施主にその責任を擦り付けるようなケースもあるのです。
解体業者にとってはご近所トラブルは関係のない話かもしれませんが、施主が今後もその土地に住み続ける場合は何としてもすぐに解決したい問題です。
工事をする前に、この手のトラブルに対しての対応を業者に確認しておいたほうが良いでしょう。
挨拶まわりは施主も行うべき
まともな解体業者であれば、解体作業の前に近所に工事を行う旨を伝える挨拶回りをしてくれるはずです。
しかし中にはこの挨拶回りを省く業者もあり、近所の人々からすると、いきなり解体工事が始まったということになるため、周りからの苦情が多くなります。
業者が挨拶回りをするのは義務ではありませんが、工事をスムーズに進めるためにも、解体後の土地をうまく活用するためにも、極力クレームは避けたいものです。
業者が行わない場合は施主が自ら進んで挨拶回りをすべきですし、仮に業者がしてくれる場合であっても、施主が一緒に顔を出すことによってご近所さんの印象が大きく変わってきます。
⇒解体工事前の近所への挨拶は重要!挨拶のタイミングと方法について
最後に
解体作業は、施主と解体業者の間のみで完結する簡単なものではなく、近隣の住民をはじめとする様々な人々に迷惑をかける可能性のある作業になります。
道路を使わせていただく、排出された産業廃棄物をきちんと処分する、といったルールを守ることによって、気持ちよく解体作業を完了させることができます。
反対に、近隣の住民への挨拶を怠ったために、解体後に新築物件を建ててもご近所づきあいがうまくいかないなどのトラブルも存在します。
全て業者任せで解体工事を行うという方もいらっしゃいますし、それでスムーズに工事が終わったというケースも多いです。
しかし、施主がトラブルを避けるためのポイントを押さえておくことで、起こり得る大きな問題を事前に回避することも可能です。
解体工事前の業者選び、それから業者へのチェックを行うことによって、安心して工事を行えるはずです。