今は健康体であったとしても、いつかは身体に衰えが来るのが必然です。

身体が衰えると様々な面で不自由が生じるようになりますが、住まいがバリアフリーに対応していないと毎日の生活が大変になります。

家の中をバリアフリーに対応させるのはもちろんのことですが、エクステリアもバリアフリー仕様にしなければ外出するのが億劫になってしまいます。

体が不自由になってからバリアフリーの大切さを実感するという方も多いのですが、リフォームをするのであれば健康な時にやってしまった方が良いのではないでしょうか。

今回は、そんなバリアフリーを意識したエクステリアを紹介していきます。

バリアフリーの外構もオシャレに

ご高齢の方はもちろんですが、健康なうちからエクステリアのバリアフリー化について考えておく必要があります。

どうせリフォームをするのであれば、他のエクステリアとの調和も考えつつバリアフリーの機能を持たせたいものです。

エクステリアの役割を考えよう

エクステリアとは住宅の外構の部分を指しますが、その部分は家族が毎日使うだけでなく、お客様をはじめとする様々な人々の目に留まる場所でもあります。

もちろんバリアフリーを意識した安全な外構づくりが求められますが、やはり同時に美しさを意識したエクステリアづくりも必要になってきます。

面倒だからエクステリア全体を丸々リフォームしてしまうという方もいらっしゃいますし、外構の一部を改装することでバリアフリー対応になるご家庭もあります。

既にお気に入りのエクステリアを設置しているのであれば、どこをどのようにリフォームすれば外構をあまり変えずにバリアフリーにできるのかを考えることになります。

現在のエクステリアをできるだけ残したいという方は、徐々にバリアフリー化をしていくのもよいでしょう。

バリアフリーリフォームの基本

バリアフリーのためにエクステリアを変えたいという気持ちはあるけれど、具体的にどこをどのようにすれば良いのかわからないという方も少なくありません。

外構をバリアフリーにするためには、第一に躓いたり滑ったりする場所をなくすところから始めていくことになります。

足腰が弱い方は階段などの段差をはじめ、アプローチ部分などに細かい段差があるだけでも躓くリスクがあります。

基本的には、小さな段差もなくして躓くことのないエクステリアづくりを目指すことになります。

それと同時に、夜間に暗闇を感じないような照明を設置することで、より安全なエクステリアを手に入れることができるでしょう。

階段をスロープに

エクステリアにバリアフリーを取り入れるのであれば、真っ先に考える必要があるのがスロープです。

足腰の弱い方にとっては、階段で足をあげるのも大変ですし、車椅子に乗る方にも不便なので、アプローチ部分に階段がある場合はスロープを設置しましょう。

スロープの素材

エクステリアの床に利用する素材は様々ですが、スロープを設置する場合にはその建材が限られます。

例えばタイルはデザインが豊富でオシャレなエクステリアを作り上げることのできる素材ですが、雨に濡れると滑りやすいためスロープには向いていません

車椅子でも安心して移動できるような、アスファルトやコンクリート、インナーロッキングなどがスロープに適した素材と言えるでしょう。

ただし、同じコンクリートであっても表面をきれいに仕上げてしまうとタイル同様滑りやすくなってしまうため、完全に固まる前に洗い出しなどの加工を施す必要があります。

砂利とセメントを混ぜて作ったコンクリートが硬化する前に、表面部分のセメントを洗うことによって砂利が表面に出てきます。

そうすることによって滑りにくいコンクリートをスロープの床材として利用することができるのです。

また、最近はタイルの中にも滑りにくい素材がありますので、どうしてもタイルにこだわりたいというのであれば、雨の日にも滑らないタイプをおすすめいたします。

スロープの角度

既に屋内にスロープを付けているという方は、スロープの角度は8%以内にしなければならないという基準をご存じなのではないでしょうか。

しかし、8%という基準は屋内のスロープに適用するものであって、屋外になると基準が5%以内となり、室内よりも緩やかな傾斜を保たなければなりません。

玄関との高低差が大きな場合は角度を緩やかにしなければならない分、スロープ部分が長くなってしまいます。

一直線で作ってしまうとあまりにも長くなってしまうという場合は、折り返しを付けてスペースをうまく利用する必要があります。

スロープの幅

スロープを設置する際に意外と忘れがちになるのが、その幅の確保です。

具体的には、スロープを設置する場合は幅を1メートル以上取れるようにするべきです。

できれば1.2メートルほどあると余裕があっていいのですが、現実的にそんなに幅を取ったら他のエクステリアを設置できなくなるというご家庭は少なくありません。

これは、歩行者はもちろん、車椅子を利用する方も問題なく通ることができるようにするための幅になります。

なおスロープを設置する際には、同時に手すりや縁石を取り付けることになると思いますが、それらの幅も考えて設置するようにしましょう。

玄関扉・門扉を開き扉から引戸に

バリアフリー用のエクステリアにリフォームするのであれば、玄関扉や門扉にも注目してみてください。

玄関の扉に開き扉を採用しているご家庭も多いと思いますが、バリアフリーにするのであれば引戸がおすすめです。

開き扉のデメリット

歩行者にとっては、エクステリアの扉が引戸タイプであろうが前後に開閉するタイプであろうが、そんなに使い勝手は変わらないかもしれません。

しかし、車椅子で移動する方にとっては、開き扉はかなり面倒な形になっています。

手前に開閉する扉の場合は車椅子が邪魔になってうまく開けられないため、開けるために車椅子の位置を何度も調節しなければなりません。

また、奥に開閉するタイプは、錠を開けてから力強く押さなければ車椅子が通過するスペースを確保することができません。

うまく開けられたとしても今度は扉を閉めるのが大変ですので、開き扉は車椅子の方には向いていないといえます。

引戸は車椅子の方に便利

門扉や玄関の扉を引戸にした場合、車椅子の方であっても楽に開閉することができるようになります。

扉の正面に車椅子を止めて扉をスライドするだけですので、扉を開くために少しずつ車椅子を移動させるという労力が不要になります。

また、扉を通過したら車椅子を止めて、同じように扉をスライドさせるだけで簡単に閉めることができます。

このように、車椅子の方の開閉を考えると門扉、玄関扉の扉に引戸を取り入れるのが良いでしょう。

なお、引戸に利用する取っ手を大きめに作れば、誰もがつかみやすくなるためおすすめです。

引戸設置の際の注意点

一般的な車椅子の幅は70センチ前後になりますので、引戸を開いたときの幅は最低でも1メートル弱は確保したいものです。

また、玄関扉に引戸を設置する際には、車椅子の方でも気軽に鍵をかけられるように、鍵穴の位置を考えて取り付けるようにしましょう。

引戸を取りつけるとなった場合、設置場所の地面は平らである必要があります。

斜面に取り付けると開閉に力が必要になるため、地面が斜めになっている場合はその土地を平らにする工事が必要となります。

基礎の工事から始めると意外と時間がかかることもあるため、取りつけ時期を考えて設置することをおすすめいたします。

バリアフリーを意識したエクステリアについて

スロープと扉について紹介してきましたが、他にもバリアフリーに適したエクステリアはいくつか存在します。

代表的な、手すりと照明について紹介していきます。

手すりの設置

足腰が弱くなって身体をうまく支えるのが難しい場合は、エクステリアに手すりを設置することによって体を全身で支えることができるようになります。

例えば女性の高齢者に多い骨粗鬆症の方は、転倒して一度骨を折ってしまうと完治が難しく寝たきりになってしまう可能性もあります。

歩行時に身体のバランスが不安定になってしまうと転倒のリスクも高いため、そうなる前に手すりを設置した方が良いといえます。

また、先ほども述べましたが、車椅子での転倒を防ぐために、スロープを設置する場合はスロープに沿って手すりを設置したほうが良いでしょう。

照明の設置

加齢によって視力は徐々に低下していきますが、光の見え方も少しずつ変化していきます。

例えば、明るさに対して鈍感になっていくにもかかわらず、光源から発せられるまぶしさには敏感になるため、ダイレクトに照明を見ると不快感を覚えます。

また、明るいところから暗いところへ、反対に暗いところから明るいところに移動すると、目が慣れるまでに時間がかかるようになります。

エクステリアに手すりなどを設置する場合は庭に障害物が増えることになるため、夜間はさらに照明が必要になってきます。

このようなことを考慮して、門扉や玄関、アプローチ部分の照明をリフォームしていきましょう。

バリアフリー外構にリフォームする時期

エクステリアのバリアフリー化について見てきましたが、一体バリアフリーのためのリフォームはいつ行えばよいのでしょうか。

急いでやったほうが良いと考える方もいらっしゃる一方で、その時に考えればよいという意見もあります。

リフォームのタイミング

結論から言うと、50代くらいでバリアフリーのためのリフォームを施すご家庭が多いようです。

50代であればまだ足腰もしっかりとしていて自分の力で何でもできる状態ですし、お子様も独立して家の中が寂しくなる時期でもあります。

いつかはリフォームしようと思っているけどなかなか踏ん切りがつかないという方も多いでしょうが、この辺りの時期を目安に屋内、屋外ともにバリアフリーの機能を付けるとよいでしょう。

もちろん、それまでにどのようなリフォームをするかを熟考することで、高齢になっても便利で納得いく住居に住むことができます

早すぎるのも禁物

どうせ、いつかはリフォームするのだから早い方が良いと考える方もいれば、30代で家を購入する際に、初めからバリアフリーを意識したエクステリアを取り付ける方もいらっしゃいます。

もちろんそれが悪いというわけではないのですが、家族全員が今後数十年健康で暮らす可能性が高い場合は、庭の手すりなどが邪魔になってしまうかもしれません。

また、実際にバリアフリーのエクステリアが必要になる数十年後には、さらに良い商品が開発されているかもしれません。

そういったことを考えると、あまり急ぎすぎるのも得策ではないと言えるのではないでしょうか。

早めにつけておいた方が安心だと考える方もいらっしゃいますので一概には言えませんが、家族の状態なども考慮に入れてバリアフリー化のタイミングを判断するとよいでしょう。

最後に

エクステリアのバリアフリー化について紹介してきましたが、リフォームをするのであれば屋外だけでなく、家全体の間取りを変えることも考慮して話を進めていく必要があります。

実際にご自身の身体が不自由になった場合には、現在お住まいの住宅ではなく介護付きの住宅に引っ越すという方法も存在します。

バリアフリーのリフォームに関しては、自治体から補助金が出たり介護保険などの補助制度を使ったりすることで、多少は安くなります。

しかし、そもそもそこに住まないという選択肢を取るのであれば、バリアフリーのためのリフォームは無意味なものになってしまいます。

家全体をバリアフリーにするのであれば、ご自身がいつまでそこに暮らすのかということまで考えて判断するようにしましょう。